SPASE ADVENTURE
COBRA

刺青の女 編

  
COBRA −OP     COBRA −ED

001 コブラ 「しかしこの世はつまらない。こう文明が進歩しちまっちゃ・・・」

「人間なんて時計の歯車みたいなもんで・・・毎日がまるでコピーされたみたいにぐるぐるとまわってやがる」

  召使ロボ(レディ) 「起キロ、ジョンソン。イツマデ寝テヤガル」
  コブラ 「毎朝毎朝、おかしなコトバづかいのロボットメイドに起こされて始まる貿易会社のサラリーマンの一日なんて実に退屈なものさ」
  召使ロボ(レディ) 「お食事はデキテヤガル。食べてください」
  コブラ 「クソッ!、テメエッ毎朝毎朝、オレになんのうらみがあるんだ」
  召使ロボ(レディ) 「いいのですかジョンソン?会社に遅レヤガルゾ」
  コブラ 「バカヤロウ。曜日を見ろ曜日を!!今日は日曜だぜ。神様だってまだ、寝てるさ」
  召使ロボ(レディ) 「そいつはすまなかったな。コーヒーでもいれてヤルゾ」
  コブラ 「せめて美人のA級アンドロイドのメイドが欲しいぜ。そしたらあんなガラクタ、スクラップ工場へ売っぱらってやるんだがな・・」

「ああ・・金さえあれば、ボインボインの・・・」

「か・・金!!そうだ、今日はボーナスの支給日だった。すっかり忘れていたぞ」

「えーと・・3967の7811k・・・・・っと。な・・なんだあ・・たった7クレジットかぁ・・これじゃ惑星旅行へも行けないぜっ・・・」

「金があるヤツは・・自家用宇宙船で外惑星へいく時代だというのにな・・・」

「クソッ!しがないサラリーマンは・・アパートでおとなしくテレビの西部劇でも観てろというのか」

010 召使ロボ(レディ) 「そう、クサルナ。ジョンソン。そうだ、T・M会社に行ってみたらどうだ」
  コブラ 「T・M会社?トリップ・ムービーをやってるところかい?自分で自分の望む夢をみさせてくれるという」

「フムフム、そいつは面白いかもしれないな・・しかし、高いんじゃないのか?どの位とられる?」

  召使ロボ(レディ) 「少々高くても刺激がえられればいいじゃないですか」
  コブラ 「それもそうだな・・」
  ジョンソンはトリップムービー会社のムービーマシンの中にいた。このマシンは直接大脳古皮質を刺激して潜在意識を具現化し、あたかもそれが現実であるかのような夢を見せてくれるのだ。
  コブラ 「それは・・・実に素晴らしい夢だった。そのトリップの中のオレはハードボイルドのすごい二枚目。相棒のアーマロイド・レディとともに宇宙を駆け巡る、オレはコブラとあだ名される一匹狼の海賊だ」

「ある時は熱風が荒れ狂う水星の嵐の中で銀河パトロールと銃撃戦を展開し・・またある時は冥王星の氷の海でバーバリアンと戦い・・そして水蜜桃のような金星の女たちに愛された」

「まさに無敵だった・・オレの左手には強力なサイコ・ガンが仕込まれており同業の海賊たちさえ一目置いていたほどだ。これぞまさにオレが望んでいた世界・・・波乱万丈、息もつかせぬスリルに満ちた戦闘の日々だった」

「オレはどちらかといえばキャプテン・ドレイクのような正統派の海賊だ。しかし、宇宙には海賊ギルドなどという宇宙のマフィア的な組織がある。正統派のオレとしては、ヤツらの残忍非道なやりかたが気にくわないのさ。オレは海賊ギルドの船に出会ったら、かたっぱしからヤツらの船を宇宙の藻屑に変えてやった」

「だが、一度そのギルドの船とやりあった時、その海賊船の船長、キャプテン・バイケンを逃がしたのはまずかった。ヤツはギルドの幹部で、オレを目のカタキにして付け狙っている。実にしつこいヤツだ。ご丁寧にもオレの顔写真を他のギルドの船長にも配りやがった。以来、オレは宇宙中の海賊から狙われるというありさま・・」

「しかし、オレの名はコブラ・・左腕にサイコ・ガンを持つ不死身の英雄さ・・・海賊コブラか・・サラリーマンのオレとは大違いだぜ・・・」

  ジョンソンは、まだ夢さめやらぬといった気分でハイウェイを車で走っていた。その時、対向車のライトが目に入った。気が付かないうちにハイウェイの対向車線を走っていたのだ。あわててハンドルを切る。車は柵を乗り越え繁みに入って止まった。対向車の男がいきり立って降りてきた。その男の顔を見てジョンソンは驚いた。
  コブラ 「おっ・・!・・こいつは奇遇だな。あんた海賊バイケンにそっくりだよ。コブラに部下を殺されただろう。つまりやつとは宿敵ってわけだ。・・・くく・・ははは。いやあ、なに夢の話さ。つまらん冗談さ。
  男はいきなりかくしもっていた銃を取り出すとジョンソンへ向けた。男は自分は海賊バイケンだと名乗りコブラの居場所を教えろと迫った。

その時、無意識にジョンソンはピストルでも持っているかのように左手を挙げ、バイケンへ向けて手のひらをかざした。突然、ジョンソンの左手から光の帯が発射された。光は海賊バイケンの腹に直径30センチほどの風穴を開けた。驚くジョンソン。そして自分の左手を見て更に驚いた。腕が吹き飛び、代わりに鈍く光る銃になっていたのだ。

  コブラ 「な・・なんだあ、こいつはーー」

「冗談じゃない。こんなもの人に見られたら大変だぜ」

020 召使ロボ(レディ) 「オカエリナサイマセ・・テメエ、ドウシマシタ?・・・アリャ、なんだその腕は!?」
  コブラ 「オレにもさっぱりわからんキツネにつままれたようだよ」
  召使ロボ(レディ) 「キツネにねえ?」
  コブラ 「ん・・・!?・・ベン・・まてよ・・おかしいぞ。」

「おい、ベン。オレはいつからここにいる?」

  召使ロボ(レディ) 「3年前だが・・・」
  コブラ 「変じゃないか・・考えてみればオレは3年前以前のことを覚えてないぞ!!」
  じっと覗く鏡の横にある仮面のような飾りにふれる。と、それはガタンと右に回り。鏡がスッと上にあがった。その中には、左腕の義手とホルスターに納められた銃があった。
  コブラ 「・・・・こいつはオレが夢で見たコブラのつかっていたものだ・・・そうだ・・・だんだん・・思い出してきたぞ・・・」
  その時、数人の男たちがドアを蹴破ると、いきなり発砲しながら部屋の中へ押し行ってきた。交錯するビーム。召使ロボ、ベンがジョンソンを庇ってビームガンの標的になる。ジョンソンは左手の銃を発射。男たちを一瞬に撃ち倒した。

壊れたベンの中からアーマロイド・レディが現れた。

  レディ 「コブラ、記憶が戻ったのね!!」
030 コブラ 「そうだ・・オレはコブラだ。左腕に銃を持つ男さ。」

「しかし・・レディ。人間なんておかしなもんだな。スリルに満ちた生活をしている時は平凡な生活を望み、いざ平凡な生活を続けてみると今度はスリリングな世界にあこがれるとはね」

「オレの顔はわれてしまった。また、危険な世界へ逆戻りだ。」

  レディ 「まあ、それもいいじゃない」
  惑星ダグザート。ヘドバ・シティー。エアバイクを飛ばしてコブラが砂漠を走り抜けてくる。

コブラは、とあるバーへと入っていく。中にいた男たちが一斉にコブラを振り返る。因縁をつけ始める男たち。騒然とした雰囲気になった。男たちがコブラへ襲いかかった。間髪をいれず、銃弾が男たちを打ち抜いていた。コブラの前に、銃を片手に持って立つ女の姿があった。

  ジェーン 「こいつらはお尋ね者よ。首にそれぞれ3,000ドルかかっているわ」
  コブラ 「そういうあんたは重犯罪者捕獲人ひらたくいえば賞金稼ぎらしいな」
  続いて2人の男をジェーンの銃が撃ちぬいた。
  ジェーン 「ドミンゴにベルガか・・・これで6000ドル増えたわ」
  コブラ 「カッコいい!サインしてもらいたいね。あの早撃ちジェーンってのはあんただろ」
  ジェーン 「フフフ・・残念ながらあなたがドグを殺したので3000ドル損したわ」

「ロボット保安官がきたようね」

  コブラ 「あらら、いやな者が来たよ」
040 ジェーン  「わたしの認識番号はR223。手配中の4人を捕獲したわ」

「あら・・・わたしが撃ったレーザービームの他にもうひとつの跡が・・ま、まさか・・ん?いない」

「あの男いつの間に消えたのかしら・・。ただ者じゃないわね。わたしより先に撃っていたなんて・・しかもそんなそぶりさえみせずに・・・」

  街の郊外、コブラがエアバイクを肩に乗せ歩いている。
  コブラ 「ひい〜〜〜っ、このボロめ。なんでこんなところでエンコするんだい」

「でも顔変えててよかったねえ・・あの女、オレがコブラだと知ったらよだれ垂らして追いかけまわすぜ。なんせオレには天文学的な額の賞金がかかっているからな」

「え〜と、あれはどこだっけ。あった、あった!快男児コブラここに眠る・・・か。いやあ、泣かせるねえ・・」

  ジェーン 「こんな夜更けにお墓参りとは変わったご趣味だこと」
  コブラ 「あんたは酒場にいた女、ど、どうしてここへ!?」
  ジェーン 「あなたが何者なのか急に興味が湧いてきたのよ」
  コブラ 「で・・ここまでつけて来たってわけか。あんたこそ悪趣味だぜ。女のくせに夜の酒場をうろつきまわるとは」

「おまけにここはよくバケモノが出るんだ。そいつは綺麗な女の子を見るとすぐ血を吸いたくなるって話だぜ」

  ジェーン 「とぼけるのはよして。わけを聞かせてくれない?あの海賊コブラが3年前ここで死んだって話は聞いてるわ。この墓がそうなのね」

「で・・今時分コブラの墓に何の用なの?」

  コブラ 「じ・・じつはコブラが生前、電車賃に困ってるオレにお金を貸してくれたんで、そのお礼に来たなんて・・」
  ジェーン 「もちろん信じないわ!」
050 ジェーンがいきなりレイガンを発射した。レーザーがコブラのホルスターを撃ち落した。
  コブラ 「よ・・・よせよ、危ないじゃないか。ズボンが脱げたらどうする」
  ジェーン 「私はね、こう思うのよ。あのタフガイのコブラのこと・・・そう簡単に死ぬはずが無い・・ひょっとしてどこかで生きてるんじゃないかって・・。例えば顔を変えて別人のふりをしたりしてね・・」

「今のは脅しよ。今度は心臓をぶち抜くわ」

  コブラ 「そ・・・そんな冗談だろ」
  ジェーン 「あなたがコブラなら、サイコ・ガンを抜いたらどう・・・それとも・・・」

「あっ!」

  どこからか発射されたレーザーが、ジェーンのレイガンを弾き落とした。
  ジェーン 「しまったヤツらだわ・・つけられた!」
  いつのまにかコブラとジェーンの周りを男たちが取り囲んでいる。その中にひときわ目立つ人影があった。特殊偏光ガラスのスケルトンボディーを持つ、コブラの生涯の宿敵となる、クリスタルボーイである。
  クリスタルボーイ 「手を挙げろ!頭を吹っ飛ばされたくなかったらな」
  コブラ 「さすが墓場だな。妙なバケモノが出てきた」
060 ジェーン  「残念ながらお化けより始末が悪いわ。海賊ギルドの殺し屋たちよ」
  クリスタルボーイ 「ククク・・・ジェーン・ロイヤル探したぞ」
  ジェーン 「知らない名ね。誰のことかしら」
  クリスタルボーイ 「お前がジェーン・ロイヤルかどうかはすぐにわかるさ」
  クリスタルボーイの右腕につけられているカギ爪がジェーンの衣服を剥ぎ取った。ジェーンは咄嗟に身をかがめる。その背中一面にくっきりと刺青が彫られていた。
  クリスタルボーイ 「ククク・・その財宝の隠し場所を秘めた刺青が証拠だ」

「一緒に来てもらうぞ」

  コブラ 「お話中、申し訳ないがオレは部外者だ。帰ってもいいだろ?ママが心配するんだ」
  クリスタルボーイ 「フフフ・・いいとも・・今夜のことは綺麗さっぱり忘れるんだな」
  コブラ 「そうするよ。オレは物忘れが激しいんだ」
  クリスタルボーイ 「あばよ、帰ってせいぜいママに甘えるんだな・・」
070 コブラ  「ちぇっ・・嘘つきめ。ああいうのは後ろから平気で撃つタイプだ・・」
  いきなり男たちがコブラの後ろからレイガンを撃った。コブラはジャンプすると、木の枝を使ってクルリと前転すると左腕のサイコ・ガンを撃った。サイコ・ガンはその弾道を右に左に曲げ、木の陰に隠れた男たちを撃ち抜いていく。男たちは次々にサイコ・ガンの餌食となっていった。
  クリスタルボーイ 「サ・・サイコ・ガンか・・・死んだと聞いていたが・・しかし、間違いないヤツは!コブラだ!!」
  銃撃戦を避け草の影に隠れていたジェーンの元へコブラが現れた。コブラはジェーンを誘い、自分の墓の前までくると墓石をずらす。そこには地下へと通じる階段があった。

階段を降り、目の前の扉を開ける。重く軋む音をたてながら扉が開くと、そこには巨大な宇宙船があった。

  コブラ 「オレの愛船タートル号だ。名こそタートルだが速さは宇宙一さ」
  タートル号へ乗り込むコブラとジェーン。操縦席でアーマロイド・レディが出迎えた。
  レディ 「コブラ!今までどこをほっつき歩いていたの」
  コブラ 「今夜は月が綺麗でね。散歩してたのさ」

「レディ、エンジンの調子はどうだ?」

  レディ 「ええ、3年間も放っておいたんで、かなり機嫌が悪かったけど・・・大丈夫、調整しておいたわ」
  コブラ 「じゃ、すぐ出発だ!」

「脱出口を開く。スタンバイ!レッツ・ゴーー!!」

080 タートル号の噴射ノズルが火を噴き上げ、一気に上昇していく。地中より、湧き上がるように大量の土を巻き上げ、地上の海賊ギルドの兵を蹴散らすと、夜空へ飛び立っていった。

クリスタルボーイが飛び立っていくタートル号を見つめながら呟いていた。

  クリスタルボーイ 「コブラか・・・いやなヤツが敵についたな・・」
  ジェーン 「コブラ・・・海賊ギルドさえ震え上がる男・・・そのあなたが生きていたとはね」
  コブラ 「で・・・賞金稼ぎのあんたとしてはどうするかな!?銀河パトロールにオレを売り、賞金の額でも増やすかい?」
  ジェーン 「フフフ、そんな事しないわ。あなたを敵にまわしてもソンだもの」

「ところで、あなたキャプテン・ネルソンの隠し財宝のことを知ってる?」

  コブラ 「知ってるとも、オレは彼の大ファンだったんだ。20年前、星がそっくり買えるほどの莫大な財宝を残したまま死んだらしいな」
  ジェーン 「彼には三つ子の娘がいたのよ・・・自分が死ぬ時、財宝のありかを娘の体に残したの」
  コブラ 「ま・・まさか、あんたネルソンの娘だというんじゃ!?」
  ジェーン 「そのとおりよ、この刺青がその隠し場所の地図になっているの。でも・・・これはひとりでは意味が無いわ」

「3人の刺青が揃って初めて地図として完成するのよ」

  コブラ 「ほう!ほかの二人にもあってみたいね」
090 ジェーン  「もう一人はこの星にいるのよ。・・しかし、私一人じゃどうにもならない。コブラ、あなたのような男を探していたのよ・・・この話に乗ってみない?」
  コブラ 「いいねえ、探し出すのがキミのような美人で・・・しかも財宝つきとなれば嫌でも乗りたくなる」
  ジェーン 「じゃ、決まったわね。財宝は山分けってことでどう?」
  コブラ 「ますます結構!」

「で・・・その第二の美人はどこだ?」

  ジェーン 「2百マイル北のシドの刑務所よ」
  コブラ 「け・・・刑務所!?」
  ジェーン 「だから言ったでしょ!私一人じゃだめ・・・あなたの助けがいるのよ」
  コブラ 「トホッ・・でも、刑務所にいるとは言わなかったじゃないか」
  シド・タウンの上空を飛行するタートル号。ジェーンとコブラの姿がシド・タウンの雑踏の中にあった。
  コブラ 「さて、どうやって刑務所へもぐりこむか・・だな」
100 ジェーン  「あら、簡単じゃない」
  コブラ 「えっ!?どうやるんだい・・・」
  ジェーン 「こうやるのよ!」
  ジェーンはいきなり両手でコブラを押した。不意を突かれ、コブラはショーウンドウを突き破って倒れこんだ。
  ジェーン 「だれか〜〜っ、ドロボウよ〜〜〜っ」
  コブラ あ〜〜あ、好き勝手にやってくれちゃって、もう〜〜〜っ」
  けたたましいサイレンを鳴らしながらパトカーがやって来ると、コブラを乗せて走り去っていった。
  ジェーン 「まかせたわよ・・コブラ・・」
  一人街角を歩くジェーンをクリスタルボーイが狙っていた。何も知らず近づいてくるジェーンに麻酔針を射ち込む。ジェーンは声も上げる暇もなく、その場に倒れた。
  クリスタルボーイ 「ククク・・世話の焼ける女だ・・・」
110 刑務所へもぐりこんだコブラは早速、刑務所内を探索に出かけた。資料室で女囚に関する記録を探す。
  コブラ 「・・おっ、出てきたぞ・・ああん!なんだこれは!?」

「イザベラ・スミス・・一万ドル金星出荷・・サンドラ・パーク・・一万五千ドル・・アルタイル星出荷・・なんだこりゃ・・」

「こ・・これは囚人たちの売上リストだ!なんてこった、ここは刑務所を隠れ蓑にした大掛かりな奴隷市場らしいいぞ!!」

「あの所長シュルツとか言ったな・・・たいしたくわせ者だぜ。奴隷商人だったとはな!」

「妙だな・・・イレズミの女に関する資料がどこにもないぞ・・売られたにしろ伝票が残っているはずだが・・」

  そこへ2人の女サイボーグたちが現れた。女たちの攻撃に防戦一方のコブラだが攻撃の際に外れた高圧線に感電させた。女サイボーグは機能を停止する間際、コブラの首筋にキスをするとその機能を完全に停止した。

海賊ギルドのアジト。クリスタルボーイの見つめる円筒のガラスケースの中にジェーンが浮かんでいる。その背中にはくっきりと刺青が見てとれる。

  クリスタルボーイ 「やはり、一人だけではどうみてもただの刺青だな」

「この女の刺青が隠された財宝の地図となるには・・・どうしても他の二人の刺青の女を探す必要があるということか」

「この女がシド・タウンに来たのは単なる偶然なのか・・それにしてもコブラの動きも気になる。ヤツはこの町に来て以来、急に姿を消している・・・」

  シドの刑務所では、二人の女サイボーグが倒されていることで騒ぎが大きくなっていた。

コブラの収監されている17号室に所長のシュルツがやってきた。

  コブラ 「なんの用だ、ルームサービスを頼んだおぼえは無いぜ」
  シュルツ 「むう・・・あれはなんの真似だ」
  シュルツは部屋の上の隅にある、監視用のテレビカメラにかぶされている包みを見て言った。
  コブラ 「オレの神経はデリケートでね。人目があると落ち着いて眠れないんだ」
  シュルツはコブラの首筋にうっすらと残る口紅の跡を見てにやりと笑った。
120 シュルツ 「死の接吻と言うのをしってるかな?」
  コブラ 「死の接吻?」
  シュルツ 「その首筋についている口紅の跡・・・そいつがそうだ」
  コブラ 「なに!?・・・どういことだ・・・」
  シュルツは部屋の外へ出ると独房の扉を閉じた。扉の外からマイクでコブラに話し掛ける。
  シュルツ 「あのサイボーグは面白い癖があってな・・自分が殺すと決めた相手にはキスをするのさ。それが・・つまり死の接吻だ」

「あいつらをやったのはキサマだ!フフフ・・・犬め!銀河パトロールのまわし者かっ」

  コブラ 「ほう、刑務所の所長がなぜ、銀河パトロールをおそれるんだい」

「つまり刑務所ってのは表向き・・その裏でやってる奴隷売買を知られては困るというわけかい」

  シュルツ 「フフフ・・そこまで知られたんでは・・・生かしてはおけないようだな!」
  シュルツがボタンを入れる。そのとたん、独房の底がせり上がり、天井めがけて上がっていく。

コブラは床と天井に挟まれ、徐々に押し潰されていく。ガシーンと音がして床と天井が完全に張り付いた。

  シュルツ 「素手で強化サイボーグを倒した男か・・・フフフ、何者か知らんが惜しい男だ」
130 看守がシュルツに耳打ちする。ギルドからクリスタルボーイが面会に来ていると言う。シュルツは渋い顔をした。

所長室ではクリスタルボーイが深々と椅子に腰をおろし、グラスを片手にシュルツが来るのを待っていた。

  クリスタルボーイ 「これはこれは、シュルツ所長。失礼して一杯やっているぜ」
  シュルツ 「ほう!サイボーグのお前に酒の味が判るのかね」
  クリスタルボーイ 「こいつはクセってやつさ。生身の体の時の習慣が残っていてね。そう・・・クセってやつだ」
  シュルツ 「お前がここへ来たのは酒を飲むためじゃあるまい。用件を聞こうか」
  クリスタルボーイ 「いや、なに・・・海賊ギルドの幹部でありながら務めを果たさず・・それどころか裏切り行為をやってる者がいるらしくてね」
  シュルツ 「ボーイ、口の利き方に注意しろよ。お前が話している相手はお前の上司なんだぞ。忘れるな!」
  クリスタルボーイ 「しかし、オレにはギルドに真実を報告する義務があるんでね・・。ギルドはイレズミの女を捕らえたらすぐ本部へ送還せよと命令を出したはずだ。だがそれを無視する者がいてね・・」
  シュルツ 「言葉には注意しろと言ったはずだ。お前はわたしがその女を隠していると言いたいらしいな」
  クリスタルボーイ 「イレズミの女に隠された財宝は絶大な力を持っている。それを一人の人間が手に入れれば銀河パトロール・・いや、ギルドの力にも対向しうる・・」

「オレは別にケンカを売りに来たんじゃない。手を結ぼうと言うんだ。もう一人のイレズミの女はオレが持ってる。そして、あんたは第二の女を持ってるわけだ・・・」

140 シュルツ 「フッフフフ・・面白い話だが、ここにはそんな女はおらんよ。さっさと帰ることだな」
  クリスタルボーイ 「そうかね、イレズミの女を嗅ぎつけたのはオレ一人じゃないぜ・・・今夜、ここに一人面白い男が潜り込んだはずだ」
  シュルツ 「なにい!?」
  通信機から17号室の独房の、潰れた筈の男が消え、壁の側面に穴が開いて、そこから脱出しているという通信がはいった。
  シュルツ 「な・・・何だって、消えた!?・・・ヤツは銃など持っていなかったぞ!」
  クリスタルボーイ 「フフフ・・・ヤツならやるさ。左腕に銃を持つ男・・・コブラならな・・・」
  シュルツ 「コ・・・コブラ・・あの囚人がコブラだと?し・・信じられん」
  クリスタルボーイ 「顔を変えたのさ・・そしてヤツもまた刺青の女を探しにやって来た・・」

「面白くなってきたな。あんたの部下にあのコブラが捕まえられるかな?」

  排気口の中を走るコブラ。次々と飛んでくる追跡者のエアーリフトからレーザーが発射され、排気口の壁を撃ち抜いて飛び去っていく。コブラは目の前に開いた直下排気口へ飛び込んだ。一気に落ちるように滑っていく。コブラは直下排気口を700メートル滑り落ち、出口の先にある貯水池の水面へ叩きつけられるように落下した。
  シュルツ 「クックク・・殺す手間が省けたようだな」
150 クリスタルボーイ 「そうかな、それは並みの人間ならの話だ。ヤツがコブラだと言う事を忘れるなよ」
  シュルツ 「フッ・・バカな!貴様はコブラをかいかぶりすぎている。コブラとて所詮は生身の人間だ」

「よし!非常体勢は解除だ。サーガンに死体を引き揚げさせろ」

「さてと・・・もうひとつ残っていたな」

  シュルツの無気味な笑いが響く。クリスタルボーイの周りを看守が取り囲む。
  クリスタルボーイ 「ほう・・これは一体なんの真似だ」
  シュルツ 「なに、さっきの話にのろうって言うんだよ・・もっとも、手を結ぶのはご免だがね。おまえの刺青の女はこちらへ頂こう」
  クリスタルボーイ 「そうか、やはり、キサマが第二の刺青の女を隠していたってわけか・・」
  シュルツ 「クックク・・苦労して探す手間が省けたぜ・・・そちらから飛び込んでくるとはな!」
  貯水池の上を飛行するエアーリフト。水中からエネルギー波が撃ち出された。エアーリフトが次々と撃ち抜かれ、水面へ落下していく。

水中ではサイコ・ガンを構えたコブラの姿があった。

  コブラ 「シュルツよ、オレは相当にしつこい人間でね・・刺青の女を見つけるまでは死なんよ・・」

その1 劇 終  その2へ続く・・。★クリックしてみるあるカ?

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