オリジナル台本

BLUE COSMOS

ライ 《男》特殊犯罪調査機構(SCCO)の調査員(26歳)

ダンシングマーメイドの調査に来る。その時、マーシェルに出遭う。2人は互いを意識するが運命が2人を引き裂く。調査能力はずば抜けている。だが一匹狼的性格で単独行動をとることが多い。

ユキト 《男》特殊犯罪調査機構(SCCO)の調査員(25歳)

ライと一緒に調査に来る。飄々としたつかみ所のない男

デラッド 《男》特殊犯罪調査機構(SCCO)の調査局長(58歳)

ライの上司。ロマンスグレイの紳士。一見固そうだが、なかなか冗談の通じるオジ様である。

リンカ 《女》特殊犯罪調査機構(SCCO)の調査員(22歳)

地球にいるライの恋人。ひたすら待ちつづける悲しいさだめ・・・。優しい、つくすタイプである。

マーシェル 《女》ダンシングマーメイド(19歳)

謎多い少女。彼女は人間か・・サイボーグか・・。ライを一目見て恋に落ちる(いまどき珍しい)寂しげな眼が印象的・・。

ガーバレイ 《男》(48歳)サイバーブローカーのボス・・いわゆるブラックマーケットの元締め
ルミエナ 《女》空間演舞堂イカロスのオーナー
ガーバレイの愛人(26歳)

艶やかな妖しい雰囲気を持つ女性

   
ナレーション  

第3話 奇跡の再会

第1話 第2話 第3話 第4話
001 ライ 「ユキト、生きて地球に還れ!俺も必ず還る!」
002 ユキト 「待て!ライ・・どこへ行くんだ!!待て!待ってくれ!!ライ!!」
003 ユキトがライを追う。しかし、脚が重く思うように前に走れない。ライの姿はどんどん遠くなって行く。とうとう白く霞む霧の向こうへ消えてしまった。
004 ユキト 「ライ!・・」
005 その時、眩い光がユキトの視界を遮った。

ユキトが目を開けた。視線の先に白い無機質な天井が見える。そして頭の上から無影灯の白い光がユキトを照らしていた。

ユキトが体を動かそうとしたが体はベッドに固定されて動かす事ができなかった。

006 ユキト 「ここは・・・どこだ・・器材やこのアルコールの匂いは・・病院なのか・・?」
007 ルミエナ 「あら、眼がさめたのね?」
008 ユキト 「お前は・・ルミエナ・・。」
009 ルミエナ 「良かったわ、覚えていてくれて。」
010 ユキト 「ここはどこだ!?俺に何をした!」
011 ルミエナ 「まあ、恐い事。大変だったのよ、あなたを探すのは・・。」

「脱出用ポッドなんかで逃げたりして、もう少しで見逃してしまう所だったわ。」

012 ユキト 「・・・・・俺は・・地球に還ったんじゃないのか・・!?」
013 ルミエナ 「ほほほほ、秘密を知った者をそのまま黙って返したりするものですか。あなたには死ぬほど辛い思いをさせてあげるわ。」
014 ユキト 「な・・なんだと!!・・俺に何をしたんだ!」
015 ルミエナ 「あなた、イカロスを脱出するとき右足の太ももをレーザーで撃ち抜かれたの覚えてる?」
016 ユキト 「ああ・・それがどうした!」
017 ルミエナ 「痛かったでしょう?肉を焼き骨を断たれる痛みは忘れられないわよね・・。」
018 ユキト 「・・何が言いた・・・脚が・・痛くない・・・・まさか・・ルミエナ!!」
019 ルミエナ 「ほほほほ、いいもの見せてあげるわ・・ほら御覧なさい。」
020 ルミエナは右手に血まみれの肉片を掴んで見せた。ユキトが眼を見張った。ルミエナの持つ肉片に丸い穴が開いていたのだ。その穴を通して、ルミエナの赤く濡れた唇が笑っているのが見えた。
021 ルミエナ 「そう、これはあなたの脚よ。ほら、これは腕、そしてこれは腰・・・。」
022 ルミエナの示すガラス容器の中にバラバラになった肉片が沈んでいる。やがて、ユキトの鼻に血の匂いが漂ってきた。
023 ルミエナ 「ほら、これが今のあなたの姿よ。みなさい・・醜い木偶人形(でくにんぎょう)よ。あなたは生きた人形になったのよ。ほほほほ・・。」
024 ユキトの体からは剥き出しの配線とギミックがガクガクと動いているのが見えた。
025 ルミエナ 「眠りなさい、ユキト。次あなたが目覚めたとき、殺人兵器となってよみがえるのよ。あなたには使命を与えるわ。マーシェルを殺しなさい。そして、使命を全うしたら、自爆しなさい。全てを巻き込んで、死ぬのよ。ほほほほほ・・。」
026 ユキトの意識が遠ざかる。ルミエナの笑い声だけが耳の奥で響き渡っていた。

特殊犯罪調査機構、局長室。デラッドが書類を見ている。そこへリンカがコーヒーを持って入って来た。

027 リンカ 「局長、コーヒーです。どうぞ。」
028 デラッド 「ああ、すまんな。リンカ君のいれるコーヒーの味はまた格別だ。」
029 デラッドが美味そうにコーヒーをすする。リンカの顔は沈んでいる。
030 デラッド 「リンカ・・。」
031 リンカ 「え・・あ・・はい・・・すみません。」
032 デラッド 「気を落とすなよ。ライは不死身だ。今までもどんな困難な事件でもあいつは死なずに帰ってきた。今度もきっと大丈夫だ。」
033 リンカ 「いいえ・・・私は信じてます。きっとライは生きてるって。」
034 デラッド 「そうか・・そうだな。」
035 そこへドアを勢いよく開けてユキトが入ってきた。
036 ユキト 「おはようございます。すみません遅れちゃいました。」
037 デラッド 「ユキト。もう体の調子は大丈夫なのか?」
038 ユキト 「ええ、一週間、ぐっすり寝たら直っちゃいましたよ。ははは。」
039 デラッド 「そ・・そうか・・・。ライとお前は良いコンビだったからな。どっちもタフだった。」
040 ユキト 「ライの事は、本当に残念です。局長!俺があいつの分まで頑張りますよ。」
041 デラッド 「あ・・・あぁ・・頼んだぞ。これが今回の調査だ。調査の内容は・・・。」
042 デラッドが新しい任務をユキトに話している。その様子をリンカがじっと見つめていた。
043 ユキト 「じゃ、局長行ってきます。リンカ、行ってくるぜ!」
044 リンカ 「気をつけてね。」
045 ユキト 「ああ。俺はSCCO(エスシイシイオー)のトップチェイサーだ。安心しろ。ライみたいなヘマはやらない。じゃあな。」
046 ユキトが部屋を出て行く。その後ろ姿をリンカがじっと見つめていた。
047 リンカ 「ライ・・・。」
048 デラッドのデスクの電話が鳴った。
049 デラッド 「はい。SCCOのデラッドです。はい・・宇宙航空パトロール・・・お世話になってます。ええ・・ライ・グランダークはうちの局員です・・何ですって・・ええ・・はい・・わかりました。どうもありがとうございました。」
050 リンカ 「局長・・ライが・・ライがどうかしたんですか?」
051 デラッド 「リンカ君。ライは生きてるぞ。」
052 リンカ 「本当ですか!?生きてたんですね。よかったぁ!!」
053 デラッド 「今、宇宙航空病院で療養しているそうだ。」
054 リンカ 「怪我してるんですか!?・・ライは大丈夫なんですか!?」
055 デラッド 「傷はそんなに酷くは無いそうだ・・ただ・・ちょっと厄介な事があるそうだ・・。」
056 リンカ 「それって・・?」
057 デラッド 「・・・とりあえず病院へ行こう。この眼でライの様子を見てみよう。今後の事はそれからだ。」
058 宇宙航空病院351号室、ライが入院している個室は3階の一番南側の日当たりの良い部屋だった。ドアがノックされデラッドとリンカが入ってきた。

ライは上半身をベッドの上に起こし、窓の外を眺めていた。ドアの開く音に反応してデラッドとリンカの方を向き直った。

059 リンカ 「ライ!・・生きてたのね。本当に良かった。」
060 リンカがライの首にすがりついた。リンカの眼から涙がポタポタと流れ落ち、ベッドのシーツに小さくシミを作っていく。
061 リンカ 「生きてた・・生きてたぁ・・ライ・・。」
062 デラッド 「ライ。私がわかるか?」
063 ライ 「あ・・ぁ・・・・。」
064 デラッド 「・・・・・やはり無理か・・・。」
065 リンカ 「局長・・・。」
066 リンカはデラッドを見返すとライの顔をまじまじと見つめた。ライもリンカの顔を見つめるがまるで知らない他人を見ているようだった。
067 デラッド 「リンカ君・・ライは記憶を失っているのだ。我々との思い出も、君との思い出も・・全てな・・。」
068 リンカ 「そんな・・・。ライ!私よ、リンカよ!覚えてるでしょ!?私の事リンカって呼んでよぉ・・ライ!」
069 ライ 「・・・・君は・・リンカさん・・って言うのか・・綺麗な人だ・・。ごめんなさい・・あなたの事を僕は覚えてないんだ・・。それどころか自分のことさえも覚えていないんだ・・・。」
070 デラッド 「宇宙航空パトロールが見付けた時には飛行艇は半壊状態だったらしい。あの状態でよく生き延びていたと・・パトロールも驚いていた。」

「ライが記憶を取り戻すのに何年かかるか・・いや、もしかするとずっとこのままかもしれない。」

071 リンカ 「構いません・・彼の記憶が戻らなくっても私はライを愛し続けます。」
072 デラッド 「辛い生活になるぞ・・。ライの記憶が失われた以上・・・全て一からのやり直しだ。」
073 リンカ 「いいんです。私にとってライは全てなんです。ライとの生活が続くのならむしろこのままのほうが良い。」

「いつも危険な任務で飛びまわる彼をじっと待ってるなんて辛過ぎるもの・・。」

074 デラッド 「リンカ君。君の気持ちはわかった。ライの事は君に任せよう。」
075 リンカ 「局長・・。」
076 デラッド 「うむ、ライ・グランダーク。彼のSCCOの調査員の任を解こう。」
077 リンカ 「ありがとうございます。局長。」
078 こうして、SCCOの任を解かれたライとそれに寄り添うリンカの新しい生活が始まった。

ここは静かな丘陵の連なる山の中腹にひっそりと建つ、コテージハウスである。そこへ一台の車が山道を蹴立てて走って来ると家の前で止まった。

079 ユキト 「やあ、リンカ。元気にやってるか?」
080 リンカ 「ユキト!久しぶりねえ。頑張ってるそうじゃない。いろいろ噂は耳にするわ。」
081 ユキト 「そうか?まあ、今の俺の活躍は他の奴らじゃちょっとマネはできないだろうぜ。」
082 リンカ 「・・・そうね・・。」
083 ユキト 「ところで、ライも元気にやってるのか?」
084 リンカ 「ええ・・元気よ。でも・・・傷はすっかりよくなって来てるんだけど、黙ったままでじっと空を眺めてるの。時々涙を流してたり・・。身体は私とここにあるのに心はずっと遠いところに置いて来てるみたい。」
085 ユキト 「そうか・・辛くないのかリンカ?」
086 リンカ 「辛くなんか無いわ・・辛くなんか・・。」(涙声)

「ごめんなさい・・そうよね、泣いちゃいけないのよね・・彼はここにいるんだもん。」

087 ユキト 「ライは今どこに?」
088 リンカ 「さっき、散歩に行ってくるって・・湖のほうへ歩いていったわ。」
089 ユキト 「そうか・・じゃ・・俺も久しぶりにライの顔を拝みに行くか。」
090 リンカ 「ここで待ってればいいのに。」
091 ユキト 「いや、男どおしで話せばまた、気分も変わるかもしれないからな・・・・。」
092 リンカ 「そう・・・湖はあっちよ。」
093 リンカが指をさす。ユキトは軽く手をあげるとリンカの指示した方角へ歩いていった。

ライは静かに歩を進めている。その目の前に湖が見えてきた。木々の隙間より湖面の輝きが洩れて光る。ライは目を細めてじっとその光りを眺めていた。ライの目が一点で止まった。

094 ライ 「人がいる・・。」
095 ライは静かに湖面に向かって歩き出していた。その人影は少女だった。逆光で顔はわからないが、少女もライに気付いたのだろう。ライのほうをじっと見つめている。

少女はバシャバシャと水をけり大きく腕を広げライに向かって駈けてきた。そしてライの胸に飛びこむと大きな声を出して泣いた。

096 マーシェル 「アア・・アアア・・アアア・・・」(絶叫)
097 ユキトがライとマーシェルの姿を捉えた。ユキトの顔から血の気が引いて行く。それは不気味な無表情の人形のようだった。

空間演舞堂イカロスの中央管制室で、ルミエナが通信をキャッチしていた。

098 ルミエナ 「・・そう・・見つけたのね。やっぱりあの小娘・・ライ・グランダークのもとへ現れたのね・・。いいわ・・殺してしまいなさい。ライ・グランダークともども・・・・。」
099 ガーバレイ 「ルミエナ!ここで何をしてるんだ?」
100 ルミエナ 「あら、私が居てはお邪魔だったかしら?」
101 ガーバレイ 「マーシェルは見つかったのか!」

「くそ!どこへ逃げたんだ!マーシェル!地獄の底までも追ってやる。」

102 ルミエナ 「そうねえ・・どこへ逃げたのかしら・・マーシェルったら・・ほんと、悪い子ね・・・。」

「見つけたら教えてあ・げ・る・・。ふふふふふ・・ほほほほ・・・ガーバレイ・・肉片でも怒らないでね・・。」

103 ライの胸の中で泣きじゃくるマーシェル。ライもマーシェルの体を優しく抱いていた。
104 ライ 「この感触・・以前・・どこかで・・・。」
105 ユキト 「ライ!その女から離れろ!マーシェルから離れるんだ!」
106 ライが声のする方向へ首を回した。ユキトの両手が巨大な刃に変わっていた。ユキトはその刃を振り回して威嚇する。
107 ライ 「ばけもの・・・。」
108 ユキト 「マーシェル!お前を殺す!殺す!殺す!」
109 ユキトの顔が唇の上下で真っ二つに割れ、耳まで裂けた。まるで文楽人形の鬼への変化のようだった。ユキトが湖の浅瀬の水をバシャバシャと音を立てて走ってくる。
110 ライ 「危ない!逃げなきゃ・・・。」
111 マーシェルがユキトを見つめる。マーシェルはライから離れると走ってくるユキトに向き合うように立った。マーシェルの体が徐々に発光しはじめる。
112 ユキト 「死ねえ!!マーシェル!!」
113 マーシェルは両手を前に突き出すと推進エネルギーを手に集中させた。マーシェルの両手からキリキリと集束されたエネルギー波が放たれた。それはユキトの体を貫き、空中高く吹き上げた。ユキトの体は上空で発光すると爆発し吹き飛んだ。ライはその光景をただ呆然と見つめているばかりだった。

ライがマーシェルを連れて何事も無かったようにコテージハウスへ戻ってきた。

114 リンカ 「お帰りなさい、ライ。ユキトさんに会わなかった?」
115 ライ 「ユキト・・?・・誰にも会ってない。湖に彼女が居ただけだ。」
116 リンカ 「そう・・・。あなたお名前は?どこから来たの?」
117 ライ 「彼女は、言葉が喋れないらしいんだ。行くところも無いようだからここにいて貰おうよ。リンカ。」
118 リンカ 「ええ・・そうね・・・ライ。・・・彼女さえよかったら一緒にいてもらいましょうか。」
119 ライ 「よかったね。」
120 マーシェル 「ああ・・ああ・あああ・・。」(嬉しそうに)
121 その夜、ライが寝た後、リンカとマーシェルは外の丸太に腰をおろし空を眺めていた。空には満天の星が瞬いていた。
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