ガラスの仮面
アルディスとオリゲルド(ふたりの王女 編)
コミック 第10章 冬の星座 25・26・27巻より

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gW 最終話
  OP ガラスの仮面
001 ラストニア国、北の離宮、皇太后ハルドラの部屋。
  ハルドラ(月影) 「この北の離宮を戦争で傷を負った者のために病院として貸して欲しいというのですか?アルディス」
  アルディス(マヤ) 「はい・・・!おばあさま・・・いいえ皇太后陛下」

「この度の長引く戦いのために国民は重税を課けられ町には失業者が溢れ、盗人が昼間から横行しております。戦で傷を負った者全てを収容するには病院は小さすぎ、また負傷者達は入院する費用すら無いと聞きます・・・」

「わたくしは・・・私は知りませんでした。このラストニアの国が今こんなにも荒(すさ)んでいたなんて。一日も早くハーランドとの戦をやめなければこのラストニアは土台から崩れてくる・・・!そんな気がするのです」

「今は何よりも国民の心を取り戻す事が大切・・国民が苦しんでいるのを王家の一員として黙って見てるわけにはいきません・・」

  ハルドラ(月影) 「・・・・・・・・アルディス・・わたくしのこの目が見えなくなったのは・・・・この足が不自由になったのは10年前オリゲルドの母・・・先(さき)の王妃カタジーナの無実の罪を晴らそうとして暴漢に襲われた時のものです。暴漢はおそらくカタジーナの敵の手の者・・・カタジーナに味方する皇太后のわたくしを邪魔に思ったに違いありません・・・」

「権力争い・・陰謀・・・それ以来わたくしは王家が嫌になりこの北の離宮へ引きこもってしまった・・・王家とも政治とも国家の全てから離れ、隠者(いんじゃ)のようにひっそりとこの城で余生を送るつもりでいました・・・」

  アルディス(マヤ) 「皇太后様・・」
  ハルドラ(月影) 「そなたは王家の娘なのですね・・そなたの言葉を聞いてわたくしも自分の身体を流れる血がなんなのか思い出しました」

「戦はそう簡単に終わらせることは出来ないでしょう・・・けれどアルディス・・そなたならこの国の光になれるかもしれない・・・希望と励ましと命を育(はぐく)む春の光・・・国民にとってそなたはいつも春の光であっておくれ・・・光の王女として生きておくれ」

  アルディス(マヤ) 「光の王女・・・光の・・」
  ハルドラ(月影) 「わたくしは城へ戻りましょう、この北の離宮をそなたに貸しましょう」
  アルディス(マヤ) 「おばあさま・・!」
010 ユリジェス 「なんてことだ・・・!あの小さな姫君は、あの由緒ある宮殿・・・北の離宮を戦で負傷した兵士達・・・それも平民の。彼らの病院にしようというのか!だが姫君!彼らの医療費は誰が出す?国費は軍事費で赤字状態だ。彼らの医療費など・・・!」
  アルディス(マヤ) 「お父様、王家の財宝のほんの一部でいいの・・北の離宮にいる負傷兵のために寄付として使っていただきたいの」
  ユリジェス 「愛娘アルディスの願い・・・それに国王の母、皇太后ハルドラ様の強力な意見もあって、国王陛下が負傷兵のために寄付を出した・・・!そうと知った臣下である貴族達は陛下に礼を欠かぬよう、そして機嫌をとるために慌てて争って寄付を申し出た。内心の不満とは裏腹に。もちろんこの事は国中に広がった」
  その噂はエリンワルドにいるオリゲルドお耳にも届いた。
  オリゲルド(亜弓) 「何!?ラストニア王家が国民の信頼を取り戻そうとしていると?・・北の離宮を負傷兵のための病院に・・・王や貴族達がそのための寄付を・・・信じられない。アルディス姫がそのようなことをしているなんて・・・まずい事になったわ・・・」

「・・・そうだわ・・・・この状況を上手く利用する手がある・・ホホホホホホ・・」

  「亜弓さん、だんだん凄みを増してくるな・・怖いくらいだ・・」
  アルディス(マヤ) 「ええっ・・・!エリンワルドへ嫁がれたオリゲルドお義姉(ねえ)様がお医者様を12名も派遣・・!オリゲルドお義姉(ねえ)さまが・・・なんておやさしい方なの・・」
  アルディスはエリンワルドにいる義姉(あね)、オリゲルドへ手紙をしたためた。
  アルディス(マヤ) 「親愛なるオリゲルドお義姉(ねえ)様・・・エリンワルドで元気でお過ごしでしょうか。この度のお義姉(ねえ)様の暖かいご配慮、わたくしアルディスをはじめ国王陛下、貴族達、そして国民までが感謝しています。尊敬するオリゲルドお義姉(ねえ)様、なんてお心の広いおやさしい方なんでしょう」

「12人の名医達は北の離宮で連日、治療のために働いてくれています。ああ・・・!早く戦が終わればいい・・・!でなければラストニアに本当の平和と幸せは望めませんもの!」

「戦は嫌です。人と人が争うのは嫌です。人と人が憎しみあうのは嫌です。人と人が傷つけ殺しあうのは嫌です。神は汝の敵を愛せよとおっしゃっています。愛こそが最も人間を強くするのではないでしょうか。お義姉(ねえ)様が遠くこのラストニア国を思われるとき、わたくしがエリンワルドのお義姉(ねえ)様を尊敬し愛し、そして誰よりもお慕いしている事を思い出してください」

「お義姉(ねえ)様のラストニア国への強い愛を思うときアルディスは励まされます。ラストニアの王女としての自覚をお義姉(ねえ)様によって教えられたからです。お慕いするお義姉(ねえ)様、アルディスはこの国の王女として誇りを持ち責任を果たしていきたいと思っています」

「そう!それからお父様の容態は大分よくなり日一日と回復していきます。弟のヨハンは最近ダンスを習い始めました。女性の相手をするのが苦手ですぐにやめてしまいます。宮廷の中でおもちゃの弓で狩りごっこをする方が楽しいと言っています。お義姉(ねえ)様、どうかお身体に気をおつけになって・・・!アルディスはいつもお義姉(あね)様の事を思っています。尊敬するオリゲルドお義姉(ねえ)様へ愛と信頼をこめて。あなたの忠実なる義妹(いもうと)アルディスより」

  オリゲルド(亜弓) 「親愛なる義妹(いもうと)アルディス。おやさしいあなたの言葉の数々、わたくしを勇気づけてくれます。医者達が役に立っていると聞いて嬉しく思っています。エリンワルドでわたくしは今、大切にされています。国王陛下、夫のアシオ王子。大臣や宮廷の貴婦人などは皆わたくしに親切にしてくれます。どうかお気遣いなきよう」

「ラストニアとハーランドの戦の事については幼い少女のあなたが心を痛めてはなりません。ラストニアは伝統ある強い国です。きっと勝つと信じて時の過ぎるのを待つことです。戦争と言うもの・・・確かに人と争う事は辛い嫌な事ですが、人間の歴史の中で避ける事の出来ない神の課した試練でないでしょうか?戦はきっとラストニアの勝利で終わります。ですから美しい義妹(いもうと)アルディス、あなたのその天使のような笑顔を曇らせないようにしてください」

「花を愛し音楽を愛しダンスを愛する幸せなアルディス。かつてただ一度だけお会いしたあなた・・・わたくしの記憶の中であなたはいつも幸せな王女です。永遠にそうでありますように・・愛しい義妹(いもうと)アルディスへ。あなたを心から大切に思うオリゲルド」

「クッ!・・オーホホホホ・・バカな娘(こ)・・・!あなたみたいな世間知らずが余計な誇りや責任などを考え始めると、世の中は余計混乱するのよ。ホホホホホ・・早く戦が終われば良いですって?まだ終わられては困るわ。汝の敵を愛せよですって?ホホホホホ・・夫が何の罪もない妻をおとしいれてその首をはね、自分の血の流れる娘を邪魔だからといって牢獄に8年も閉じ込めて放ったらかしにしておくことが愛するということなの!?自分の都合だけで愛を信頼を裏切ったわたしの父、国王陛下・・・!そしてアルディス。あなたの母の一族ゴッドフリード家・・・・!」

「アルディス、あなたは間違っているわ。憎しみこそが最も人間を強くするのよ!」

「ありがとう・・おかげでわたしは強くなれるわ。この世の誰よりも・・・」

020 「しっかし・・・光るな亜弓さん・・このオリゲルド・・・全然光ってるよ・・印象が強烈過ぎて目が離せない・・・マヤ・・」
  グリエル大臣 「オリゲルド様、なぜ敵に塩を送られました?」
  オリゲルド(亜弓) 「グリエル大臣、医者のことを言っているのね。あんなものは何でもないことよ。医者を送ったところで戦が終わるわけではないわ」
  グリエル大臣 「ほう、ではこの機会を利用してご自分の株を上げられたのですな。いや、見事なご才覚がおありだ。さすがわたしの見込んだお方・・・!」
  オリゲルド(亜弓) 「嫌味と皮肉がお上手ねグリエル大臣」
  グリエル大臣 「誉め言葉とおっしゃっていただきたいですな、妃殿下」
  オリゲルド(亜弓) 「ときにラストニアへ放した赤ユリ党の頭(かしら)ディーンの様子は!?」
  グリエル大臣 「たいへんな活躍ぶりだとの知らせが入っております。瞬く間に仲間を増やしラストニアの大物貴族達の館を片っ端から荒らしまわっております。盗んだ金品はほとんど重税などで苦しむ民達に施しているそうで義賊の扱いを受けているそうでございます。だもので役人が後(あと)を追っても探しても町人達がみんな味方になって彼等をかくまってしまうものでまだ、ただの一度も捕らえられないとの事。それに反国王派の仲間も一部、貴族をはじめ大商人など次々と裏で集まりはじめております」

「またディーンが先頭に立って市民の王家への憎しみをかきたてるよう扇動しております」

  オリゲルド(亜弓) 「そう・・ホホホ・・・今やラストニアは壊れかけたガラス細工のようなもの。外からも内からもひびが入っている・・もう一息・・もう一息・・・ホホホホホ・・」
  《せりふ》
「申し上げます!市民の一団が国王陛下にじかに訴えを聞いていただきたいと城の前に結集しております」

城の外から市民の熱い叫びが聞こえてくる。マヤの心の中に何かがこみ上げてきた。

030 アルディス(マヤ) 『胸が熱い・・・!ああ・・そう・・・胸が熱い・・・・!』

『わたしは王女アルディス・・・』

「わたしに・・・わたしに行かせてください・・」

  ユリジェス 「アルディス姫!いったい何をする気です姫!」
  アルディス(マヤ) 「刃(やいば)と刃(やいば)では血を流すだけ。王家への愛と信頼を得ることはできません。刃(やいば)に勝てるものは心の底からの愛だけ・・・・!」

「ユリジェス!ついてきてバルコニーへ」

  「マヤの表情・・あれ・演技って顔じゃない・・本気って表情だ・・・いったいどんな演技をやるつもりなんだ・・マヤ・・」
  アルディス(マヤ) 「ユリジェス・・・」
  ユリジェス 「はい姫様」
  アルディス(マヤ) 「おばあ様は言ったわ。わたしはこの国の光になれって・・・!光の王女になれって・・・!」

「髪は乱れてない?服はちゃんとしている?ユリジェス」

  ユリジェス 「はい・・・!」
  バルコニーに立つアルディスとユリジェス。意を決した用にアルディスは力強く言った。
  アルディス(マヤ)  「バルコニーの扉を開けなさい!」
040 SE 《扉の開く音》
  ライトを背に、アルディスの影が浮かび上がる。天井のライトが一斉に点灯。まばゆい光がアルディスの姿を包みこんだ。
  アルディス(マヤ) 「ラストニアの賢明なる民よ!騒ぎ立てるのはよして下さい!わたしは王女アルディスです!国王陛下はまだお身体の様子がすぐれずここへは出られません。王家は愛する国民の事を忘れているわけではありません。町にあふれる失業者や浮浪者達。そして、昼間から横行する盗人達・・重い税のために愛する国民が苦しんでいることはよくわかっています」

「ハーランドとの戦の起こりは、もとは我が国の者であった銅山をめぐっての事です。この銅山があればラストニアは更に恵まれた国になる。更に潤うと考えての事です。不覚にも戦が長引き、国民のあなた方に不安な思い苦しい思いを強いる事になりました。王家は愛する我が国の民をこのままにしようとは思っていません。」

「連日議会が開かれどのようにする事が国家と民のために良い事なのか話し合われているのです!今しばらく耐えてください。ラストニアの賢明な民よ!一日も早く平和と満足と幸福を取り戻したいと考えています」

「王家とわたくしは、あなた方国民を愛しています。その愛を信じて欲しいのです!」

  「マヤ・・・!」
  場内の観客達を今、ラストニア国民の心が支配していた。自分達がラストニアの民であるような気分になっていたのだ。そしてその心はアルディスの言葉と態度に説得されていた。
  ユリジェス 「それは不思議な感動だった。口々に王家を罵(ののし)っていた市民は言葉を失ってバルコニーの下に佇(たたず)んだままだった。今まで王家の誰かが我々市民に直接口をきいてくれた事があったろうか?王女は自分達を賢明な民と呼び、愛する国民と言った。今、しばらく耐えて欲しいと願い、国民への愛を信じて欲しいと言った・・・」

「美しいアルディス、春の女神のように光り輝くアルディス・・・さきほどまでの騒ぎは静まり、かわりに歓呼の声があがった」

  舞台、緞帳が静かに下りてくる。第1幕が終了した。場内にライトが点灯した。
「一幕の終了か・・なんだか長い夢を見ていたみたいだな・・・」
  楽屋で第2幕のための衣装替えをしているマヤ。その手には紫のバラの花束が握られている。
050 アルディス(マヤ) 「紫のバラの人・・・最後まで観ていてくださいね。あなたが場内のどこかにいると思うだけで勇気が出ます・・!」

「紫のバラの人・・・名前も年齢(とし)もどこの誰かもわからないあなた。影でいつもあたしを励ましてきてくださったあなた・・・今日の舞台を誰よりもあなたに一番観ていただきたいんです・・・!」

「紫のバラの人・・」

  SE 《第2幕開始のブザー》
  第2幕の開幕を知らせるブザーが鳴り、緞帳がスッと上がる。舞台に立つユリジェスにライトが当たる。
  ユリジェス 「市民の暴動騒ぎ以来、アルディス姫は王女としての責任を真剣に考えるようになられた・・」

「アルディス姫の考えで浮浪者や失業者など、町の飢えた者たちのために街角でスープが配られた。そして、アルディス姫のたっての願いが入れられ、国王の命令で税がそのまま据え置かれる事になった」

「議会では、ハーランドとの戦を、なんとか国の面子を損(そこ)なわなぬよう停戦へもっていくという方向で議論が繰り返されていた。だが、この申し出をハーランドは断った。その理由はただひとつ。”ラストニア国が信じられない”からであった」

  アルディス(マヤ) 「仁愛(じんあい)深きハーランド国王陛下!どうか、わたくしアルディスを敵国の王女とお思いにならないでください。平和を愛するただの娘としてお聴きください」
  ユリジェス 「そしてアルディスは敵国ハーランド王のもとへ手紙を書き送った。愛と信頼と何よりも平和の願いを強くこめて。やがて、ハーランドの使いの者が国王の返事を携(たずさ)えてやって来た」
  アルディス(マヤ) 「ええっ!?わたしをハーランドの建国祭に招きたいと・・・!?」
  ある大臣は、この申し出は罠に違いないと言い、またある大臣は、ラストニアとアルディス姫を試しているんだと、互いに激しく言い合った。
アルディス(マヤ) 「ハーランドがわたしを試している・・・」

「参りましょうハーランドへ」

「大丈夫、心配は要らないわ。もし、ハーランドがわたしを試しているのならそれはラストニアを試している事になるわ。わたしが行かなければラストニアはハーランドを信用していないも同じこと。それでは停戦は受け入れられないわ。信じて欲しければ、まず信じなければ・・・そうでしょう?」

  アルディスはにっこりと微笑んだ。一同はその笑顔に見とれた。
060 「なんて素晴らしい笑顔だ・・マヤ・・。目が離せない・・ひきつけられる」

「優しくて穏やかで邪気がなくて、清らかな感じさえ漂う・・そう、何もかも許したくなる・・」

「天使の笑顔か・・・」

  ユリジェス 「愛と微笑み、それだけがこの姫の唯一の武器・・・!敵国ハーランドでどこまで戦えるものか・・・」
  オリゲルド(亜弓) 「マヤ・・・!わたしのライバル・・!思い通りあなたは素晴らしい人だわ。光り輝く王女アルディス。観客は今、あなたを観てるわ。そして次に観客はわたしを観る・・・!そらからまた、あなたのアルディスを観て、再びわたしのオリゲルドを観る・・・!」
  《せりふ》
「ようこそ来られた!ラストニア国のアルディス殿!」
  オリゲルド(亜弓) 「けれど最後の幕が降りる時、観客はどちらを観ているか・・!わたしが知りたいのはその瞬間・・・!」
  アルディス(マヤ) 「ハーランド建国記念祭にお招きいただきありがとうございます国王陛下。ラストニア国一同を代表いたしまして心からお祝い申し上げます。つきましてはラストニア国よりハーランド国に祝いの品々を持参しております。受け取っていただければ幸いに存じます」
  オリゲルド(亜弓) 「あなたか・・・わたしか・・・マヤ・・・・!あなたには負けたくない・・・・・!」

「次はわたしの出番・・・・!」

  《せりふ》
「アルディス殿、よく敵国ハーランドへ来る事を決心されたな。さぞかし国王陛下が反対されたであろう」
アルディス(マヤ) 「神の御心に従ったまでです。神は汝の敵を愛せよとおっしゃられました」

「わたくしは戦は嫌です。人と人とが憎しみ合って刃を交わしあって血を流し合う・・・どうして愛し合って生きてはいけないものでしょう。ハーランドは素晴らしい国です、わたくしはハーランドの人々を愛し仲良くなりたいと思っています」

    《せりふ》
「ではここで姫を捕らえて人質にしたとしたらどうする?」
070 アルディス(マヤ) 「構いません、人質になれば戦は中止されるでしょうから。父はわたくしをとても愛しております。もしわたくしが人質になろうものなら、この身を案じてハーランドに決して手を出す事はないでしょう」
  《せりふ》
「アルディス姫、そなたは命をかけてこの国へ来られたのですな。わしも神の御心に従いたくなった。ラストニアとは仲良くなれそうな気がする。わしの王子に王女達はまだ幼いが、后とは仲良くなれよう」
  アルディス(マヤ) 「ありがとう存じます。陛下」
  ユリジェス 「アルディス姫、今まであなたを誤解していました。あなたは素晴らしい王女だ」

「お許しをアルディス姫」

  アルディス(マヤ) 「ユリジェス・・・!」
  エリンワルドのオリゲルドはラストニアとハーランドの和平を歯噛みして悔しがった。
  オリゲルド(亜弓) 「アルディス・・・!愛で国が治められると思っているの・・!必要なのは力よ・・・!人々は平和より富を欲しているのよ!権力を欲しているのよ・・・!」

「アルディス!今、その証を見せてあげる!」

  やがてラストニアにエリンワルドから援軍の申し出があった。強大なエリンワルド軍の力を借りればハーランドに勝てると考えたラストニア側は、アルディスの必死の頼みにも拘らず和平調印を前に、突如ハーランドを襲った

《せりふ》
「何!?ラストニアが攻めて来ただと!?エリンワルドの援軍を引き連れて!?馬鹿な・・・!和平だなどと言っておきながらラストニアめ、騙したな!卑怯者め!」

戦いはラストニアの圧勝で終わった。国中の者が今度の戦に勝利をもたらしたのがオリゲルドだということを知っていた。アルディスの嘆きをよそにオリゲルドは次の手をうってきた。狩りに出ていたヨハン王子が突然繁みから飛び出してきた矢に撃たれて死んでしまったのである。その矢はハーランド王家のものだった。

SE 《教会の鐘の音》
教会の鐘の鳴り響く中、ヨハン王子の葬儀が静かにとりおこなわていた。
080 アルディス(マヤ) 「ヨハン・・・・わたしの弟・・・その金色の髪もやんちゃな瞳もイタズラな手ももう帰ってこない・・ヨハン・・!この国の王位を継ぐはずだったあなた・・・!国は今、光を失って闇に包まれている。ヨハン・・・」
SE 《教会の鐘の音》
082 ED パープル・ライト

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