劇場版ルパン三世カリオストロの城−

ルパン三世 カリオストロの城 ED Video 9.84MB

001 次元大介 「聞かねぇ名だな・・・カリオストロ公国たぁ・・」
  ルパン 「人口3,500・・・世界で一番小さな国連加盟国だよ」
  次元大介 「それがゴート札の震源地という訳か・・・」
  ルパン 「その筋じゃ有名な伝説さ・・・ニセ札界のブラックホールってな・・・」
  次元大介 「ブラックホール!?」
  ルパン 「ちょっかい出して帰って来たヤツはいないとさ・・・」
  次元大介 「はぁ〜恐いねぇ・・恐いからオレ寝る」
  ルパン三世−カリオストロの城−
  平原いっぱいに咲き乱れる花々、真っ青な空を悠然と流れる雲、まるで止まっているかのようにのんびりとした時間が流れる。その時、道の先から一台の車が疾走してくる。運転手はウエディングドレスを着た娘だった。黒ずくめの男たちの車がその後を追いかける。ルパンと次元も愛車に乗り込み、後を追う。
010 次元大介 「どっちにつく?」
  ルパン 「オンナァ!!」
  次元大介 「だろうな!」
  黒づくめの男たちの車が執拗に娘の車を追い立てる。幅寄せし、ガードレールにすりよせ激しい火花が散る。
  ルパン 「タイヤだ!」
  次元大介 「よし!」
  次元の銃が火を吹いた。しかし、男たちの車の硬い装甲に跳ね返される。
  次元大介 「クソ〜〜ッ!!ただの車じゃねェぞ!!」
  ルパンたちは岩肌の急斜面を駆け上がり、頭上からマグナムで狙う
  次元大介 「今度のはただの弾じゃねえぞォ!!」
020 次元の撃った弾は見事、男たちの車のエンジンをぶちぬいた。車は煙を吹きながら岩肌に激突した。

ルパンたちは娘の乗った車に近づいていく。しかし車のスピードは落ちない。娘の車はもう、廃車寸前だった。

  ルパン 「あららら・・・気絶してるぜ!!」
  次元大介 「こりゃバラバラになるぞ!!」
  ルパン 「ハンドル頼む!」
  娘の車に飛び移るルパン、しかし、ハンドルがきかない車はそのまま、ガードレールを突き破って、空中へダイブした。ルパンは間一髪、娘を抱きとめ、崖に突き出した木の幹にワイヤーをを引っ掛ける。
  ルパン 「ふう・・」
  クラリス 「あっ!・・・」
  ルパン 「ンフ・・・」
  クラリス 「イヤッ!!離して!!」
  ルパン 「だっ・・だめだめ危ねえって!し・・下、下、下見ろ!!」
030 クラリス 「えっ!!」
  ルパン 「そう・・・それでいい。そのまま・・」
  ルパンはベルトのバックルの歯車を回し、ワイヤーをゆっくりと延ばして下へ降りていく。突然、今まで二人を支えていた木の幹が抜けた。まっさかさまに落ちるルパン。その腕の中にはしっかりと娘を抱いている。地面に尻から落ちるルパン。その頭上に木の幹が落ちルパンは気絶してしまう。
  クラリス 「・・・ん・・・あっ!・・・・もしもし・・・」
  娘は気絶しているルパンを揺り起こそうとするが、ルパンは目を覚まさない。娘は湖に手袋を浸し、ルパンの頭を冷やしている。

湖の向こう岸から、黒い煙を吐きながら船が近づいてくる。娘はあわてて逃げだした。謎の船は執拗に娘の後を追って行く。

しばらくしてルパンが目を覚ました。

  次元大介 「おい!ルパンよ!!」

「まァ、なんつーザマだ!!」

  ルパン 「あ・・オレの花嫁は?」
  湖の方を指差す次元。さっきの船が小さくなっていく。船に娘の姿が見える。
  ルパン 「くっそ〜〜〜ッ!!」
  次元大介 「たかが娘っ子一人にアイツらいったい何者だ・・」
040 握り締めた手の中に娘の手袋が残った。その中に指輪があるのを見つける。
  次元大介 「指輪じゃねえか!」
  ルパン 「はてな・・・どっかで・・・・」

「はっ!」

  次元大介 「どうしたんだい!?指輪見て急に目の色変えやがって!!」
  ルパンと次元は古ぼけた城の前に立っていた。ルパンは知っているのか、さくさくと中へ入って行く。ぽつり残される次元。
  次元大介 「おいルパン!この古城に何かあるのか?」

「ん?・・・指輪と同じ紋章だぜ・・・・ルパン・・・・」

「無人になってから、そう古くはないな・・・・火事か・・・・」

  爺さん 「誰だ!!」
  ルパン 「ただの通りすがりさ・・・」
  爺さん 「観光か!?」
  ルパン 「ああ・・まあね。・・ここは確か大公殿下の館だったと思ったんだけど・・・」
050 爺さん 「今でもそうじゃ。ヨソ者がウロチョロしていい所じゃないんだぞ!!」
  次元大介 「これが大公の館だってェ?カラッポの廃墟じゃねェか!」
  爺さん 「七年前の大火事でな・・・大公ご夫妻がお亡くなりになって以来、これこの通り荒れ放題になってしまったんだ」
  次元大介 「・・・妙だな・・・大公って王様のことだろ?今は王様ナシって訳か?」
  爺さん 「摂政がいるからな!困りはしないそうだ。早く帰れよ!」
  次元大介 「ヘイヘイ」
  館の泉の側で一人物思いにふけるルパン。
  ルパン 「大きくなりやがって・・・」

「どったの?」

  次元大介 「とぼけるんじゃないの!」
  次元が、いきなりルパンの首をねじ上げ、コブラツイストをかける。
060 ルパン 「ぐおっ!!」
  次元大介 「一人でカッコつけて悩むんじゃねェ!!」
  ルパン 「ノォノォノォ〜〜〜ッ!!」
  次元大介 「言えッ、言えッ!!言うかッ!!」
  ルパン 「言う言う言う言う・・・・」
  ルパンと次元は湖の中に立つ、巨大な城を見ている。
  ルパン 「摂政カリオストロ伯爵の城だ。・・あそこ見ろよ・・そう、下のほう・・水道橋の向こうだ」
  次元大介 「さっきの船だ!!・・・・花嫁はあの城の中か・・」
  ルパン 「あそこに水門があるんだ・・昔のまんまだぜ・・・」
  次元大介 「お前・・あの城に潜った事あるのか?」
070 ルパン 「十年以上前の話さ・・・・ゴート札の謎を解こうってな・・・まだ駆け出しのチンピラだった・・」
  次元大介 「・・で!?どうだった?」
  ルパン 「それがコテンコテン!シッポまいて逃げちゃった・・」
  次元大介 「ハァ・・・」

「ん?・・・オートジャイロとは古風だな・・」

  ルパン 「伯爵だよ」
  次元大介 「えっ!?」
  ルパン 「さあ宿でも探そうぜ!」
  次元大介 「お・・・・オイ!!」
  伯爵を乗せたオートジャイロが城へ着陸する。ジャイロから飛行服に身を包んだカリオストロが降りてくる。
  カリオストロ 「ジョドー不始末だな」
080 ジョドー 「申し訳ありません・・・御婚礼衣装の仮縫いでございましたので・・・男どもが席をはずした折でございました」
  カリオストロ 「今は北の塔か?」
  ジョドー 「はい、お薬でよくお眠りになっていらっしゃいます」
  カリオストロ 「外国人?」
  ジョドー 「はい・・二人連れの男が・・逃亡の手助けをしたとの事でございます」
  カリオストロ 「見つけ出せ!!後始末はまかせる!」
  北の塔に姿をあらわすカリオストロ伯爵、薬で眠っているクラリスの寝顔をのぞき込む。
  カリオストロ 「・・・指輪が・・・・ない!!・・・・・ジョドーを呼べ!!」
  夜、賑わいを見せる城下の食堂。指輪を虫眼鏡で調べるルパン。
  ルパン 「この文字は死滅したゴート文字だ・・・」
090 次元大介 「ゴート文字?」
  ルパン 「光と影、再びひとつとなりてよみがえらん・・・1517年・・年号はローマ文字だ」
  次元大介 「四百年前の代物か・・」
  店の店員がスパゲッティを持ってくる。ルパンが見ている指輪をふと見た店員は、それがクラリスの紋章で、クラリスは伯爵と結婚式を挙げるため修道院から帰ってきたのだという。
  ルパン 「そうかあ・・どうりで観光客が多いと思ったよ・・」
  次元大介 「お前・・昼間の娘が大公のお姫様だって知ってたな!」
  ルパン 「あ〜ら、言わなかったっけか?」
  宿屋に戻ったルパンと次元は、黒覆面のなぞの集団に襲われた。音もなく忍び寄る黒覆面たち。手にはめた長い鉄の爪を振るってくる。ルパンと次元は、屋根伝いに逃げた。執拗に追ってくる黒覆面たち。車に乗り込むルパンと次元。張り付いた黒覆面を壁に押し付け振り落とす。何とか振り切って逃げることができた。
  次元大介 「ひェ〜〜〜ッ、ビックラこいたぜ!!」
  ルパン 「本格的に攻めてきやがった。この事件、裏は深いぞ!!」
100 次元大介 「面白くなってきやがった!!」
  カリオストロ城の隠し部屋の中、カリオストロ伯爵が偽札を調べている。
  カリオストロ 「いい出来ではないな・・・このところ質が落ちていくばかりだ。やり直せ!納期も遅らせてはならん!!」

「誰だ!?」

  ジョドー 「このジョドー・・一生の不覚です・・・ネズミめを取り逃がしました・・」
  カリオストロ 「・・ん?・・・ジョドーその背中の紙は何だ?」
  ジョドー 「こ・・これは・・・ルパンの予告状です!!」
  カリオストロ 「読め!」
  ジョドー 「は・・・はい・・・いや・・しかし・・・」
  カリオストロ 「構わん!」
  ジョドー 「・・・色と欲の伯爵殿・・・花嫁はいただきます・・・近日参上、ルパン三世・・・」
110 カリオストロ 「よかったなジョドー」
  ジョドー 「・・は?」
  カリオストロ 「待とうではないか・・ルパンとやらが来るのを・・・」
  雨が降っている・・菅笠(すげがさ)を被った五エ門が古城へ入って行く。そこに、ルパンと次元がいた。
  次元大介 「よォ!早かったな!!」
  石川五エ門 「仕事か・・・?」
  次元大介 「五エ門が来たぞ!」
  ルパン 「こっちにも来たぜ!!」
  次元大介 「あァ?」
  ルパン 「覗いてみな!」
120 次元大介 「あァッ!!日本のパトカーだ!!」
  ルパン 「銭形だよ・・・・これで役者がそろったって訳だ!!」
  銭形警部 「お食事中、失礼します!!」

「国際警察の銭形です!!ルパンの予告状が届けられたとの通報があって参りました!!」

  カリオストロ 「・・・ああ、アルセーヌ=ルパンの三代目とか言うコソ泥の事か?・・インターポールはそんな事で人の朝食を騒がすのかね?」
  銭形警部 「閣下!ルパンをあなどってはなりませんぞ!!来ると言ったらヤツは必ず来ます!!」

「ご婚礼まであと三日!是非、私どもに城内を警備させてください!」

  カリオストロ 「この国にも警察があってね・・もっともより優雅に衛士と呼んでいるがね」
  銭形警部 「閣下!いまひとつ!!ルパンが花嫁を狙う理由をお教えください!!」
  カリオストロ 「さあ・・・それを調べるのもキミの仕事じゃないのかね?」
  銭形警部 「失礼しました!!」
  銭形警部は部屋を退室していった。
130 ジョドー 「よろしいのですか?あのような者を城内に入れましては・・・」
  カリオストロ 「構わん!インターポールにも友人はたくさんいる。すぐ引き上げる事になろう・・・」
  ジョドー 「ハイ・・・」
  石川五エ門 「・・・オンナ?」
  次元大介 「オット!降りるなんて言うなよ!!女がらみだがそれだけじゃねェんだからよ!!」
  石川五エ門 「その指輪とやらに何があるのか?」
  次元大介 「それも娘をヒヒジジイの伯爵から取り戻せば分かるんだ!」

「何しろな・・マグナムが効かねェ化物だ!・・おめえのヤッパと・・この対戦車ライフルで・・」

「よォ、ルパン!進入路はめっかったか!?」

  ルパン 「いや、すンごいもンよ!!レーザーとレーザーの巣だ・・」
  次元大介 「そうかァ・・・戦車がいるなァ・・・」
  石川五エ門 「それで銭形を呼んだな・・・」
140 次元大介 「何ッ!?本当か!?ルパン!!」
  ルパン 「当たり〜〜〜ッ!!いい感してるぜ!!」
  石川五エ門 「毒をもって毒を制す・・・か・・・」
  城の内部へ通じる水路を伝ってなんとか潜入に成功したルパンは、城の中央を目指して進んでいた。
  カリオストロ 「はっはっはっ・・ルパンめ!とうとう入り込んだか!」
  ジョドー 「面目しだいございません・・」
  カリオストロ 「警官隊には警部は先に帰ったと伝えておけ・・・途中で蒸発するのはよくある事だ」
  カリオストロ城の一室、何十もの鎧が並ぶ、薄暗い部屋に人影があった。
  ルパン 「動くな!!」

「・・・・・・今晩は、不二子ちゃん」

  峰不二子 「ルパン!!」
150 ルパン 「仕事に熱中してるご婦人っていうのは、美しいねェ!」
  峰不二子 「もう、こんな所まで来ちゃったの?」
  ルパン 「一年ぶりに会ったっていうのにつれないんだなァ・・ずいぶん、さがしたんだから・・」
  峰不二子 「ルパン・・探してるのは花嫁さんの居所でしょ?」
  ルパン 「あらァ、知ってたの?」
  峰不二子 「教えてあげてもいいけど、私の仕事の邪魔しない?」
  ルパン 「しない、しない、した事もない!!」
  峰不二子 「どうだか・・・北側の塔のてっぺんよ。もっとも、とても入り込めないでしょうけどね・・」
  不二子が一瞬、横を向いた。その隙に、ルパンは忽然と姿を消していた。

北の塔の向かい側の壁を這い登るルパン。尖塔に立ち風を読む。北の塔へワイヤーを渡そうとしたが、誤って落としてしまう。あわててその後を追い、屋根を猛然と駆け下りるルパン。勢いがつき、一気に空中へ身を躍らせ、北の塔の壁にへばりつく。

北の塔のなか、クラリスが一人で幽閉されている。真っ暗な室内、天窓からわずかに月明かりが射し込んでいる。どこからか風が室内を吹きぬけた。ふっと顔を上げるクラリス。

  クラリス 「どなた?」
160 ルパン 「ドロボウです・・」
  クラリス 「ドロボウさん・・!?」
  ルパン 「今晩は、花嫁さん」
  クラリス 「あなたは・・あの時の方ですね?」
  ルパン 「忘れ物ですよ」
  ルパンはクラリスの指に、指輪をはめた。
  クラリス 「このために、わざわざ・・伯爵に見つかったら殺されるというのに・・」
  ルパン 「なァに、狙い狙われるのがドロボウの本性です。仕事が済めば帰ります」
  クラリス 「お仕事・・?私に何か差し上げられる物があればいいのですが・・・今は虜の身・・・」

「あっ・・・これを・・」

  ルパン 「私の獲物は、悪い魔法使いが高い塔のてっぺんにしまい込んだ宝物・・・どうかこのドロボウに盗まれてやってください・・・」
170 クラリス 「私を?」
  ルパン 「金庫に閉じ込められた宝石達を救い出し・・無理矢理、花嫁にされようとしている女の子は・・緑の野に放してあげる・・これみんなドロボウの仕事なのです」
  クラリス 「私を自由にしてくださるの?・・・・ありがとう・・とても、うれしいの・・・でも、あなたはカリオストロ家の本当の恐ろしさをご存知無いのです!!・・・どうか、このまま帰って・・・」
  ルパン 「・・・・ハァ・・・・ああ、何という事だ!!その女の子は悪い魔法使いの力を信じるのに・・・ドロボウの力を信じようとしなかった・・・その子が信じてくれたなら、ドロボウは空を飛ぶことだって・・・湖の水を飲み干すことだってできるのに・・・」

「うう・・・・うううう・・・・う・・・ぐっ・・・」

  ルパンはクラリスを安心させるため、右手からバラの花を一輪出現させて見せた、それには万国旗が連なっている。
  ルパン 「今はこれが精一杯・・・・ンフ・・ヌフフフフ・・ンハハハハハハ・・」
  室内にパッと灯が灯る。黒覆面の集団が幾重にもルパンとクラリスをとりまいている。クラリスが黒覆面の男たちに連行される。
  クラリス 「ドロボウさん!!」
  ルパン 「こらァ、ご婦人はもっと丁重に扱えっ!!」
  カリオストロ 「わざわざ指輪を届けてくれてありがとう・・・・ルパン君」
180 ルパン 「盛大なお出迎えでいたみいるぜ・・・伯爵!」
  カリオストロ 「さっそくだが君には消えてもらおう」
  ルパン 「さァて、そう簡単に消せるかな?」
  クラリス 「やめて!!その人を傷つけてはいけません!!」
  ルパン 「大丈夫!お嬢ちゃん!!ドロボウの力を信じなきゃ!!」
  クラリス 「おじさま!!」
  ルパン 「ハァイ!!おじさんはここですよォ!!すぐ戻って来るからね」

「さァて!何して遊ぶのかな?」

  カリオストロ 「君を引き裂くのは簡単だが・・・コソ泥の血で花嫁の部屋を汚すこともあるまいと思ってね・・・」
  ルパン 「そんな事、言っちゃって・・・・後で後悔するぜ!」
  カリオストロ 「へらず口はそれまでだ」
190 突然ルパンの立っている床がバカっと開いた。ルパンはそのまま奈落の底へと落ちていった。
  カリオストロ 「フッフッフッフッ・・・一人として這い出たことのない地獄へ通ずる穴だ・・・」

「かわいい顔をして、もう男を引き込んだか・・カリオストロの血は争えんな・・・フフフ・・我が妻にふさわしい」

  クラリス 「あなたは人間じゃないわ!!」
  カリオストロ 「そうとも!オレの手は血まみれだ・・・が、おまえもそうさ!」

「我が伯爵家は大公家の影として謀略と暗殺をつかさどり、公国を支えてきたのだ・・」

  クラリス 「離して!!けがらわしい!!」
  カリオストロ 「それを知らぬとは言わせぬぞ・・・お前もカリオストロの人間だ!」

「その身体にはオレと同じ古いゴートの血が流れている・・」

「クラリス・・四百年の長き歳月・・・光と影に分かれていた二つのカリオストロ家が・・・今、ひとつになろうとしているんだよ。ごらん・・・我が家に伝わる金のヤギと・・キミの!・・銀のヤギの指輪が一つに重なる時こそ、秘められた先祖の財宝がよみがえるのだ!!」

  その時、クラリスの指輪からルパンの声が聞こえてきた。
  ルパン(声) 「きーちゃった、聞いちゃった!お宝目当ての結婚式!・・偽札作りの伯爵の、言うことやることすべて嘘!女の子はとてもやさしい素敵な子」
  クラリス 「おじさま!おじさま!!」
  ルパン(声) 「ハァイ!元気ですよ!!」

「女の子が信じてくれたから・・空だって飛べるさ!」

「ドロボウさんがきっと盗み出してあげるから待ってるんだよ!」

200 クラリス 「・・・はい!」
  カリオストロ 「クソッ!この指輪か!!・・よこせ!」
  ルパン(声) 「やい伯爵!!よく聞け!!本物の指輪はオレが預かってる!!その子に指一本ふれてみろ!!本物の指輪はこうだ!!」
  伯爵が持っているクラリスの指輪がはじけ小さな紙ふぶきが舞った。
  カリオストロ 「ぬうううう・・・ニセモノだ!!」
  穴の中でほくそえむルパン、その頭上に水が滝のように流れる。
  ルパン 「人を排泄物扱いしやがって!!フ〜〜〜〜ン!!」
  カリオストロ 「落ちたか?」
  ジョドー 「多分・・・」
  カリオストロ 「調べろ!」
210 ジョドー 「あそこは生ける者のおもむく所ではありません!放っておけば必ず死にます」
  カリオストロ 「指輪を奴が握っているのだ!!」
  ジョドー 「かしこまりました!」
  カリオストロ 「待っておれ!お前のコソ泥をズタズタに引き裂いてやる!!」
  カリオストロ伯爵はそう言い捨てると部屋を出ていった。クラリスは、床に残ったバラの花を拾いあげ、静かに胸に抱いた。

地下のルパンは、累々と広がる無数の白骨死体の中を歩いていた。

  ルパン 「殺しも殺したり、4百年分か・・・ナンマンダブ、ナンマンダブ」
  銭形警部 「・・・ん?・・・・あっ!!ルパン!!おのれェ!神妙にしろ!!」
  ルパン 「・・・とっつぁん、よく、無事だったな」
  銭形警部 「教えろ!!出口はどこだ!!どこから入って来たんだ!!」
  ルパン 「オレも落っことされたんだよ」
220 銭形警部 「・・・・え?」
  ルパン 「その様子じゃ、だいぶ歩き回ったようだな・・・」
  銭形警部 「ウルセェ!!盗っ人の情けは受けねェ!!」
  ルパン 「まァゆっくりしよううぜ!どうせ出口はねェんだから!」

「とっつぁん!火イ貸してくんない?」

  銭形警部 「ルパン!このホトケの大群は一体何だ!?墓場とは思えんが・・・」

「ただの城じゃないと思っていたが・・・これほどまでして守る秘密とは・・・」

「お前の狙いもそれか?」

  ルパン 「それをやってるのは不二子チャン!ホトケ様にならなきゃいいんだけどね・・」

「とにかくジタバタしたって始まらねェ・・・おやすみ、とっつぁん・・」

  水路から黒覆面たちが顔を出す・・眠っているルパンと銭形。襲い掛かる黒覆面たち。しかし、ルパンと銭形と見えたそれは、白骨に服を着せた偽者だった。白骨の山の中から突然、ルパンと銭形が反撃をかける。驚いた黒覆面は水路に飛び込み逃げて行く。続いて飛び込むルパン。黒覆面を追っていく。

水路の隠し扉を抜けて出たところは巨大な偽札作りの工房だった。

  銭形警部 「な・・・何だ?ここは!!・・・・おっ!これは・・・一万円札ではないか!!・・・なんと、これが全部そうか!?」
  ルパン 「こりゃよくできてるぜ・・とっつぁん、見ろよ!」
  銭形警部 「西ドイツの千マルク札だ!」
230 ルパン 「ポンド、ドル!フラン!ルーブル!ルピー!ペソ!クラウン、リラ!・・うほっ!ウォンまであるぜ!世界中あらあ!」
  銭形警部 「ニ・・・ニセ札作り・・・ルパン!これがこの城の秘密か?」
  ルパン 「そうよ!かつて本物以上と称えられたゴート札の心臓部がここだ!」

「中世以来、ヨーロッパの動乱の影に必ずうごめいていた謎のニセ札・・・ブルボン王朝を破滅させ・・ナポレオンの資金源となり・・1927年には世界恐慌の引き金ともなった・・・歴史の裏舞台ブラックホールの主役ゴート札・・その震源地をのぞこうとした者は・・・一人として帰って来なかった」

  銭形警部 「・・・ウワサには聞いていたが・・まさか独立国家が営んでいたとは・・・」
  ルパン 「とっつぁん、どうする?見ちまった以上、後戻りはできねェぜ!」
  銭形警部 「わかっとる!警察官の血がうずくわ!」
  ルパン 「ンフフ・・・、ここから逃げ出すまで一時休戦にすっか?」
  銭形警部 「・・・よかろう、だが、盗っ人の手助けはせんぞ!!脱出した後には必ずお前を逮捕するからな!」
  ルパン 「上出来だ。ほんじゃま・・・握手!」
  銭形警部 「フン・・なれ合いはせぬ!」
240 ルパン 「・・・あれま」
  ここは北の塔、クラリスの幽閉されている部屋である。
  クラリス 「不二子さん!」
  峰不二子 「潮時が来たんでお別れを言いに来たの」
  クラリス 「あなたは一体・・・?」
  峰不二子 「クラリス様つき召使として雇われた城内ただ一人の女・・でも本当は、この城の秘密を探る女スパイなの」

「もうちょっと、いるつもりだったんだけど・・ルパンが来たでしょ?メチャクチャになっちゃうからもう帰るの」

  クラリス 「あの方を、ご存知なんですか?」
  峰不二子 「ウンザリするほどね・・・時には味方・・時には敵・・・恋人だった事もあったかな・・」

「彼生まれつきの女たらしよ!気をつけてね!!」

  クラリス 「捨てられたの?」
  峰不二子 「まさか!・・・捨てたの!」

「・・・・・落とし穴から煙が!」

250 クラリス 「火事?」
  峰不二子 「地下からだわ・・」
  カリオストロ城から煙が上がり、城内に火災警報が鳴り響く。火元はどうやら偽札作りの地下工房のようである。
  ルパン 「とっつぁん!早くしろ!!そろそろお客が来るぜ!!」
  銭形警部 「証拠だ!証拠がいるんだ!!」
  ルパンと銭形は階段をかけあがり、城の屋上にあるオートージャイロに飛び乗った。
  ルパン 「とっつぁん!ちょっと寄り道するぜ!」
  銭形警部 「営利誘拐なら協力せんぞ!!」
  ルパン 「商売ヌキだ!!」
  オートジャイロはクラリスのいる北の塔へ近づいていく。ルパンは塔の屋根に飛び移り天窓からクラリスを引っ張り上げた。
260 クラリス 「おじさま!!」
  ルパン 「もう大丈夫だ!」

「とっつぁ〜〜〜ん、こっちこっち!!」

  銭形警部 「そんなにうまく行くか!バカヤロ!!」
  銭形がオートジャイロを近づける、ルパンはジャイロの足に手を伸ばした。その時、一発の銃弾がルパンの胸を打ち抜いた。まっさかさまに塔の屋根を滑り落ちるルパン。クラリスは全身をルパンに預けそれを止めた。
  峰不二子 「ルパン!」
  ジョドー 「動くな、女ネズミ!」
  カリオストロ 「不二子!お前にはあとでたっぷり聞く事がある!」

「ジョドー・・ルパンにとどめを刺せ!」

  クラリス 「やめて!!撃ってはダメ!!この人を殺すなら私も死にます!!」
  カリオストロ 「撃て!」
  機関銃の弾がクラリスの周りに撃ち込まれる。必死にルパンをかばうクラリス。
270 カリオストロ 「見あげた心がけだクラリス・・・」

「指輪を取り戻してここへ来い。我が妻になればルパンの生命は助けよう」

「今二人で死ぬのもよし・・好きなようにしてやる」

  クラリス 「おじさま・・・指輪を・・」
  ルパン 「・・・だめだ・・・クラリス・・いけねェ・・」
  峰不二子 「襟の裏よ!ルパンはいつもそこに隠すわ」
  ルパン 「・・・ムッ!?・・・不二子のヤツ・・・・」
  クラリス 「指輪です!この方と不二子さんを助けなければ、このまま湖に投げ捨てます!!」
  カリオストロ 「私を信じろ!指にはめてこっちへ来るんだ!!」
  ジョドー 「撃ちますか?」
  カリオストロ 「指輪が来るまで待て!」
  銭形の操縦するオートジャイロがルパンの倒れている塔の屋根をかすめて飛行する。不二子はルパンを抱えるとオートジャイロにしがみついた。銃撃され火を吹きながらオートジャイロは湖の向こう岸へ飛んで行く。
280 クラリス 「卑怯者!助けると言って!」
  カリオストロ 「地下工房を見た者を生かして帰すと思ったのか!!」

「く・・はははは・・ついに我が手に来たか」

  クラリスの指から指輪をもぎ取るカリオストロ伯爵。クラリスは湖の上空を黒煙と炎を吐きながら飛行するオートジャイロを見つめていた。

制御を失ったオートジャイロが飛んでくる。それを待ち構える次元と五エ門。

  次元大介 「くそ!出番のないまま退却かよ!」
  爆発するオートジャイロ、爆風にあおられて、ルパンの体が宙に舞う。ルパンの服に引火し燃えている。五エ門が斬鉄剣を振るう。見事、火のついた上着だけを切り落とした。
  石川五エ門 「また、つまらぬ物を斬ってしまった・・・」
  街外れの小さな小屋、そこに傷ついたルパンはかくまわれていた。

ノックする音がする。

  爺さん 「わしじゃ・・食い物だ」
  次元大介 「すまねェな・・」
  爺さん 「どうだ?具合は」
290 次元大介 「熱は下がったみたいだ・・あんたの手術のおかげだよ・・」
  爺さん 「礼ならあの犬に言ってくれ。誰にもなつかなかった老犬が、あの男からはなれようとせん。そうでなければお前さん達をかくまったりはしなかっただろう・・・・」
  ルパン 「・・・よォ・・・・カール」
  次元大介 「気がつきやがった!・・・ルパン!傷はどうだ!?」
  ルパン 「・・・次元・・五エ門・・・久しぶりだなァ・・」
  次元大介 「久しぶり!?何言ってやがる!!」
  石川五エ門 「傷による一時的な記憶の混乱だ」
  ルパン 「カール・・・・今日はご主人様と一緒じゃないのか・・」
  爺さん 「お前さん、どうしてその犬の名を知ってるんじゃ?・・・カールという名は、わしの他はもうクラリス様しか知らないはずじゃ!」
  ルパン 「・・・クラリス・・・・そうか・・お前のご主人はクラリスって言うのか・・・

「・・・クラリス!?」」

300 次元大介 「ルパン・・・」
  ルパン 「次元!!今日は何日だ!!・・あれから何日たった!?」
  次元大介 「・・う・・・み・・・三日だ」
  ルパン 「何だと!?・・じゃ、式は明日じゃねェか!?こうしちゃいられねェ!・・ッツツ!!」
  次元大介 「ホラ、無理するんじゃねェ!!傷口があいちまうわ!!」
  ルパン 「・・・食い物だ・・次元!食い物を持って来い」
  次元大介 「食い物ってオカユか?」
  ルパン 「・・・血が足りねェ!何でもいい!!ジャンジャン持って来い」
  次元大介 「・・・そんな事、言ったってよォ・・・」
  爺さん 「ワシが何とかしよう!」
310 チーズ、鶏肉・・ソーセージなど・・手当たり次第に狂ったように食べるルパン。
  次元大介 「バカヤロウ!!そんなにあわてて食うな!!胃が受付ねェぞ!!」
  ルパン 「うるへェ!!12時間もあればジェット機だって直らァ!!・・・・・う・・・ぐぐ・・」
  次元大介 「ホラ・・言わんこっちゃねェ!!・・・・洗面器か?」
  ルパン 「・・・モゴモゴモゴ・・・」
  次元大介 「ナニッ!?・・・ん?・・・・・食ったから寝るって・・・」
  ルパンが寝息を立てて眠っている。そのそばで、次元、五エ衛門と爺さんが話している。
  爺さん 「そうですか・・・・クラリス様のために・・・・」
  次元大介 「・・しかしルパンがこのザマじゃなァ・・・」
  石川五エ門 「ご老体はクラリス殿と深い関りがあるようだが・・・・」
320 爺さん 「わしは、お館の庭師でな。クラリス様は草木の好きな子だった・・・大公夫妻が亡くなられ修道院にお入りになる時、この犬をわしに託されたのだ」
  次元大介 「ルパンの身体にお姫さんのにおいを嗅ぎつけたってワケか・・・」
  爺さん 「この御仁は、なぜ犬の名前を知っていたのじゃろう」
  次元大介 「さァな!何しろ惚れっぽい男だから・・・」
  ルパン 「そんなんじゃねェ・・」
  次元大介 「・・・・お前、起きてたのか?」
  ルパン 「もう十年以上昔だ・・・オレは一人で売り出そうとヤッキになっている青二才だった・・・バカやっていきがったあげくの果てに・・オレはゴート札に手を出した・・・何とか岸にはいあがったが・・もう身動きとれなかった・・・震える手で水を飲ませてくれた・・・その子の指にあの指輪が光っていた・・・恥ずかしい話さ!指輪見るまですっかり忘れちまってた・・・」
  カリオストロ城の一室。ウエディングドレスに身を包んだクラリスがいる。そこへ、正装をしたカリオストロ伯爵が入ってくる。
  カリオストロ 「光と影がひとつとなる時が来た・・・来い・・クラリス・・」
  黒服に身を固めた一団の剣のトンネルを抜け静々と十字架の間へ進む。
330 大司教(ルパン) 「由緒ある古き血の一族・・カリオストロの正統な後継者である証しをここへ・・」

「いぬしえの習わしに従い・・・指輪をかわして婚姻の誓いとなす・・・カリオストロ公国大公息女、クラリス・ド・カリオストロよ・・・この婚姻に同意するか・・・異議なき時は沈黙をもって答えよ・・」

  沈黙の時が流れる・・・。
  大司教(ルパン) 「神の祝福があらんことを」
  ルパン(声) 「・・・異議あり!!この婚礼は欲望の汚れに満ちているぞ!!」
  大司教(ルパン) 「呪いじゃあ・・」
  カリオストロ 「騒ぐな!!・・・ネズミめ現われおったな!!」
  ルパン 「地下牢の亡者を代表してやって来た・・花嫁をいただきたい・・」
  大司教(ルパン) 「これでは式は無理じゃ」
  カリオストロ 「下がっておれ!!よい余興だ!!」
  ルパン 「・・・クラリス・・・迎えに来たよ」

「・・・クラリス・・・クラリス!!・・かわいそうに・・薬を飲まされたね・・・伯爵め・・口をきけないようにしたんだ」

340 黒覆面の男達のもつ無数の剣がルパンの身体を刺し貫いた。串刺しになり宙に掲げられるルパン。その光景に意識を取り戻すクラリス。
  クラリス 「きゃあああああ・・・おじさまッ・・おじさま〜〜〜ッ!」
  大司教(ルパン) 「いけません!!近づいてはなりませんぞ!!」
  カリオストロ 「はっはっはっはっ・・愚かなりルパン!!」
  ショックで泣き崩れるクラリス。その耳にルパンの声が聞こえる。
  ルパン 「・・・クラリス・・・泣くんじゃない、クラリス・・・今、そこへ行ってあげるよ・・」
  串刺しのルパンの体から煙が噴出し風船が破裂するように弾けとんだ。ルパンの身体の中から無数のゴート札が四散する。
  ルパン 「気に入ってくれたかな伯爵!このプレゼント!!お前さんの作ったニセ札だ、指輪の代金だ受け取っとけ!!」
  カリオストロ 「・・クソ〜〜〜〜〜〜ッ!!ヤツを探せ!!この中にいるはずだ!!」
  伯爵の背後からヌッと手が伸び、二つの指輪をつかんだ。
350 ルパン 「へへへ・・・確かにもらったぜ!!」
  カリオストロ 「キ・・・貴様は・・・ルパン!!おのれ!!ふざけた真似を!!」
  ルパン 「やかない、やかないロリコン伯爵」
  ルパンはガウンの下に隠した無数の花火を一斉に打ち上げた。式場の中は大パニックになった。その隙にルパンはクラリスをつれて逃走する。
  カリオストロ 「追えッ!!逃がすなァ!!」
  峰不二子 「みなさん、お待たせしました!!こちらはNBK-TVです。カリオストロ城から婚礼の模様をお知らせしております。大変なことになりました。ルパンによって式場は大パニックです。」

「ルパンは逃げました!!伯爵、激怒して追って行きます!!」

「あっ!!警官隊の突入です。銭形隊、祭壇に向かって猛進しています!!あっ!!衛士隊です!!実に激しい戦いです。祭壇の下に一体何があるのでしょうか?」

「あっ!!階段です!!地下へ通じる穴があります!!あの穴にルパンがいるのでしょうか!カメラもそこへ行ってみましょう!」

  銭形警部 「ルパンめェ!!・・・ああっ!!何だここは!?まるで造幣局ではないか!?・・・ん?あそこにあるのは・・・ありゃあ日本の札!!これはニセさつだァ!!」(わざとらしく)

「大変な発見です!!見てくれ!世界中の国のニセ札だァ!!ルパンを追っていて、とんでもないものを見つけてしまった・・どうしよう・・」(わざとらしく)

  ルパン 「ひとまず城外へ脱出だ!!頼むぜ!次元!五エ門!!」
  次元大介 「まかしとけ!ここで食い止める」
  クラリス 「みなさん!どうかお気をつけて!・・・次元様も・・ご恩は一生忘れません」
360 石川五エ門 「さあ・・行かれよ!」
  ルパン 「クラリス!急げ!」
  クラリス 「はい!」
  クラリスはルパンとともに塔の壁を伝って降りて行く。
  次元大介 「次元様だと・・」
  石川五エ門 「可憐だ・・・」
  次元大介 「おっぱじめようぜ!!」
  石川五エ門 「今宵の斬鉄剣はひと味違うぞ!」
  ルパンとクラリスは、石組みの通路を走り時計塔にまでたどり着いた。
  クラリス 「ハア・・ハァ・・」
370 ルパン 「ハア・・ハァ・・」
  クラリス 「傷が痛むの?」
  ルパン 「なぁに軽い軽い!!・・さあて、こいつを越えちまおう・・」
  時計塔を見上げるルパン。その目に壁に彫られたレリーフがうつる。
  ルパン 「向かい合った二匹の山羊・・・・」
  ルパンは二つの指輪を取り出し合わせる。
  ルパン 「つなぎ目にゴート文字が彫ってある・・・・・光と影を・・すりへっていて読めないな・・」
  クラリス 「・・・光と影を結び、時告ぐる・・高き山羊の陽に向かいし、まなこに我を納めよ・・・」

「昔から私の家に伝えられている言葉です・・・お役に立ちますか?」

  ルパン 「立ちます、立ちます!謎解けた!!」
  カリオストロ伯爵が迫ってきていた。逃げるルパンとクラリス。時計塔の機関部を通り抜け、クラリスは時計塔の文字盤へ飛び出し、巨大な時計の針の上を先へ先へと逃げていく。その後を伯爵が追う。
380 カリオストロ 「へっへっへっ・・どこまで行くのかな・・クラリス」

「そらそら、どうした?もう。逃げないのか?カリオストロの血もこれで終わりだ!!死ね!クラリス!!」

  ルパン 「待て!!伯爵!!・・・・取り引きだ!」
  カリオストロ 「もう遅い!この女が死ぬ所を見ておけ!」
  ルパン 「話を聞け!指輪の秘密を教えてやる!お宝をどうしようとお前の勝手にするがいい・・・しかし、その子はあきらめろ!自由にしてやれ!」

「見ろ!あの文字盤の山羊座を!あれが、陽に向かいし、時告ぐる山羊だ!両の目に二つの指輪をはめる穴がある・・・この指輪はくれてやる!・・・しかし、その子を殺せば湖に捨てて、お前を殺す!」

  針の中心に二つの指輪を置き、後ろへ下がるルパン。伯爵はクラリスの腕をつかみ指輪を取りに近づく。
  ルパン 「おっと!そこまでだ!クラリスを中へ入れな!」
  カリオストロ 「よォし・・・分かった・・」
  伯爵の鉄の手袋に仕込まれた指先ロケットが放たれる。バランスを崩しルパンは時計塔を滑り落ちるが、間一髪、指が壁の凹みをつかみ落下をとどまる。
  カリオストロ 「ハッハッハッハッ!ルパン!切り札は最後まで取っておくものだ!」

「・・・確かに本物だ!!指輪は受け取ったぞ!!謎解きの代金を受け取ってくれイ!」

  再び指先ロケットを撃とうとする伯爵。その腕にすがりつくクラリス。しかし、伯爵によって振り落とされ、まっさかさまに落ちる。ルパンはクラリスに飛びつき、抱え込むとそのまま湖へ落下した。

伯爵は、文字盤の山羊にしがみつき、指輪をその両の目にはめる。ガクン・・と歯車の動く音とともに、時計塔が振動し始めると、ガラガラと音を立てて崩れ始めた。湖にもろくも崩れ去る時計塔。時計塔が崩れたことにより、今までせき止められていた湖の水が一気に流れ出た。

390 ジョドー 「・・・これで、カリオストロも終わりだ・・・斬れ・・・」
  石川五エ門 「無益な殺生はせぬ!」
  朝日が静かに昇ってくる。クラリスを抱えたルパンが立っている。
  クラリス 「・・・・・お・・じさま・・・」
  ルパン 「よォ・・・・立てるか?・・・見てみな!」

「隠された財宝・・・か」

  クラリス 「湖の底にローマの街が眠っていたなんて・・・」
  ルパン 「ローマ人がこの地を追われた時、水門を築いて沈めたのを・・あんたのご先祖が密かに受け継いだんだ・・・まさに人類の宝ってワケさ・・オレのポケットには大き過ぎらァ!」
  草原を歩くルパンとクラリス。上空にたくさんの落下傘の花が開く。
  ルパン 「インターポールが重い腰をあげたな・・・」
  クラリス 「・・・行ってしまうの・・」
400 ルパン 「・・・う・・うん・・恐いおじさんがいっぱい来たからね・・」
  クラリス 「・・・・・私も連れてって!ドロボーはまだできないけど、きっと覚えます!・・私・・私・・・・お願い!一緒に行きたい!」
  ルパン 「クラリス・・・・・バカな事を言うんじゃないよ・・・また闇の中に戻りたいのか?やっと、お日様の下に出られたんじゃねェか!」

「お前さんの人生はこれから始まるんだぜ!!オレのように薄汚れちゃいけねェんだ!!」

「あ、そうだ!!困ったことがあったら、いつでも言いな!!おじさんは地球の裏側からだって、すぐ飛んできてやるからな!」

  クラリスは目を閉じる。じっと見つめるルパン。そしてそっと額にキスをする。

犬の鳴き声がする。クラリスははっと、後ろを振り返った。

  クラリス 「カール!カール!」
  爺さん 「クラリス様」
  クラリス 「おじいさん!」
  ルパンはすっと、身を引き車までかけて行く、次元と五エ門が待っている。
  クラリス 「おじさま!!」
  ルパン 「クラリス達者でなァ!!」
410 クラリス 「ありがとう!!みなさん!!さようならァ!!」
  ルパンの姿が遠のいて行く。銭形が息を切らせて走ってきた。
  銭形警部 「クソォ!!遅かったか!!ルパンめ!まんまと盗みおって!!」
  クラリス 「いいえ・・あの方は何も盗らなかったわ。私のために闘ってくださったんです」
  銭形警部 「いや!ヤツはとんでもない物を盗んで行きました!!」

「あなたの心です!!」

  クラリス 「・・・・・・はい!」
  銭形警部 「では、失礼します!!」

「ルパンを追え!!地の果てまで追うんだッ!!」

  爺さん 「何と気持ちのいい連中だろう・・・」
  クラリス 「私・・・ずっと昔から、あの方を知っていたような気がするの・・・ルパン・・きっと・・きっとまた会えるわ」
  次元大介 「いい子だったなァ・・・」

「おメェ・・・残っててもいいんだぜ・・・」

420 ルパン 「あらっ!?不二子ちゃん」
  峰不二子 「ルパン、見て!私のエモノ!!」
  ルパン 「わッ!!ニセ札の原版じゃない!・・わっわっ!!お友達になりたいワァ!!」
  峰不二子 「じゃあネ!」
  ルパン 「アラッ!?アラララ・・・お待ちなさいってば!!」
  銭形警部 「ルパン!!今度こそ逃がさんぞ!!」
  ルパン 「いけねェ!!また、とっつぁんだ!!」
427 おわり  
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