MATRIX
RELOADED【マトリックス・リローデッド】

キアヌ・リーブス(ネオ)ネオ ローレンス・フィッシュバーン(モーフィアス)モーフィアス
キャリー=アン・モス(トリニティー)トリニティ ヒューゴ・ウィービング(エージェント・スミス)エージェント・スミス
ジャダ・ピンケット・スミス(ナイオビ)ナイオビ モニカ・ベルッチ(パーセフォニー)バーセフォニー

(セラフ)
(ジー)
(ロック司令官)
(リンク)
(メロビンジアン)
(ゴースト)
(キッド)
(ラマ) 
(ベイン)
(サティー)
(トレインマン)
(予言者/オラクル)
(ミフネ)

001 電話のベルが鳴り響く。電話の鳴る方向へ男がふたり走って来る。受話器を掴み一人の男が消えた。そこにエージェントが現れた。エージェントは男の胸に手の指を深く差し込んだ。
  N(男) 「・・神様・・。」
  N(スミス) 「いいや、スミスで構わない。」
  男の顔や体が黒く染まっていきスミスの姿に変貌した。
  N(スミス(コピー)) 「ありがとう。」
  N(スミス) 「どうしたしまして。」
  電話が再び鳴る。スミスになった男が受話器を取った。男の姿が消えた。

ザイオンではネオが眠れない夜を過ごしていた。部屋の扉を開けて外へ出るとそこにハーマン評議員が立っていた。

  ハーマン 「私も一緒に良いかね?」
  ネオ 「ハーマン評議員。」
010 ハーマン 「一人の方がいいなら邪魔はしたくない。」
  ネオ 「いえ、そんな。誰かいてくれた方が・・。」
  ハーマン 「そうか・・。私もだ。」

「いい夜だな。・・・・静かだ。みんなすやすや眠っているのかな・・。」

  ネオ 「みんなではありません。」
  ハーマン 「眠るのは嫌いだ。わたしは2、3時間も眠れない。11の歳まで眠っていたのを今、取り返してるのかな・・。君はどうだ?」
  ネオ 「僕も最近はあまり・・眠れません。」
  ハーマン 「いい兆候だ。」
  ネオ 「何のです?」
  ハーマン 「人間ということ。君はまだ。」

「エンジニアリングレベルに降りた事は?」

「夜歩くと面白いぞ。わたしは好きだ。見てみたいか?」

  ネオ 「ええ。」
020 エレベータからネオとハーマン評議員が降りてくる。ゴウンゴウンと重い歯車の回るような音が休まず続いている。
  ハーマン 「ほとんど誰も降りてこない。問題が起こるまでは。人とはそんなもんだ。正常に動く間は誰も気にしない。」

「わたしはここが好きだ。この機械のお陰で街が支えられていると思い出させてくれる。この機械によって我々は生きのび、別の機械が殺しに来る。面白いだろ。」

「命を与える力。そして奪う力。」

  ネオ 「人間の力も同じです。」
  ハーマン 「ああ、そうだな・・だが、よくここで、まだマトリックスに繋がれている人たちのことを思う。この機械を見てるとな・・。こう思えてくるんだ・・我々も、ある意味では繋がれていると・・。」
  ネオ 「でも、コントロールするのは機械ではなく僕たちです。」
  ハーマン 「ああ、確かにな・・。機械ではない。とりとめも無い考えだが・・そこから疑問が湧いてくる。コントロールとは何かな?」
ネオ 「止めたければ機械を止められることです。」
ハーマン 「・・ははは・・そうだ・・。その通り、正解だ。それがコントロールだな。望めば粉々に破壊もできる。だがその場合、考えなければならないこともある。光や熱、空気は?」
ネオ 「機械も我々も互いが必要だ。それがポイントですか?評議員。」
ハーマン 「・・・違う・・。そうではない。わたしのような年寄りの話だ。ポイントは無い。」
030 ネオ 「だから評議会に若者がいないんですか?」
ハーマン 「いいポイントだ。」
ネオ 「思っていることがあるなら言ってください。」
ハーマン 「・・・・・・わたしにとって世の中は・・分からない事だらけだ・・・・。あの機械を見ろ。我々が使う水のリサイクルに関わっているが、わたしにはどういう仕組みか全くわからない。だが、あれが働いている理由なら知ってる。・・・・どういう仕組みで君に特別な事ができるのか全く分からない。だが同じように、理由があると信じたい。そしてその理由が分かればいいがな。・・・手遅れになる前に・・。」
朝、バラードがネオに預言者からの知らせを持ってきた。
ネオ 「・・・・出発の時間だ・・・。」
ハーマン評議員の部屋にロック司令官がいきり立って入ってきた。
ロック 「ネブカデネザルの出発を許可したそうですね。」
ハーマン 「確かにそうだが?」
ロック 「防御システムの責任者はわたしです。」
040 ハーマン 「そのとおりだ。」
ロック 「わたしは攻撃を退けるには全ての船が必要だと考えています。」
ハーマン 「それはよく分かる、司令官。」
ロック 「では何故、ネブカデネザルを出発させるんです。」
ハーマン 「我々が生き残れるかどうかは船の数ではないと信じるからだ。」
侵入用のイスに背を預けるネオ。トリニティが優しく語り掛ける。ネオの脊髄に通じるジャックに、コネクタが接続される。ネオは深く潜っていく。古い民家の中、男が一人座っている。
ネオ 「すみません。」
男は応えない・・ネオはその男の体から発する静かな闘気を感じとっていた。
セラフ 「預言者に用か?」
ネオ 「あんた誰だ?」
050 セラフ 「わたしはセラフ。君を案内しよう。だがその前に謝らなければ・・。」
ネオ 「誤るって何をだ?」
セラフ 「これだ。」
セラフと名乗った男はいきなりネオに襲い掛かってきた。激しい突き、蹴りの応酬。攻撃は互角だった。突然、セラフが攻撃を止めた。
セラフ 「結構。」

「預言者には敵が多い。確かめたかった。」

ネオ 「何をだ?」
セラフ 「救世主だと。」
ネオ 「だったら聞けばいいだろう?」
セラフ 「いや、相手を知る事は出来ない。戦わなければ。」

「どうぞ、彼女が待ってる。」

扉を開けて通路に出た。白い無機質な壁が続く通路だった。オペレータ室ではネオを見失って慌てていた。
060 ネオ 「ここにあるのはバックドアだな?プログラマが使ってる。・・・どういう仕組みだ?」
セラフ 「鍵の中にコードが隠されている。あるポジションがロックを解き、別のポジションがドアの一つを開く。」
ネオ 「あんたはプログラマーか?」
セラフは軽く首を振った。
ネオ 「それじゃ何だ?」
セラフ 「最も大切なものを守っている。」
セラフが一枚の扉を開けた。その向こう側に後ろ向きにベンチに座った女性の姿が見えた。ネオが女性に近づいていく。セラフも続く。
オラクル 「さあいらっしゃい。噛み付かないから。こっちに来てあなたの事よく見せて。」

「まあ、凄い・・驚いたわね・・。あなた立派にあったのね。気分はどうかしら?」

ネオ 「あの・・・。」
オラクル 「眠れないのはわかってる。それは後でね。さ、今日はこっちに来て座って。」
070 ネオ 「立ってる方がいい。」
オラクル 「・・・なら、好きにして。」
ネオ 「・・・・・やっぱり座るよ・・・。」
オラクル 「知ってた。さて・・・はっきりしてる問題から片付けましょう?」
ネオ 「あなたは人間じゃない。」
オラクル 「それはまた随分はっきりしてる問題ね。」
ネオ 「俺の推測だと、あなたは機械の世界に住むプログラムだ。・・・・彼もそう。」
オラクル 「今のところあってる。」
ネオ 「でもそうだとすれば、あなたはこのシステムの一部だ。コントロールに関わってる。」
オラクル 「続けて。」
080 ネオ 「そして多分、一番はっきりしている問題は、あなたを信じられるか・・。」
オラクル 「大当たり。困った問題よね、間違いない。しかもわたしがあなたを助けようとしているのかどうか知る術もない。全てあなた次第。」

「わたしが話すことを受け入れるか拒否するか、あなたは自分で決めなければ。」

「キャンディーいる?」

ネオ 「・・・・・俺が受け入れると知っているんでしょ?」
オラクル 「知らなきゃたいした預言者じゃない。」
ネオ 「だけど、もう知っているなら、何故、俺が決めるんです。」
オラクル 「あなたはここへ決めに来たんじゃない。もうとっくに決めてる。あなたが来たのは、何故決めたか理解するため。」
ネオは預言者の差し出したキャンディーを受け取った。
オラクル 「そろそろ分かってる頃かと思ってた。」
ネオ 「あなたが来たのは?」
オラクル 「同じ理由よ。・・・あたしキャンディー大好き。」
090 ネオ 「何故助けるんです?」
オラクル 「あたし達はみんなすべき事をするために存在する。あたしが興味があることは一つ。未来よ。そしてあたしは知ってる。生き残るためには協力しなきゃ。」
ネオ 「あなたみたいなプログラムは他にも?」
オラクル 「いいえ、あたしみたいなのはいない。でも・・・見て。鳥がいるでしょ。コントロールするためにプログラムが書かれてる。木や風の動きや日の出や夕日をコントロールするためにもプログラムは書かれてる。」

「プログラムは至る所で働いてる。予定通りの仕事をきちっとしてるプログラムは目に見えない。存在すらわからない。だけど一方で・・・そうねぇ・・・あなたもしょっちゅう聞いてるでしょ。」

ネオ 「聞いた事なんか無い。」
オラクル 「いいえ、聞いてる。誰かが幽霊を見たとか、天使を見たとか耳にするでしょ。今まで聞いてきた吸血鬼や狼男やエイリアンなんかの話はみんな予定に無かった行動をしているプログラムをシステムの中に取り込もうとしてるってこと。」
ネオ 「不正な働きをしているプログラムって事か・・・・・・何故?」
オラクル 「ん〜〜・・・・・理由はそれぞれだけど・・大抵プログラムは削除されそうになると逃げてエグザイルになる。」
ネオ 「プログラムが削除される理由は?」
オラクル 「例えば・・故障したとか・・新しいプログラムに置き換えられるとか・・そんなのしょっちゅうおこってる。そうなってしまうとプログラムはここに隠れてしまう事を選ぶか、さもなければソースに戻っていく。」
100 ネオ 「機械のメインフレームか?」
オラクル 「そうよ。あなたはそこへ行くの。救世主の道はそこで終わる。もう見たでしょ?夢の中で。・・・そうじゃない?そこにあるのは光のドア。」

「そのドアをくぐると何が起こる?」

ネオ 「トリニティが見える。それから何かが起こる・・・・・。悪い何かが・・。」

「彼女が落ち始める・・。そして目が覚める・・。」

オラクル 「彼女が死ぬのを見る?」
ネオ 「・・・いいや・・。」
オラクル 「あなたは未来が見えるようになったの。時間が存在しない世界を見てる。」
ネオ 「なら何故、彼女がどうなるか見えない?」
オラクル 「理解して無い選択を超えて見る事は出来ないから。」
ネオ 「トリニティが生きるか死ぬか、選ばなきゃならないと?」
オラクル 「違う・・あなたは既にもう選んでる。あとは理解しなければならない」
110 ネオ 「・・・嫌だ・・そんな事出来ない・・したくない・・。」
オラクル 「・・・・だけどしなきゃ・・。」
ネオ 「何故?」
オラクル 「あなたが救世主だから。」
ネオ 「・・・・・もし出来なかったら?・・・もし失敗したらどうなるんです?」
オラクル 「その時、ザイオンは滅びる。」
セラフが預言者の肩にそっと手を置き、知らせた。
オラクル 「時間が来たようね。よく聞いて、ネオ。ザイオンを救うにはソースに行かなきゃ。でもそれにはキーメーカーが必要よ。」
ネオ 「キーメーカー?」
オラクル 「そう、しばらく前から消息がわからなくなってたけど、とても危険なプログラムに捕まってたことがようやく分かった。メロビンジアンと呼ばれる最も古いプログラムの一つよ。素直に渡してはくれない。」
120 ネオ 「そいつの望みは?」
オラクル 「力を手にしたものが何を望む?更なる力よ。」

「行きなさい。ピッタリ時間どおりにね。まずはそれからよ。」

セラフ 「急ぎましょう。」
オラクル 「どうもあなたと会う時はいつも・・悪いニュースばかり知らせるようで・・。本当に気の毒な気がしてるの。でも、会ってよかったわ。あなたはわたしまで信じさせた・・。」

「幸運を祈ってる。」

124 セラフに連れられて預言者は扉の向こうへと消えていった。

振り向くネオの目に、近づいてくるエージェント・スミスの姿が映った。

gVへ続く

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