冬のソナタ第17話《障害》
ヴィレッジブックス 冬のソナタ完全版4 第17話
キム・ウニ/ユン・ウンギョン 根本理恵=訳

声劇用にアレンジしております。ご了承ください。

カン・ジュンサン
チョン・ユジン
キム・サンヒョク
ジヌ(サンヒョクの父)

キム次長(ミニョンの部下であり先輩)

ミヒ(ジュンサンの母)

ユジンの母

チェリン・チンスク・ヨングク(ユジンの同級生)

17話あらすじ

ジュンサンはユジンにプロポーズし、結婚をはしゃぐ二人だったが、何となく不安が晴れない。二人は結婚の許しをもらうためユジンの母と会うが、結婚を反対される。ジュンサンの母ミヒとユジンの父ヒョンスが昔婚約までした仲だから誰にも祝福されないと、ユジンは母から言い聞かされる。サンヒョクはジュンサンに対して友人として接する事ができるようになり、二人の結婚を祝福する。だが、父ジヌが二人の結婚を反対していることを聞き、サンヒョクが自分のせいかと詰め寄ると、ジヌから真実を聞かされる。

  OP(1:03) 最初(はじめ)から今まで
001 バスで戻ってくる車中。ユジンはジュンサンの肩に頭をもたせかけて寝ている。ジュンサンはいとおしげにユジンの髪をなでている。ジュンサンの頭に突然おぼろげな映像が浮かび上がってきた。

講義をしている誰かをこっそり見ていた記憶。サンヒョクを憎しみの目で見ていたジュンサン。ユジンの家から走り出してくるジュンサン。ユジンの家にあった写真と自分が持っている写真を合わせてみた記憶。交通事故の瞬間の記憶。ジヌに会いに行った記憶。不安な記憶にジュンサンの表情はこわばった。

ジュンサンの部屋。夜、ジュンサンがはっと飛び起きる。悪夢を見たように息遣いが荒かった。

マルシアンの前、ユジンが走って車庫に入ると、ジュンサンが車の前で待っていた。

  ジュンサン (笑って)また遅刻だな」
  ユジン (息をはずませながら)キム次長とジョンア先輩は?」
  ジュンサン 「先に出発したよ」
  ユジン (ジュンサンの顔をのぞきこんで)目が充血してるわ。眠れなかったの?」
  ジュンサン 「いや、よく寝たよ」
  ユジンは疑いの目でジュンサンを見た。
  ジュンサン 「本当だってば。君の夢を見ながらぐっすり眠ったよ。さあ、行こう」
  ユジン 「ええ」
010 スキー場の建物のロビー。キム次長とジョンアが建物の中に入ってきた。
  ジョンア 「うわ、すごい風」
  キム次長 「あの二人、まだ来てませんよね」
  ジョンア 「ええ」
  キム次長 「ひょっとして、また二人どこかにフケちゃったんじゃないのかな」
  ジョンア 「またそんなこと言って。ユジンもイ・ミニョン理事も、そこまで分別がないわけじゃないから、そんなことしないと思いますよ」
  キム次長 「そうですよね。まあでも、こういう時はどっかにフケてくれてもいいんだけど。それでこそ、ヒャンダンとパンジャの出番ってもんじゃありませんか。そうでしょ?」
  ジョンア 「なんですって?まだそんなこと言ってるんですか?ほんっと、さえないわ。やあねえ(と言いながら先に行ってしまう)
  キム次長 「あの女、鏡も見たことないのか?何で俺のほうがさえないんだよ」
  スキー場、午後。ユジンとジュンサンが手をつないで雪道を歩いている。
020 ユジン 「やっぱりいいわね」
  ジュンサン 「いい?」

(笑って)ユジン、覚えてる?ここでずいぶんケンカしたよね。ここに来ることはもう二度とないと思ってたよ」

  ユジン 「私はここがとっても恋しかった。雪も、冬の風も、イ・ミニョンだったカン・ジュンサンも。ここは今でも冬のままね」
  ジュンサン 「冬が過ぎてしまうのはいや?」
  ユジン 「いやだったわ、10年前、あなたが死んだと思った時も、あなたがいなくなって、すぐに春が来たから。そんなふうに、今年も冬が過ぎたら何もかも消えてしまうんじゃないかと思って・・・・」
  ジュンサン 「そんなことない。消えたりしないよ」
ユジン 「約束してくれる?」
ジュンサン 「約束する。僕たち、二度と離れないようにしよう」
喫茶店。ユジンの母とジヌが向かい合って座っている。
ユジンの母 (とっても恐縮しつつ)申し訳ございません、サンヒョクのお父さま。合わせる顔がないことはわかっているのですが・・・こうして恥をしのんでお訪ねしました」
030 ジヌ 「何をおっしゃるんですか。子どもたちの結婚のことがああなったのは、すべて運命ですよ。私は今でもユジンを娘のように思っています。そう気になさらないでください。ところで、どんなご用件でしょうか?」

「おっしゃってください」

ユジンの母 「カン・ミヒさんが、私に会いに来たんです」
ジヌ 「!どうしてミヒがユジンのお母さまに?」
ユジンの母 「サンヒョクから詳しいことをお聞きになっていないんですね。申し訳ありません。うちのユジンとカン・ミヒさんの息子さんが・・・お付き合いするような仲になったんです」
ジヌ 「!!ジュンサンとですか?」
ユジンの母 「お父さま・・・・?」
ジヌ 「つまり、その・・・ジュンサンとユジンが付き合う仲とは・・・お互いに好きだということですか?」
ユジンの母 (当惑して)申し訳ありません・・・」
ジヌ 「それで、ミヒはなんと言ってましたか?なんと言ってたんですか?」
ユジンの母 「二人を離してほしい・・・反対してほしいと。ユジンと自分の息子は、決して結婚する事は出来ないと」
040 チュンチョン(春川)行きのバスの中。バスに乗っているユジンの母が不安な表情で揺られている。その脳裡にジヌの言葉がよぎっていた。
ジヌ(声) 『私もそう思います。ジュンサンとユジンは、絶対に結婚してはいけません」
ジヌの研究室。ジヌがカン・ミヒに電話をかけている。
ジヌ 「カン・ミヒさんは今度いつ帰国されますか?いいえ、直接お会いしなければならないんです。いつ帰国されるんですか?・・・・わかりました」
電話を切るジヌ。サンヒョクの写真が入っている写真立ての裏から、ヒョンスとミヒと自分の三人が写っている写真を取り出し、じっとその写真を見つめた。
ジュンサン(声) 『僕の父は亡くなったそうです』
ユジンの母(声) 『ユジンと自分の息子は、決して結婚する事はできないと』
雪がまばゆく輝いているスキー場。ユジンとジュンサンの二人が、幸せそうに寄り添いながら、ゴンドラに乗って上がっていく。

山頂で二人は石を積んで願い事をする。

ジュンサン 「何を祈ったの?」
ユジン 「このままずっと、あなたと一緒にいられますように、って。あなたは?」
050 ジュンサン 「僕もだよ」
二人は見詰め合って笑った。ユジンが寒さに手をこすり合わせると、ジュンサンがその手を両手でしっかりと包んだ。

二人は雪が積もった森を、手をつないで楽しげに散策する。お互いに雪をかけあいながら、ひとしきり楽しい時間を過ごした。

完成したカフェの一角。ユジンが図面を見ながら確認している。照明を見上げるが、まだ接続されていないようだった。

ユジン 「ジュンサン、照明はいつになるって?」
答えがないので、ユジンは周囲を見回したが、ジュンサンの姿は見えなかった。その時、ピアノの曲が流れてきた。ユジンが向こうをのぞきこむと、ピアノを弾いているジュンサンが見えた。ジュンサンは、ふっと笑うと、そしらぬ顔で言った。
ジュンサン 「新婦、入場」
結婚行進曲を弾き始めるジュンサン。ユジンは、それを聴いて微笑むと、あたかも花嫁入場のように、ポーズをとってジュンサンの方へ歩いていった。ジュンサンは嬉しそうにピアノを弾いている。ピアノの所までくると、ユジンは招待客に向かってするように、優雅に頭を下げた。ジュンサンがピアノを弾く手を止めた。
ユジン 「どうしてやめちゃうの?最後までやってみようと思ってたのに」
ジュンサン 「今日、チュンチョン(春川)に行こうか」
ユジン 「え?」
ジュンサン 「チュンチョン(春川)に行って、お母さんにお会いしよう。お母さんにお会いして、結婚を許してもらおう。ね?」
060 スキー場のオフィス。キム次長が入ってくる。中でジュンサンが荷物を整理していた。
キム次長 (中に入り、外の職員に)わかったよ、とりあえず検討してみるから。(ジュンサンに)おい、おまえ、出かけるのか?」
ジュンサン 「はい。いいところに来てくれましたね。先輩、残った仕事は片付けといてください。僕は今日、チュンチョン(春川)に行くんです」
キム次長 「チュンチョン(春川)?どうして」
ジュンサン 「ユジンのお母さんに会いに」
キム次長 「あとは結婚を残すのみってことか」
ジュンサン (笑って)僕たちが戻ってくるまでに、先輩にお願いしたい事があるんだけど・・・聞いてもらえますか?」
カフェに作業員たちとキム次長が入ってくる。
キム次長 「おやおや、ここが問題だな。ええと、ちょっとお願いがあるんですけどね、今日中にこっちに照明をずらっとつけて、それから、あの配線も今日中にきちんとまとめてほしいんですよ」
ユジンの実家の前。夕方、ユジンとジュンサンが車から降りて家の前に立った。
070 ジュンサン 「なんだか緊張するよ」
ユジン 「大丈夫。うちのお母さんはきっと喜んでくれると思うわ。私がこんなに好きな人なんだから」
二人は笑いながら手を取り合って中に入っていった。

実家の居間ではユジンの母が、そっぽを向いて複雑な表情をしている。ジュンサンとユジンは不安で落ち着かなかった。

ジュンサン (誠実に切り出す)お母さん。僕はユジンと結婚したいと思っています。お許しいただけますか」
ユジン 「お母さん、許してね」
ジュンサン 「誰よりもユジンを幸せにする自信があります。お許しをください」
ユジンの母 「こんなに急に・・・・こういうことには慣れてないのよ」
ユジンの母は相変わらず二人のほうは見ようとせず答えた。ジュンサンは当惑し、ユジンは意外な反応にびっくりした。
ユジン 「お母さん!」
ユジンの母 「今日はもう帰ってください」
080 ジュンサン 「僕のことがお気に召さないのかもしれません。ユジンにつらい思いをさせたんですから。お母さんがお気に召さないのも当然です。でも・・・・努力します。努力するつもりです。ですから・・・・」
ユジンの母 「そんなことじゃありません。そんな・・・・そんな簡単なことじゃないんです。ユジンに全部話しますから、帰ってください」
ユジン 「お母さん!」
ユジンの母は席を立って部屋に入ってしまった。どうしたらいいのかわからずに、ユジンはジュンサンをせつない表情でみた。ジュンサンはむなしく笑ってみせた。

ユジンの実家の前。二人が出てくる。

ユジン 「ジュンサン」
ジュンサン 「ユジン」
ユジン 「大丈夫?」
ジュンサン (笑って)大丈夫。僕は大丈夫だよ」
ジュンサンがユジンを抱きしめた。
ユジン (抱かれたままで)ジュンサン、どうして嘘つくの?こんなに心臓がどきどきしてるのに。(体を離して)大丈夫なわけないでしょ?」
090 ジュンサンは精一杯の笑顔を浮かべてユジンを見た。
ユジン 「心配しないで。どういうことかわからないけど、私が説得するわ。お母さん、サンヒョクのこともあるから結婚しろって言えなかったんだと思う。だから心配しないで、ね?」
ジュンサン 「ユジン、どうして嘘つくの?」

「こんなに震えてるのに。大丈夫じゃないんだろ?」

見詰め合って微笑む二人。だが、不安は隠せなかった。ジュンサンはまたユジンを抱きしめた。
ユジン 「どうしてこんなに・・・・不安なのかしら」
ジュンサン 「すべてうまくいくよ」
ユジンの実家。ユジンとユジンの母が座っている。テーブルに目を落としている母に向かってユジンが訴えかける。
ユジン 「お母さん、私はあの人じゃなきゃだめなの」

「ジュンサン以外、考えられない。私・・・・ジュンサンじゃなきゃだめなの、お母さん」

ユジンの母 (ぱっとユジンのほうに顔をあげて)よりによって、なんであの人なの?いったい、あとどれほど苦しんだら気が済むの?」
ユジン 「許して、お母さん。私、あの人となら、どんなことだってつらくも怖くもないわ。あの人となら、どこだって行けるわ」
100 ユジンの母 「・・・・・お母さんがだめって言っても?」
ユジン 「お母さん・・・・」
ユジンの母 (つらそうに涙を流しながら)私が許したとしても・・・カン・ミヒさん、あの人のお母さんは絶対に許してくれないわ。許せないことなのよ。あなたたちの結婚は、絶対にだめなの」
ユジン 「!?それはどういう意味?」
ユジンの母は、何かを取り出してユジンに渡した。それは、カン・ミヒ、ヒョンス、ジヌが3人で写っている昔の写真だった。ユジンは驚いて写真を見つめた。

カフェ。キム次長が照明の設置をしている。そこへジュンサンが入ってきた。

キム次長 「お?」
ジュンサン 「僕だけ先に来ました」
キム次長 「ユジンさんは?」
ジュンサン 「明日来るそうです。うまくいってますか?明日までには終わりそうですか?」
キム次長 「いやあ、わからないな。まあ、照明がだめならホタルの光でも用意してやるよ。(笑って)おい、それはそうと、おまえたちが結婚できたら、俺に服を一着仕立ててくれるくらいじゃ済まないからな」
110 ジョンア (入ってきながら)ええ、もちろんですよ。私も服一着くらいじゃ済みませんよ。そうだ、これ・・・(何かの服が入った袋を見せて)選んでおいた服、取ってきましたよ。この私をソウルまで使い走りさせてもいいのかしら」
ジュンサン (笑って)ありがとうございます。このご恩は決して忘れません」
キム次長 「ところで、あの件はうまくいったのか?」
ジョンア 「そうだわ、ユジンのお母さん、なんておっしゃってました?」
ジュンサン (表情が硬くなるが、笑顔で)きっとうまくいきますよ」
再びユジンの実家。
ユジンの母 「こんな話は、二度としないものだと思ってたけど・・・。あなたのお父さんとサンヒョクのお父さん、そしてカン・ミヒさん。この三人は、子どもの頃からとても仲がよかったそうよ。大人になってから、あなたのお父さんとカン・ミヒさんは婚約したの」
ユジン 「こ、婚約ですって?」
ユジンの母 「私があなたのお父さんと知り合って結婚するまで、二人はずっと友達の間柄で、婚約者でもあったの」

「カン・ミヒさんの執着が、私とお父さんをどれほど苦しめたか、あなたにはわからないと思うわ。結局、カン・ミヒさんの自殺騒ぎで、私たちとの縁は切れてしまったんだけど」

ユジン 「自殺・・・騒ぎ?」
120 ユジンの母 「そうよ・・・入水(じゅすい)して死のうとしたカン・ミヒさんを、サンヒョクのお父さんが助けて騒ぎはおさまったの。私はカン・ミヒさんにとても大きな罪を犯してしまったわ・・・・。だから、カン・ミヒさんがだめと言ったら、私は何も言えない立場なの」
ユジン 「お、お母さん」
ユジンの母 「自殺を決意するほど追いつめられていたんだわ。私やあなたのお父さんを一生恨んでやるって言い残して、故郷を捨てた人なの。そんなカン・ミヒさんがあなたを嫁にして受け入れられると思う?(首を振って)だめよ・・・・絶対にだめ。この結婚は絶対に許されないのよ、ユジン」
スキー場のコーヒーショップ。キム次長とジョンアが座っていると、ユジンが駆け込んできた。
キム次長 「ユジンさん!」
ジョンア 「ユジン、今、戻ったの?」
ユジン (キム次長に)こんばんは。先輩、ジュンサンを見なかった?」
ジョンア 「ああ、理事?たぶんカフェじゃないかしら。行ってみなさいよ」
ユジン 「そう?ありがとう。(キム次長に)ではまた後で」
キム次長 「ええ」
130 ユジンが出ていき、キム次長とジョンアはしめしめとばかりに顔を見合わせた。
  キム次長 「任務終了」
  ジョンア 「うらやましいわ」
  カフェ。ユジンがドアを開けて入ってくるが、中は真っ暗で、ジュンサンはいないようだった。出ていこうとすると、ぱっと照明がついた。驚いてユジンが振り返ると、テーブルにディナーが用意されており、椅子には白いドレスがかかっていた。ユジンが近寄ると、ジュンサンが反対側からカフェに入ってきた。ジュンサンはユジンを見てにっこり笑った。

ユジンとジュンサンが向かい合って座り、食事をしている。

  ユジン 「おいしい。本当においしいわ。でも、どうしたの?
  ジュンサン 「二つ理由があるんだ。まずはプレゼント。このカフェ、君が作っただろ。だからここでの最初のディナーを君にプレゼントしたかったんだ」
  ユジン 「そうだったの?でもこのカフェ、私が一人で作ったんじゃないわ。あなたと一緒に作ったのよ。あなた、そうやって私に責任を全部押し付けるつもりなのね?」
  ジュンサン 「ああ、そのとおり」

「これから先、どんなことも一緒に作っていこう。一緒に見て一緒に考えて、一緒に感じながら、そんなふうに最後まで一緒に暮らそう。わかったね?」

  ユジン 「ええ・・・じゃあ、二番目の理由は何?この席を準備した二番目の理由・・・」
  ジュンサン 「うん・・・それは秘密」
140 スキー場の一角、二人はホテルに向かって歩いている。ユジンがポケットからコインを取り出した。
  ユジン 「昔、何かの映画を見たら、コインで結婚ができるかどうか占ってたの。コインの表が出たら結婚できて、裏が出たらできないのよ」
  ジュンサン 「それで?その映画ではどうなった?」
  ユジン 「結婚したわ。表が出たから」
  ジュンサン 「君も占ってみたい?」
  ユジン 「私は運が強いから・・・・間違いなく表が出るはずよ。見てて」
  ユジンがコインを投げ上げる。それをジュンサンが素早く横取りした。ジュンサンはその手を開かない。
  ジュンサン 「その映画、ちゃんと見なかったんだな」
  ジュンサンはポケットから一枚コインを取り出して、重ね合わせた。
  ジュンサン (コインを見せて)映画では・・・こんなふうに、どっちも表になるように別のコインを貼り合わせてただろ。バカだなあ、裏が出たら僕と結婚しないつもりだったのか?」
150 ユジン 「違うわ、そんなんじゃないわよ」
  ジュンサン 「お母さん、なんて?聞いてもいいのかな?」

「・・・・僕たちの結婚は認められないって?そうだったのか・・・。大丈夫だよ。そう言われるって予想してたじゃないか。一緒に説得してみよう。一緒に。ね?さっき僕が秘密だって言った二番目の理由は何か、話してあげようか。二人で一致団結して、反対を押し切っていこうってことだったんだ」

  ユジン 「あのね・・・・」

「私、お母さんから聞いたの」

  ジュンサン 「何を?」
  ユジン 「あなたのお母さん。少し前にチュンチョン(春川)にいらしゃったんだって」
  ジュンサン 「僕の母さんが?何の用で?」
  ユジン 「あのね・・・昔、私のお母さんがとてもうらやましく思ってた女性がいたの。美人で才能もある。そういう女性だったんだって。でも、その人が私のお父さんをとってもとっても愛してたから、お母さんはすごく苦しんだそうよ。その人が・・・・あなたのお母さんなの」
  ジュンサン 「なんだって?」
  ユジン 「私のお父さんとあなたのお母さんは昔・・・婚約したんだって」

「だから、あなたのお母さんと私のお母さんは、この結婚に反対してるの・・・」

「私たち、これからどうすればいいの?」

  ホテルの廊下を手をつないでユジンとジュンサンが歩いてくる。ユジンが部屋に入ろうとするとジュンサンが呼び止めた。
160 ジュンサン 「ユジン」

「きっとすべてうまくいくよ。僕がうまくいくようにしてみせる」

「僕たちに悪いことなんて起こるはずがない。だから・・・君は何も心配しないで。いいね?」

  ユジン (うるむ瞳で見上げて)うん、わかったわ」
162 ジュンサンは沈痛な面もちでユジンを見つめる。ユジンが無理に笑顔を作り、部屋に入ろうとすると、その腕をジュンサンがつかんだ。ユジンが振り返る。ジュンサンはユジンの頬に光る涙をそっと手でぬぐった。

そのままじっと自分をいとおしげに見るジュンサンに、ユジンがせつなげに笑って見せた。ジュンサンも微笑み返した。

ジュンサンは部屋に入るユジンをじっと見守っている。ドアを後ろ手に閉め、ユジンはその場にじっと立ち尽くしていた。ジュンサンも、ユジンの部屋の前から動く事ができず、いつまでも立ちつくしていた。

後編へ続く

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