METAREX

ジョー

警務局員 腕のいい捜査官。一本気で熱い男
カーラ 警務局員 ジョーの相棒。 ジョーを密かに慕っている
リン 人工生命体METATREX 質感、感情等全て人間と同じ
     
     
特務局員   
局長  
マスター   
バトー   
ドリル  
メリンダ  
エルダ  
シロン  
ナレーション 不問  

第1話

001 ロボット工学の三原則と言うのがある。
第1条、ロボットは、人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。
第2条、ロボットは、人間に与えられた命令に服従しなければならない。ただし、与えられた命令が、第1条に反する場合は、この限りでない。
第3条、ロボットは、前掲の第1条および第2条に反するおそれのない限り、自己を守らなければならない。

ロボットは人間に対して絶対の奉仕者であった・・。しかし、ロボットの進化は目覚しく、人間を凌駕する能力を持つロボットが多数出まわり始めたのである。人々は(鋼鉄の恐竜)METAREX(メタレックス)として恐れたのだった。

SE 靴音 タタタタタ・・・
002 メリンダ 「た・・助けて!助けてください」
003 ジョー 「な・・なんだ?どうした?そんなに慌てて」
004 メリンダ 「変な男たちに追いかけられてるんです」
005 ジョー 「何ぃ・・!」
006 特務局員 「その女をこちらに渡せ。」
007 ジョー 「こいつらか・・・・」
「何だこいつら・・黒づくめの服着やがって・・気持ちの悪い・・」
008 特務局員 「もう一度言う、その女をこちらに渡せ。」
009 ジョー 「しつこいなテメエらも・・女1人に3人も寄ってたかって何なんだ。かわいそうに震えてるじゃないか」
010 特務局員 「お前は何か勘違いをしてないか?」
011 ジョー 「冗談きついぜ、この状態で何を勘違いするんだ?たちの良くない3人の屈強な男たちが、か弱い女1人を追い掛け回して、何が勘違いだ」
012 特務局員 「・・・逃げたか・・」
013 ジョー 「へへ・・逃げちゃったか?そりゃあ、残念だったな」
014 特務局員 「一緒に来てもらおうか。」
015 ジョー 「女が居なくなったら今度は俺か?俺が何したってんだ!てめえら一体何もんだ!」
016 特務局員 「公務執行妨害、逃亡幇助、お前を連行する」
SE 手錠 ガチャ!
017 ジョー 「な・・な・・何だとう〜〜。お・おい・・待ってくれよ・・お・・おい・・」
018 ジョーの手に手錠がかけられ、黒服の男達に連行されていく。その様子をさっき助けを求めてきた女が物陰からそっと覗いていた。
SE 環境音 ざわざわとした音
019 局長 「ジョー、よく殺されなかったものだな。特務局も暴れ馬のジョー・サイゴウには手が出さなかったと見える」
020 ジョー 「冗談やめて下さいよ。・・・イテテ・・・くそ!あいつら遠慮無しに殴りやがった・・特務局ってそんなに偉いンすかね」
021 局長 「当たり前だ、特務局は治外法権だ。彼らは殺人まで含める全ての権利を持っている。殺されなかっただけ儲けものだ」
022 ジョー 「冗談じゃねえや!いきなり理由も言わずに逮捕は酷いじゃないすか!」
023 局長 「彼らはコードネームをウルフェンと呼ばれている。食らいついたら死ぬまで放さない」
024 ジョー 「ウルフェンね・・酷いはずだ・・満月の夜には気をつけよう・・イテ・・」
SE 電話のベル プルルルルル・・・・カチャ
025 局長 「・・もしもし・・カーラか?私だ・・うむ・・わかった・・。すぐに行かせる」

「・・痛いところスマンが爆破事件だ。カーラが現場で待っている。直ぐに合流してくれ」

SE 電話の受話器を置く ガチャ
026 ジョー 「あのう・・・俺・・今、ボコボコに殴られて非常に体がベリーベリータイヤードなんですがね・・」
027 局長 「何か言ったか?」
028 ジョー 「え?・・・・・・いえ、別に。・・・場所はどこっスか?」
029 局長 「ニューロテック社の直販店。セクサスだ。」
SE 靴音 ジャリ・・ジャリ・・・
030 セクサスの爆風で吹き飛んだ入口のフレームを跨ぎ、ジョーが入ってくる。フロアは細かいガラスの破片が飛び散り、歩く度にジャリジャリと音を立てた。
031 ジョー 「ありゃりゃぁ・・・・こりゃ・・ヒデぇなあ・・バラバラのぐっちゃぐちゃだわ」
032 カーラ 「ジョー・・遅かったわね。・・どうしたの?その傷?また、無茶したのね」
033 ジヨー 「ああ・・ちょっとな・・」
034 カーラ 「事件の概要を説明するわね。目撃者の証言によると爆発が起こったのは午後3時17分頃、バイクで走ってきた犯人が店内にいきなり爆弾を投げ込んだらしいわ。鑑識の報告ではフラッシャーじゃないかって言ってたわ」
035 ジョー 「フラシャー・・?」
036 カーラ 「ええ、デッドスカル団が使ってる高温熱波炸裂弾よ」
037 ジョー 「ふ〜ん・・高音熱波炸裂弾ねぇ・・こりゃ・・生きてる奴はいねえだろうなあ・・」
038 カーラ 「いるわよ、一人」
039 ジョー 「ほう、強運だな・・俺もあやかりたい気分だ」
040 カーラ 「店長のドリルという男よ」
041 ジョー 「どこにいるんだ?病院か?」
042 カーラ 「いいえ、その柱の反対側にいるわ・・・・あまりいい格好じゃないけどね・・・」
SE 靴音 ジャリ・・ジャリ・・
043 ジョー 「・・こいつは・・・酷いな・・・身体が熱で柱に溶け込んでるのか・・」
044 カーラ 「ええ、柱が幸いしたのか・・災いしたのか・・柱の影にいたものだから、フラッシャーの熱が弱められて身体が半分溶けた状態で柱に溶け込んでしまったみたいね」
045 ジョー 「おい、聞こえるか?」
046 ドリル 「ん・ん・・く・・苦しい・た、助けて・・くれ」
047 ジョー 「助けてやりたいが、柱ごと切りとるしかないからなぁ・・・」
048 ドリル 「ううう・・俺が何をしたんだぁ・・ううう・・ぐうう・・・死にたくない・・」
049 ジョー 「ニューロテック社の直販店ばかり狙われてる。あんたも運が悪かったな・・・・」
050 ドリル 「く・・苦しい・・・いやだ・・死ぬのは嫌だ・・・ああ・・」
051 ジョー 「苦しいか・・・・楽にしてやるよ」
052 カーラ 「ジョー!何をしてるの!!」
053 ジョーは胸のホルスターから銃を抜くと、苦しそうにもがく男へ向けて照準を絞った。カーラが慌ててジョーの腕にすがりつく。
054 カーラ 「ジョー!!!やめなさい!彼を殺すつもりなの!彼は生きてるのよ!!」
055 ジョー 「この男を助ける事が出来るのか!?生かせてやることができるのか!死ぬより辛い生涯をおくることになるんだぞ!」
056 カーラ 「でも!まだ生きてるの!」
057 ジョー 「生かせておくことが優しさなのか?このままずっと、死の恐怖におびえながら!」
058 カーラ 「命の長さを決めるのは私達じゃないわ!彼は生きたいと願ってる!私たちには助ける義務があるのよ!」
059 ジョー 「・・もういい・・放せ・・」
060 カーラ 「撃たないって約束して!」
061 ジョー 「もう、その必要は無い・・・」
062 カーラ 「えっ!?」
063 ジョー 「ん?・・・・この男・・METAREX(メタレックス)・・か!」
064 カーラ 「えっ!嘘?」
065 ジョー 「身体が半分溶けた状態で生きてる事自体、変だと思ったが・・・・」
066 カーラ 「わからなかったわ・・。彼がMETAREXだったなんて・・・」
067 ジョー 「人工生命体METAREX・・・・」
068 特務局員 「この事件は我々特務局で扱う、一般警吏は直ちに現場を退去しろ」
069 ジョー 「けっ!ウルフェン様のお出ましだ。・・・俺達の担当地区のこの現場を荒らすのはやめてもあろうか」
070 特務局員 「我々の捜査の邪魔をすると言うのか?・・ほお・・・お前は、今朝のあの・・チンピラか。また、痛い目にあいたいのか?馬鹿は死なねば治らないと見える」
071 ジョー 「なんだとォ〜!」
072 カーラ 「やめて!ジョー。」
073 薄暗いダウンライトが室内をほんのりと照らし出す。静かな音楽が流れている。その店の一角でジョーがやけ酒をあおっていた。
SE コップを置く タン!
074 ジョー 「ちくしょ〜!腹が立つ!俺達では特務局には歯向かえねえのか!」
075 カーラ 「いくら荒れてもジョー、どうしようもないわ・・あ・・そうだ。ジョー、リンとはうまくやってるの?」
076 カーラがジョーの気を紛らわすため、ジョーと一緒に住んでいるリンの事を聞いた。
077 ジョー 「ああ・・」
078 カーラ 「ご馳走様。リンが待ってるんじゃないの?早く帰ってあげなくちゃ」
079 ジョー 「ああ・・そうだな・・・」

第2話

001 都心から少しはなれたマンションの25階、2519号室。そこがジョーの家だった。
SE 呼び鈴・ドアの音 ピンポン・・・プシュー・・
002 リン 「おっ帰り〜〜今日、何の日か知ってる〜〜・・憶えてないかなあ?・・・今日はネエ、私と・・あなたが出遭った日よ」

「御馳走つくって待ってたの。・・・どうしたの?・・あ・・お酒のんでるんだ?」

003 ジョー  「・・・リンにとって生きるって何だ?」
004 リン  「どうしたの急に・・」
005 ジョー  「死ぬことは怖くないか?リン」
006 リン  「ジョー・・・私には死と言う事がどんな事なのか解からないわ。永久駆動のこの胸のバッテリーが止まる事は考えられない。死は永久に来ない・・。死ぬとき・・それはジョーと別れるときかもしれない。でも、今はとても幸せ・・だってあなたとこうして一緒に暮らしていられるんだもん」
007 ジョー  「そうか・・・・。」
008 リン  「私は・・・あなたにリンという名前をもらった・・。私の製造ナンバーはRHN-18009675・・」
009 ジョー  「死に行く寿命を持った人類と・・人類の異種、死なない擬似生命体METAREX・・。異種の死こそが・・人類存続の解決策なのか・・・。」
010 リン 「ジョー、携帯が鳴るよ」
SE 携帯の着信音 プルルルルル・・・
011 ジョー  「ん?・・誰だ・・非通知だ・・・はい・・もしもし・・」
012 メリンダ  「私です・・わかりますか?」
013 ジョー  「・・わからんな・・声はどこかで聞いたようだが・・・誰だ、あんた・・・」
014 メリンダ  「今日、助けてもらった・・」
015 ジョー  「・・ああ、あんたか。上手く逃げられたみたいだな。俺の携帯番号どうやって調べたんだ?」
016 メリンダ  「すみません、あなたに御迷惑をかけてしまって。どうしても連絡をとりたかったので、情報局のテラコンピューターから情報をリークしました」
017 ジョー 

「凄腕のハッカーだな・・ま、そんなことはこの際どうでもいいや・・。・・しかし、まさか特務局があんたを追ってたとは思わなかった。あんた・・一体何者だ?」

018 メリンダ  「今日のMETAREX直販店の襲撃で、破壊された店は10件・・・」
019 ジョー  「何が言いたい?・・あの襲撃は・・君がやったとでも言うのか?」
020 メリンダ  「いいえ、あれはデッドスカル団の仕業・・METAREXの増加に人類は脅威を感じています」
021 ジョー  「死なないからな・・・」
022 メリンダ  「お話があるのですが・・これから会えませんか?」
023 ジョー  「何の話をしようというんだ?」
024 メリンダ  「今回の爆破事件の・・真相・・とでも言っておきましょう。」
025 ジョー  「・・わかった、で、どこへ行けば良い?」
026 メリンダ  「クラブ、ダミーへ来てください」
027 ジョー  「わかった」
028 メリンダ  「じゃ、お持ちしてます」
SE 電話通信切断 プツ・・・プープープープー・・・
029 N  電話が切れた。ジョーは携帯を手にして、じっと窓の外を眺めている。
SE 遠雷 ゴロゴロゴロ・・・・
030 リン  「お仕事?」
031 ジョー  「ああ、出かけてくる」
032 リン  「そう・・気をつけてね・・・」
033 ジョー  「ああ・・安心しろ」
034 リン  「・・・行ってらっしゃい」
035 ジョー  「ああ」
SE 雷と雨 ゴロゴロゴロ・・ザー・・・
036 ジョー  「ここか・・クラブ、ダミー」
SE 扉を開ける ぎぃ・・
037 N  室内は薄暗く、薄いオレンジ色のランプが燈っていた。右側には人工鑑賞水槽にデジタルフィッシュが泳いでいた。その映像の青白い光が目に眩しかった。
SE 靴音 コツ・・コツ・・・
038 マスター  「何かご用ですか?お客さん?」
039 ジョー  「・・ここで人と待ち合わせをしてるんだ」
040 マスター  「そうですか・・・ではごゆっくりどうぞ・・ただ、天気が悪いので早めに店じまいしてしまいますけどね・・・」
041 ジョー  「そうなのか?・・・」
SE 物音 ドサ!
042 ジョー  「何の音だ?2階から音がしたぞ?人がいるのか?」
043 マスター  「いいえ、おおかたネズミでも暴れてるのでしょう。」
SE 物が壊れる音 ガシャ!バリン!
044 N  ドアを蹴破るように男が現れた。その男の左手には女の姿があった。男は荒れ狂っている。
045 バトー  「やい!この店には人間の女はいねえのか!!」
046 マスター  「何の事ですか・・?」
047 バトー  「しらばっくれるんじゃねえ!!この女、メタレックスじゃねえか!!」
048 マスター  「それが何か?」
049 バトー  「何を〜〜!高い金とってメタレックスを抱かすのか!!人間様を舐めるんじゃねぇぞ!!」
050 エルダ 「痛い!いい加減に放して!」
051 バトー  「やかましい!!メタレックスの癖に!!人間様に逆らうな!!」
052 エルダ  「なんだい!さんざん、なぶっといて、金払う段になって急に渋ったくせに!このゲス野郎!!」
053 バトー  「なんだと!遊んでもらって感謝しな!!」
054 エルダ  「そんな汚い手でアタシを触るんじゃないよ!!」
055 バトー  「この腐れメタレックスが!!」
SE 叩く、転がり倒れる バシ!・・・ガタン!・・ドスン!
056 N  男の手が女の頬を平手で張った。女は吹っ飛び転がった。倒れた女の唇から赤い血が流れ出ていた。男は、ぎろっと女を睨むと懐からナイフを取り出した。
057 バトー  「メタレックスのオメエ等が俺たち人間と同じ赤い血が流れてる事なぞ許せネエ!!」
058 ジョー  「やめろ!」
059 バトー  「何だ!テメエは!!この女の味方をするのか!!」
060 ジョー  「そんなんじゃねえよ。男が女に手を上げるのは俺の美学に反するんだよ」
061 バトー  「くそったれ!テメエもメタレックスだな!!」
062 N  男は狂ったような目をしていた。男はジョーめがけて襲いかかってきた。男の太い腕が唸りを上げる。ジョーは軽いフットワークで男の攻撃をかわす。ジョーのパンチが男の胃にめり込む。うつむく男のあごにアッパーをめり込ませる。男が大きくのけぞり後ろへ倒れ込んだ。
SE 殴る音 ドス!バキ!ボコ!
063 ジョー  「人間だろうが、メタレックスだろうが関係ないだろ、今を精一杯生きているんだ!」
064 エルダ  「ちくしょう・・ちくしょう・・人間なんか・・人間なんか・・」
065 ジョー  「泣いてもいいんだぜ」
066 エルダ 「わ〜〜〜〜・・・ううう・・。」
067 女がジョーの胸に顔をうずめて泣きじゃくる。ジョーは静かに女を抱きとめた。
068 マスター 「ジョーさん、メリンダが待ってます。こちらへ。店の奥へどうぞ」
069 ジョー 「俺の事知ってたんだな」
070 マスター 「ええ、メリンダから聞いています。こちらです。あ、そうそう、今の2人とも我々の同志です。あなたがどんな人間か試させていただきました」
071 エルダ 「ごめんね。あんたみたいな人間もいるんだね・・」
072 バトー 「あんたのパンチ、熱かったぜ」
073 ジョー 「・・・・おまえ達・・・人間みたいだな・・・」
SE 重い扉が開く ギ〜〜〜ガコン! カンコンコン・・(靴音)
074 地下道に足音が響く。そして・・鉄の扉の前に立ちナンバーキーを回して扉を開いた。部屋の中にメリンダが立っていた。
075 メリンダ  ようこそ、お待ちしてました。」

 

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