宇宙戦艦ヤマト 第20話
「バラン星に太陽が落下する日!!」


その他の声はその場の面々で適当に決めてください。

001 ナレーション 時に西暦2199年、地球は宇宙の謎の星ガミラスから遊星爆弾の攻撃を受け、その放射能汚染によって人類絶滅まであと1年と迫っていた。
地球で最初の高速を突破した宇宙戦艦ヤマトは、放射能除去装置獲得のためイスカンダルへと出発した。
イスカンダルは地球から14万8千光年の彼方、大マゼラン雲の中にある。現在の目標は中間地点バラン星。ヤマトには宇宙の灯台とみえるバラン星が実は謎の星ガミラスの地球侵略のための補給基地であった。ドメル艦隊を率いるガミラスの名将、ドメル将軍は太陽系方面作戦司令官としてバラン星に赴任してきた。バラン星を根拠地にヤマトを仕留めようと牙を研ぐ宇宙の狼、ドメル将軍
宇宙戦艦ヤマトは、今まさにバランへ到着しようとしていた。
島大介 「とうとう来たな。・・・おい、見てみろよ。とうとうほぼ中間まで来たんだぜ」
太田 「航海長、そんなにほっとしないでくださいよ。まだ半分しか来てないんですよ」
島大介 「問題は日程だけさ。今日で地球を出てから109日。予定では65日でバラン星を通過していなければならないんだ。このバラン星を通過すれば一気に大マゼラン雲のイスカンダルへ7万1千光年だ」
ナレーション 偵察機に乗りバラン星の調査に向かう古代とアナライザー。護衛に加藤のブラックタイガーがついている。
古代進 「直径はどのぐらいあるんだ?アナライザー」
アナライザー 「約、地球の2倍です」
古代進 「おい、あれは何だ?」
アナライザー 「戦闘隊長、あれは太陽です」
010 古代進 「太陽?」
アナライザー 「そうです、ここの太陽はちょっと変わっていて、バラン星の周りを回っています」
古代進 「ふ〜ん」
ナレーション 第一艦橋のメインパネルにバラン星が大きく映し出されている。
島大介 「どうですか?艦長」
沖田十三 「うむ、バラン星に間違いないようだ」
島大介 「ぼくはこれまでバラン星を灯台のつもりで飛んできたんだ。絶対に間違いないさ」
森雪 「でも、島くん。念には念を入れてっていう事もあるわ」
南部 「そうですよ。戦闘隊長の確認報告を待った方がいいんじゃないですか?」
ナレーション バラン星の上空を飛行する偵察機。コクピットから地上を見ながら古代が呟く。
020 古代進 「おかしな植物だな。みんな地下へもぐろうとしているぞ」
アナライザー 「あ、戦闘隊長。あれを見てください」
古代進 「お!基地だ・・・基地じゃないのか!?」
「おい、加藤、あの火口湖のあたりを詳しく探ってくれ」
相原義一 「艦長、古代から入電。バラン星に基地を発見しました」
沖田十三 「何、基地!?」
島田大介 「基地なんかあったのか・・・」
南部 「大丈夫かな・・・古代は」
古代進 「ほら、お出ましだ」
ナレーション 火口湖に作られた基地から無数のミサイルが発射された。
古代進 「へっ!そんな腰抜け弾に当たるかい」
「おっ!あれは何だ」
030 アナライザー 「あれは、ヤマトを襲撃した合体怪獣バラノドンの個体の死骸です」
古代進 「ひどい姿だ、どうなってるんだいったい」
アナライザー 「ヤマトより入電。古代、加藤両名はただちにヤマトへ帰還せよ」
古代進 「わかった。あのバラノドンの死骸を見ておれの気持ちは決まったぜ」
加藤 「古代、ここはおれに任せて先にヤマトへ戻ってくれ」
古代進 「バカヤロウ。おい、加藤、お前一人で何とかなると思ってるのか?」
加藤 「変ないきがりはやめろ。偵察機じゃ戦闘にはむかねえよ」
ナレーション ガミラス機が襲ってくる。加藤のブラックタイガーが機銃を撃ち、敵機を叩いていく。
古代進 「アナライザー、操縦を代われ」
加藤 「古代、早く戻ってくれ!」
040 アナライザー 「了解」
古代進 「アナライザー!何するんだ。おい!戻せ。やつらに立ち向かえ!おい」
ナレーション ヤマト格納庫へ偵察機が着艦する。
古代進 「おい、アナライザー。お前は加藤の帰還を見届けてから来い」
沖田十三 「相原、加藤に帰還命令を出せ」
相原義一 「はい。ヤマトより加藤へ。ヤマトより加藤へ。直ちに帰還せよ」
古代進 「艦長、バラン星のガミラス基地を叩きましょう。原住生物のバラノドンが大量に虐殺されているんです」
沖田十三 「バラノドン?」
古代進 「そうです。彼らのためにもあの基地は撃滅していくのが我々の使命です」
島大介 「古代!今ヤマトは44日も遅れを出してるんだ。大勢に影響がないのなら、一刻も早くイスカンダルを目指していくべきだ」
050 古代進 「おい、島!君はバラノドンがどうなってもいいって言うのか?たとえあいつらが未進化の動物だとしても迫害されているものを見て見ぬ振りしていくようなことは絶対出来ない」
島大介 「どうです?艦長。決断してください」
沖田十三 「基地を潰していく。後顧の憂いを断つという意味でも基地を残していくわけにはいかん」
相原義一 「艦長。加藤のブラックタイガーが帰還します」
ナレーション そのころドメルは艦隊を率いてバラン星から50万キロ離れた宇宙空間に待機していた。
艦橋の中をいらいらと歩き回るゲールにドメルの声が飛ぶ。
ドメル 「落ち着けゲール。待つのだ。じっと待つのだ」
ゲール 「ドメル司令、なぜこんなじれったいことをしてるんです。我々はヤマトを倒すに充分な力を持ってるではありませんか」
ドメル 「焦るなゲール。戦いは勝てばいいのだ。派手にやるだけが戦いではない。バラノドンの虐待された姿を見せてその使命感をくすぐり、加えて基地の手薄な様を見せ付けるんだ」
ゲール 「わたしにはわからん。そんなことでヤマトを潰せるんですか!?」
ドメル 「ははははは、ヤマトは必ず俺の罠にはまる。バラノドンの姿を見て彼らは救世主のような気持ちになっているに違いないのだ。しかしそういう安直なヒューマニズムほど扱い易いものは無い。ヤマトは必死でここまで来た。我々の抵抗があればあるほど、彼等の使命感は強く煽られて来ているはずだな。その昂ぶりが落とし穴だ」
「ゲール、バラン星の人工太陽でヤマトを潰すのだ」
「ヤマトが基地に突っ込むのを受けて、基地も応戦する。当然ヤマトは基地に全ての神経を集中する。そこへ頭上から人工太陽を落下させ基地もろともヤマトを潰してしまう」
060 ゲール 「・・・ドメル司令・・・」
ドメル 「気がかりなのは、あの波動砲で人工太陽を吹き飛ばされてしまう事だが、わたしの計算によればヤマトが波動砲を撃つ前に人工太陽がヤマトにぶつかるはずだ」
ゲール 「司令!!基地を潰すなど・・・そのような事をしては!!」
ドメル 「ははははは、まあ見ていろ。我々はここでじっとヤマトの動きを見つめておればよい」
「ヤマト、射程距離に入りました」
ドメル 「よし、全ての対空砲に発射準備を指令しろ」
沖田十三 「総員戦闘配置につけ」
古代進 「ミサイル発射用意」
南部 「ミサイル発射用意」
古代進 「おい、太田。いいか、太陽の様子に充分注意しろ」
070 太田 「ん?太陽がどうかしたのか?」
古代進 「そんなことを説明している暇は無い。いいから言われた通りにしろ」
太田 「はい!レーダーで太陽の様子を監視します」
ナレーション バラン星からヤマトヘ向けて対空ミサイルが発射された。
太田 「ミサイル接近」
古代進 「主砲発射!」
太田 「主砲発射」
ナレーション 次々とミサイルを粉砕するヤマト。ドメルとゲールがモニタでその様子をじっと見つめている。
ゲール 「ヤマトがバラン基地に向かってきます」
ドメル 「ははは、自ら地獄へ突き進んでいるのだ。人工太陽へエネルギー伝達」
080 「人工太陽へエネルギー伝達」
ドメル 「よし、作動開始」
ナレーション ドメル艦から、作動命令が送信される。バラン星の人工太陽がゆっくりと動き始めた。
太田 「・・・な、なんだ・・・太陽がこっちに向かってくるぞ!」
森雪 「太田くん、いい加減な事言わないで」
太田 「嘘じゃない。見てみろ」
ナレーション メインパネルに大きく太陽が映し出される。艦橋内にどよめきが起こった。
島大介 「あれは、人工太陽だったんだ」
古代進 「おい島、艦首を人工太陽へ向けるんだ。あれを破れるのは波動砲しかない」
真田志郎 「間に合うか?艦首を立て直すには時間がかかるぞ」
090 太田 「しかもその間に我々は、ガミラス基地からの攻撃をモロに受けてしまう」
「ミサイル第4波接近」
ナレーション 前方にガミラスのミサイル攻撃、後方に人工太陽。ヤマトは前後を挟まれ、身動きできなかった。
太田 「距離12万、落下速度が加速されてきています」
沖田十三 「古代、船をお前に預ける。波動砲に全てを賭けろ」
古代進 「・・・はい」
「波動砲発射用意。エネルギー充填、面舵いっぱい」
島大介 「面舵いっぱい」
ナレーション ヤマトは艦首をゆっくりと人工太陽の方へ回していく。
古代進 「島、人工太陽に波動砲の軸線を合わせるのにどのくらいかかる?」
島大介 「最低300秒だ」
古代進 「おい、太田、人工太陽と出くわすのはあと何秒後だ?」
100 太田 「今、計算してます・・・!あぁ・・・あと290秒です」
ドメル 「ははははは、やっと方向転換を始めたか。だが、もう遅い。波動砲を構える10秒前には人工太陽がぶつかっておるわい。ゲール、見ておけ。戦いはこうして勝つものだ」
ゲール 「こんな・・・こんな無茶な・・・」
ナレーション ゲールは慌てて司令室を飛び出していった。ドメルが状況を見つめながら不敵な笑いをこぼしている。
ドメル 「ふふふふふ・・・」
ナレーション ガミラス基地から次々と対空ミサイルが撃ちだされ、無防備のヤマトへ着弾する。
真田志郎 「艦長!これでは船がもちません」
太田 「ミサイル接近、距離5千」
「左舷に被弾」
「第1装甲板大破」
古代進 「島、時間はどのぐらいある?」
島大介 「あと190秒だ」
110 太田 「人工太陽到達まであと181秒」
古代進 「よし、エンジンを停止して動力飛行で降下しよう」
島大介 「本気か?ガミラス基地の餌食にされるぞ」
古代進 「このさい、とにかく衝突を遅らせるほうが先だ」
太田 「距離3万6千。凄い加速です。衝突まであと70秒ジャスト」
古代進 「馬鹿な・・・やつらは自分の基地を巻き添えにするつもりなのか」
島大介 「だ・・・だめだ、こちらの方が5秒間遅れている」
古代進 「くそう・・・ヤマトもここまでか」
ナレーション 人工太陽がヤマトの上空へのしかかるように近くまで落下している。
艦長席で沖田が胸を押さえ、前かがみになり苦しそうに呻いている。
沖田十三 「う・・・ううう・・・」
120 森雪 「艦長・・・」
沖田十三 「・・・大丈夫だ・・・これがガミラスの戦術か・・・見事だ」
ドメル 「ふふふふ・・・勝った・・・」
ナレーション 司令室からモニタを見るドメルが勝利を確信したその時だった。
ゲール 「ドメル司令。デスラー総統からお電話です」

「デスラー総統からお電話・・・」
ドメル 「ええい、大事なところで!」
「はい、ドメルです」
デスラー 「ドメル将軍。君はヤマト一隻ごときを討ち取るのに我がバラン基地を犠牲にするつもりかね」
ドメル 「は?」
デスラー 「ゲールが知らせてくれたから良かった。君はとんでもない浪費家だよ。やめてくれたまえ」
ナレーション ドメルは唇を真一文字に噛み締め、ゲールをにらみつける。ゲールはそ知らぬ顔で顔をそむけた。
130 太田 「あ!人工太陽の動きが鈍りました」
古代進 「島!今だ。姿勢を制御しろ」
島大介 「よし!」
古代進 「ターゲットスコープオープン」
太田 「目標!艦首前方8千メートル」
南部 「エネルギー充填120%」
古代進 「エネルギー充填よし。発射10秒前。対閃光防御」
南部 「5・4・3・2・1」
古代進 「発射!」
ナレーション ヤマトの艦首波動砲が発射され、白光と共に人工太陽は膨張し渦巻き炎を巻き上げながら爆発した。ヤマトは炎を突っ切って行く。爆発し四散した人口太陽のかけらが次々とバラン星へと落下し、バラン星基地が爆発し炎上していく。

炎の中からヤマトがその威容を現した。その光景をモニタで見つめるドメルは歯噛みして悔しがっていた。
140 ドメル 「くそぅ・・・大事なときに・・・うぅ・・!!ちぇ!!」
ナレーション ドメルは手にしていた受話器を床に打ち捨てた。受話器が粉々に割れて散らばった。
島大介 「まったく生きた心地がしなかったぜ」
古代進 「俺達はよほど運が強いらしいな。しかし、あの人工太陽の落下速度がどうして急に鈍ったのかな・・・」
太田 「おい古代。その人工太陽だがな。どうしてそれと判ったんだ?」
古代進 「ま、それは雪たちが採集から戻ってくればわかることさ」
沖田十三 「古代」
古代進 「はい」
沖田十三 「後で艦長室へ来てくれ」
古代進 「はい!」
150 ナレーション 沖田はそういい残し、艦長室へ通じるエレベータを昇っていった。

ヤマトの艦尾着艦口にはバラン星から観測艇が戻っていた。
森雪 「古代くん、ご希望の物、採集してきたわ」
島大介 「おい、暴れないか?」
アナライザー 「心配いりません。大変おとなしいです」
太田 「しかし、この間はこいつが集合して襲ってきたんだがなあ」
古代進 「ガミラスの連中はまったく酷いことをするもんだよ。こんなおとなしいやつを戦闘用に仕込むんだからなあ」
太田 「おい古代、人工太陽の謎解きはどうなったんだ?」
古代進 「おい、アナライザー。植物も採ってきたか?」
アナライザー 「はい」
古代進 「このバラノドンをよく見ろよ。ほら、目がほとんど無いだろう。それは光の無い世界の証拠さ」
160 アナライザー 「はい、植物です」
古代進 「俺にその確信が沸いたのは、この植物が繁殖しているのを見たからだ。ほら、茎の先端がみんな下へ向かってるだろう。これはバラン星の地熱を求めてる証拠だよ」
太田 「そりゃそうだ。太陽があれば光に向かって伸びるはずだからなあ」
古代進 「うん。俺はあの太陽を見たときこれは間違いなく人工太陽だとそう思ったよ」
加藤 「いやぁ、戦闘隊長も意外に細かな神経が働くんだなあ・・・」
古代進 「え?ははは・・・
島大介 「さ!出発するぞ。一刻も早く行かなければならないんだ」
ナレーション 艦長室の前に立つ古代。
古代進 「古代進、入ります」
沖田十三 「ああ」
170 ナレーション 沖田はベッドに横になっている。
沖田十三 「こっちへ来い。古代」
古代進 「艦長・・・お体の具合が・・・」
沖田十三 「う〜ん、疲れた」
古代進 「・・・」
沖田十三 「古代」
古代進 「はい」
沖田十三 「わしからの頼みだ。艦長代理を引き受けてくれ」
古代進 「え・・・!」
沖田十三 「わしの体はもう艦長の大任には耐え切れん。これからはどうしても優秀な補佐が必要なのだ」
180 古代進 「いや・・・しかし・・・僕にはとても・・・」
沖田十三 「古代!!」
古代進 「は・・・」
沖田十三 「・・・いいな。古代」
古代進 「はい!」
沖田十三 「うむ、しっかり頼むぞ」
古代進 「は!」
187 ナレーション 宇宙戦艦ヤマトはイスカンダルへの中間点バランを通過した。29万6千光年の4分の1の行程を終えた。
さぁ、大マゼラン雲のイスカンダル目指して急げヤマト。
地球の人々はきみの帰りを待っている。
人類絶滅の日といわれる日まであと200と53日、あと200と53日しかない。
inserted by FC2 system