宇宙戦艦ヤマト 第26話
「地球よ!!ヤマトは帰ってきた!!」



001 西暦2200年9月、宇宙戦艦ヤマトは人類の破滅を救うべく、一路、地球を目指して航行していた。
その数日前、ヤマトは放射能除去装置を手に入れ、いまやイスカンダルを出発しようとしていた。
古代進の兄、守はスターシャとの間に愛が芽生え、再びイスカンダル国家を建設するべくこの星に残ったのであった。

ヤマトは航行スケジュールの遅れを取り戻すべく放射能除去装置を艦内で組み立てていた。
古代進 「銀河かぁ・・・」
島大介 「戻ってきたんだなぁ・・・」
古代進 「うん」
【相原】
「おい、地球との交信が回復したぞ」
長官(通信) 「・・・ヤ・・・ヤマトか!?こちら地球本部だ。放射能除去装置は手に入ったのか?」
古代進 「こちらヤマト。こちらヤマト。コスモクリーナーはほとんど組み立てを完了いたしました。
長官 「そうか、地球はギリギリのところで救われるぞ・・・ん?・・・おい、沖田艦長はどうした?」
古代進 「それが・・・実は、宇宙放射線病が悪化しまして・・・」
010 長官(通信) 「なんだと!それで・・・」
古代進 「あ・・・本部長!本部長!!」
【相原】
「電波状態悪化、調整中」
古代進 「そそらく地球側の出力が不安定なんだ・・・」
島大介 「エネルギーも多分、ほとんど無いんだろうな」
艦長室。ベッドに横たわる沖田を診察する佐渡がいた。
佐渡酒造 「んじゃ、また8時間したら薬を持ってきますわい」
沖田十三 「佐渡先生」
佐渡酒造 「ん?」
沖田十三 「人間は死ぬと魂が肉体を離れていくといわれているが、先生は信じるかね?」
020 佐渡酒造 「縁起でもないこと言うんじゃないよ艦長」
沖田十三 「いいんだよ佐渡先生。わしにはもうはっきりわかってるんだ」
「しかし、もう一度地球を見るまでは絶対に死なんぞ」
佐渡酒造 「艦長・・・」
沖田十三 「体を離れていったわしの魂は、結局どこ行くんじゃろうねえ」
第1艦橋。古代たちは近づく地球へ思いをはせながら、メインパネルに写る漂流する星屑を見詰めていた。
古代進 「さすが銀河だなあ。こんなのが漂ってるなんて星が多い証拠だ」
島大介 「ようし、これを通過したら、直ちにワープするぞ」
何も知らないヤマトの後を、追尾してくる一隻の戦艦がいた。ガミラス星の宮殿の下敷きになって死んだはずのデスラーが、旗艦デスラー艦に乗り、追ってきていたのである。
デスラー 「デスラー砲、発射用意」
【ガミラス兵】
「デスラー砲、発射用意完了」
030 デスラー 「ヤマトめ、デスラー砲の威力を見せてやるぞ・・・ハハハハハハ:::」(不敵な笑い)
デスラー砲の発射レバーを握る手に力が入る。
デスラー 「デスラー砲、発射」
高エネルギーの帯がヤマトを襲う。だが、同時にヤマトはワープに入っていた。デスラー砲は標的を見失い、空しく暗黒の宇宙空間へと吸い込まれていった。
デスラー 「どうした!」
【ガミラス兵】
「はっ!一瞬の差でヤマトはワープしたものと思われます」
デスラー 「追え!こっちもワープするのだ!」
【ガミラス兵】
「しかし、ヤマトの航路を探知するには時間が・・・」
デスラー 「ええい!ワープが先だ!」
宇宙空間にワープが開けたヤマトの姿がゆらりと現れた。
040 島大介 「ワープ終了、太陽系内に入りました・・・はぁ・・・」
安心したのもつかの間、突然、ヤマトに衝撃が襲った。
真田志朗 「あ!あれを見ろ!」
ヤマトの船体に突っ込むようにデスラー艦が先端からめり込んでいた。
デスラー 「・・・どうしたんだこれは・・・」
【ガミラス兵】
「ワープが終わる空間が偶然一致してしまったんです。ヤマトの横っ腹へ突っ込んでしまいました・・ですから我々は、ヤマトの航路探知をしてからワープをすべきだったんです・・・それを・・・」
デスラー 「何を喚いているのかね?そんな暇があったらヤマトへ斬り込む準備をしたまえ。ヤマトへ乗り移って白兵戦を挑むのだ。放射能ガスを送り込んで我々も突入するのだ」
徳川彦左衛門 「・・・みんな、大丈夫か?・・・あ・・ありゃなんじゃ・・・」
「みんなマスクを被れ!毒ガスだ!」
ヤマトの機関室内へガミラス兵が乗り込んできた。艦内を放射能ガスが充満してくる。徳川達は迫り来るガミラス兵と銃撃戦で応戦していた。
徳川彦左衛門 「古代!機関室だ。ガミラス兵がヤマトへ乗り移ってきた!」
050 古代進 「加藤、南部!行くぞ!」
機関室へ駆けつける古代たち。心配になって医療室から飛び出した雪とばったり出会った。
森雪 「古代君!」
古代進 「隠れてろ!雪!」
前方から、よろよろと徳川が現れる。
古代進 「!・・・徳川さん」
徳川彦左衛門 「ガスだ!ヘルメットなしではやられるぞ」
デスラー 「坊や、無駄な抵抗をするもんじゃない。艦長はどこにいるのかね?」
古代進 「艦長は病気だ。俺は艦長代理の古代。貴様は誰だ!」
デスラー 「ハハハハ・・・勇ましいな坊や」
「私がガミラスの総統、デスラーだ」
060 古代進 「デ・・・デスラー!?」
デスラー 「死んだと思っていたかね?ガミラスは死なんよ。このデスラーもな」
「我が大ガミラスとよく戦ってきたなお若い艦長さん。褒めておいてやろう。しかし、勝負はこれからだ」
古代進 「・・・何だ・・・」
デスラー 「ハハ・・・これは放射能ガスだ。充満すればヤマトの中は赤い地球と同じ状態になる。我がガミラス人はなんでもないが、確か地球人は放射能の中では生きられなかったねえ。ハハハハ」
古代進 「くそ!」
デスラー 「ハハハハハハ・・・!!」
【艦内放送】
「非常警報!放射能ガス、全艦に充満しつつあり。全員ヘルメットをつけよ!」
森雪 「・・・古代君・・・」
医療室から飛び出していく雪。組立工場へ走りこむと、組み立ての終わったコスモクリーナーDへ駆け上がった。
真田志朗 「おい雪!何をするんだ!」
070 森雪 「だって、機関室を中心に放射能が充満してくるのよ。これを使うわ」
真田志朗 「雪、やめろ!」
「雪、やめろ、まだテストもしてないんだぞ」
森雪 「今すれば良いじゃありませんか」
真田志朗 「雪!・・・ああぁ・・・」
放射能ガスが足元から徐々に充満し始める。
真田志朗 「雪、ガスだ!逃げるなら今だ!」
森雪 「でも古代君が・・・古代君が死んじゃう!」
真田はよろける足どりでコントロール室へ入ると雪に通信で呼びかけた。
真田志朗 「雪、AZのメインボタンをセットしたら、起動プラズマの振幅をプラスになるまで確認するんだ。わかったな!」
森雪 「振幅プラス25、プラズマ起動子、回転開始!セット、マイナス3度、始動!」
080 コスモクリーナーにプラズマが走り、空気を振動させ、白光を放射する。みるみる赤く淀んでいた放射能ガスが消え、空気を清浄化していく。
真田志朗 「やった!放射能ガスが消えたぞ!成功だ!・・・雪!!」
コスモクリーナーの操作台から雪の体が力なく落下した。
真田志朗 「雪・・・雪!!」
デスラー 「なんと言うことだ!放射能ガスが消えていくぞ!引き上げろ。地球型の空気の中ではこっちが宇宙服を着なければならん。動きが鈍ってまずい!」

「よし!作戦変更だ!」
真田志朗 「古代、無事だったのか」
古代進 「ええ、ガスが充満したとき非常用に宇宙服が近くにあったんです・・・」
真田志朗 「古代・・・雪が・・・死んだ」
古代進 「え?」
真田志朗 「空気が綺麗になった代りに、雪が・・・死んでしまった」
090 放心状態の古代はヘルメットを取り落とし、呆然と倒れている雪を見詰めている。
古代 「雪・・・」
真田志朗 「雪は君を助けたい一心で放射能除去装置を動かしたんだ。しかし放射能が消える過程で一瞬空気を猛毒性の酸欠空気にしてしまった。雪は身を犠牲にして放射能除去装置の問題点を教えてくれた。それは解決できる。古代、地球は必ず救われるぞ」
雪のもとへ駆け寄り嗚咽する古代。動かなくなった雪の体をその胸の中に抱きしめた。
古代進 「教えてください。僕はどうすれば良いんですか?雪のいない地球で一人ぼっちで生きていくなんて・・・」
沖田十三 「古代・・・お前一人ぼっちだと思っているのか?地球にはヤマトを待っている人が沢山いるじゃないか。君は、今度の航海を通してより多くの人間を愛すると言うことを学んだはずだ。そんなことでは雪は喜ばんぞ。古代、わしは今、地球を一目見るまでは死ねんと思っておる。それは何故だと思う。地球でヤマトの帰りを待っている人々と心が繋がっていると思うからだ」
古代進 「艦長、わかりました・・・いえ、わかったような気がします。辛くても努力します」
沖田十三 「古代・・・」
沖田の差し出す手を古代は力強く握り返した。

第1艦橋では、肉眼で見え始めた地球の姿に皆、懐かしさで沸き返っていた。
雪の安置されている部屋に古代はいた。
古代進 「雪・・・一緒に地球を見ような・・・」

「雪、初めて会ったときのこと覚えてるかい?地球防衛軍の司令部で会った時から、僕は君が他人に思えなかった。ヤマトへ一緒に乗り込めたらなぁって思っていたんだ。その後、君に対する僕の気持ちは自分で気付かぬうちにどんどん大きくなっていった。でも、ヤマトの使命を考えると僕にはそれが言えなかった。イスカンダルで兄さんがスターシャさんと残った時に僕ははっきりわかったんだ。人間の一生に一番大事な事は愛だ。それがあるから全てが生まれるんだって・・・だから、地球に無事に着いたら言おう、いや、きっと言う。君が好きだと言うことを、自分の気持ちを伝えよう・・・それなのに・・・」
100 第1艦橋へ雪を抱いて古代が入ってくる。皆、言葉も無くうつむいている。古代は雪を自分の席へ座らせた。
古代進 「雪、見えるかい地球だよ。あれが僕達の地球だよ・・・」
【ガミラス兵】
「ヤマト補足。前方10万キロ」
デスラー 「よし、デスラー砲用意」

「地球人よ思い知れ。最後に笑うのはこの私だ」
【太田】
「ああ!強力なエネルギーがやってきます」
真田志朗 「敵の波動砲だ!」
島大介 「全速回避!面舵一杯!」
【太田】
「エネルギーあと、1万キロ」
島大介 「避けられない」
真田がおもむろにスイッチを入れる。
ヤマトの船体が銀色に光り輝き、デスラー砲を弾き返した。
デスラー砲のエネルギーをまともに受け、デスラー艦は爆発、炎上し、宇宙空間へ四散した。
110 【太田】
「やった!デスラー艦が爆発したぞ!」
島大介 「一体どうして・・・」
真田志朗 「冥王星で見たガミラスの反射衛星砲にヒントを得て密かに開発しておいた空間磁力メッキが役にたったよ。さ、機関室の補修作業も完了だ。島、ピッチを上げて地球へまっしぐらだ」
島大介 「地球へ向けて全速前進!」
艦長室。赤く輝く地球を沖田と佐渡が眺めている。
沖田十三 「佐渡先生」
佐渡酒造 「あ?」
沖田十三 「わしをしばらく一人にしてはくれまいか」
静かにそっと立ち去ろうと後ずさる佐渡。
沖田十三 「佐渡先生」
120 佐渡酒造 「うぅ・・・」
沖田十三 「ありがとう」
静かに扉を閉じ、佐渡が出て行く。
沖田は今はもういない、家族の写真を眺め、涙を流している。
沖田十三 「地球か・・・何もかもみな懐かしい」
沖田は小さくつぶやくと静かに目と閉じた。
手から写真がヒラリと床に落ち、沖田の手が力なくだらりと垂れた。
佐渡が虫の知らせを感じて艦長室へ戻ってくる。そこで、眠るように目を閉じ安らかな顔の沖田を見、佐渡は敬礼し見送った。
古代進 「雪、静かなところへ行こうね」
古代の胸の中で雪の胸が小さく動いた。驚く古代。
古代進 「・・!」
森雪 「・・・古代君・・・あたしどうしたの・・・?」
古代進 「・・・雪!」
130 森雪 「古代君!無事だったのね!」
古代進 「雪!」
森雪 「嬉しい!」
133 息を吹き返した森雪の姿を第1艦橋の皆が嬉しそうに見詰めている。
佐渡が、艦長の死を伝えに第1艦橋へやってきたが、その光景をじっと見詰めていた。

地球がどんどん大きくなっていく。
ヤマトは14万8千光年の航海を終え、無事、地球へ戻ってきた。

ヤマトが地球へ還って行く。やがて地球は、青く輝く元の姿を取り戻していった。

西暦2200年、9月6日ヤマト生還。宇宙は何事も無かったかのごとく平和な時を息づいていた。
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