MATRIX
RELOADED【マトリックス・リローデッド】

キアヌ・リーブス(ネオ)ネオ ローレンス・フィッシュバーン(モーフィアス)モーフィアス
キャリー=アン・モス(トリニティー)トリニティ ヒューゴ・ウィービング(エージェント・スミス)エージェント・スミス
ジャダ・ピンケット・スミス(ナイオビ)ナイオビ モニカ・ベルッチ(パーセフォニー)バーセフォニー

(セラフ)
(ジー)
(ロック司令官)
(リンク)
(メロビンジアン)
(ゴースト)
(キッド)
(ラマ) 
(ベイン)
(サティー)
(トレインマン)
(予言者/オラクル)
(ミフネ)

001 ひとり残ったネオ。ふと気配を感じて振り向くと、広場の向こう側からエージェント・スミスがこちらに向かってくるのが見えた。
  スミス 「アンダーソン君、受け取ってくれたか?」
  ネオ 「ああ。」
  スミス 「よかった。」
  整然と流れるモニタの記号をモーフィアス達が見つめている。
  モーフィアス 「スミス・・。」
  リンク 「エージェントの反応は出てませんけど・・。」
  スミス 「ビックリしたかな?」
  ネオ 「いや。」
010 スミス 「では知ってたのか?」
  ネオ 「何をだ。」
  スミス 「我々の関係、どんな事が起こったのか完全には理解してないが、おそらく君の一部がわたしに上書きされたかコピーされた。」

「まぁ、そんな事はどうでもいい。重要なのは何事も理由があって起こると言う事。」

  ネオ 「で、その理由とは何だ?」
  スミス 「わたしは君を殺した。死ぬのをこの目で見た。ある種の満足感も味わった。だが、何か起こった・・ありえないと思った事だが、とにかく起こった。」

「君がわたしを破壊したのだ・・アンダーソン君。その後でわたしはルールを知り自分がすべき事を理解した。だが、しなかった。・・・できなかった。わたしはここに留まらざるをえなかった・・。逆らわざるをえなかった・・・。そして今、君のお陰でわたしはこの場に立っている。君のお陰でもはやこのシステムのエージェントではない。君のお陰でわたしは変わり、プラグを抜かれた新たな人間だ。いわば、君のようにわたしは自由であるらしい。」

  ネオ 「・・それは良かったな。」
  スミス 「ありがとう。・・・・だが、知っての通り見かけはあてにならない。そこでまた、何故ここに居るのかという理由に戻ってくる。」

「自由だからここに居るのではない・・・。自由ではないからここに居る。理由から逃れる事は出来ない。目的を否定する事は出来ない。何故なら、我々は目的無しに・・存在し得ない。」

  目の前のスミスと同じ顔をした男がもうひとり現れた。
  スミス 「目的こそが我々を作った。」

「目的が我々を繋ぐ・・・我々を引っ張る・・導く・・駆り立てる・・目的が我々を定義する。目的が我々を結ぶ・・。我々は君のためにここに居る。」

  同じ顔の、スミスとうりふたつの男たちがぐるりとネオを取り巻いた。
020 スミス 「君が我々から奪おうとしたものを君から奪うのが・・。」
  言い終わらないうちに、スミスの右手がネオの腹に差し込まれた。スミスはにやりと笑ってネオを見た。
  スミス 「・・・目的だ・・。」
  スミスがネオの中に侵食していく。

船の中で、プラグに繋がれたネオの体が痙攣している。

  トリニティ 「何が起きてるの?」
  N(リンク) 「わかんない・・。」
ネオの体の侵食が体から顔へとわたっていく。
スミス 「ああ、そうだ。もうすぐ終わる。」
しかし、侵食のスピードが鈍り、何事も無かったようにネオはそこに立っていた。

突然、スミスたちが攻撃を仕掛けてくる。次々襲いかかるスミスを打ち、蹴り、投げ飛ばしていく。その数はだんだん増えてくる。広場を埋め尽くさんばかりの数のスミスが襲ってきた。ネオに覆い被さるスミスたち。

スミス 「これは必然だ・・これは必然だ・・。」
030 トリニティ 「早く脱出して・・。」
下になったネオが力を込めると、まるで爆発したかのように覆い被さっていたスミスの大群が弾き飛んでいった。ネオは身を屈めると一気に上空へと飛び上がり、その場を去った。

現実世界へ戻ったネオ。頭からプラグが抜かれる。

トリニティ 「・・大丈夫?」
モーフィアス 「スミスだったか?」
ネオ 「ああ・・。」
モーフィアス 「ひとりじゃなかったな・・。」
ネオ 「何人も居た。」
N(リンク) 「何でそんな事が?」
ネオ 「分からない・・。自分をコピーする方法を見つけたようだ。」
モーフィアス 「君にもそうしようとしたのか?」
040 ネオ 「何だったのかは分からないが・・・感触には覚えがある・。」
トリニティ 「何?」
ネオ 「あのホテルの廊下の感じだ・・。死んでいくようだったよ・・。」
ザイオン。評議委員会。ロック司令官が話している。
ロック 「敵が防御システムを避けるために堀ってます。ですがパイプラインを押さえるにはいくつかそれを横切ると考えられます。その交差するポイントが重要です。敵は反撃に対処できないと思われます。この攻撃は何年も我々が退けてきたものと同じという声もありますが、現実に目を向けて頂きたいのです。」

「一度にこれほど大規模な攻撃は初めてです。しっかり対応しなければ生き残る事はできません。」

評議員 「ロック司令官。評議会はこの攻撃を深刻に受け止めています。あらゆる必要な手段を講じて進める許可を与えます。」
ロック 「恐れ入ります。」
評議員 「ですが、ネブカデネザルから連絡はありましたか?」
ロック 「ありません、評議員。何もです。」
評議員 「では、船を一隻派遣して、救世主がどうなったか確認したまえ。」
050 ロック 「できればそうしたいのですが、防御にはもう船を一隻も欠かせない状況です。」
評議員 「必要ならする。どうあろうと。」
ロック 「たとえ一隻出しても数日かかります。」
評議員 「2隻出しなさい。」
ロック 「・・・・馬鹿げてる・・。」
N(ハーマン) 「言葉に気をつけたまえ。」
ロック 「お許しを・・つい、いらいらしまして・・。わたしに評議会のご判断が理解できれば・・よいのですが。」
評議員 「その必要は無い。理解しなくとも協力はできる。」
ロック 「では、わたしに2隻の船の船長に命じて・・。」
評議員 「命じる必要はありません。船長達はここにいます。聞いてみましょう。」

「評議会はネブカデネザルを手助けする2隻の船を求めています。皆さんの中に志願する船はありませんか?」

060 ビジラント号のソウレン船長が立ち上がり、志願した。
評議員 「状況は分かっていますね。ソウレン船長。・・ありがとう、船長。」

「では、もう一隻。」

船長達がざわざわとざわめく。
評議員 「他にはいませんか?」
ロック 「誰も命をかけたく無いでしょう。特に理由が理解できない場合は。」
ナイオビ 「ロゴス号の船長、ナイオビです。任務に志願します。」
ロック 「ん!」
評議員 「ありがとう。ナイオビ船長。・・ロック司令官分かりましたね。評議会はこれにて終了。」
評議会は閉会し船長達が足早に部屋を出て行く。ロックがナイオビの傍へ歩み寄ってくる。
ロック 「ナイオビ、何をする気だ?」
070 ナイオビ 「できる事を。」
ロック 「何故だ?」
ナイオビ 「世の中には変わらないものがあるからよ。・・・変わるものもね・・。」
仮想世界、エレベータを降りるモーフィアス、ネオ、トリニティたち。
モーフィアス 「何が見える?ネオ。」
ネオ 「おかしい・・コードがどういうわけか違ってる・・。」
モーフィアス 「暗号なのか?」
ネオ 「多分・・。」
トリニティ 「我々に有利なの?不利なの?」
ネオ 「どうも各フロアに爆発物が仕掛けられているようだ・・。」
080 トリニティ 「不利だわね・・。」
モーフィアス 「着いたぞ。」
黒いフロアを歩いていく。入口に立つ男にモーフィアスが言った。
モーフィアス 「メロビンジアンに会いたい。話がある。」
N(男) 「ああ、そうですか。話は伺ってます。こちらへ・・。」
男に導かれるまま、高級フランス料理店の中へ通される。
メロビンジアン 「あぁ・・とうとう来たな。やっと会えた、ネオ。これぞ救世主か。そうだな?」

「それに伝説のモーフィアス・・。そしてまさしく、トリニティ・・。噂はかねがね聞いている。」

「さあ、掛けて。どうぞ、妻のパーセフォニーだ。」

「食事はどうかな?飲み物は?・・ふふふ・・もちろん他のものと同じように作り物だが。本物らしく見せるためのね。」

ネオ 「いいや、結構。」
メロビンジアン 「そりゃそうだ、時間がないな。そんな時間は無い。だが、急いでばかりいると大事な時間も忘れてしまう。」

「シャトー・オー・ブリオン、1959年産の素晴らしいワインだ。・・フランスワインはいい。」

「フランス語も大好きだ。全ての言葉をたしなむがフランス語が一番素晴らしい言葉だ。中でも特にののしる言葉。・・・まるでシルクでケツを拭くようだ。なんとも言えん。」

モーフィアス 「用件は知ってるな?」
090 メロビンジアン 「ふふ・・わたしのビジネスは情報の取り引き。知るべき事は知ってる。」

「・・だが問題は・・・君たちがここに来た理由だ。」

モーフィアス 「われわれはキー・メーカーを捜してる。」
メロビンジアン 「ああ、そう、確かに・・キー・メーカーだったな・・。だがそれは何故来たかの理由ではない。キーメーカーはその本質において手段であって目的ではない。・・となると、あいつを探すのは他にしたい事があるからだ。それは・・何か?」
ネオ 「あなたはもうその答えを知ってる。」
メロビンジアン 「だが君は・・・・知ってるつもりだが知らない。君がここに来たのは指示されたからだ。行けと言われたからだ。・・そして君は従った。」

「・・ははは・・まあ、物事はそんなものだ。そう、唯一常に変わる事無くあらゆるものを支配する紛れもない真理がある。因果関係だ。・・作用、反作用。原因、そして結果・・・。」

モーフィアス 「全ては選択から始まる。」
メロビンジアン 「いや、違う。選択は幻想だ。あるのはただ力を持つ者と持たざる者だ。」

「見たまえ・・。」

メロビンジアンの示す先に女性がイスに座っている。
メロビンジアン 「あの女だ・・。なんと言えばいいか・・まあ、見てくれ。周り中に漂わせている雰囲気は、気取ってて、俗っぽくつまらない。・・だが、待ちたまえ。わたしはあの女にデザートを用意した。とびっきりの特別のデザートだ。わたしが自分で書いた。始まりはとても単純だ。プログラムの一行一行が新たな結果を生む。あたかも・・詩のようだ。」

「まず最初に、ポッとして、熱くなり心臓が高鳴る。・・そうだネオ、見えるだろう?彼女には分からない・・。何故だ。ワインのせいか?いや、それではなんだ・・何が理由だ。」

「そして、どうでもよくなり・・・すぐに訳や理由は消え去っていく・・。そして大事なのはその感覚だけになる・・。それがこの世の中の本質・・。わたし達はがき、それを否定しようとするが見せ掛けに過ぎない偽りだ。平静を装った外見とは裏腹に・・。実際のところ我々は完全に自分を失っている。」

「因果関係、そこからは逃れられない。我々は永遠にその奴隷。我々の唯一の希望、唯一の安らぎはその理由を理解する事・・。何故かと。彼女達とのちがいだ。君たちとわたしの。」

「理由こそ力の源だ。それを欠けば無力。君たちは理由を欠き、力を持たずにここへ来た。皆、似たようなもんだ。だが、おそれるな・・。見たところ君達は素直そうだ。わたしがこれから命じるいい付けに・・従ってくれるだろう。」

「・・とっとと帰って、あの占い師にこの伝言を伝えろ。”あの女の命運はまもなく尽きる”と。」

「・・さて、わたしはちょっと用事があるのでそろそろ失礼する。」

ネオ 「まだ終わってない。」
100 メロビンジアン 「あぁ、そうだった。キー・メーカーを君たちに引き渡す理由は見当たらないな。あれはわたしのものだ。・・・理由など全くない。」
バーセフォニーがどこへ行くのかと聞いた。
メロビンジアン 「おいおい、今話したろ。我々は皆、因果関係の虜。ワインをたっぷり飲めば、行きたくもなる。原因と結果だ。」
メロビンジアンが席を立った。

エレベータに乗るモーフィアス、ネロ、トリニティたち。

ネオ 「上手くいったとはいえないな。」
モーフィアス 「預言者は他に何も言ってないのか?」
ネオ 「ああ。」
トリニティ 「何か間違えたのかも。」
ネオ 「何かをしなかったとか・・。」
モーフィアス 「いや、起こった事は起こった。他に起こりようはなかった。」
110 ネオ 「何故分かるんだ?」
モーフィアス 「我々はまだ生きている。」
112 エレベーターが開いた。外にメロビンジアンの妻、バーセフォニーが立っていた。

gWへ続く

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