METAREX
ジョー |
男 | 警務局員 腕のいい捜査官。一本気で熱い男 |
カーラ | 女 | 警務局員 ジョーの相棒。 ジョーを密かに慕っている |
リン | 女 | 人工生命体METATREX 質感、感情等全て人間と同じ |
特務局員 | 男 | |
局長 | 男 | |
マスター | 男 | |
バトー | 男 | |
ドリル | 男 | |
メリンダ | 女 | |
エルダ | 女 | |
シロン | 女 | |
ナレーション | 不問 |
第3話
SE | 電話のベル | プルルルルル・・・カチャ・・ |
001 | 局長 | 「もしもし・・わたしだ」 |
002 | カーラ | 「あ、局長。ジョーは居ますか?」 |
003 | 局長 | 「いや、ここには居ない」 |
004 | カーラ | 「そうですか・・実は、デッドスカル団の動きがまた活発になってきてるようなんです」 |
005 | 局長 | 「また、どこかを狙うつもりなのか?」 |
006 | カーラ | 「わかりません。でも・・警戒はしておいた方が良いと思います。ジョーに連絡取れますか?」 |
007 | 局長 | 「うむ・・わかった、連絡をとって直ぐに君に合流させよう」 |
008 | カーラ | 「わかりました。お願いします」 |
009 | N | ジョーのマンション。リンがひとりベッドに腰をおろし、窓の外を眺めている。 |
SE | 携帯の着信音 | プルルル・・・ |
010 | リン | 「はい・・もしもし。リンです。」 |
011 | 局長 | 「ん?・・ジョーめ呼出用携帯を置いて行ったな・・・・」 |
012 | リン | 「あ・・局長さんですか?」 |
013 | 局長 | 「リン、ジョーは居ないのか?」 |
014 | リン | 「はい、さっきの電話を受けて・・どこかへ出かけるといって・・」 |
015 | 局長 | 「どこへ行くとか行ってなかったか?」 |
016 | リン | 「はい・・聞いてないです」 |
017 | 局長 | 「そうか・・わかった」 |
018 | メリンダ | 「こちらへどうぞ。私達のマスターからあなたにお話があるそうです」 |
019 | ジョー | 「マスター?」 |
020 | メリンダ | 「あなたをここへ導いてきた彼が私達のマスターです」 |
021 | マスター | 「改めて。よくいらしてくれました。ジョー」 |
022 | ジョー | 「あんたが・・マスター・・べたべたじゃないか・・」 |
023 | マスター | 「あなたに真実をお伝えしようとおこし頂きました」 |
024 | ジョー | 「真実?」 |
025 | マスター | 「はい、デッドスカル団、特務局、そして、ニューロテック社の関係について」 |
026 | ジョー | 「あんたたちは一体なにもんなんだ?」 |
027 | マスター | 「まあ、現状を憂えているもの、と言っておきましょう」 |
028 | ジョー | 「で、あんたが言う真相とはなんだ?」 |
029 | マスター | 「METAREXの寿命をご存知ですか?」 |
030 | ジョー | 「死なないんだろ?」 |
031 | マスター | 「いえ、一般的に、永久駆動のバッテリーの寿命は150年と言われています。おおよそ、人間の倍の寿命があります。また、故障などは自己修復機能があるため殆ど起こりません。とても性能がいいのです」 |
032 | ジョー | 「メタレックスのセールスはいい、俺はここにメタレックスを買いに来たわけじゃねえ。」 |
033 | マスター | 「人は、皆、飽きっぽい生き物です。1体のメタレックスを終生、奉仕者として扱ってはくれません。」
「主人を失ったメタレックスの最期を知ってますか?彼等は、生きながらにして、溶鉱炉で焼かれ溶かされて処分されているのです。」 |
034 | ジョー | 「そうなのか・・」 |
035 | マスター | 「メタレックスを製造しているのはニューロテック社とヒューロンテック社の2社です。壊れないメタレックスを製造し販売する為に両者はしのぎを削っています」 |
036 | ジョー | 「言ってる意味が良くわからねえなあ」 |
037 | マスター | 「経済は需要と供給のバランスで回っています。良い物であっても壊れないものは、商売にならないと言う事です」 |
038 | ジョー | 「益々わからねえ・・」 |
039 | マスター | 「ヒューロンテック社はメタレックスの販売を一手に握る為にデッドスカル団にニューロテック社を襲わせているのです」
「もう一つ秘密をお教えしましょう。特務局員は皆メタレックスです」 |
040 | ジョー | 「な・・なんだとう!」 |
041 | マスター | 「ヒューロンテック社は特務局まで手の中に押えてるんです」 |
042 | ジョー | 「どうりで・・ニューロテック社の爆破事件がいつも特務局扱いになる訳だ・・。」 |
SE | 物音 | ガタガタ! |
043 | N | メリンダが、倒れこんできた。ジョーが手を差し伸べ、抱き起こした。 |
044 | ジョー | 「メリンダ!・・・胸に刺し傷がある・・・・。」 |
045 | マスター | 「この奥に横穴がある、下水管に繋がっているからそこから逃げてくれ」 |
046 | ジョー | 「あんたはどうするんだ!!」 |
047 | マスター | 「ここで奴らが来るのを防ぐ。ジョー!忘れるな!真実は一つだ」 |
048 | ジョー | 「ええい、くそ!・・死ぬなよ!」 |
049 | マスター | 「グッドラック!ジョー!」 |
050 | 局長 | 「カーラ、聞こえるか?」 |
051 | カーラ | 「こちらカーラです」 |
052 | 局長 | 「クラブ・ダミーで爆発事故が発生した。至急現場へ向かってくれ。」 |
053 | カーラ | 「ジョーとは連絡つきましたか?」 |
054 | 局長 | 「いや、連絡をとってるんだが・・繋がらないんだ。連絡がとれ次第、合流させる」 |
056 | カーラ | 「わかりました。現場へ急行します」 |
057 | 局長 | 「あの馬鹿、一体どこほっつき歩いてるんだ。」 |
058 | ジョー | 「くそ!全くひどい事しやがるぜ。・・しかし・・ヒューロンテック社と特務局。そしてデッドスカル団が商売敵の・・ニューロテック社を襲い・・そして・・商圏を握ったヒューロンテック社はメタレックスを一手に販売・・。ん〜〜〜・・そんな簡単な図式なのかなあ・・。メタレックスの存在自体が人類の脅威になってきているのに・・ただの企業戦略ということで片付けられるものなのか・・・。」 |
059 | N | ヒューロンテック社、社長室。一人の女が細い煙草をくゆらせながら250階の窓から外を眺めている。ブロンドの髪、緑の瞳、真っ赤な口紅、そしてしなやかな身体、まさに一等の女である。 |
060 | シロン | 「この世界は、もはやメタレックス無しでは機能しない。人間はもう、この世界には必要無い。メタレックスの世界がもう直ぐそこに来ているのよ。先ずは手始めに人間の犬になっているニューロテック社のメタレックスを全て破壊するわ。そして、一気に革命よ・・・。この手に世界を・・そして・・私がこの星の支配者として君臨するのよ・・。ほほほほ・・・・・。」 |
061 | リン | 「ジョー!どうしたのその格好。埃と水で泥だらけだわ。」 |
062 | ジョー | 「ああ〜〜、疲れた」 |
063 | リン | 「お仕事大変なのね。何か食べる?」 |
064 | ジョー | 「いや、いい」 |
065 | N | ジョーはリンを静かに抱き寄せた。優しく両手でリンの体を抱きしめる。 |
066 | リン | 「ジョー・・」 |
067 | ジョー | 「リン・・死なないメタレックスにも寿命がある・・。永久駆動のバッテリーも150年で切れる・・」 |
068 | リン | 「いいの・・私はジョーと一緒に居られる時間だけ動ければそれでいい。ジョーが死んだら私も死ぬ」 |
SE | 携帯の着信音 | プルルルル・・・カチャ・・ |
069 | 局長 | 「ばかも〜〜ん!ジョー!一体どこ行っていたんだ!!!」 |
070 | ジョー | 「き・・局長・・何もいきなり怒鳴らなくっても・・。」 |
071 | 局長 | 「連絡用の携帯はいつも携帯しておけ!」 |
072 | ジョー | 「それって・・洒落っすか?」 |
073 | 局長 | 「ばかも〜〜〜ん!!!カーラがクラブ・ダミーの爆発事故現場へ行っている。直ぐ合流しろ」 |
074 | ジョー | 「クラブ・ダミーですか?」 |
075 | 局長 | 「どうした?何か引っ掛かるのか?」 |
076 | ジョー | 「いえ・・わかりました。これから直ぐに合流します」 |
077 | 局長 | 「早く行け!・・携帯は携帯しておけよ!」 |
078 | ジョー | 「2度も言わなくても。2度目は笑えませんよ。」 |
079 | 局長 | 「ばかも〜〜〜ん!!」 |
080 | リン | 「お仕事頑張ってね。ジョー」 |
081 | ジョー | 「ああ、行ってくる・・あ、そうだ。リン、君はヒューロン社か?ニューロ社か?どっちだ?」 |
082 | リン | 「私は・・・・。」 |
083 | N | 髪をかきあげると首の右横に小さな星型の痣が見えた。 |
083 | ジョー | 「あ・・いい。じゃ、行ってくる」 |
第4話
SE | 車の停車 | キー・・バタン |
001 | カーラ | 「遅かったわねジョー」 |
002 | ジョー | 「悪かったな・・いろいろ野暮用があってナ」 |
003 | カーラ | 「クラブ・ダミーの爆発跡から死体が4体発見されたわ。4体ともメタレックスよ」 |
004 | ジョー | 「そうか・・・全員死んだのか・・」 |
005 | カーラ | 「全員?ここに居た人数知ってるの?」 |
006 | ジョー | 「ここが野暮用の場所だからな・・」 |
007 | カーラ | 「そう・・何の用でここに来てたの?」 |
008 | ジョー | 「今朝、助けたメリンダという女に呼び出されてここへ来た」 |
009 | カーラ | 「何かの情報を掴んだの?」 |
010 | ジョー | 「ああ・・・まだ、いまいち納得いかない情報だけどな・・」 |
011 | カーラ | 「そう・・で、4体のメタレックスだけど、2体が女性タイプ。2体が男性タイプ。全部ニューロテック社製だったわ。」 |
012 | ジョー | 「ふむ・・何故、ニューロテック社製のメタレックスだって判るんだ?」 |
013 | カーラ | 「ニューロテック社製のメタレックスは首の右横に小さな星型の痣があるの。それはシステムインストールする時のジャック挿入口なのよ」 |
014 | ジョー | 「そうじゃなくって・・デッドスカル団が何故、個別に動いてるメタレックスがヒューロンテックなのかニューロテックなのかって判別出来るんだ?」 |
015 | カーラ | 「さあ・・なぜなのかしら・・・」 |
016 | ジョー | 「今回もデッドスカル団のフラッシャーか?」 |
017 | カーラ | 「ええ、建物の破壊具合、溶け具合から見て、多分そうでしょうね・・」 |
018 | ジョー | 「デッドスカル団か・・・奴等を見たものは誰もいない・・」 |
019 | カーラ | 「何を考えてるの?ジョー」 |
020 | ジョー | 「デッドスカル団だと犯行声明した事もない・・ただ・・特務局の公式発表がデッドスカル団の犯行であると言うだけ・・」 |
021 | カーラ | 「デッドスカル団は・・存在しないって言うの?まさか・・これだけの犯行を繰り返しているのに・・」 |
022 | ジョー | 「いや・・そうは言ってない、証拠がないからな・・。だが・・・」 |
023 | 特務局員 | 「現場を荒らすな。この現場は特務局が担当する。一般警吏員は直ちにこの場から退去しろ・・」 |
024 | ジョー | 「へいへい、どうぞ。カーラ、帰るぞ」 |
025 | カーラ | 「ジョー・・ち・・ちょっと待って。どうしたのよ、いつものあなたらしくもない」 |
026 | N | じっとジョー達の後姿を見つめる特務局員、サングラスの下の眼が怪しい光を放っていた。 |
SE | 通信音 | ピピピピピピ・・・・ |
027 | 特務局員 | 「TKM0988765より発信」 「一般警吏員ジョー・サイゴウ、クラブ・ダミーで敵対メタレックスと接触した模様。何等かの情報を掴んでいると思われる。追跡調査を実行する」 |
028 | カーラ | 「・・なるほどね・・クラブ・ダミーでそんな事があったのね」 |
029 | ジョー | 「だから、どうしてもデッドスカル団と特務局がイコールな気がしてならないんだ」 |
030 | カーラ | 「特務局は治外法権だから調べるのは難しいわねえ・・。」 |
031 | ジョー | 「ヒューロンテック社へ行ってみるつもりだ」 |
032 | カーラ | 「えっ?情報では敵の本拠地じゃないの・・」 |
033 | ジョー | 「行ってみて揺さぶってみる。何か仕掛けて来るかもしれない」 |
034 | カーラ | 「危険よ、ジョー。あなたが標的になるかもしれないのよ」 |
035 | ジョー | 「大丈夫さ」 |
036 | カーラ | 「どうして大丈夫だって言えるのよ。あなたの性格はよく知ってるから止めない。でも、私も一緒に行くわ。駄目だって行っても無駄よ。もし反対したら局長にみんな言うわよ」 |
037 | ジョー | 「あ・・・ああ・・・でも、なぜ・・そうむきになるんだ。カーラ?」 |
038 | カーラ | 「そ・・それは・・・それは、パートナーとしてジョーには死んで欲しくないもの」 |
039 | ジョー | 「・・・わかった・・。じゃ、一緒に行こう。ヒューロンテック社へ」 |
SE | 車の停車音 | キー・・バタン |
040 | ジョー | 「へ〜〜、はじめて見るが・・ここか・・。凄いビルだな・・」 |
041 | カーラ | 「行きましょ」 |
042 | ジョー | 「ああ」 |
043 | N | 自動ドアに一歩、足をかけるジョー。自動扉が音も無く左右に開いた。目の前に銃を構えて立つ特務局員がいた。 |
044 | ジョー | 「な・・なんだ・・お前達は」 |
045 | 特務局員 | 「不穏な輩がこのビルを襲うと言う情報が入った」 |
046 | ジョー | 「それが俺達だって言うのか!このやろう!」 |
047 | カーラ | 「ジョー、落ちついて」 |
048 | 特務局員 | 「そういう行動は慎むべきだな、テロリストと間違われても仕方がない」 |
049 | ジョー | 「なんだとう!!」 |
050 | N | 突然、ジョーを取り囲んでいた特務局員たちが警棒を手に容赦なくジョーを打ち据えた。ジョーは抵抗するまもなく叩きのめされ床に転がった。 |
SE | 殴る音 | バシ!ドカ!ボズ! |
051 | ジョー | 「グッツ!グハ!」 |
052 | カーラ | 「ジョー!」 |
053 | 特務局員 | 「馬鹿め」 |
SE | ハイヒールの音 | カツカツカツ・・・ |
054 | シロン | 「どうしたの?入り口で騒々しい。」 |
055 | 特務局員 | 「怪しい奴がビル内へ潜入しようとしていたので・・」 |
056 | カーラ | 「待って、私達は怪しいものじゃないわ!警務局の者よ!」 |
057 | シロン | 「警務局?・・一般警吏さんが一体このビルになんの用かしら?」 |
058 | カーラ | 「ニューロテック社のメタレックス爆破事件について調べてるの」 |
059 | シロン | 「じゃあ、ここへ来るのはお門違いじゃないかしら?ここはヒューロンテック社よ?」 |
060 | ジョー | 「ニューロテックのメタレックスを破壊してるのがここのヒューロンテックじゃないかって言ってるんだよ!」 |
061 | シロン | 「あ〜ら、面白いこというわね?何の証拠があってそんな事言ってるの?」 |
062 | ジョー | 「証拠は何もないさ・・。」 |
063 | シロン | 「わからないわね・・あなたの言ってる事が?あなたは誰?」 |
064 | ジョー | 「おれはジョー・サイゴウ・・あんたは誰だ?」 |
065 | シロン | 「わたしはシロン・ユウリ。このヒューロンテック社の社長よ」 |
066 | ジョー | 「丁度いい・・。デッドスカル団が、今、巷のニューロテック社のメタレックス直販店を壊して回ってるのは知ってるな」 |
067 | シロン | 「知ってるわ。お気の毒だわ、あそこのメタレックスは性能が良いのに」 |
068 | ジョー | 「マッチポンプって言葉知ってるか?」 |
069 | シロン | 「ヒューロンテック社が右手で火をつけ左手で火を消してると言うの?」 |
070 | ジョー | 「そう、単純なところで言えば・・企業同士の経営覇権争いって奴かな・・」 |
071 | シロン | 「でも、それは犯罪だわ。私達の会社は正規の企業よ。そんな事は一切やるはずないじゃない」 |
072 | ジョー | 「デッドスカル団はあんたのところのMETAREXじゃ無いのか?」 |
073 | シロン | 「面白い推理ね」 |
074 | ジョー | 「非合法も、法の番人が行うと合法な手続きになっちまう・・・そんな番人もあんたとこは飼ってるんじゃないのか?」 |
075 | シロン | 「おひきとり願いましょうか?邪推のお相手は時間の無駄ね」 |
076 | 特務局員 | 「立て!さっさと出ていけ!」 |
077 | ジョー | 「今日のところは帰ってやるよ、また来るからな!」 |
078 | シロン | 「今度来るときは、あなたの誤解がとけてればいいわね」 |
079 | ジョー | 「そうだな・・誤解が解けて、正解だったらどうする・・?」 |
080 | シロン | 「ふふふ・・・次回会った時のお楽しみね・・・」
「次回があればいいけれど・・ほほほほほ・・・」 |
081 | N | カーラに支えられながらジョーがヒューロンテック社のビルを後にする。その後ろ姿をシロンが腕組みをしてじっと見つめている。形のいい真っ赤な唇の端がキュッとまげられ、不敵な笑みを作っていた。 |