冬のソナタ第18話《運命のいたずら》
ヴィレッジブックス 冬のソナタ完全版4 第18話
キム・ウニ/ユン・ウンギョン 根本理恵=訳

声劇用にアレンジしております。ご了承ください。

カン・ジュンサン
チョン・ユジン
キム・サンヒョク
ジヌ(サンヒョクの父)

キム次長(ミニョンの部下であり先輩)

ミヒ(ジュンサンの母)

ユジンの母

チェリン・チンスク・ヨングク(ユジンの同級生)

18話あらすじ

ジュンサンは神に背いて、妹であるユジンと2人だけの結婚式を挙げようとする。そこへサンヒョクが現れ、ユジンを連れ出す。ユジンに責められるサンヒョクだが、本当の理由を言えるはずもなく、「君を結婚させたくなかった」とウソをつく。ジュンサンはミヒに「別れなければユジンに事実を話す」と詰め寄られ、別れる事を決断。ユジンとの最後の思い出に海へ行く。ジュンサンは自分と撮った写真を処分するようサンヒョクに頼み、思い出のカメラやポラリスのネックレスなどをすべて海に投げ捨て、ユジンのもとを去る。

  OP(1:03) 最初(はじめ)から今まで
001 スキー場のホテル。サンヒョクが走ってきてユジンの部屋のチャイムを鳴らしながら、激しくドアを叩いている。
  サンヒョク 「ユジン!ユジン!チョン・ユジン!」
  部屋の中から返事が無かった。どうしていいかわからず、部屋の前からサンヒョクは立ち去った。

サンヒョクが思い悩んだ顔で立っていると、向こうの方からジョンアとキム次長が歩いてきた。

  ジョンア 「あら、サンヒョク」
  サンヒョク (切羽詰った様子で)ジョンアさん、ユジンはどこですか?ユジンがどこに行ったか知りませんか?ジュンサンは?」
  キム次長 「いや、それはだな・・・」
  サンヒョク 「大事なことなんです。本当に大事な事なんです!ご存知なんですね?知っていらっしゃるんですね?教えてください!お願いします」
  キム次長とジョンアは困ったように顔を見合わせた。

聖堂。ジュンサンがユジンの頭に黄色いバラのティアラをのせる。そのまま二人はじっと見詰め合っていた。

  ユジン 「私、チョン・ユジンは・・・カン・ジュンサンを夫として迎え、命ある限りいとおしみ、愛することを誓います」
010 ジュンサン (震える声で)・・・私、カン・ジュンサンは・・・チョン・ユジンを妻として迎え、命ある限りいとおしみ愛することを・・・愛することを・・・」
  ジュンサンも誓約をとなえるが、最後の言葉でつまってしまった。ジュンサンの顔を見つめながら、ユジンが次の言葉を待っていた。だが、ジュンサンは「誓います」のひとことをどうしても口にすることができなかった。

その時、ぎーっと教会のドアが開き、サンヒョクが駆け込んできた。ユジンとジュンサンは驚いて振り返った。サンヒョクは決然とした足取りで、驚いて凍りついている二人に歩み寄ると、黙ってジュンサンをにらみつけた。

  ユジン 「サンヒョク!」
  サンヒョク 「行こう、ユジン(引っ張っていく)
  ユジン (ジュンサンを振り返って)ジュンサン、ジュンサン・・・」
  ジュンサン 「サンヒョク」
  サンヒョク (ぱっと振り返って)二人だけで結婚式をすれば済むとでも思ったのか?・・・・二人はだめだ、絶対にだめなんだ」
  サンヒョクは強い口調でジュンサンに語りかける。ジュンサンは「知られてしまったのか」と呆然としていた。
  サンヒョク 「・・・僕が止める。君たちは・・・・絶対にだめだ(と言ってユジンを引っ張っていく)
  ユジンはジュンサンに助けを求めるように振り返りながら、サンヒョクを振りほどこうとするが、サンヒョクの力強い歩みはゆるまなかった。e 

サンヒョクはあらがうユジンを無理やりに引っ張って聖堂から出て行った。ジュンサンはただ呆然として立ちつくしていた。

スキー場の一角。サンヒョクがユジンの手首をがっちりとつかんで、聖堂から出てくる。

020 ユジン 「サンヒョク、どういうこと?放して!(振り返って)ジュンサン!ジュンサン!」
  聖堂の中。「ジュンサン!」というユジンの悲鳴が聞えるがジュンサンはその場に立ちつくしたまま動く事が出来なかった。

サンヒョクが荒々しくユジンを車に押し込む。ユジンが降りようとするが、サンヒョクがロックをかけてしまい、ドアは開かなかった。ユジンの叫びに耳をかす様子も無くサンヒョクは黙って車を発進させた。

聖堂の中では、ジュンサンが放心した様子で祭壇に腰かけていると、キム次長が入ってきた。

  キム次長 「おーい、ここで何してるんだ?」
  ジュンサンはぼんやりとしたまま、目をあげようともしなかった。
  キム次長 「そうそう、サンヒョクって友達、彼がおまえとユジンさんを捜してたから、ここにいるって言っといたけど、来なかったか?」

(不思議そうに)おい、ユジンさんはどこ行ったんだ?(ジュンサンの前に立って)イ・ミニョン、どうかしたのか?」

  ジュンサン (独り言のように)誰も知らないと思ったのに」
キム次長 「なんだって?」
ジュンサン 「本当に・・・誰も知らないと思ったのに・・・」
キム次長 (よくわからないといった顔で)なんだよ・・・今度はなんなんだ」
キム次長は、やれやれといったふうにため息をついて、ジュンサンの横に腰をおろした。
030 キム次長 「また何かあったのか?」

「おい、その服はどうしたんだ?」

「・・・ひょっとして、ユジンさんはあのサンヒョクってやつと一緒に行ったのか?そうなのか?」

ジュンサンはいきなりぱっと立ち上がり聖堂を出て行った。

ユジンの家。ジンスクとヨングクがユジンの部屋の前に立って、不安そうに様子をうかがっている。

ユジンの部屋ではユジンがベッドに腰かけ、サンヒョクは窓際に立っている。二人ともしばらく口を開かなかった。

ユジン 「なんでこんなことしたの?いきなりどうして?」
サンヒョク 「君がジュンサンと結婚するのはいやなんだ!(視線を避け、用意していたかのように嘘をまくしたてる)君を引きとめちゃいけないと思ってたけど、いざ君がジュンサンと結婚するって聞いたら、耐えられなくなったんだ。ジュンサンのところに行かせるんじゃなった」

「ジュンサンと別れてくれ」

ユジン 「・・・・別れられないってこと、あなたもわかってるじゃない」
サンヒョクは窓際を離れ、ユジンの前に座った。ユジンを見る目には涙が光っている。
サンヒョク 「今すぐ僕のところへ戻ってほしいと言ってるんじゃない。まずはジュンサンと別れるんだ。別れてすぐはつらいかもしれないけど、少しだけ時間がたてば忘れられるだろう。ジュンサンが戻ってくる前の、あの頃にまた戻れるんだ。だからすべて忘れて、また始めればいい」
ユジン 「そんなことできないわ」
サンヒョク (カッとなって)どうしてできないんだ!みんなが反対してるじゃないか。ジュンサンのお母さんも君のお母さんも、まわりがみんな反対してることぐらい知ってるだろ!二人を祝福してくれる人なんていないんだ!」
ユジン (腹を立てて)誰も祝福してくれなくてもかまわない。みんなに反対されても、私は平気よ。そんなの、全然悲しくない。世界中のみんなに反対されても・・・そんなの悲しくないわ。ジュンサンさえ私を愛してくれるなら・・・他の人の祝福なんていらない。私たちは、どんなことがあっても・・・」
040 サンヒョク (さえぎって)だめだ。だめだ、ユジン。そんなのだめだ・・・だめなんだ・・・ユジン」
つらそうに語るサンヒョクを、ユジンは、わけがわからず涙を流しながらじっと見つめるばかりだった。

しばらくして、サンヒョクがユジンの部屋から出てきた。

《せりふ:ヨングク》
「いきなりこんなことする理由はなんなんだ」

《せりふ:ヨングク》
「今までしっかり耐えてきたじゃないか。なのになんで急にこんなことするんだよ!」

サンヒョク 「・・・二人とも、僕のこと信じるだろ?僕を信じてくれるだろ?」

「・・・・何も聞かないでくれ。頼むから何も聞かないで、僕を信じてくれ。頼む・・・・」

ユジンの家の前。サンヒョクが出てきて車に乗り込もうとするが、やりきれない思いで車に拳を叩きつける。ふと目をあげると、いつの間にか、前にジュンサンがたっていた。

二人の視線がぶつかり合う。

ユジンの家の近所のベンチにジュンサンとサンヒョクが座っている。

ジュンサン 「君も知っていたのか?」

「どうやって知ったんだ?お父さんが知ってたのか?」

サンヒョク 「・・・ああ」
ジュンサン 「そうだったのか・・・・みんな知ってたのか。(サンヒョクに眼をやり)まさか、ユジンには話してないだろうな?」
サンヒョク 「話してない。いや、話せなかった。そんなこと・・・ユジンに話せるわけがないよ」

「これから・・・・どうするんだ」

ジュンサン 「・・・どうしようか?これからどうすればいいんだろう(サンヒョクを見て)君さえ目をつぶってくれるなら・・・ユジンを連れてどこか遠いところに逃げたい。そう言ったら、どうする?見逃してくれるか?」
050 サンヒョク (胸が痛む)ジュンサン!」
それ以上口をきけず、二人はただ黙って座っていた。

スキー場のロビー。キム次長が電話を耳にあてている。

キム次長 (つながらない様子)ああ・・・・はぁ」
ジョンア 「イ理事、まだ連絡つかないんですか?」
キム次長 「知りませんよ。きっとユジンさんに会いにいったんでしょう」
ジョンア 「昨日ユジンから、イ理事に今すぐ結婚しようって言われたと聞いて、てっきり冗談だと思ってたんですよ。聖堂に行くって聞いた時も、お祈りをしにいくだけなのかと・・・・」
キム次長 「それにしてもあの二人、何か問題があるんですか?映画でもあるまいし、いきなり結婚するって言いだすのも、サンヒョクって言う友達が現れたのも、どうも変だと思いませんか?」
その時、ジョンアの携帯が鳴った。
ジョンア 「はい・・・・(驚いて)ああ!ユジン!ちょうど今、あなたのこと、キム次長と心配してたのよ」
ユジン 「ジュンサンと・・・一緒にいるの?電話に出ないのよ」
060 ジョンア 「イ理事?あなたのところじゃないの?ソウルに行ったけど」
ユジン 「・・・・そうなの?(がっかりして)わかったわ、先輩。また後で電話するわね」
ユジンは電話を切り、心配げな顔でしばらく考えに沈んでいるが、ぱっと立ち上がると家を飛び出していた。

ジュンサンの家の前。ユジンがチャイムを何度も鳴らしているが、返事がなかった。

マルシアンの前。ユジンがマルシアンの階段をとぼとぼとおりてくる。ユジンは階段をおりると足を止めて、マルシアンの方をもう一度見上げるが、ため息をつき、どこかへ向かって歩いていった。

練習室の外。ユジンが椅子に座って、ポラリスのネックレスを不安げに触っている。職員に案内されてミヒがでてきた。

ユジン (立ち上がって)お元気でいらしゃいましたか?」
ミヒ (冷たく)なんのご用かしら?」
ユジン 「あの・・・ジュンサンは今どこにいるか、ご存じですか?」
ミヒ 「それはどういうこと?」
ユジン (あせって)ジュンサンがスキー場にも会社にも、家にもいないんです。連絡がつかなくて・・・お母さんはご存じですね?ジュンサンが今どこにいるか、ご存知ですよね?」
ミヒ (冷淡に)・・・ユジンさん、まだジュンサンと会ってるんですか?私は二人の交際には反対だって、はっきりとユジンさんのお母さんに伝えたつもりですけど」
ユジン 「・・・すみません。お母さんが反対なさっている事は知っていますが・・・私たち、別れることはできません」
070 ミヒ 「私がどうして二人の交際を反対しているのか、ジュンさんから聞いてません?」

(納得したように)そうですか。何も聞いてないんですね。お帰りください。私はユジンさんとお話しすることなどありませんから」

ユジン (すがる思いで)お母さん!」

「・・・・どうか、ご存知なら教えてください・・・ジュンサンが今どこにいるのか、お願いですから教えてください」

ミヒ 「知りません。それに、ユジンさんも知ろうとしないほうがいいと思うわ」
ミヒはそう言うと、冷たく背を向けて練習室に戻ってしまった。ユジンは絶望感につつまれてしまった。

ユジンが階段から力なくおりていると、前から走ってきた人とぶつかった。そのはずみで、ポラリスのネックレスがユジンの手から滑り落ちて、階下へ落ちていった。ユジンはあわてて階段を駆けおりネックレスを拾い上げるが、星が落ちてしまっていた。ユジンは落ちた星を手にとった。その目には涙が浮かんでいた。

ジュンサンの家の中。ジュンサンが窓辺に立っており、ミヒがソファに座っている。

ミヒ 「ユジンが訪ねてきたわ」

「あなたを捜してたわよ」

「あなたがどれほどつらいか、私にはよくわかるわ」

ジュンサン 「・・・・わかるって?(むなしくため息をついて冷笑するかのように)そうか。わかってるんだね」
ミヒ 「ごめんね、ジュンサン・・・・あなたをこんなに苦しめて。お母さんは・・・お母さんは、ユジンのお父さんを本当に愛してたの。だから、あなたを育てながら、誰になんと言われようと、あなたはあなたのお父さんの子どもだって・・・・」
ジュンサン (カッとして)もういいよ!」
ミヒ 「別れなさい。ね?今すぐ別れて。長く引きずったら、あなたがつらくなるわ。あなたもユジンもボロボロになって、もっと苦しむだけなのよ」

(立ち上がり、強い口調で)あなたが言えないなら、私から言うわ。ユジンに会って直接話すわ」

ジュンサンは、ミヒに背を向けていたが、驚いてさっと振り返った。
080 ミヒ 「あなたたちがどうして結婚してはいけないのか、私からユジンに直接話すつもりよ」
ジュンサン (切迫した表情で)だめだ」
ミヒ 「話すわ」
ジュンサン 「それはだめだ。ユジンに知らせるのは、絶対にだめだ」

「ユジンはきっと・・・・耐えられないと思う」

ミヒ 「決めなさい。別れるの?それとも私の口からユジンに話す?」

(うながすように)ジュンサン、ジュンサン!」

ジュンサンの目からなみだがあふれだし、つうっと流れて落ちた。
ミヒ 「ジュンサン・・・・」
ジュンサン 「・・・・別れるよ」
ユジンの家の前。家からユジンが飛び出してきた。そこにはジュンサンが待っていた。
ユジン (目に涙をいっぱいためて)・・・・なんなの?」
090 ジュンサン 「・・・ユジン」
ユジン (責めるように)どういうことよ。どんなに心配したと思ってるの?」
ジュンサン (胸が詰まる)・・・すまない」
ユジン 「連絡もつかないし・・・いったいどこに行ってたの?」
ジュンサン 「事情があったんだ」
ユジン 「どういう事情?」
ジュンサン 「いや・・・・たいしたことじゃないんだ」
ユジン 「私が知ったらいけないこと?」
ジュンサン 「いや、そんなんじゃない。・・・ただ、ちょっと複雑な事情があったんだ。でも全部片付いたよ」
ユジン 「じゃあ、もう心配しなくてもいいのね?」
100 ジュンサン 「ああ・・・何も心配しなくていいよ」
ユジン (涙をふいて)・・・・わかったわ。無事に戻ってきたからいいわ。・・・・いいわ・・・・」
ジュンサンは、心が痛みながらもユジンの涙をぬぐってやり、ぎゅっと抱きしめる。ユジンもジュンサンをしっかりと抱きしめた。
ジュンサン 「・・・一緒に海を見に行かないか?」
ジュンサンの車が暗い国道を走っていく。

海辺。明け方、砂浜にジュンサンの車が止まった。曙光(しょこう)に照らされた海が赤く色付いている。ユジンとジュンサンは車から降りて海に向かって立ち、朝日が昇るのをじっと見ていた。

ジュンサン 「考えてみたら、海に来たのは初めてだな」
ユジン (不思議そうにジュンサンを見て)今まで海に来たこと一度もなかったの?」
ジュンサン 「いや・・・君と一緒に来たのは始めてだってこと。だから僕たちには、これが初めての海だ」
ユジン (笑って)そうね・・・・私たちの初めての海・・・」
ジュンサンが悲しげな表情でユジンをじっと見つめる。
110 ジュンサン(声) 『そして・・・最後の海だ。ここで僕は、君の手を放そうと思う』

後編へ続く

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