冬のソナタ第17話《障害》
ヴィレッジブックス 冬のソナタ完全版4 第17話
キム・ウニ/ユン・ウンギョン 根本理恵=訳

声劇用にアレンジしております。ご了承ください。

カン・ジュンサン
チョン・ユジン
キム・サンヒョク
ジヌ(サンヒョクの父)

キム次長(ミニョンの部下であり先輩)

ミヒ(ジュンサンの母)

ユジンの母

チェリン・チンスク・ヨングク(ユジンの同級生)

17話あらすじ

ジュンサンはユジンにプロポーズし、結婚をはしゃぐ二人だったが、何となく不安が晴れない。二人は結婚の許しをもらうためユジンの母と会うが、結婚を反対される。ジュンサンの母ミヒとユジンの父ヒョンスが昔婚約までした仲だから誰にも祝福されないと、ユジンは母から言い聞かされる。サンヒョクはジュンサンに対して友人として接する事ができるようになり、二人の結婚を祝福する。だが、父ジヌが二人の結婚を反対していることを聞き、サンヒョクが自分のせいかと詰め寄ると、ジヌから真実を聞かされる。

  OP(1:03) 最初(はじめ)から今まで
001 動物病院。ヨングクとジンスクが猫をからかいながら、話をしている。
  《せりふ:ヨングク》
「それで、二人は本当に結婚することにしたのか?」
  ジンスク 「うん」
  《せりふ:ヨングク》
(複雑な思いで)そうか・・・あの二人、いつかは結婚するだろうと思ってたけど、実際に話を聞くと、ちょっと気が重くなるな。サンヒョクのことも引っかかるし」
  サンヒョク(声) 「おめでたいことなのに、なんで僕が引っかからなくちゃいけないんだ?」
  ジンスク (入ってくるサンヒョクを見て立ち上がり)サンヒョク」
  《せりふ:ヨングク》
(わけもなく腹を立てて)おいおまえ、入ってくる時には気配ぐらい立てろよ。こいつ、お化けじゃあるまいし」
  サンヒョク 「ユジンとジュンサンが結婚するって?」
  ジンスク 「ええ・・・・そういうことみたい。まだ日取りを決めたわけじゃないけど」
010 サンヒョク 「・・・当然だろ。日取りが決まったら僕に真っ先に報告してくれないとな。あの二人、本当によかった。よかったな」
  ヨングクとジンスクは、サンヒョクの様子をうかがいながら、申し訳ないような気持ちになっていた。

スキー場の駐車場。ジュンサンがユジンを誘って車に乗り込む。ユジンもそれにつづきながら、けげんそうにたずねた。

  ユジン 「いったいどこに行くの?」
  ジュンサン 「秘密」
  ユジン 「この頃、秘密が多いわね」
  写真館の前。二人が車から降りてくる。
  ジュンサン 「考えてみたら、君と二人で撮った写真が一枚もないと思って」
  ユジン 「そうね。あなたのいない10年間、一番悲しかったのは、あなたの写真が無いことだったの。でも、今日は何を記念にして撮るの?」
  ジュンサン 「今」
  ユジン 「今?」
020 ジュンサン 「ああ、今、いちばん幸せだから、その記念だよ」

「チョン・ユジンさん、どうぞ」

  ユジン 「はい。ジュンサンさんもお入りください」
  二人は笑いながら古い写真館の中に入っていった。

レンズの中に、逆さまになった二人の仲むつまじげなポーズが写っている。

  《せりふ:写真技師》
「わあ、お二人、いいポーズですね。女性の方、体を男性の方のほうに、もっとくっつけてください。男性の方は、ポーズがとっても自然でいいですね。お二人は兄妹ではありませんよね。結婚式は済まされたんですか?」
  ジュンサン 「どんなふうに見えますか?」
  《せりふ:写真技師》
「ハハ、そんなふうに質問する方には共通点があるんですよ。まだ式は挙げていないとか。恋愛も盛り上がってきたから他の人に認めてもらいたいとか、そうじゃなければ不倫か、はたまた周囲に反対されてるカップルか。そのうちのどれですか?」
ジュンサン (ユジンの耳に口を寄せて)あのおじさん、占い師だ。そう思うだろ?」
《せりふ:写真技師》
「ハハ、さあ、この瞬間を永遠にして写真に収めてさしあげましょう・・・おふた方、よく似てらしゃいますね。本当にアツアツなんでしょうね。さあ、撮りますよ。女性の方、おしゃべりはやめて、しっかりカメラを見てくださいよ。さあ、笑ってください、女性の方。撮りますよ」
ユジンは笑おうとするがなぜか目には涙がにじみだしていた。”カシャ”っと写真が撮られると、ユジンは目に涙をためており、ジュンサンの顔も苦く笑っていた。

スキー場の一角。ユジンとジュンサンが車の中に座って話している。

ユジン 「ソウルに行くって、どうして言ってくれなかったの?」
030 ジュンサン 「今、言ったじゃないか。オフィスに行って、急ぎの仕事だけ片づけて戻るよ」
ユジン 「今日戻るんでしょ?」
ジュンサン 「たぶん、今日の夕方には着けると思う」
ユジン 「じゃあ・・・私も一緒に行こうか?」
ジュンサン (脅かすように)仕事しなきゃだめだぞ、チョン・ユジンさん。そんなこと言うなんて、ポラリスのチョン・ユジンさんらしくないね」
ユジン 「・・・・・すぐに戻るんでしょ?」
ジュンサン 「ああ、すぐに戻るよ」
ユジン 「・・・・わかった(降りかけて)ねえ、絶対に今日中に戻ってね」
ジュンサン 「ああ。今日中に必ず戻るよ」
ユジンは、うなずいて降りる。窓越しに手を振るユジンに手を振り返してから、ジュンサンがゆっくりと車を出した。ユジンは遠ざかる車をずっと見送っていた。ジュンサンは立っているユジンを見て、窓から手を振った。

マルシアン。職員と話しているジュンサン。書類にサインをしている。

040 ジュンサン 「今日またリゾートに戻って、こっちに来るのは週末になります。急ぎで処理するものがあれば、管理チームがリゾートに行く時に渡してください」
職員が挨拶して出て行くとノックの音がする。
ジュンサン 「はい」
《せりふ:秘書》
「お客様がお見えですが」
ジュンサン 「はい。(見るとサンヒョクが入ってくる)サンヒョク」
サンヒョク (笑って)忙しくなければ、一杯やらないか?」
ジュンサンは、うれしくも意外そうな顔をしている。

ジュンサンとサンヒョクが、バーに座って酒を飲んでいる。

サンヒョク 「・・・おめでとう」

(ジュンサンを見て)結婚するってこと、ヨングク達から聞いたよ」

(無理に笑顔を作って)僕がいちばん先に祝ってあげたかった。誰よりも先に祝福してあげたいと思った。だから来たんだ」

ジュンサン 「サンヒョク」
サンヒョク 「本心だよ」
050 ジュンサン 「・・・・ありがとう。本当にありがとう」
サンヒョク 「ユジンを泣かさないっていう約束は、ちゃんと守ってるんだろう?」
ジュンサン (ややあって)いや・・・・」

「全然守れてないよ。毎日泣かせてる。どうしよう?」

サンヒョク 「どういうことだ?」
ジュンサン 「僕の母さんとユジンのお母さんが、反対してるんだ。ユジンも僕も、母親しかいないのに、その二人に反対されてる」
サンヒョク 「反対とは・・・なんでまた?」
ジュンサン 「キム先生から何も聞いてないんだな。僕の母さんと君のお父さん、二人だけが友達だったんじゃなくって、ユジンのお父さんも含めて三人が友達だったそうだ。それから・・・僕の母さんとユジンのお父さんは婚約までしてたんだ」
サンヒョク 「君と僕、ユジン・・・それに僕たちの親。なんて不思議な縁なんだろう・・・」
ジュンサン (放心したようにつぶやく)・・・・本当に不思議な縁だ。そうだよな?」
サンヒョク 「・・・・逃げちゃえよ」

「僕だったら逃げるよ。ユジンが僕を好きだとしたら、両親や友達、何もかも捨てて逃げると思う」

060 ジュンサン (苦々しく)逃げてしまおうか?でも、なぜか不安なんだ。はるか遠くに逃げても、ずっと何かに追いかけられるような気がして・・・妙に不安なんだ。なぜだろう」
通り。ジュンサンとサンヒョクが肩を並べて歩いている。二人が立ち止まって向き合う。
ジュンサン 「僕たち・・・・もう友達になれたのかな?」

(手を握って)ちょうど10年だ。長くかかったな」

ジュンサンとサンヒョクは顔を見合わせて笑った。
サンヒョク 「・・・・本当に逃げたりするなよ」

「・・・・きっと許してもらえるさ。待っていれば、いつかは許してもらえると思う。その時、まわりのみんなから祝福されて結婚しろよ」

ジュンサン 「ああ。ありがとう」
サンヒョク 「じゃあ」
ジュンサン 「じゃあな」
二人はそれぞれの方向に歩き出した。
サンヒョク (振り返って)おい、おまえ、カン・ジュンサン」

(やけに威勢よく)お母さんに結婚を反対されても、おまえはお母さんにとにかく感謝しなきゃいけないってこと、わかってるだろ?」

070 ジュンサン (笑いながら調子を合わせて)なんでだ、この野郎」
サンヒョク 「なんでもクソもあるか!お母さんが初恋に失敗しなかったら、おまえはユジンと恋愛できなかったじゃないか」

(笑って)お母さんがユジンのお父さんとうまくいってたら、おまえたちは兄妹になるだろ。不幸中の幸いってことだよ!じゃあな!」

サンヒョクが、背を向けて歩き出した。ジュンサンの表情がしだいに変わってくる。呆然とし、しだいに不安が湧き上がってきた。

車がひっきりなしに往来する通りに呆然とジュンサンが立っている。ジュンサンの脳裡をユジンとミヒの声が交互によぎる。

ユジン 『私のお父さんとあなたのお母さんは昔・・・婚約してたんだって』
ジュンサン 『誰なの?僕の父さんは』
ミヒ 『もう死んだのよ』

『その人は私を捨てたの。私のことなんか忘れて・・・・そして死んだの』

ユジン 『私の父は亡くなったの・・・』
ジヌの研究室の中。ジュンサンが研究室に入った。ブラインドを開けてぼんやりと窓の外を眺めた。ジュンサンが振り返って本棚に目を向け、サンヒョクの写真を見つけた。微笑んで近寄り、写真立てを手にとった瞬間、はらりと写真が落ちた。拾い上げると、それはジヌ、ヒョンス、ミヒの三人が写っている古い写真だった。

日中であるにもかかわらず、トンネルのように薄暗い廊下をジュンサンが歩いている。魂が抜けたように足取りがおぼつかなかった。

スキー場の一角。ジョンアとユジンが机に書類を広げて仕事をしている。ユジンは心配そうに携帯電話と時計を確認している。

ジョンア (伸びをして)あーあ、ねえ。今週中にこっちを片づけて、来週からはテラスハウスのほうにも手をつけなきゃならないんじゃない?」
ジョンアの話が耳に入らず、ユジンがぼうっとしている。
080 ジョンア 「どうしたの?理事とは連絡つかないの?」
ユジン 「え?ええ・・・・(つくり笑顔)
ジョンア 「何事もないわよ。子どもじゃないんだから、きっと戻ってくるわ。戻りましょ、さあ」
ユジン 「ああ」
ジョンア 「ああ、この仕事が終わってソウルに帰ったら、しばらくは雪ともお別れね」
ユジン 「そうね・・・この冬、最後に見る雪になるかもしれないわね」
ジョンア (はげますように)雪は来年もまた降りますよ」
ユジン 「でも、この冬の雪はこれが最後でしょ」
ジョンア 「はあ、私は雪なんて、もううんざりだけどね」
ユジン 「すぐに、とけちゃうわよね?」
090 ジョンア 「たぶん」
ユジン 「とにかく・・・なんであれ最後っていうのは悲しいものね」
ホテルの中。
ユジン 「先輩」
ジョンア 「ん?」
ユジン 「先に入ってて」
ジョンア 「あなた、イ理事を待つつもりなんでしょ?わかったわ。(ぽんぽんとユジンを叩いて)先に戻ってるわね。じゃあ」
ユジン 「うん」
ジョンアは先に行き、ユジンは廊下のベンチに腰をおろして外を見つめた。

ゲレンデ、夜。降雪機が雪をまいているほうに向かってユジンがゆっくりと歩いていく。

ジュンサン(ミニョン) 『・・・ユジンさん、今、泣きたいと思ってますね?・・・・ユジンさんの泣き声は全然聞えませんから、思いっきり泣いてください』
100 ユジンがミニョンの言葉を思い出しながら歩いていると、降雪機の下、降りしきる雪の中を歩いている人の姿が見える。誰だろうと目を凝らすと、それはジュンサンだった。うれしさと安堵でユジンはほっと息をつき、ジュンサンに向かって足を速めた。
ユジン 「ジュンサン!」
ジュンサンが振り返る。その目には涙が光っていた。
ユジン (怒ったように)いつ帰ったの?」
ジュンサン 「・・・・たった今」
ユジン 「ひょっとして、あなたも泣きたくてここに来たの?」
ジュンサン 「いや、(憂い顔で)泣きたいほど悲しい事なんてないよ」
どことなく悲しげなジュンサンの様子が気にかかって、ユジンは心配になった。
ユジン 「どうしたの?あなた、変よ。なにかあったの?」
ジュンサン (淡々として静かに)いや」
110 ユジン 「じゃあ、どうしたのよ」
ジュンサン (冗談めかして)いや、すごく寒くて」
ユジン (見つめているが、襟元を閉めてあげて)バカ」

「・・・・・心配したのよ」

ジュンサン 「ごめん」
二人は見つめ合う。ジュンサンは、ゆっくりと近づいてユジンを抱きしめた。ユジンはジュンサンの態度を不思議に思った。ジュンサンは、ユジンを抱きしめたまま、ユジンに気づかれないよう静かに涙を流している。この冬最後の雪が舞うなか、二人はいつまでも固く抱き合って立っていた。

翌朝、ユジンとジュンサンが食堂で朝食をとっている。

ジュンサン 「僕たち・・・今日、結婚しよう」
ユジン (驚いて)冗談でしょう?」
ジュンサン (淡々と)冗談じゃないよ」
ユジン 「ジュンサン」
ジュンサン 「今日、結婚しよう。僕たち二人で」
120 ユジン (じっと見て)本当に変よ。いきなりどうしてそんなこと言いだすの?」
ジュンサン 「ただ、長く待つのがいやになったんだ」
ユジン 「親に反対されて、それでヤケになったの?」
ジュンサン 「いや」
ユジン 「じゃあ、どうして?」
ジュンサン 「僕には君が必要なんだ。今すぐに」

「もし僕の母さんに反対されても、僕と結婚するね?」

ユジン 「・・・・ええ」
ジュンサン 「君のお母さんに反対されても、結婚するね?」
真剣にたずねるジュンサンに、ユジンはうなずいた。
ジュンサン 「僕もそうだよ。結局、君は僕と結婚するんじゃないか。だったら、こんなふうにやきもきしながら待つ必要なんかないだろ?僕たちはもう10年も待ったんだから」
130 ユジン 「ジュンサン」
  ジュンサン (きっぱりと)これ以上待ちたくない。結婚しよう」
  怖いくらいまっすぐな目をして語るジュンサンの顔を、ユジンは瞳をうるませながら見つめていた。

ホテルのユジンの部屋。ソファに座って考え込んでいるユジンのところへ、ジョンアが来て横に座った。

  ジョンア 「イ理事はなんで戻ってこなかったって?」
  ユジン 「私にもわからない」
  ジョンア (冗談めかして)ねえ、結婚する前にしっかり首に縄つけとかなきゃだめよ」

「イ理事がおかしいのは、何か理由があるの?」

  ユジン 「さあ、どうやらお母さんのことらしいわ」
  ジョンア 「誰のお母さん?」
  ユジン 「私のお母さんとジュンサンのお母さん、二人とも。(ジョンアを見て苦く笑って)猛反対してるの。向こうの家も私の家も。だからとってもつらいみたい」
  ジョンア 「それで?結婚しないって?」
140 ユジン (気が抜けたように首を振る)ううん、その反対」

「今すぐ結婚しようって」

  ジョンア 「イ理事、あなたを本当に必要としてるのね」

(たいしたことではないというように)結婚しちゃいなさい!結婚すればいいじゃないの」

「結婚なんてたいしたことじゃないわ。愛する人と一緒に暮らすってまわりに宣言するだけでしょ。大事なのはまわりに知ってもらうことじゃなくて、愛してるか愛してないかってことだけど、愛してるなら反対なんて関係ないじゃない。今すぐ結婚しちゃいなさいよ」

  ユジンは目に涙を浮かべてじっと考え込んでいた。
  ジョンア 「愛してるんでしょ?」
  ジョンアとユジンが視線を合わせる。ジョンアはユジンの眼を覗き込んで確認するように言った。
  ジョンア 「なら、それでいいのよ」
  ホテルのジュンサンの部屋。カーテンを引いて暗い部屋にぼんやりとジュンサンが座っている。さまざまなことが脳裏によみがえってくる。

ジヌの研究室で落ちた写真を見ている姿。ジュンサンが手にしている三人の写真が、昔ユジンの家のアルバムで見た写真にかぶる。ユジンの家でそれを見たときの記憶がよみがえる。

  ジュンサン 『この写真・・・何?』
  ユジン 『父の写真。サンヒョクのお父さんは、この前会ったからわかるわよね。三人とも高校の同級生だったんだって。・・・父の隣にいる女の人、きれいよね?母の話では、ただの親しい同級生だったらしいけど、腕を組んで写真撮ってるぐらいだから、ちょっと怪しいと思わない?まるで恋人みたいでしょ?』
  続いてホテルで母ミヒに父のことを問いただした時の記憶が浮かび上がる。
150 ジュンサン 『僕の父さんは誰?』

『僕の父さんは・・・チョン・ヒョンスさんなの?』

(震えながら必死の形相で)母さん!僕の父さんは、ユジンのお父さんなのか?』

  ミヒ 『・・・・・ごめんね、ジュンサン・・・・・』
  ホテルのジュンサンの部屋。ジュンサンが目を閉じて座っていると、急に部屋が明るくなった。ジュンサンはまぶしい陽光に顔をしかめた。いつの間にか入ってきたユジンが、カーテンをさっと開けていた。
  ユジン 「すっかり閉め切って、何してるの?」

(ジュンサンの手をとって)・・・・風にあたりにいきましょう」

  スキー場の一角。山頂の方へユジンとジュンサンが雪道を上がっていく。二人とも口を開こうとはしなかった。

山頂。二人は黙って並んで、目の前に広がる風景をただじっと眺めていた。

  ユジン 「・・・・きれいだわ。そう思わない」
  ジュンサン 「ああ。きれいだ」
  ユジン 「ジュンサン」

「・・・・結婚しようって言ったこと、本気なの?」

(笑って)本気じゃなかったみたいね。私は本気なのかと思って、すごく悩んだのに」

  ジュンサンはしばらく黙っていたが、ユジンのほうを向き、決心したように言った。
  ジュンサン 「・・・本気だよ」
160 ユジン (無理に明るく)でも、私たちだけで結婚したら、私たちが結婚したことを誰が証明してくれるの?証人が必要なんじゃない?」
  ジュンサン 「証人なんて必要無いよ。・・・君と僕が証人だ」
ユジン 「・・・・そうね。・・・・結婚しましょう」
  サンヒョクの家。サンヒョクが会社から帰ってきた。カバンも置かずにサンヒョクは父のいる書斎へ向かった。ドアをノックしようとすると、ジヌの声が聞えてきた。
  ジヌ 「その結婚、私も反対だということはご存知じゃありませんか」

「ジュンサンとユジンの結婚は、絶対に認められれません。ユジンのお母さん、たいへんだとは思いますが、一度スキー場に行ってみてください。今、止めなければ、取り返しのつかないことになります。はい・・・わかりました」

  ジヌが電話を切るのと同時に、サンヒョクが書斎に入ってきた。サンヒョクはジヌの横に立ってにらみながら言った。
  サンヒョク 「ユジンとジュンサンの結婚を・・・何で父さんが反対するんだ?」
  ジヌ 「サンヒョク!」
  サンヒョク 「僕のためにそんなことをするの?僕がユジンと別れたから?父さん、僕は大丈夫だって言ったじゃないか。確かにユジンと別れるのはつらかったけど、もう平気だって。父さんがこんなふうに反対するようなことじゃない!」
  ジヌ 「・・・おまえのためじゃないんだ」
170 サンヒョク 「じゃあ、どうして反対するんだ?」
  ジヌは複雑な表情で黙ってサンヒョクから視線をはずした。
  サンヒョク 「父さん!」
  ジヌ (心を決めたかのように大きく息を吐いて)・・・・ああ、私が反対したところで、どうにかなるものでもないだろう・・・・ユジンのお母さんも、私がなぜ反対してるのか、正確な理由は知らないはずだ」
  サンヒョク (おそるおそる)どうして?どういうことなの?」
  ジヌ 「話したら、おまえが・・・・あの二人の結婚を止めるって約束できるか?」
  サンヒョク (怖くなって)父さん?」
  ジヌは大きくため息を吐いた。サンヒョクが緊張した面もちでジヌを見つめている。
  ジヌ 「・・・・ジュンサンは、ヒョンスの息子だ」

「ジュンサンとユジンは・・・・兄妹だ」

  サンヒョクが家から飛び出し急いで車のエンジンをかけ、急発進していった。

ホテルのジュンサンの部屋。ジュンサンが礼服に着替えようとしている。シャツを着て、袖のボタンを泊め、ジャケットをはおる。

ホテルのユジンの部屋。白いドレスに着替えたユジンは、鏡の前でポラリスのネックレスをつけた。

スキー場の一角。サンヒョクの車が急停車する。車を止めるのももどかしく、急いで車から飛び出すと夢中でホテルの中へ駆け込んでいった。

聖堂。ジュンサンが祭壇の前に立ってユジンを待っている。

ドアが開く音にジュンサンが振り返ると、白いドレスにコートをはおったユジンが入ってきた。ジュンサンにまっすぐ目を向け、ゆっくりと通路を歩いていくうち、ユジンの目に涙が浮かんでくる。祭壇の前まで来ると、ジュンサンがユジンの手をとり、そのままじっと見つめあった。ユジンをみつめるジュンサンの目も潤んでいるようだった。

180 ジュンサン(声) 『神さま・・・・お許しください』

第17話劇終

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