うる星やつら ビューティフルドリーマー


うる星やつらビューティフルドリーマー

001 青々と広がる空にカモメが舞っている。眼下に広がるのは荒廃した友引町の姿。崩れ落ちた友引高校の前で呆けた様にたたずむ、あたる。彼の身にいったい何があったのか・・。
この物語は、友引高校学園祭前日から始まる。

あたる達の教室は「メガネ」の発案で『純喫茶 第三帝国』の準備の真っ最中である。

  パーマ 「しっかし、こんなんでホントに客、来んのかな、メガネよ」
  チビ 「やっぱ、あたるの提案どおり、美人喫茶のほうがよかったんじゃないかな?」
  パーマ 「ラムちゃんもOKしてくれたんだしなァ!」
  メガネ 「ば〜か、ラムさんにそんなマネをさせるわけにはいかん!」

「いったい開店資金を集めるのにどれだけ苦労したと思っとる。」

「あたる個人の趣味で経営されてたまるか!」

  パーマ 「個人の趣味ねェ・・・・・・」
  終太郎 「ところで、その張本人はどこで油売ってんだ?」
  パーマ 「さっき、ラムちゃんが探しに行ったからそのうち戻るだろ」
  チビ 「こう、人手不足じゃ話になんないよ。責任者に人望がないからなァ」
010 カクガリ 「コラァ!オマエたち。まだゴタゴタやっとんのか!一体いつになったらオマエたちの店は開店するんじゃ!ボケェ!!」
  パーマ 「バカやってないで働け。オラ!
  カクガリ 「アラ・・・」
  メガネ 「オイ!明日の開店を控えてやる事は山ほどあるんだぞ。お遊びはそのくらいにして・・・」
  パーマ 「ああ・・・・・」
  息を呑むメガネたち。温泉マークがのれんから顔をのぞかせている。しかし、入り口に背を向けているカクガリはメガネたちの雰囲気に気づかない。カクガリは自慢げに温泉マークを茶化しはじめた。
  カクガリ 「な、グーなアイデアだろが。」

「この顔でよ、しかも卑屈に客引きやりゃよ、客なんかドバドバ・・・」

「・・・・・ん?」

  温泉マーク 「その顔で、客引きやりゃあ何だってェ!?ん〜〜〜?」

「諸星はどこだ!責任者前へ出ろ!」

  温泉マークの踏み鳴らした振動で教室の床がミシミシときしむ。あわてるメガネたち。
  終太郎 「先生、無用なショックはさけていただけませんか?オプションをはずして、軽減してあるとはいえ、このレオパルト、空重量約40トン。床がぬけても責任は持ちかねます」
020 温泉マーク 「オイ!面堂、展示品かなんだか知らんが、オレは戦車の持込みを許可した覚えはないぞ!」
  終太郎 「・・とは言っても、持ち込んでしまったものはどうにもならんでしょう・・。それとも・・・」

「いっそのこと、没収なさいますか?先生」

  温泉マーク 「・・・・・く・・くそぉ・・ったく、どうやって持ち込みやがったのか・・・」
  その時、あたるの声がどこからか響いてきた。皆一様に、教室を見回した。
  あたる 「ニャハハ・・・もォ最高ォ〜〜〜。」
  温泉マーク 「ん!?このイヤラシイ笑い方は・・・」
  メガネ 「あたる!?」
  あたる 「愛してるよランちゃ〜〜〜ん」

「さ、了子ちゃんもこっちへおいでよ。は〜〜や〜〜く〜〜〜!!」

  終太郎 「了子ォ!そこにいるのか了子!」
  温泉マーク 「こらァ!諸星、そこでなにしとる出てこ〜〜い!」
030 終太郎 「諸星!キサマ、了子に何を!!!」
  終太郎は、あたるの声が聞こえてくる戦車レオパルトの蓋をあけて中を覗き込んだ。中ではあたるが夢に悶えていた。
  あたる 「ささ、オユキちゃん、クラマちゃん、しのぶ〜〜〜」

「わぁってます、わぁってます。逃げやしないから〜〜〜っ。」

「あっ、サクラさんいけません、そんなァ・・・」

  竜之介の蹴りがあたるの頭にヒット。その反動であたるの手がレオパルとの操作レバーを引き下げた。レオパルトは大きく首を振り、砲首にぶら下がった温泉マークをそのままに窓を突き破った。

そこへラムが現れ、戦車の中のあたるめがけて電撃を発した。電撃でレオパルトが誤作動をおこし、キャタピラが床を、壁をぶち抜いていく。あたるたちの教室は瓦礫の山と化していった。

校長室で、あたるたち面々は校長の絶好調の訓辞を受けている。

  校長 「ま、年に一度の学園祭ですから生徒諸君の自主管理の尊重という意味からもですな、校長の私が、今さら口をさしはさむというのも、なんなのでありまして・・・。」

「しかしながら、かの親鸞も申しておりますように、善人なおもて往生す、まして悪人においてをや。人はみな、ただ一人旅に出て、ふり返らずに、泣かないで歩くのであります。ああ、誰が知るや、百尺下の水の心・・・」

「人間誰しも悩み苦しみ過ち、そして、成長し桃太郎は満州に渡ってジンギスカンになるのであります。かの大ギョエテいわく、苦悩を経て、大いなる快楽に至れ、と言うようなワケでして、何はともあれ、全員ケガ一つせず何より無事、これ名馬であります。くれぐれも安全第一で、そこんとこ、よろしく」

  しのぶ 「あ〜〜あ、全く、校長ときたら長いんだから、モウ」

「あ・・サクラ先生」

  サクラ 「ん?なんじゃ、オヌシらまだ残っておったのか?」

「女子生徒は10時までに下校する決まりではなかったのか?」

  しのぶ 「それが・・ちょっとして騒ぎがあって・・」

「サクラ先生は?」

  サクラ 「ゲンノウで自分の手をたたくバカや、足を床にクギづけるアホウがあとをたたんのでな・・・今日も泊まりじゃ」
  しのぶ 「あたし、もうダメ。毎晩毎晩バカ騒ぎ」

「あげくの果てが徹夜で後始末でしょ。年頃の娘が連日泊まりこみだなんて。お母さん電話でカンカンよ。も〜〜イヤ!」

040 ラム 「そ〜お、毎日キャンプみたいでウチ楽しっちゃ」
  しのぶ 「宇宙人とちがって、生身の人間にはこたえるの!」

「大体、なんでわたしがつきあわなくちゃいけないワケ?委員でもないのにさァ」

  ラム 「なんでだっちゃ?」
  しのぶ 「それはね、つまり、ある人が、ある人を気にしてるんで、わたしとしては、そのある人が気になるから残ってるワケよ。ただ、そのある人が気にしてるある人は、そのコトに全然気づいてないワケ」

「これって、わかる?」

  ラム 「全然わからんっちゃ」
  しのぶ 「でしょうねェ、だから、疲れるのよ。闘志がわかなくって・・・ホントつらいわァ」
  サクラ 「ククク・・・・いやァ、スマン、スマン。しかし、オヌシらを見てると、あきんわ」
  しのぶ 「ね、いつか聞いてみようと思ってたんだけど・・・」

「ホントに何が良いわけ?あの、あたる君の・・・。他ならぬ、このあたしがそう思うのよ。だってアイツって本当に男そのものよ。いい加減で、怠け者で、いやしくて、女好きで、浮気性で、エゴイストで、そりゃ確かに・・・善人ではあるけど・・・」

  ラム 「終太郎だって大して変わらんっちゃ!」
  しのぶ 「少なくとも顔がいいわ!この差は大きいわよ」
050 サクラ 「全く近頃の若い娘は・・」
  しのぶ 「あら、だってそうでしょ。ツバメさんだってあれで顔がいいから救われてるみたいなものでしょ?」
  サクラ 「よけいなお世話じゃ!」
  ラム 「ウチ、ダーリンが好きなんだモン」

「ダーリンやお父様やお母様や、テンちゃんや、終太郎やメガネさんたちとずうっと、ずうっと楽しく暮らしていきたいっちゃ。それがウチの夢だっちゃ」

  しのぶ 「なによ、要するに今と同じじゃない!」
  ラム 「だから今とっても幸せだっちゃ。ベ〜〜〜〜〜っ!」
  しのぶ 「・・・・・ま、それだけストレートに言われちゃ、返す言葉もないわね」
  サクラ 「火の始末、くれぐれも頼んだぞ」

「ま、せいぜい頑張るコトだな。残すところ、あと一日、明日は、学園祭初日じゃからな」

  夜の友引町、終太郎とあたるは車に乗って買出しに出ていた。
  あたる 「何だ面堂・・まだ怒ってんのかよ」
060 終太郎 「あたりまえだ!まきぞえ食って電撃はくうわ、戦車の電装品は、全てスクラップになるわ。完成しかけた模擬店はメチャクチャになるわ。全てオマエの責任だろが」
  あたる 「だからあやまっとろうが・・・・オマエもしつこいねェ」

「しかし・・・いい夢だったなァ・・ニヒヒヒ・・」

  終太郎 「オノレのクダラン夢に人をまきこむな!」
  あたる 「ゴメンよォ!」 (終太郎に負けないくらいの大きな声)
  終太郎とあたるを乗せた車は夜の街をひた走る。しかし行けども、すれ違う車の影さえない。
  あたる 「しかし、なんだな。ここんとこ泊まりっぱなしで学校をで出るのは、こうして、夜食を買いに出るときぐらいのもんだろ?」
  終太郎 「だから・・何だ?」
  あたる 「そのせいか知らんが、夜の街ってのは、こんなに静かなもんだったかな?」
  静かな街・・人も車も通らない・・と、そこへチンドン屋が通りかかる。異様な風体の一団は、夜の街に溶け込むように消えていった。

明けて、明朝。温泉マークがサクラに相談をしている。異様に憔悴したその様子はサクラにただならぬものを感じさせた。

  サクラ 「しかし、妙な話じゃな・・」

「数日、部屋をあけて久しぶりに戻ってみれば、中は青カビやシメジモドキで廃墟も同然。ちょっとした浦島太郎じゃな」

「・・・・友引高校という名の竜宮城でドタバタ明け暮れて、月日のたつのも夢のうち・・・オヌシ、カメでも助けたか・・・?」

070 温泉マーク 「実は・・・・近頃妙に気になっとるんですが、ホラ、よくあるでしょう。初めての街を歩いていて、いつか見たような光景に出会ったり、今、自分がしているコトを、いつかそのまま、そっくり、くり返していたような気がしたり・・・」
  サクラ 「デジャビューという奴じゃな・・・疲れた時に人間の脳が生み出す偽りの体験じゃ」
  温泉マーク 「わたしも、そう思っとりました。疲れているんだと・・・だから、そんな奇妙な考えに、とりつかれるんだと・・・今日の、あの部屋を見るまでは・・・」
  サクラ 「何の話じゃ・・・」
  温泉マーク 「さっき、校長がいっとりましたな。今日一日・・・明日は学園祭の初日だと・・・・それと同じセリフを以前にも聞いたような・・・」
  サクラ 「疲れておるのじゃ。疲れておるから、そのような願望がありもしない記憶を作りだすのじゃ。連日、あの悪ガキどもの相手をしておるのじゃから無理もないが・・・・」

「ま、それも今日で終わりじゃ。明日は学園祭の・・・・・!!」

  温泉マーク 「そう考え始めてみて気がついたんですが、自分でもハッキリせんのです。昨日のコトも、その前日のコトも、いや、うっかりすると数時間前のことすら忘れているコトがあったり・・・」

「いつ、どこで、だれと会い、何をしたのか、大体わたしが学校に泊まり始めて、幾日たつんでしょうね。3日ですか?4日ですか?」

  サクラ 「さて、ドタバタして、おったからのう」
  温泉マーク 「忘れてしまう程、前からですか?」
  サクラ 「オヌシ、いったい何を考えておる。ハッキリ言うてみいっ!!」
080 温泉マーク 「・・・これは、あくまで仮説でして、わたしのボケた頭が生み出した妄想なら無論それにこしたコトは無いのですが。わたしは、こう思っとるんです。」

「昨日も一昨日も、いや、それ以前から、わたしらは学園祭前日という同じ一日の同じドタバタをくり返えしとるんじゃなかろうかと・・・そして、明日も・・・・・・」

  サクラ 「なにをバカな!疲れておるのじゃ。疲れて意識が混乱しておるだけじゃ。今日一日、ゆっくり休んで明日になれば・・・・・・」
  温泉マーク 「明日になれば、どうなるんです?本当に、今日と違う明日が来るというのですか?今日と違う昨日も思いだせんというのに・・・」
  サクラ 「仮に、仮にオヌシのいうとおりだとして、では、なぜまわりの人間が騒ぎ出さんのじゃ?生徒たちが、それほど長く学校から戻らねば、父兄がだまっておるまい」
  温泉マーク 「同じ一日をくり返しているのが、友引高校だけでないとしたら?友引町全体が、いや、世界全体が同じ一日をくり返しているとしたら・・・・?」
  サクラ 「世迷いゴトもいい加減にせいっ!オヌシのいうコトは完全に、常軌を逸しておる。妄想じゃ。それはオヌシの妄想じゃ」
  温泉マーク 「きのうから着のみ着のままとして、こんなもの着てるとすれば、冬なのかもしれませんね。・・が、この汗は冷や汗なんですかね。それとも、この陽気のせいなんでしょか・・・?」
  二人の耳にせみの鳴き声が響いてきた。
  温泉マーク 「それに、さっきから聞こえる・・これは・・これも幻聴なのでしょうか・・・?」

「浦島太郎は、竜宮城で夢のような日々を送り、そして、なつかしい故郷へ帰ってみれば、そこではすでに幾百年の歳月が流れていた」

「しかし、カメを助けたのが太郎一人でなく、村人全員だったら・・・村人全員が、竜宮城へ行ったのだとしたら、どうだったでしょうねェ。」

「サクラ先生は、霊能力者でいらっしゃる。この街のどこかで、だれかに、異変がおきたとすれば真っ先に気がつかれたでしょう。しかし、街全体が、サクラ先生を含めた世界全体に、異変がおきたとしたら・・・」

  サクラ 「もうやめんか!全てオヌシの仮説じゃ。憶測にすぎん。どこに確証がある!」
090 温泉マーク 「こうして話しているコトも明日には忘れているとしたら・・・」
  サクラ 「やめいというに!」
  その夜、温泉マークは友引高校の校門を閉め、あたるたち生徒全員を締め出している。あたるたちは納まらない。
  あたる 「説明しろ。どうなってんだァ!」
  温泉マーク 「やかましい!帰れていったら帰れ。誰がなんと言おうと泊り込みは認めん!」
  メガネ 「おい!温泉マーク、覚悟しておけよ。夜があけたら実行委員会に提訴し、おのれの責任を追及しちゃるからな」
  あたる 「生徒による学園祭の自主運営という大テーマを踏みにじりやがって!」
  メガネ 「こんなカッコで帰れっか・・・首洗って待ってろよ。コノオ!」
  ラムはあたるを連れて上空へ消えていく。それを見送るメガネたち。
  カクガリ 「ここんとこずっと一緒だったからよけい名残惜しい感じだな」
100 温泉マーク 「ほかの先生方も全て帰宅させました。購買部の藤波親子を除けば我々二人だけです」
  サクラ 「ウム・・」

「わたしはオジ上を探してくる」

「そう嫌な顔をするな。あれで、こういう時には役に立つ坊主じゃからな」

  温泉マーク 「サクラさん・・・実はイヤな予感が・・気をつけて」
  サクラ 「オヌシもな。後で電話を入れる」
  サクラはタクシーに乗って移動している。異様な雰囲気の運転手である。
  サクラ 「運転手、急いでくれといったハズだが・・・・」

「まだつかんのか?表通りから友引高校まで車でたかだか2,3分のはず、やけにかかるではないか」

  運転手(夢邪気) 「お客さん、みなさん同じコトをおっしゃいますなァ。タクシーに乗ると時間がのびるんですかね・・・」

「・・・お客さん、カメに乗って竜宮城へ行く話、知ってます?」

  サクラ 「今、その気分を味わっとる」
  運転手(夢邪気) 「カメに乗って行ったのが太郎だけでなく村人全員だったらどうだったでしょうね・・・全員が竜宮城へ行って、そして、そろって村へ帰ってきたとしたら、それでもやっぱり数百年の歳月がたってたコトになるんでしょうかね・・村人が誰一人気づかなかったとしても・・・・」
  サクラ 「なんの話をしとる!」
110 運転手(夢邪気) 「なまじ客観的な時間やら空間やら考えるさかい、ややこしいコトになるんちゃいまっか?」

「帯に短し、待つ身に長し、いいますやろ。時間なんちゅうもんは、人間の意識の産物なんや思たらええのんやがな。世界中に人間が一人もおらなんだら時計やカレンダーに何の意味があるちゅうねん!過去から未来へキチンと行儀よう流れてる時間なんて始めからないのんちゃいまっかいな?お客さん」

  サクラ 「おもしろい。これは本当にカメに乗ったのかもしれんな・・・」
  運転手(夢邪気) 「このまま竜宮城まで行きまっか?お安くしときまっせ」
  サクラ 「ただのカメではあるまいが・・・・」

「正体見せいっ!」

  正面から車のライトがさしタクシーはタイヤをきしませて急停車する。衝撃に揺られてサクラは座席に倒れこんだ。
  サクラ 「・・・・・逃がしたか・・・」
  学校を出たものの、家路につくことのできない面々は、ひとまずあたるの家に居候を決め込むことにした。あたるの家から各自の家々に電話をかけるが、どの家も、だれも出ることはなかった。・・200回線もある面堂の家さえも・・。

世界中に彼らだけしかいない・・そんな心細さを感じさせる夜だった。

そして・・・夜が明けて、朝がきた。

  メガネ 「おばさ〜〜ん、おかわりまだァ?」
  カクガリ 「ちょっとメシを・・」
  あたる 「一人二切れずつだっていってんだろが・・」
120 チビ 「ちょっとそこのショーユを・・・」
  カクガリ 「チョロチョロすんなって・・」
  あたる 「オイ、汁くれ汁!」
  メガネ しかし、味噌汁、オシンコ。納豆のみとは淋しいな」
  あたる 「ゼータクぬかすな」
  パーマ 「これでビールがありゃな」
  終太郎 「人の味噌汁にハシを突っ込むな!」
  しのぶ 「あ〜〜〜、もう、うっとおしい!」
  カクガリ 「ちょっとメシを・・」
  メガネ 「オイ、いつまでも食らってんじゃないぞ。早く学校へ行って仕事せにゃ、学園祭の初日にまにあわんぞ」
130 チビ 「戦車ごと落っこちたりして」
  パーマ 「しかし、困ったもんだよな、アレは。あれじゃ、せっかく店作ったって客の4〜5人も入りゃ床抜けるぜ」
  ラム 「ダーリンはすぐあの中に隠れるし、どっか移しちゃおか」
  パーマ 「なんとかせにゃな」
  終太郎 なんとかとはどういう意味だ。あれを搬入するのにどれだけ苦労したか」
  チビ 「今日一日しかねーんだもんな」
  カクガリ 「なんだかんだ言って、もう、昼だぜ」
  パーマ 「それはそうとまだ教室あんだろな」
  学校に着くとプールの周りには人だかりができていた。人垣を抜けて前に出る面堂。目の前にプールに浸かったレオパルトがあった。
  終太郎 「アア〜〜〜〜・・ボクの戦車が・・ボクのレオパルイトが・・・」
140 メガネ 「無理もない・・この暑さだもんな・・」
  終太郎 「スカ!戦車が行水してたまるか!」
  ぶくぶくと水面に泡が出てくる。それを食い入るように見つめる面堂。
  あたる 「プハ〜〜〜〜ッ」

「ん、なんだここは?・・・やァ、面堂、なにやってんだオマエ。こんなところで」

  終太郎 「なるほど・・そういうコトか・・」

「そういうコトだったのかァ」

「それほど、この面堂終太郎を愚弄したいか。もはや許せん」

  あたる 「オイ、面堂・・オマエ何を言ってるんだ・・・・?」
  面堂は刀を引き抜き、プールめがけて飛び込んだ。追いかける面堂。逃げるあたる。バシャバシャと水を掻き分け、鬼ごっこが始まる。そこへラムがやってくる。お決まりの電撃発射!プールの水が一瞬で水蒸気となる・・。
  サクラ 「二度目は悲劇、三度目は喜劇というが・・一生やらせとくワケにもいかんか・・」
  お好み焼きジパング。面堂が一人で話をしている。だれも耳を貸さず黙々とお好み焼きを食べている。
  終太郎 「・・というワケだ。正直いって昨夜サクラさんに話を聞いた時は、このボクも容易に信じられなかった。しかし、今日の戦車事件といい昨夜の夜の一件といい、考えてみれば近頃奇妙なコトが多すぎる」

「こと、ここに至っては、もはや疑問の余地はない。従って我々のこの手で事実を確かめるべきだ」

「おのれら、人の話を少しは聞かんか!」

150 パーマ 「ちゃんと聞いてるケド、なんちゅーかいまいち緊迫感に欠けるちゅーか・・・」
  メガネ 「時間と空間がムチャクチャになってるんじゃないかってワケだろ。それは認めよう」

「しかしだ、それによって実際にオレたちにどい¥ういう実害があるか、これが問われなければならない」

「温泉マークが消えた。チェリーが失踪した?・・そんな妖怪坊主や生徒の敵の一匹や二匹消えたところで、我々が腰を上げるいわれはない」

  終太郎 「話にならんな。ま、考えてみれば君たちに相談したのはボクが浅はかだった。」

「では、ボクは一足先に・・・・・」

  サクラ 「まあまて、じきにミックス焼きソバが来る」
  あたる 「オイ、面堂・・これ」
  終太郎 「何だコレは・・」
  あたる 「何って・・・請求書」
  終太郎 「サクラさんと、ラムさん、しのぶさんの分は、確かにこのボクが払おう!だが、なぜ君たちの分まで払わねばならんのかね!」
  ひとけの絶えた友引高校、木造3階建ての校舎が夜の闇に浮かびあがっている。そこへ、終太郎たちを乗せた車が到着する。
  終太郎 「今までの成り行きからすると、全てはこの友引高校かに、その端を発している。人知の及ばぬ何者かの陰謀か・・・?」

「いずれにせよ、ひとけの絶えた夜の間に調べれば何かがつかめるハズだ。のりこむぞ!」

「万一を考えて、サクラさんとしのぶさんはこの場で待機!残りはボクにつづけ!」

160 あたる 「見たか?あの刀。昼間折ったハズなのに、またはえとる」

「まるで、トカゲのシッポだな!」

  メガネ 「灯台もと暗し。自分のコトにはさっぱり気づかんと。いい気なもんだぜ」
  終太郎 「カクガリとチビは、一階を調べろ!」

「メガネとパーマは二階だ!!」

「諸星は三階を!ラムさんはボクと時計塔へ!」

  サクラ 「どうやら始まったらしいの」
  しのぶ 「面堂さんたち、大丈夫かしら?」
  サクラ 「命に別状ないが、おそらく腰を抜かして逃げ出してくるであろう。校舎をよく見てみいっ!」
  しのぶ 「ああ・・」
  サクラ 「築60年、木造モルタル三階建ての時計塔校舎、いつから四階建てになったのかのォ」

「あの連中が、中でどんなドタバタを演じているか目に浮かぶわ」

  しのぶ 「それじゃ、初めから知っていて・・・・」
  サクラ 「今回の一連の事件の中心には友引高校あり。だが、建物自体を調べたところで、なにも出てくるハズがない。要はコトを起こすことじゃ」

「昨夜のようにな。必ずなにか反応がある。それを見定める以外、核心に迫る方法はない!行くぞ!オヌシの出番じゃ」

170 校舎からまっさかさまに落ちてくる終太郎たち。しのぶの怪力が、みんなをキャッチする。
  しのぶ 「どすこいっ!」
  サクラ 「さて、これからどうしたものか。いくらとばしても昨夜の二の舞じゃろうし」
  終太郎 「友引銀座のマッハ軒へ!」
  サクラ 「なんじゃ、腹でも減ったか?」
  終太郎 「立ち食いソバ屋のマッハ軒。実は面堂家友引地区パニックセンター。あそこには、脱出用のシーハリヤーがあります」
  サクラ 「ナルホド、飛行機という手があったか」
  マッハ軒のさびたシャッターをしのぶの怪力で持ち上げる。くもの巣だらけのさびれた店である。終太郎が壁にかかったお品がきの一枚をずらし、スイッチを押す。部屋全体が地下へと降りて行く。格納庫へとエレベーターはついた。

シーハリヤーに乗り込む終太郎。

  終太郎 「サクラさん乗ってください。屋敷につき次第、迎えのヘリを回す。残りの者はここで待機・・」

「ア・・・・・」

  メガネ 「ここまで来て、それはなかろうが。」
180 あたる 「こうなったら、一蓮托生、呉越同舟じゃ。地獄の底までも付き合うぜ」
  終太郎 「勝手にしろ!落っこちても知らんぞ!」
  シーハリヤーが垂直上昇していく。ぐんぐん地上を離れていく。友引町を遥か眼下に見下ろしている。
  メガネ 「翼よあれが友引の灯だ。なんちゃってよォ」
  パーマ 「さらば〜友引イ〜旅立〜つ、船はァ〜〜♪」
  あたる 「ホント、オンチだな・・」
  ぐんぐん上昇するシーハリヤーから友引町全体が俯瞰(ふかん)できた。それは・・・巨大な亀の背にのった街だった。街全体が亀の背中に乗っていたのだ。
  サクラ 「面堂!街の外周にそって旋回じゃあ!」
  街の外周には、巨大な石造となってカメの背中で街を支える、チェリーと温泉マークの姿があった。
  終太郎 「な・・なんだ・・ガス欠!?そんな・・まだ数分しか飛んどらんのに」

「仕方ない!戻るぞ!」

190 パーマ 「戻るって・・あの街へかよ」
  終太郎 「他にあるか。それともチェリーの頭の上におろすか?」

「だめだ、マッハ軒までもたん。手近に強行着陸するぞ」

「しがみつけェ!」

  シーハリヤーはぐんぐん降下する。その降下していく先にあるものは・・・。
  ラム 「お父様!お母様!ただいまァ!」
メガネ 「コンバンハ!今夜もお世話になりまーーす」
  あたるたちが面堂のシーハリアーにのって巨大なカメの背に乗った友引町の姿を見た翌朝から事態は一変していた。その生活も幾日か経過したある日の朝、あたるの家の近くのコンビニに、メガネとパーマ、カクガリ、チビたちがそろって買出しに出ていた。
  パーマ 「完熟ホールトマト1缶、牛丼パック12!カップ焼きソバ16、スープ付きのやつな。コーラ1リットルビン3本」
  メガネ 「パーマ!シーチキンってフレークでいいのかな?」
  パーマ 「薄力粉2袋、スパゲッティー1ダース、サフラワーオイル2缶、タラコふりかけ3ケース、チーズビスケット5個、マーボドーフの素2つ・・」
  チビ 「170円、230円、572円、100円、最後は125円・・」
200 パーマ 「しめて1万とんで820円と・・」
  カクガリ 「さ、いこうぜ、チンタラしてると、あたるのオフクロにどやされるぞ」
  食料を詰め込んだダンボール箱を抱えたカクガリがみんなを促した。箱を抱えてコンビニを出ようとするチビを、パーマが呼び止めた。
  メガネ 「チビ、その胸のチョコレートはなんだ?」
  チビ 「ハハハ・・・あの・・オレ・・前から食ってみたかったんだ・・。中にアンコが入ってんだぜ・・」
  メガネ 「食料品調達は、たとえ風船ガム1個といえども、あたるのオフクロの指示に従う。この大原則を忘れたワケじゃあるまいな!」

「この街の食料は米粒1つ、ポッキーに至るまで全員の共有財産だ。」

「オマエは欲望のためにそれに手をつけた!この行為は万死に値する!!!」

  チビ 「か・・返すよ〜〜〜」
  メガネ 「連行しろ。戻りしだい人民法廷を開いて処罰する」
  チビ 「ワ〜〜〜〜イヤだぁ」
  パーマ 「バカが・・・・」
210 チビはカクガリに首根っこを掴まれ、引きずられるように連れ出されていった。
  メガネ 「1万とんで823円、右、確かに借用いたしました・・・・と」
  メガネは書いた借用書をスーパーのボードへ貼り付けた。そこには、メガネが書いた無数の借用書が貼られていた。

メガネたちはジープに乗り込むと、荒涼とした廃墟の街中へ走り出した。

メガネたちを乗せたジープが、瓦礫と化し湖にその半分を沈めた友引高校の側を走り抜ける。その光景をじっと見詰めるメガネは1人夢想する。

  メガネ 「私の名はメガネ。かつては友引高校に通う、平凡な高校生であり、退屈な日常と闘いつづける下駄ばきの生活者であった」

「だがあの夜、シーハリヤーのコックピットから目撃したあの衝撃の光景が、私の運命を大きく変えてしまったのだ」

「・・・・ハリヤーで、あたるの家に強行着陸したその翌日から、世界はまるで開き直ったかのごとく、その装いを変えてしまったのだ」

「いつもと同じ街・・・いつもと同じ角店・・・いつもと同じ公園・・・だが、何かが違う」

「路上からは行き来する車の姿が消え・・・・建売り住宅の庭先にピアノの音も途絶え、牛丼屋のカウンターであわただしく食事する人の姿もない」

「この街に、いや、この世界に我々だけを残し、あのなつかしい人々は突然その姿を消してしまったのだ。・・・・・数日を経ずして荒廃という名の時が駆けぬけていった」

「かくも静かな、かくもあっけない週末をいったいだれが予想しえたであろう。人類が、過去、数千年にわたり営々として築いてきた文明と共に西暦は終わった。しかし、残された我々にとって終末は新たなる始まりにすぎない。世界が終わりを告げたその日から、我々の生きのびるための闘いの日々が始まったのである」

「奇妙なことに、あたるの家近くのコンビニエンスストアは、押し寄せる荒廃をものともせずに、その勇姿をとどめ、食料品、日用品、雑貨等の豊富なストックを誇っていた。」

「そして更に奇妙なコトに、あたるの家には電気も・・・・ガスも水道も依然として供給されつづけ・・・驚くべきコトに新聞すら配達されてくるのである。当然我々は、人類存続という大義名分の下に、あたるの家をその生活の拠点と定めた。・・・・しかし、ナゼかサクラ先生は早々と牛丼屋「はらたま」をオープンして、自活を宣言。つづいて竜之介親子、学校跡に浜茶屋をオープン。」

「・・・・そして面堂は・・・日がな一日戦車を乗りまわし、おそらく欲求不満の解消であろう。時おり発砲を繰り返している。・・・・何が不満なのか知らんが実にかわいくない」

「あの運命の夜からどれほどの歳月が流れたのか・・・・しかし、今、われわれが築きつつあるこの世界に時計もカレンダーも無用だ。我々は、衣食住を保証されたサバイバルを生きぬき、いかなる先達も実現しえなかった地上の楽園を・・・・あの永遠のシャングリラを実現するだろう。」

「嗚呼・・・選ばれしものの恍惚と不安、共に我にあり!・・人類の未来が、ひとえに我々の双肩にかかってあることを認識するとき、目まいにも似た感動を禁じ得ない!」

  チビ 「あれ?どしたメガネ?」
  パーマ 「日射病だろ!?だから帽子かぶれってのによオ」
  気絶したメガネを乗せたまま、ジープは砂ぼこりを上げながら、走り去っていく。
  メガネ 「メガネ著『友引前史』 巻1 「終末を越えて」序説第3章より抜粋」
  荒廃した街にラムやメガネたちの笑い声がこだまする。遊び呆ける彼らを尻目に面堂の脳裏には、ある疑惑が渦巻いていた。それが形となって現れたのである。

しのぶが消え・・更に竜之介が消えたのである。そして、2人は友引町を支える石像としてその姿をあらわしたのである。

  サクラ 「余人を交えず、貴殿と二人きりにて話し合いたく候。この世の哀れ、我らのあるべき生活(たつき)につき、思うことありおり侍り(はべり)いまそかり・・・今宵、友引高校時計塔跡にてお待ち申し上げ候・・サクラ・・」
220 あたる 「サクラさ〜〜ん!おまたせェ!」
  終太郎 「よく来たな諸星」
  あたる 「面堂、なんでオマエがここに?」
  サクラ 「私が呼んだ」
  あたる 「じゃ、余人を交えず二人っきりってのは、あの・・・・・?」
  サクラ 「ウソじゃ」
  あたる 「帰る!」
  終太郎 「帰るだと?どこへ帰るつもりだ諸星!」
  終太郎の抜いた日本刀が不気味に光り、あたるを威嚇する。
  サクラ 「話があるというのは本当じゃ。聞くだけ聞いていかんか?」
230 終太郎 「ボクはな、諸星・・・オマエたちがこのいい加減な世界で惰眠をむさぼり遊びほうけている間、ただいたずらに戦車を乗りまわしていたワケではない。サクラさんと連絡をとりつつ、この世界の構造を調べ、なんとか元の世界へ戻る方法を練っていたのだ」
  あたる 「そりゃどうもご苦労なこって・・・」
  終太郎 「それがどんなに苦しい日々だったか・・・・ボクだって遊びたかった!何もかも忘れてラムさんと楽しい日々を送りたかった!」
  あたる 「妙なカッコつけんと、すりゃよかったのに」
  終太郎 「なんだとォ!自分のおかれた状況もわきまえずコロコロと太りやがって!」
  サクラ 「やめい!おちつかんか面堂。本題に入れ」
  終太郎 「失礼しました。つい・・・・頭の悪いオマエのために順序だてて論理的に説明してやろう。・・・いいか、このテーブルがあの巨大なカメに乗っている我々の世界、つまりこの友引町だ」

「そしてこのテーブルの真中の菓子皿がオマエの家だ。ボク自身がレオパルトの主砲の到達距離をもとに、測量した結果によると直径2キロのこの円形の世界のちょうど中心に位置している。文字通り、世界の中心というワケだ」

「こんな世界がカメに乗って空を飛んでいるだけでも充分異常なのだが、問題は別のところにある。ナゼ諸星家にのみ、ガス、水道、電気が供給されつづけているのか、いや、そもそもどこから供給されているのか。請求書は来たか?」

「オマエやメガネたちがバカ食いしているあの、コンビニエンスストアの食料はナゼつきないのか!?更にさかのぼってこの町の住人たちはどこへ消えてしまったのか!?それもたった一夜で!」

「エー!?ナゼだ!」

  あたる 「オレが知るか!!」
  終太郎 「日常生活に不都合がないという点を除けば、イヤ、日常生活に不都合をなくすために、この世界は実にいい加減に、ほとんど言語道断といってよいほどデタラメにできている。こんな世界は物理的にありえん。もし、ありえるとすれば・・・」
  あたる 「夢の中だけ・・・か?」
240 終太郎 「諸星!キサマそのコトに!?」
  あたる 「とっくに気づいとる。メガネたちもな。ただあまりに安直な結論なので口に出していわんだけの話だ」
  終太郎 「それだけわかっとってナゼ毎日遊びほうけとるんだ!ボクはオマエたちのその態度が!」
  あたる 「とりあえず遊んどるしかなかろうが!だれの夢なのかもわからんのに!」
  終太郎 「ホ〜〜?わからん!」

「そーか、そーか、わからんかァ!」

「ワハハハ、ザマーミロ!わかんねーでやんのよ!」

「ワハハハハハハハの大洗海水浴場!・・・・ボク、知ってるモン!」

「いいか、諸星、簡単な消去法の問題だ!」

「ボクとサクラさん、そして消えてしまったしのぶさん、竜之介さんでないことは確かだ。諸星の両親、これは我が家に多人数が住みついて迷惑しとるハズだから除外する。諸星本人でないことも確かだ。そうなら今ごろこの世界は、女で充満しとる」

  あたる 「よくわかってらっしゃる・・・」
  終太郎 「ジャリテンや、子ブタ、一人息子に失踪された竜之介の父君は論外として、残りは5名。メガネたちはラムさんとひとつ屋根の下で暮らして楽しくやっとるが4人そろってというところが問題だ。夢であれば当然ぬけがけ自在。ほかの3人に、いい思いをさせてやる慈善家とも思えん」

「すると・・・・・」

  あたる 「ラムが・・・!?」

「そいつはどうかな?」

  終太郎 「なに、ボクの推理に誤りがあるとでも?」
  あたる 「ほかのコトはいざしらず、しのぶと竜ちゃんをけしたのは、どうもな。あいつはそんなコトをする女じゃない。長年つれそっってきたオレにはよくわかる」
250 終太郎  「諸星、キサマぬけぬけとーーっ!」
  サクラ 「その点に関してはわたしも同意見じゃ」

「今までの話、大筋においては正鵠を射ていよう。ただ、乙姫がラムであったにせよ、竜宮城へ人を誘うのはあくまでもカメ!ラムの願望を実現すべくこの世界をつくり出した第三者の存在の可能性を失念しておる」

  あたる 「そうそうそれよ、それ」
  サクラ 「何を感心しておる、オヌシのことをいっとるんじゃ!!」
  あたる 「へ!!・・・あの、それってどういうコトなのか」
  サクラ 「だから、オヌシがカメだといっておる!」
  あたる 「ヒャハハハハ!またまたサクラさんてば!それじゃオレがこの世界を作ったとでも!?」
  サクラ 「そのとおり!」
  あたる 「サクラさん・・・一介の高校生にそんな大それたコトができるワケないでしょうが!」
  サクラ 「一介の高校生ならそこにおる。出てくるがいい!」
260 サクラの声にうながされて、出てきたのはあたるだった。
  あたる(偽) 「ゲゲェッ!!」
  あたる(真) 「どもども」
  あたる(偽) 「こ・・これは一体!?」
  サクラ 「策士、策におぼれる。ワナにかけるつもりがワナにはまったようじゃの。この男が、わたしの手紙を受けとって夜までまつとおもうか?」
  あたる(真) 「エヘヘ・・・もらってすぐサクラさんとこいっちゃった。昼間から。ニャハハ・・」
  あたるがグイとロープを引っ張ると、校舎のテラスを取り囲むように、しめ縄が水中から現れた。

サクラが上着を脱ぎ捨て、白い着物に赤い袴の巫女姿となった。

  サクラ 「今宵はいつぞやのようにはいかんぞ。この結界、やぶってみるか!?」

「推参!!」

  あたるは空中へ身を躍らせるとクルリと後転し、その場に浮かんでとまった。そして軽快な音とともに、真っ赤な帽子をかぶり、赤い燕尾服に作業ズボンをはいた地下足袋姿の小太りの男の姿に変わった。
  夢邪鬼 「いや〜〜〜バレてたんでっか。お二人ともお人が悪い」
270 終太郎 「おのれ、妖怪変化覚悟!」
  サクラ 「さがっておれ、オヌシに歯のたつ相手ではないわ」

「そなた夢邪気とみたがいかにっ!?」

  夢邪鬼 「へェ。確かに夢邪鬼だす。お初にども」

「しかし、ねェさん、ようワイのコト知っとりまんなァ」

  サクラ 「知らいでか!」

「夢の邪鬼と書いて夢邪鬼!その名の示すとおり、夢をあやつり、人々に邪鬼の種を植え込んでは悦にいる悪しき鬼!」

「血塗られた歴史の暗部・・・・そこには、常に闇の中にうごめくオヌシの姿があった!内気な画学生をして狂気の独裁者たらしめたのはだれか!」

「詩を愛し、善政をもって知られた帝が、血の専制の果てに己が都に火を放ったのはなぜか!!」

「敬虔な使徒は師を裏切り、篤実な友はその盟友を刃にかけた」

「菩提樹の下で修行を積むゴータマの心が惑わされたのも、アダムトイブが禁断の実を食したのも、全てオヌシの吹き込んだ怪しげな夢に自分を見失ったためであろうが!」

  夢邪鬼 「ちょっと、ねェさん、まってちょうだい。いったい何を根拠の言われようなんや」
  サクラ 「根拠だと?」

「全国巫女必携の「悪霊大百科」にもしっかりそう書いてあるわ」

「弁解無用!」

「ラムの夢を使ってなにをたくらんでおるかは知らぬが、こうして正体を暴かれた上はオヌシのもくろみもついえた!」

「我らをすみやかに、この夢の世界より解き放ち、どこへなりと立ち去れいっ!」

  夢邪鬼 「このねェさんのいうこと聞いとったらなんや、ワテ悪魔みたいやなァ」
  サクラ 「そのとおりであろう!」
  夢邪鬼 「冗談やおまへんで!そらまァあんさんがた生身のお方たちより多少の術は心得とるし、だいぶ長う生きてはおりまっけどな!」

「・・・・そやなァ・・・これがくせもんなんやなァ。長ごう生きとるいうのんが」

「ホラ、ずいぶんいろんな人たちに夢を見させてきましたわ。ねェさんが、今いわはった人の中にも確かに、ワテが夢をつむいだげた人がおりま。けど、かんちがいしてもろたら困りまっせ」

「ワテが創るんは、そのお人が見たいと思とる夢だけや。そやから、夢が邪悪なもんになったんやったら、それは、そのお人に邪悪な願いがあるからや」

  サクラ 「善悪はそれを用いる者の心の中にあり。科学者がよく使う詭弁じゃ」
280 夢邪鬼  「ええ夢かてぎょうさんおましたんやでェ!」

「・・・・・せやけど、みんな長続きしまへんねん。みんな、ワテを追い越して悪夢になって最後は、がしんたれに食われてしまいますねん」

「そのたんびに、ワテは、また別の夢のカケラ捜してあっちゃからこっちゃへ・・・こっちゃからあっちゃへ同じことのくり返しや・・・わて、もう疲れてしまいましてえ」

「もう、いっそのコト人に夢見さすのやめよ。ポッときえてまお。その方がなんぼか楽や思たぐらいですわ」

「そんな時やった。あのお人と逢うたんは・・・・あれは、どこぞの水族館でおました」

「ワテには、すぐわかりましたで。えらい変わった星の下に生まれたお人やと・・・」

  サクラ 「ま、宇宙人じゃからな」
  真っ黒な空間に青い光の帯が現れた。その光の中を無数の魚たちが泳いでいる。そこへラムが現れる。夢邪鬼とラムの出会いのイメージ映像が映し出される。
  夢邪鬼 「あの、お魚お好きでっか?」
  ラム 「別に・・・」
  夢邪鬼 「ほな、彼氏とケンカでもしなはったん?こないなとこ、あんさんみたいなお人が、一人でポコポコ来るとこやおまへんで・・・あ、ワテ、こういうもんだす」
  夢邪鬼はラムに名刺を差し出した。
  ラム 「夢邪鬼さん?ウチ、ラムだっちゃ」
  夢邪鬼 「ラムだっちゃさん?・・ああ、ラムさんか。甘いようなちょっと苦いような、ええ名前でんなァ」

「それがワテとあのお人との出会いでおました・・・・」

  ラム 「夢?」
290 夢邪鬼  「そ、夢をつくるのがボクの仕事でんねん。楽しい夢、悲しい夢、恐ろしい夢、ま、手広くやってまっせ」

「そやけどね、なんや最近疲れてしもて引退しよか思とるんです。対人関係に悩むコトが多くって・・・ボクってやっぱりナーバスなのかな。ハハハ・・・・」

  ラム 「フーン」
  夢邪鬼 「そや、仕事おさめにどうだす?ラムさんの夢このワテに創らせてくれまへんか?いえ、無論ロハでっせ。どうでっしゃろ?」
  ラム 「ウチの夢を?」
  夢邪鬼 「ワテ、長い間、捜し求めておりましてん。途中で悪夢に変わったりせえへん純粋な夢、永遠の夢の世界を創りたいんや。あんさんなら大丈夫。ワテには、わかりますんや。さ、聞かせとくれやす」
  ラム 「フフフ・・・ウチの夢はね・・ダーリンと・・お母さまやお父さまや、テンちゃんや、終太郎や、メガネさんたちと、ずーっと、ずーっと楽しく暮らしていきたいっちゃ」

「それがウチの夢だっちゃ」

  じっと聞き入るサクラと面堂・・突然、四角く区切られた画面の中へ閉じ込められてしまった。まるでスクリーンに映し出された映像のようである。
  夢邪鬼 「へ、どもどもご清聴ありがとはん。いやァ、ねェさん、その若さでやるもんでんなァ。一時は、どないなるかしらんと思たけど、ツメで若さを暴露してしもたわね」

「しょせんは人類の夢の歴史と共に歩みつづけてきた、このワテの敵やなかったいうことでんなァ。ほな、ま、ごゆっくり」

「あ、それからラムさんとワテの名誉のためにいうときまっけど、先の話、あれはホンマのことでっせ。念のために。いい夢、見たってやァ」

「退場してもろた人の影にはこの夢の街、しょってもろて、その見返りに、好みの夢を楽しんでいただくという万全のアフターケア。これも夢邪鬼の心意気や!!良心的やなァ」

「しかし、これで当分はこの夢も安泰や。残りはチビとアホばっかしやからな。あの、あたるというアホの役は当然、ワテ自身がやるとして、ホンマ気い遣うで夢の管理いうのんは・・・」

「デリケートやさかいな・・・ケケケ・・・・・・ケ!?ワ〜〜〜〜〜〜〜!」

「な、なんやオンドレどないして抜け出したんじゃ!?」

  あたる 「オッさんがラムに手出ししたらハッ倒そうと思ってベランダから飛び出して水の中に落っこちた。今はいあがってきたところだ」
  夢邪鬼 「ほーか、ほーか、ほたら今あんじょうしたるさかい、じっとしとりや、兄ちゃん」
300 あたる 「まァ、そうつっぱるなって!オッさんどうだオレと取り引きせんか?」
  夢邪鬼 「アホぬかせ!オンドレと取り引きしてワテになんのメリットがあるというんじゃ!」
  あたる 「サクラさんが護身用に作ってくれたものなんだが」
  夢邪鬼 「兄ちゃん、その取り引きのろか!」
  一変して、女たちがビキニで盆踊りをしている。あたるの周りには女・女・女、女たちが取り巻いている。
  あたる 「ニャハハハやったやった。ついにオレの永遠の夢を実現したぞダハハハハ・・・・」
  夢邪鬼 「ま、これで丸う治まるならええけど」

「ワテのシュミやないなァ・・しかし、考えてみたら結局はこうなるんやんけ。なんやようわからん取り引きやんけ。アホらしいやんけ」

  あたる 「オーイ、オッさん!」
  夢邪鬼 「なんや、まだなんかあるんか?」
  あたる 「よくよく見ると、女たちの中にラムがおらんがアイツはどうした?」
310 夢邪鬼 「オンドレ、今なんというた?」
  あたる 「ラムがおらん。アイツはなぜ、ここにいない?」

「ん?どした?」

  夢邪鬼 「な、オノレなに考えとんのや?」

「あの娘からあれほど、逃げたがっとったんは、なんなんや?」

  あたる 「ハハア、なるほど、長く生きとっても人間を見る目は成長せんというワケだ」

「いいか、よく聞けよ。オレはな、ほかの娘と同じように、ラムにもキッチリホレとる。ただアイツは、オレがほかの娘とおつきあいしようとすると邪魔をするので結果的に逃げ回ってるだけだ」

「わかったか。わかったらラムを出せ!ラムぬきのハーレムなど不完全な夢、そんなモンぶちコワしてオレは現実へ帰るぞ!」

  夢邪鬼 「オンドレというヤツは!?」

「ええ加減にさらせェ!そないなコトやれるもんならやってんみい!」

  興奮した夢邪鬼の帽子が弾け、パーンという音とともに、ラッパが飛び出し、あたるの頭にあたって落ちた。
  あたる 「イテッ!・・・なんだこりゃ?」
  夢邪鬼 「アア〜〜〜〜〜ア〜〜〜!返してちょうだい。それは、バクを呼ぶ大事な!・・・・ア・・・!!」
  夢邪鬼はあわてて口を押さえた。
  あたる 「バク?ははァ、そういえばサクラさんがいっとったな。悪夢を食う伝説の獣とか。そうか、そういうコトか」
320 夢邪鬼 「またや、またやこれやがな。なんで人間というのはこうなんや」
  あたる 「オッさんどうする?ラムを出してくれるのか?くれんのか?」
  夢邪鬼 「ドアホ!そないなコトができるかい!そもそもこの世界が、あの娘の夢なんやど!」
  あたる 「じゃ、オレはこいつでこの夢ぶちこわして現実へ帰るぞ!」
  夢邪鬼 「いやや、ワテはあの娘の純な夢、守りぬくんや!」
  あたる 「なにが純じゃ!なにも知らんオレたちをまきこみやがって!・・・オレ吹いちゃう」
  夢邪鬼 「ワーッ!やめェやめェ!どうなるかわかっとるのかー!!」
  あたる 「やっぱりラムと同類じゃ。オレが後先考えずに行動する主義だと、まだわからんのか!いざ現実へ帰還せん!」
  あたるはおもいっきり息を吸い込むとラッパを吹き鳴らした。パッパラパッパラと夜の街へこだましていく。音に呼応して、巨大なバクが飛来し、巨大な口をあけると地表にあるあらゆるものを飲み込んでいく。バキバキメキメキと道路が家がはがれ、轟音とともにバクの口の中へと消えていく。
  あたる 「な、なんだあの音は?」
330 夢邪鬼 「あいつや、あのがしんたれが暴れとるんや。ワテの大事な夢、ブチこわしとるんやァ!」

「アホッ、ボケッ、カス、インケツ!ヒイイイイ〜〜」

  あたる 「おちつけってば。どうせ夢なんだからまたつくりゃいいだろが」
  夢邪鬼 「オノレなんぞにわかってたまるかい。ワテの創る夢と現実がどうちがうちゅうねん。生まれた時から他人の夢に住んで、他人の夢こさえ続けて・・・一つくらいワテの夢があってもええやないか!なんでそれをこわさなならんのやァ!」
  轟音とともにあたるたちのいた友引高校も瓦礫となって空中へ吸い上げられていく。あたるも一緒に空中へ吸い出されていく。飛び交う瓦礫によってあたるは気を失った。

どれほどの時がたったのか・・あたるは目をさました。夜の街を面堂と一緒にジープに乗って買出しに出かけているところだった。

  あたる 「ンン・・・ア・・ここはどこだ!?・・・・オレ、なにやってんだ?」
  終太郎 「やっと目が覚めたか。この寒空に高いびきとはいい気なもんだ」
  あたる 「そうか、オレは夜食の牛丼弁当を買いに出て眠り込んじまったのか・・・あの街も夢邪鬼のヤツもみんな夢・・・しかし、恐ろしく真実味のある夢だったなァ」
  終太郎 「フン、ま、夢ってのはおおむね見ている間はやけにリアルなものだからな。考えてみれば、こうしてオマエと話している、この瞬間が夢でないという保証もないワケだ」
  あたる 「ハハハ・・まさか・・・・」
  夢邪鬼 「まさかやおまへんで。」

「逃がさへんとゆうたやろうがな。あんさんだけは。ずェ〜〜ったい逃がさへんでェ!」

340 ジープの運転手に化けていた夢邪鬼。後ろを向いたため運転がおろそかになる。急ハンドルを切り、車は舞台セットのような橋脚にぶちあたる。あたるは前方へ飛ばされ、鉄球に張り付き気絶をしてしまった。

それから何度も夢の中をさ迷い、夢邪鬼との鬼ごっこが続いた。最終地、連なる球に夢邪鬼とあたるが座っている。それはくるくると螺旋を描きながら回っている。

  夢邪鬼 「大分、こたえたようでんなァ。あんさん、夢でよかったと思うとりますやろ」

「現実やのうてよかったと・・・夢やからこそ、やり直しがききますのんや。なんべんでも、くり返せますのや。な、こういうの知ってまっか?蝶になった夢を見た男が、目をさまして、果たしてどっちの自分がホンマやろ、もしかしたら、ホンマの自分は蝶が見ている夢の中におるんとちゃうやろか。・・・・まあ、夢やら現実やらいうて、しょせん考え方はひとつや。なら、いっそのこと夢の中で面白おかしく暮らした方が、ええのとちゃいまっか?あんさんさえ、あんなムチャいわなんだら、なんぼでもええ夢、つくらせてもらいまっせ」

「ワテの創る夢は、現実と同じやさけ・・・・そやから、それは現実なんや。悪いようにはしまへん。そうしなはれ。ほな、ワテ、上でまってまっさかい、決心ついたら来なはれや。いやいや、この階段のぼってくればええのやがな。ハァ、待ってまっせェ〜〜」

  「一人、ぽつりと取り残されるあたる。神妙な顔つきでじっと考えている。そんなあたるに背後から話し掛ける少女がいた。大きなつばの帽子をかぶり、顔を見ることはできない。
  ラム(子供) 「お兄ちゃん、どうしても帰りたいの?」
  あたる 「お兄ちゃんはね、好きな女(ひと)を好きでいるために、その女(ひと)から自由でいたいのさ」

「わかんねェだろうな。お嬢ちゃんも女だもんな」

  ラム(子供) 「教えてあげようか?」
  あたる 「えっ!知ってんの?現実へ帰る方法知ってるの?」
  ラム(子供) 「誰でも知ってるよ。ただ目がさめると忘れちゃうの」

「この玉の上から飛び降りるの。そして、下へつくまでに目がさめたらどうしても会いたい人の名前を呼ぶの。名前を呼べない人はきっと目ざめるのがイヤなのね」

  あたる 「それなら大丈夫。お兄ちゃん会いたい女(ひと)いっぱいいるから」
  ラム(子供) 「その代り・・・」
350 あたる 「ん?」
  ラム(子供) 「約束してくれる?」

「責任とってね!」

  その少女が帽子をあげた。その少女はラムだった。そのとたん、あたるの足元にあった玉が消え、あたるは地上めがけて一直線に落ちていった。
  あたる 「どワあああああああああああああーーーーーっ!」
  ぐんぐん地上が近くなり見慣れた友引町の町並みがあたるの目に飛び込んでくる。

あたるは必死で、会いたい女(ひと)の名前を呼びつづける。

  あたる 「ランちゃん!お雪さん!弁天さま!しのぶ!サクラさん!了子ちゃん!お玉さん!竜ちゃん!露子ちゃん!キンタローの保母さん!花屋のおねェさん、カエデちゃん!イルカのねェちゃん!・・・母さん!!」
  友引高校が見えてくる。もう地上は目の前に迫ってきていた。
  あたる 「うう・・・・・ラーーーームぅ〜〜〜〜〜〜〜!」
  あたるは、地上へまっさかさまに落ちていく。あたるの体は校舎を突き抜け、あたるの教室へ、ペタッと着地した。目の前にはあたるやメガネたちが安らかな寝息を立てている。
  あたる 「人の苦労も知らんとこのガキャ〜〜」

「おきんかボケッ!」

360 めがさめるあたる。そばに寝ているラムをみつけ優しく毛布をかけてやる。しばらくして校舎の時計塔の時計が朝の7時を告げた。
  ラム 「・・・ダーリン」

「ダーリン。ウチ夢を見たっちゃ。ダーリンがいて、テンちゃんがいて、お父さまやお母さまやメガネさんたちが・・・」

  あたる 「ラム、それは夢だよ。それは夢だ」
  どちらからともなく二人は顔を近づけキスをしようとする。

あたるは背後に殺気を感じて振り返った。後ろではメガネたちがものすごい形相であたるを睨んでいた。

  あたる 「タハ・・・・・」
  ラム 「つづき・・・・」
  あたる 「バ、バカいうな。人前でそんな恥ずかしいマネができるか!」
  ラム 「なんで?どうして?どうして人前だとできないっちゃ?ウチを愛してるならできるハズだっちゃ」
  あたる 「このオレがいつオマエを愛してるといったァ!?」
  ラム 「なにイ!まだそんなコトを!くやしイ!」
370 あたる 「ワッやめろ!やめろォ!」

「ギャア〜〜〜!!

  ラムの放つ電撃がいつまでも校舎の窓を照らしていた。

劇 終

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