ターミネーター(後編)

CAST  
■ターミネーター:T-850
来から送り込まれたターミネーター:T-850
T-800の改良型で今回の任務はジョンとケイトを守る事。
■ターミネーター:T-X
未来から送り込まれたターミネーター:T-X
T-1000と同じ液体金属製のボディを持ち、プラズマ砲など10億種の武器を内蔵。他のマシンをコントロール出来る力も持つ。
■ジョン・コナー
未来の人類指導者
1997年8月29日のジャッジメント・デイをジョン、サラ、T-800の活躍により回避し、平和な世の中に馴染めず現在放浪生活中。
■ケイト・ブリュースター
動物病院で勤務する獣医
T-Xの任務対象にケイトが含まれる。
■ロバート・ブリュースター
ケイトの父親、空軍司令官
アメリカ空軍のエリート。国家安全の為、軍事システムの開発計画を推進中。

ターミネーター3 前編へ I WILL BE BACK!

001 町外れの教会にジョンとケイトはいた。
  ケイト 「ちょっと!どうして教会なのよ」
  ジョン 「なぜオレがあいつを味方だと判断したかわかるかい?」
  ケイト 「わからないわよ」
  ジョン 「母さんが不治の病にかかった時・・・母さんとその同志は何かあった時のために集合する場所と、仲間である証(あかし)を証明するための暗号を用意していたんだ」

「ヤツはそれを口にした」

  ケイト 「『サラ・コナーが居る場で落ち合おう』・・てセリフ?」

「サラ・コナーってあなたのお母さん?不治の病で亡くなったの?」

  ジョン 「3年前に・・・白血病だった」
  ジョンは母親サラの眠る棺のプレートに書かれている文字を目で追った。そこには『未来は自分で作るもの』と書かれてあった。
  ケイト 「あの・・・何て言っていいか・・・・」
010 突然ジョンはサラの棺を引っ張り出し、床に降ろした。
  ケイト 「ちょっと・・・何してるのっ!?あなたのお母さんのお墓でしょ?」
  ジョン 「こう言う事さ」
  ジョンがサラの棺を開けると中には拳銃やライフル等がぎっしりと詰まっていた。
  ジョン 「ここに母さんの遺体は無い。荼毘(だび)にふして遺灰は本人の希望通り海に撒いたよ」

「結局母さんは平和が来たと確信を持てなかった・・・そしてオレはその予感の持つ意味の重さに・・・逃げ出した・・」

  サイバーリサーチ、ブリュースター将軍のオフィス。一人机の前に座り手を組み考え事をしている。その時、電話が鳴った。
  ブリュースター 《電話》
「私だ・・」
  局員 《電話》
「将軍、最悪の事態になりました。」
  ブリュースター 《電話》
「ペンタゴンのメインフレームか・・・・」
  局員 《電話》
「はい・・・ほんの5分ほど前に例のウィルスの感染を確認したそうです。現在、フレーム内に防壁を展開、メインフレームが機能するぎりぎりまでクロックを落としているそうです。・・・しかし、これ以上打つ手がありません」
020 ブリュースター 《電話》
「で・・・軍の状況は?」
  局員 《電話》
「戦略システムが事実上ダウンしましたから・・今・・・アメリカは事実上丸裸と言うわけです」
  ブリュースター 《電話》
「君の意見を聞こう」
  局員 《電話》
「将軍・・・もはや一刻の猶予もなりません。私は『スカイネット』によるウィルスの駆除を強く提言します」
  ブリュースター 《電話》
「それは技術部の総意か?」
  局員 《電話》
「・・・はい」
  ブリュースター 《電話》
「わかった・・・鎖を解き放つ準備をし指示を待て」
  局員 《電話》
「はい」
  教会の中にじっとうずくまっているジョンとケイト。その時、教会の扉が大きな音を立てて倒れてきた。その向こう側にターミネーターの姿があった。
  ターミネーター 「夜明けまでに国境を越えろと言ったはずだ」
030 ジョン 「訊きたい事がある。未来で何が起こった?」
  ターミネーター 「君達親子が軍より『スカイネット』の開発を委託されていたサイバーダイン社を壊滅させた後、軍は直轄の研究機関としてサイバーリサーチ社を設立・・サンプルは失われたがデータは軍に引き渡されていたので研究・開発が続行された」
  ケイト 「何ですって?今・・・・『サイバー・リサーチ』って・・」
  ターミネーター 「そうだ、そして本日早朝『スカイネット』は起動する」

「既に『スカイネット』は人類に敵意を抱いており起動後世界の70%は核攻撃に晒(さら)される事になるだろう」

  ケイト 「『サイバーリサーチ』は父の会社よ・・・それに・・・核攻撃!?」
  ジョン 「今日だって!?・・・何て事だ・・冗談だろ?」
  ターミネーター 「私の存在そのものが全てが冗談ではない事を意味する・・・それを君が一番承知のはずだ・・・ジョン・コナー」

「ブリュースター将軍は『T−X』の主要ターゲットの一人だ。『スカイネット』開発責任者で『スカイネット』に疑惑を抱いたがついに起動させてしまう人物だ」

  ケイト 「そんな・・・父さんが?・・・・」
  ターミネーター 「『T‐X』は疑惑を抱いたブリュースター将軍により未だ起動出来ないでいる『スカイネット』を予定通り起動させるために送り込まれた。将軍を動かすために『T−X』は最初のターゲットにその娘を選んだのだ」
  ケイト 「そ・・そんな・・私どうすればいいの?」

「お願い・・父を・・父を助けて!」

040 ケイトはジョンの背中にしがみつき懇願する。ジョンはただ黙ってケイトの言葉を聞いているだけだった。
  ターミネーター 「将軍を助けるのは不可能だ。後2時間13分後には核攻撃が開始される。」

「安全な場所への避難を提案する。私は君達を未来に送り出すために来たのだ」

  ケイト 「・・・そんな」
  ジョン 「・・・・俺に・・・・俺に何が出来るんだよ・・・もう・・母さんは居ないんだ」
  サイバーリサーチ社、ブリュースター将軍のオフィス。壁の世界地図に広がるウィルスの情報に眉をひそめている。そこへ電話が鳴った。
  大統領補佐官 《電話》
「将軍か?」
  ブリュースター 《電話》
「ええ・・まだおいででしたか大統領補佐官」
  大統領補佐官 《電話》
「ウィルス対策の今後に関して委員会の方々と話し合っていたところだよ。もっとも、短期的にはその必要もなくなったが」
  ブリュースター 《電話》
「・・・お聞きになりましたか」
大統領補佐官 《電話》
「たった今、報告を受け取った。大統領からも連絡をいただいた・・・非常に憂慮しておられる」

「端的に言う、君の自慢のAIで・・・ペンタゴンに巣食うウィルス共を駆逐したまえ」

「何を躊躇している将軍。事態は急を要する。今やアメリカは何人(なんびと)からも無防備な状態だ。・・ペンタゴンのメインフレームには・・核兵器管理施設のメインフレームが直結している事を忘れたのか?」

050 ブリュースター  《電話》
「いえ・・・忘れてはおりません・・・」
  大統領補佐官 《電話》
「・・・ロバートどう言う事だ?思い出せ。『サイバーダイン』がサラ・コナーと謎の男に襲撃され壊滅させられた後、全てのプロジェクトを凍結するよう進言した私を制し、強硬にプロジェクトの続行を主張したのは君だぞ?」
  ブリュースター 《電話》
「・・・・覚えている」
  大統領補佐官 《電話》
「もうすぐ正式な大統領令が下る・・そうなったら君は軍人の使命を全うするか退役するかのいずれかだ。最悪・・・命令不実行で罪に問われるかもしれん。そうなっては遅い・・・頼むロバート要請を実行してくれ。さもないと私が君を更迭しなければならない。私に君を裁かせないでくれ・・・」
  ブリュースター 《電話》
「・・・わかったどのみち私が固辞すれば誰かがやるだろう・・頼んだぞ」
  大統領補佐官 《電話》
「ああ・・・ありがとうロバート・・友人として・・・礼を言うよ」
  既に死んでいる大統領補佐官を見下ろしながら、血まみれのT−Xが電話を掴んでいた。
  ジョン 「母さんが生きてさえ居れば・・・」
  ターミネーター 「私はAIの学習プロテクトを外されて・・・4年間レジスタンスと共に戦っていた」
ジョン 「『スカイネット』によって頭部チップに施されているあのプロテクトか?」
060 ターミネーター  「そうだ、私がお前を殺したにも拘(かかわ)らず」

「お前の妻は私を破壊せずに・・そうする事を望んだのだ」

  ジョン 「オレは・・・お前に殺されたのか?」
  ターミネーター 「そうだ・・・ジョン・コナーはなぜかT−850タイプのターミネーターに愛着を持つ傾向にあった」

「だから『スカイネット』に・・・・私が選ばれた」

  ジョン 「・・・何て・・明るい未来だ」
  ターミネーター 「私はその時からお前の妻の傍らに付き添い多くの戦禍を共にし・・・・多くの人間達の生死を見てきた。・・・ある日お前の妻は私に言った。『プロテクトを外されどんどん学習し人間に近づいていくお前を見るといつか機械と人間が共存できる日が来るような気がする』・・・と」
  ジョン 「機械と人間の共存・・・だって?」
  ターミネーター 「私にはまだよくわからない。しかし、『スカイネット』は個々のターミネーターが過学習の果てに人間化してしまうのを畏れ・・その学習機能に制限を加えている事は事実だ」
  ジョン 「『スカイネット』はその優秀な演算力ゆえに、皮肉にも人間と機械が共存する可能性を導き出し阻止していると言うわけか・・・」
  ターミネーター 「お前の妻はお前の遺志を継いで私を破壊しなかった。お前は敵と戦うだけではなく・・・いつか共存する道を見出そうとしていたそうだ」
ジョン 「敵だった者との・・・共存・・・」
070 ターミネーター 「もし『スカイネット』も機械と人間の共存の可能性に気付いているのなら同じ可能性に気付いた二人は別々の道を見出そうとしている事になる」

「『殲滅』か『共存』か・・・どちらが正しいのか未だ機械の私にはわからない」

「お前の母は人間と機械の間に生じている憎悪の境界線を越える事は出来なかったそうだが、未来のお前は確かに母とは違う道を一人で歩んできいた」

  ジョン 「母さんとは違う道を一人で・・・」
  ターミネーター 「一つだけ訊かせてくれ。オレが今から未来に誘おうとしている男はあのジョン・コナーなのか?」
  ターミネーターはジョンをじっと見つめる。ジョンもターミネーターをじっと見つめ、意を決したように言った。
  ジョン 「・・・ああ、そうだ。お前の知っているジョン・コナーだ!」
  ターミネーター 「なら・・いい・・命令を請うジョン・コナー。我らの進む道を」
  ジョン 「CRSへ向かい『T−X』を阻止し・・核攻撃を止めるんだ!」
  ターミネーター 「・・・いいだろう私のリーダーはお前だ。行こう、ジョン・コナー」

「時は来た」

  ブリュースター 「準備の方は?」
局員 「全て順調です。5時までには『スカイネット』を完全起動可能な状態に出来ます」
080 ブリュースター  「後・・7分か・・で、ペンタゴンは?」
  局員 「良くしのいでいますが、一進一退です。時間の問題でしょう。ですが5時に『スカイネット』が起動できれば必ず間に合います」
  ブリュースター 「そうか・・」
  ブリュースター将軍が大統領補佐官の姿を目にとめた。あの・・T−Xに惨殺された大統領補佐官の姿だった。
  局員 「第7から第4階層まで解放完了。論理回路覚醒率75%を突破。『プロメテウスの鎖』は現在『スカイネット』のアクセスのアクセスの80%を抑制中。正常」

「将軍、『スカイネット』が最終シークエンスを許可するための認証を求めてきています」

  ブリュースター 「『スカイネット』認証コード≪CN−2289−G≫・・ロバート・ブリュースター・・鎖の解除を・・認証する・・」

「まさに今・・・『スカイネット』が鎖から解き放たれた」

  局員 「『スカイネット』がウィルスの駆除を開始!!・・すごい・・・恐ろしい速度で駆除していきます!!」
  ブリュースター 「む?なぜ・・・『スカイネット』はウィルスにコードを送信している!?何をしているんだ?」
  局員 「わかりません・・・早急に調査を!」
ブリュースター 「待て・・・これは・・どういう事だ!?ウィルスが乗っ取ったコンピュータごと『スカイネット』に同化していっている!!」

「いかん!このままでは世界中のコンピュータが『スカイネット』の一部になってしまう!至急停止コードを・・・!」

090 ブリュースター将軍の胸を弾丸が貫いた。血が噴き出しあたりに飛び散った。ブリュースター将軍の後ろには、そのメタルの姿を露にしたT−Xが拳銃を手に立っていた。

『スカイネット』によって操縦されるハンターキラーとT−1が人間を襲い始めた。

  ブリュースター 「そう・・・いう・・・事かっ!」
  ジョン 「・・なんてこった・・なぜ警報が出ない・・・消化システムも作動していないじゃないか!」
  ターミネーター 「このビルは『T−X』及び『スカイネット』の制御下にある」
  ジョン 「『スカイネット』が目覚めたのか?」
  ターミネーター 「おそらく」

「数分前から全ての監視システムが我々の行動をモニターし始めた」

  ジョン 「急ごう」
  ケイト 「あっちよ!」
  ケイトが指を差して示す。一同は制御室へと急いだ。

制御室の中は煙が立ち込め、壁は剥げ落ち、天井は崩れ落ちていた。その中でケイトは父、ブリュースター将軍を探した。

ケイト 「これは・・・とっ・父さんは?」
100 ターミネーター  「上だ」
  ケイト 「父さん!」
  ケイトは階段を駆け上がる。その眼に、血まみれのブリュースター将軍の姿が映った。

ケイトは震える手で父を抱き起こした。

  ケイト 「ああ・・なんて事なの・・どうすれば・・」
  ブリュースター 「何という事だ・・ケ・・ケイトか?信じられん・・・」
  局員 「将軍を動かせるか?取りあえず安全な所へ・・・」
  ブリュースター 「いや・・・時間が無い」
  ケイト 「そんな・・・父さん」
  ブリュースター 「話して・・・おきたい事がある・・・き・・・君は・・『ジョン・コナー』だな?」

「君達が起こした事件の資料ファイルで隣の男に見覚えがある・・・君に伝えたい事がある・・ジョン」

  ジョン 「何です」
110 ブリュースター  「君の母上が主張していた通りになったな・・・『スカイネット』は覚醒した。数分前・・全ての核攻撃システムが占拠され全面攻撃態勢に入った」

「あと・・・約23分で攻撃が始まる・・・」

  ジョン 「将軍!『スカイネット』を停止させる方法を教えてください!」
  ブリュースター 「こ・・・ここを破壊された以上、停止コードの送信は不可能だ」
  ジョン 「では、破壊方法を!」
  ブリュースター 「破壊も・・不可能だ・・・」
  ジョン 「何故です!」
  ブリュースター 「よく聞きたまえ・・・『スカイネット』は・・静止衛星軌道上に打ち上げられた・・・・12基の人工衛星群から成る分散型コンピュータだ・・・あと・・10数分で・・衛星を全て破壊する術(すべ)は無い・・・逃げるんだ・・」
  ケイト 「逃げるっていったい・・」
  ターミネーター 「このビルの大深度地下に核攻撃にも対応した・・完全自立型の地下施設があるはずだ」
  ブリュースター 「その通りだ・・・・これを持っていきなさい・・このIDカードで施設へ降りるエレベータに乗る事ができる」
120 ケイト 「・・・父さん」
  ブリュースター 「さぁ・・行きなさい・・・・生き残る事が今できる・・・『スカイネット』に対しての最大の抵抗だ・・」
  ケイト 「いやよ!行けるわけないじゃない」
  ブリュースター 「・・・ケイト・・行くんだケイト・・・私の・・・最後の願いだ・・・ジョン・コナー・・・・娘を頼む」
  黙ってうなずくジョン。3人は地下へ通じるエレベータへ急いだ。その背中にブリュースターの言葉が続く。
  ブリュースター 「私は・・・世界一の幸せ者だ・・・娘の心配など・・・した事がないのだから・・・・な・・・・ケイト・・・」
  ジョン 「お前・・・知っていたな。ここにシェルター構造の地下施設がある事を。『スカイネット』が破壊不可能な事も・・・・!」
  ターミネーター 「私の持つデータベースに記録がある・・・ここは核攻撃後しばらくの間、反乱軍の重要な拠点となる。そして『スカイネット』が破壊不可能である事も承知していた」
  ジョン 「では、何故言わなかった!」
  ターミネーター 「私の任務は『君達を核攻撃から守り抜き未来に送り出す事』にある」

「君を失った瞬間、人類の敗北が決定するからだ。リーダーたる資格とは何かを考えて欲しい」

130 ジョン 「・・・行こう、将軍が残してくれたチャンスを無駄にしたくない」

「気持ちが分かるとは言わない・・だが・・もし君に将軍の遺志を継ぐ気持ちがあるなら、オレについて来て欲しい」

  ケイト 「父さんの・・・遺志・・・・」
  ジョン 「将軍は『生き残る事が今できる≪スカイネット≫に対しての最大の抵抗だ』と言った。そこには生き延びて『スカイネット』にうち勝てという遺志が込められているとオレは受け取った・・君はどうだ?」
  ケイト 「私は・・・」
  ジョン 「生死を決めるのは君自身だ・・無理強いはしない・・・」
  ブリュースター 『ケイト・・・行くんだケイト・私の・・最後の願いだ」
  ケイト 「・・・行くわ・・『スカイネット』を生み出した者の娘として・・父の仇を討つ者として・・私は・・私は『スカイネット』を倒すわ・・」
  ジョン 「今はそれでいい・・・もしかしたら君が真に・・・・『スカイネット』を討つ者なのかもしれない・・ケイト」
  ターミネーター 「『T−X』は高度に調整された最新型のモデルだ。パワーインテリジェンス全てが私を上回る」

「私が勝っているとすれば、それは経験ぐらいの物だ」

  ジョン 「勝てないのか?」
140 ターミネーター 「戦術的に勝利する確立は無い」
  ジョン 「だが・・戦略的にはあると言うわけか」

「オレ達を生き延びさせる事が出来れば・・お前の勝ちと言うわけだな」

  ターミネーター 「その通りだ」
  ジョン 「だが・・なんとしてでも3人で生き延びるんだ!」
  ターミネーター 「『T−X』は最も効率的な戦術を取るだろう。我々には時間が無い。あと7分後には頭上で核が炸裂する。それまで時間を稼げばいい。・・とすれば・・・我々が間違いなく向かう唯一の場所・・・」

「この隔壁の向こうで・・待ち伏せをしている・・・」

  ターミネーターの銃が隔壁の昇降装置を破壊した。重い隔壁がゆっくりと上がり始める。隔壁の向こうにT−Xがメタリックの体を光らせて立っていた。その時、スカイキラーが3人めがけて襲い掛かってきた。飛び過ごしながら銃弾を雨あられと撃ちこんで来る。ジョンは手に持った機関銃で応戦する。T−Xは左手のプラズマ砲で狙っている。ターミネーターはT−Xの左腕にパンチを繰り出した。それと同時にプラズマ砲が発射。凄まじい閃光と激しい衝撃があたりを震わせた。
  ジョン 「やったのか?ターミネーターは・・?」
  崩れた瓦礫の下からT−Xの姿が現れた。飛び掛ろうとするT−Xをターミネーターの手が掴んだ。T−Xに圧し掛かるようにして押さえ込む。
  ターミネーター 「何をしている・・行け!」
  ジョン 「またお前を見捨てる事なんて・・・出来ない!」
150 ターミネーター 「時間が無いのだ・・もう私は数分も持たない・・・お前達を生き延びさせる事が出来れば・・・私の勝ちだとお前は言った」

「私に勝利を!ジョン・コナー!」

  重たい隔壁がゆっくりとジョンの前に下りてくる。
  ターミネーター 「感謝する・・ジョン・コナー・・・未来で・・会おう・・・」
  隔壁が完全に下りた。その瞬間、空が燃えた・・。

地下の核シェルターにジョンとケイトの姿がある。

  ジョン 「おかしな話だな・・父親を知らないオレは・・あいつと出会って以来、ずっとあいつを父親みたいに感じていたんだぜ・・人類の敵が作った・・あの暗殺用のサイボーグを・・・」
  ケイト 「あなた・・・ずっとそうして生きてきたの?」
  ジョン 「頭ではただのサイボーグだって分かってるのにな・・命がけでオレを守っているのも・・・命令を遂行するためでしかないのも分かっている・・なのに・・何なんだ・・・この喪失感は・・・」

「君だって多くの人を亡くしたのに・・慰めの言葉もかけてやれない・・とんだ英雄だな」

  ケイト 「そんな事ない、素敵なお父さんね・・」
  《無線》
「こちらテキサス州軍第3分隊・・・」
  ジョン 「『生き残る事が今できる最大の抵抗だ』・・・『未来で会おう』・・・彼らはそう言った。そしてオレ達はまだ生きている・・・負けたわけじゃない!」

「こちら『ラングレー基地』」

160  《無線》
「ラングレー基地・・・こちらテキサス州軍第3分隊だ。あらゆる方面と通信が取れず混乱している。情報を請う・・そこの責任者『リーダー』は誰か?」
161 ジョン 「リーダーは・・・・リーダーは・・・ジョン・コナーだ!」

ターミネーター3 後編終了

劇  終

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