宇宙戦艦ヤマト 第25話
「イスカンダル!滅び行くか愛の星よ!!」



001 ヤマトはゆっくりと青く輝く惑星イスカンダルへ向かって降下してゆく。
島 大介 「高度500キロ、着陸点を探すため衛星軌道に移る」
「太田、観察報告を続けろ」
太田 「イスカンダル星。地球に似た大陸と大洋が認められます」
相原 「入りました。スターシアさんからの誘導電波が回復しました」
古代 進 「相原、メインスピーカーに切り替えろ」
相原 「はっ」
スターシア 《こちらイスカンダル星のスターシア。ヤマトの皆さんを歓迎します》
《皆さんにはイスカンダル星のマザータウンの海へ降りていただきます》
《着陸を誘導しますので操縦装置を私の指示に合わせて下さい》
《現在、地上の気圧は980ミリバール・・・》
N 西暦2199年、宇宙の侵略者ガミラスの攻撃を受け、充満した放射能で人類絶滅まであと1年と追い詰められる。その頃、14万8千光年を隔てたイスカンダル星から放射能除去装置を贈るというメッセージが入った。

その使者に旅立ったのが宇宙戦艦ヤマトであった。
ヤマトは途中、宿敵ガミラスを打ち破り数々の未知の挑戦をも克服して、今ここイスカンダルへと着いたのである。

スターシアの指示に従い、ヤマトはマザータウンの海へと着水した。
ヤマトのタラップを降りる、古代、雪、島、真田達
島 大介 「おい古代、あれは」
010 N 小高い岡の上から優雅に右手を上げて古代たちを迎える女性の姿があった。
古代 進 「お!スターシアさんだ」
真田志郎 「雪に似てるな」
スターシア 「ようこそイスカンダルへ。わたしがスターシアです」
古代 進 「古代進です・・えっと、こちら・・・」
スターシア 「!!サーシア!・・・あなたヤマトで一緒ならどうして連絡してくれなかったの!?」
森 雪 「・・・いいえ、あたしは・・・」
古代 進 「サーシアって・・・すると・・あの・・・火星で亡くなった方が・・・」
スターシア 「えっ!・・・サーシアは死んだのですか?」
「・・・するとあなたは・・・?
森 雪 「地球の女性です。・・・森 雪と言います」
020 スターシア 「あぁ・・・教えてください。妹のサーシアは火星でどうなったのです」
古代 進 「妹さんのロケットはガミラスに撃ち落され、火星に不時着しました」
「僕と、この島が第1発見者として駆けつけたんですが、サーシアさんは既に息をひきとっていました。・・・でも、そのロケットからわたしたちは放射能除去装置をとりにくるようにというあなたのメッセージと、波動エンジンのメカニズムを知ることが出来たんです」
スターシア 「妹は命懸けで私の使いを果たしてくれたのですね」
古代 進 「地球の恩人です」
スターシア 「しかし、地球を救うのは結局はあなた方です。はるばるイスカンダルまでやって来させ、あなた方の勇気と力を試したりして済みませんでした。でも、明日の幸せというものは、自分の力でしか獲得できないものですからね」
N 放射能除去装置は細かくパーツごとに別けられ、自動輸送機によって次々とヤマト艦内へ積み込みされていく。
佐渡酒造 「ふ〜ん、これが地球の大気から放射能をとる除去装置ねえ」
真田志郎 「完全品という形ではなかったんです。そこでパーツと設計図を受け取ることにしました私が地球へ還り着くまでにヤマトの艦内工場で組み立てます」
沖田十三 「宜しく頼む」
真田志郎 「本当はここで完成させ間違いないかどうかをイスカンダルの技師に見てもらってから行きたいのですが時間が切迫しているんです。予定より2ヶ月遅れています。9ヶ月目に還り着く予定がこの分では11ヶ月かかりそうです」
030 佐渡酒造 「そりゃ大変じゃ、ひとつ間違ったら間に合わんじゃないの。我々が還り着いた時は人類は全て死滅してるって事になる・・・」
徳川彦左衛門 「馬鹿な!」
沖田十三 「あり得ない事ではない。とにかく全力を尽くそう。今、我々に出来るのはそれだけだ」
N ヤマトの乗組員達は、イスカンダル星の高度に進んだ文明に驚いていた。
乗務員A 「凄いや、これは科学が到達したひとつの理想郷ってとこだぜ」
アナライザー 「左ヲゴ覧クダサイ。アノ島ハ全テ、ダイヤモンドデ出来テオリマス」
N 丘の上、サーシアの墓の前で祈るスターシア。その後ろに古代と雪の姿があった。
スターシア 「お葬式に参列してくれてありがとう。古代さん。雪さん」
「これで妹のサーシアもイスカンダルの大地に還る事ができました」
森 雪 「あの・・・スターシアさん」
スターシア 「何です?」
040 森 雪 「わたしたちイスカンダルへ来て方々を見せて頂きましたけど、あなたの他に人に出会うことがありません。皆さんどこにいらっしゃるんですか?」
スターシア 「ここです」
森 雪 「えっ!」
古代 進 「それじゃ、イスカンダルの人たちはみんな死んでしまったんですか?」
スターシア 「そうです。・・・王家の娘である私とサーシアが最後のイスカンダル人でした。妹のサーシアを葬った今、イスカンダル人は私しかいません」
森 雪 「・・・恐ろしい・・・どうしてそんな事になってしまったんですか?」
スターシア 「運命ですわ」
「全てのものには運命があり、定められた寿命というものがあります。このイスカンダル星とあのガミラス星は2重惑星。ふたごの星として誕生したのですが、星としての寿命が終わりに近づいているのです」
「そこでガミラス星の人たちは地球を第2のガミラス星として乗っ取ろうとして自滅したのでした」
「私たちイスカンダル星の者は、よその星に迷惑をかけたくはありません。運命を黙って受け入れるだけです」

「タウンへ帰りましょ。引き合わせたい人があります」
古代 進 「えっ!この星に他に誰か居るんですか?」
スターシア 「地球の人が一人・・・」
古代・雪 「地球の人!?」
050 スターシア 「ヤマトが還る時、連れて帰ってあげて下さい」
N 夜、光り輝くマザータウンの中を、スターシアに連れられて古代と雪が歩いていく。
医療室の前でスターシアが止まる。ヒュルヒュルと自動ドアが開くと、部屋の中央のベッドに横になっている人影が見えた。

その人物の顔をじっと見つめる古代。すると気配を感じて、ベッドの人物が目を覚ました。
古代 守 「・・・す・・・進じゃないか!?」
古代 進 「・・・あぁ・・・に・・・兄さん!」
古代 守 「進!」
古代 進 「生きていたんだね兄さん!・・・兄さん!!」
N 生きていた再会に喜ぶ古代の兄、守と進。その姿に雪の頬に涙が流れる。
スターシアは悲しそうにその部屋を出て行った。

スターシアの部屋。顔を覆い、悲しみに泣くスターシア。細い肩が小さく震えている。
スターシア 「ううぅ・・・・・・・」
森 雪 「スターシアさん」
「・・・黙って入ってきて御免なさい」
スターシア 「・・・いえ、いいのよ。・・・あの方は、古代守さんはね、ガミラスが研究のために捕虜にしたらしいんですが、ところが、その宇宙ロケットも難破したらしくてイスカンダルの近くを漂流していりるのをお助けしたのだけれど、それは酷い怪我と宇宙病でした」
「・・・でも、もう大丈夫です。地球へ還れます」
060 森 雪 「スターシアさん・・・」
スターシア 「えっ・・・」
森 雪 「あなた、古代 守さんを愛してらっしゃいますね」
N スターシアは驚いたように森雪の顔をじっと見つめた。
藪(やぶ) 「ところで本当ですか。その、せっかく放射能除去装置を持って帰っても手遅れって話」
徳川彦左衛門 「いやぁ、そういう場合もありうるってんだよ。そうと決まったわけじゃない」
「しかし、ふたつに一つは考えられるわけでしょ。だめな場合が」
徳川彦左衛門 「ん・・・?」
「・・・ね、オヤジさん」
徳川彦左衛門 「ん?」
070 「人類が全部死んでしまったとしてですね・・・」
「我々だけで暮らすとしたら・・・やっぱりこの星でしょうね?」
徳川彦左衛門 「藪!お前いったい何を考えておるんだ!」
N 古代守を乗せ、ボートがヤマトへ戻ってきた。
古代守はボートからそのヤマトの威容を見上げた。
古代 守 「これがヤマトか・・・」
N 艦長室に古代守の姿があった。
古代 守 「艦長!古代守であります」
「艦長!」
沖田十三 「古代!・・・よかった、よかった!生きていてくれて」
真田志郎 「!古代守が生きていたんだって!・・・あ・・・艦長・・・失礼しました」
沖田十三 「いやぁ、構わんぞ。君たちは同期生なんだ嬉しいだろう」
古代 守 「真田!」
080 真田志郎 「古代!この野郎!幽霊じゃねえだろうな」
古代 守 「相変わらずだなぁ、お前も、あはは!」
N 互いの肩を抱き合い、再会を喜ぶ真田と守。そこへ、一升瓶を箱で抱えて、佐渡が入ってきた。それに続くヤマトクルー達
佐渡酒造 「いやぁ!目出度い目出度い!」
N 古代守の帰還を喜ぶヤマトクルー達。その影で、藪たち一部の乗組員達に不穏の動きがあった。
森 雪 「あぁ、あなた?私を呼び出したの。何よ、大事な用って」
「すいません。お話があるんです。ちょっとこっちへ来てください」
森 雪 「あ・・・ん・・・わかったわよ。手をを放してよ。痛いじゃないの」
N 再び、ヤマト艦長室。古代守を囲んで、今までのいきさつを聞いている。
古代 守 「数日前までは僕は意識を失っていたらしい。元気になれたのもスターシアのおかげなんだよ」
090 相原 「でも、死体同様の人間を生き返らせるなんて凄い医学ですね」
古代 守 「そういうことだ」
佐渡酒造 「ささささ、ぐ〜〜っと空けよう。ぐ〜〜っと、あ〜〜ほんとめでてえなぁ」
古代 進 「兄さん・・・」
古代 守 「ん?」
古代 進 「ね!スターシアさんにも一緒に地球に来てもらいましょうよ」
N マザータウンの一室。スターシアは進の申し出に頭を大きく横に振った。
古代 進 「何故です。スターシアさん。そうすればあなたも幸せに暮らせるじゃありませんか」
スターシヤ 「滅び行く星と言っても、イスカンダルが無くなってしまうには、まだ数万年、数十万年の間があります。私には見捨てられません」
「それに・・・」
古代 進 「それに・・・?」
100 スターシア 「地球には私が好きになれないタイプの人が居ます」
古代 進 「はっ?」
スターシア 「いらっしゃい」
N スターシアが手をかざすと、メインモニターに藪たち一団の姿が映った。
古代 進 「何をしてるんです?」
スターシア 「どうやらこの星に残りたい方がいらっしゃるようですよ」
古代 進 「えっ!」
スターシア 「ダイヤモンド大陸のホワイトキャッスルです。そこへ篭ろうとしているようです」
古代 進 「とんでもない!すぐ止めます!」
スターシア 「そうしてください。あの大陸はおそらく今夜中に海の底へ沈むでしょうから」
110 古代 進 「何ですって!」
スターシア 「地震計がマントルの異常な動きを記録しています。ガミラス星の地殻爆発がこの星にも影響を及ぼしているのかもしれません」
古代 進 「・・・!!・・・あ・・あの・・また来ます」
N ヤマトへ戻った進を島が迎えた。
島 大介 「機関士の藪たちが脱走したぞ」
古代 進 「えっ!」
徳川彦左衛門 「監督不行き届きで全く面目ない」
相原 「藪機関士からの通信です。メインスピーカーに切り替えます」
『古代!艦長代理、古代はいるか』
徳川彦左衛門 「馬鹿もん!もどれイ!」
120 古代 進 「俺だ!古代だ!」
『我々12人はこの星への残留を希望する。許可されたい』
古代 進 「そんな許可ができるか!命令だ!艦へすぐ戻れ!」
『そうくると思った。戻る意志はないね』
古代 進 「藪機関士!地球がどうなってもいいのか!おい!地球の人がどうなってもいいのか!藪!!」
「人類の未来を考えたからこそ、脱走したんだよ」
「俺たちがここに残っている限りヤマトに事故があろうと、地球に何が起ころうと人類は子孫を失わない」
「もしヤマトが成功すれば・・・」

『・・・人類は地球とイスカンダルの両方で栄える。なお結構な事じゃないか』
古代 進 「おい、君はどうかしてるんじゃないのか!男ばかりで居残って子孫が続くも無いもんだろう」
『心配するな花嫁はいるよ』
古代 進 「何ぃ!?」
森 雪 『古代君!」
130 古代 進 「雪!!」
『我々を攻撃しようなんて気を起こすな。以上だ』
古代 進 「クソ!人質にとったな!汚いぞ!!」
『では通信を終わる』
古代 進 「待て!藪機関士。そこはいかん、命が危険なんだ!」
「ダイヤモンド大陸は今夜にも海の底へ沈没するんだぞ!」
『はははは・・・古代、君はもう少し利口な男だと思っていたんだがね』
古代 進 「本当だよ!俺が言うんじゃない!イスカンダルの地震データから出された結論だ。そこから移動してくれ!頼む!!」

「・・・もしもし・・・もしもし・・・おい!藪!!もしもし!」
太田 「津波が来ます!!」
N 不気味な唸りを上げまがら海が逆巻き、巨大な津波となって押し寄せてきた。
古代 進 「島!上昇だ!」
「徳川機関長お願いします!」

「加藤居るか!救援ヘリコプター出動。災害救助に備える」
140 島 大介 「補助エンジン作動!全員ベルト着用!」
N ヤマト艦内は緊急警報が鳴り響き、離陸へ向けて各部署は慌ただしく動き始める。

ダイヤモンド大陸を巨大な地震が襲う。沖からは大津波が押し寄せてきていた。不気味にゆれるダイヤモンド大陸。ガラガラと音をたて岩盤が崩れ始めている。

次々と高波が島を襲い、ダイヤモンド大陸は地下からマグマを噴出し、陸地は地獄図絵と化していった。

救助艇が雪を見つけ、ロープをのばす。雪は間一髪、ダイヤモンド大陸からの脱出に成功した。

翌朝、ヤマト艦長室。沖田の周りにスターシア、守、古代進、森雪、徳川機関長の姿がある。
島 大介 「発進準備完了しました。地球に向け出発したいと思います」
N 古代が沖田の顔を覗き込む。何か判断を沖田に求めているように見える。
沖田十三 「君に任せたはずだぞ」
古代 進 「・・・全艦発進。部署に着け」
島 大介 「はっ!」
徳川彦左衛門 「・・・いろいろご面倒をおかけしましたが、藪という男も私にとっては可愛い部下でした。どうぞ、許してやってください」
N スターシヤは優しく微笑むだまってとコクリとうなづいた。徳川機関長は頭を下げると、島と一緒に艦長室を出て行った。
沖田十三 「スターシアさん、本当に私たちと地球にいらっしゃらんか?」
150 スターシヤ 「お気持ちは嬉しいのですが、私はイスカンダルを離れる事はできません」
沖田十三 「・・・そうですか。・・・では、いつまでもお元気で」
N 沖田の差し出した手をスターシアが握り返す。

ゆっくりとタラップを降りるスターシア。その後を追うように、森雪が続く。
森 雪 「スターシアさん。・・・いいんですか?古代守さんを連れて帰って」
N 雪の問いかけに、スターシアは歩を止めた。
森 雪 「運命を受け入れるだけでは愛は実りませんわ。あなたは私たちにおっしゃったじゃありませんか。明日の幸せは自分の力で掴むものだって」
N 悲しげなスターシア。ちらりと雪の顔を見ると、目を閉じてじっと佇んでいた。

タラップを降りるスターシア。目の前に古代進と守が待っていた。
守の前に歩み寄るスターシア。
じっと守の目を見つめる。その目を優しく見つめる古代守の顔があった。
古代 守 「さようなら・・・スターシア・・・」
スターシア 「・・・守・・・」
N スターシヤは頭を小さく左右に振った。別れたくない・・・。運命を受け入れながらも、愛しい人への気持ちはとめることは出来なかった。
160 スターシア 「・・・愛してるわ・・・守・・・」
N スターシアは両手で顔を覆い、タラップを駆け下りていく。その後を守が追った。
古代 守 「スターシア!」
古代 進 「兄さん!」
古代 守 「進!許してくれ!」
N 守るは振り向き、一言、進にわびると連絡艇で待つスターシアを力いっぱい抱きしめた。スターシアも両手で守にしがみつく。たがいに身体を預け愛しい人を強く抱擁した。
古代 進 「兄さん!元気でね!」
古代 守 「がんばれよ!進!」
森 雪 「さよなら!」
ヤマトを離れ、遠ざかっていく守とスターシアを乗せた連絡艇にいつまでも手を振っていた。
170 古代 進 「兄さんとスターシアさんは新しいイスカンダルのアダムとイブになったんだ」
「さあ雪、俺たちも行こう」

「地球へ向けて出発!」
こうしてヤマトは地球へ向かった。
14万8千光年、まだ旅路は遠い。
跳べ!ヤマトよ!!地球の人々は君の還りだけを待っている。
人類絶滅といわれる日まで、あと131日
inserted by FC2 system