第１話 VAMPIRE HUNTER 男２ 女２ ナレション１ 合計５
登場人物
インテグラ（女） セラス（女） アーカード（男） 吸血鬼神父（男） ナレーション（男） |
| １ |
ナレーション |
英国北部の小村 チェダース村 ６月１４日水曜日
この小さな村の教会に一人の牧師がやってきた。
奇妙な牧師だった。
昼間ほとんど外に出ることは無かった。いつも薄暗い礼拝堂にいた。
たまに出る事があったとしてもその日は雨や曇り、そして夜間だけだった。
外に行く時はフード付きの修道服を目深く着込んでしまう。まるで太陽を嫌っているかのように・・・。
最初の事件が起きたのは一週間後のことだった。
となり村につかいに行った青年が次の日になっても帰ってこなかった。
その後も事件は続いた。 １０日間の間に次々と村民１０名が消えた。
村は恐怖のどん底におとしいれられた。
そんな中、命からがら近くの家に逃げこみ助かった少年が警官に証言したのだ。
暗やみの中、そいつは立っていたと。
最初は暗くてわからなかったが雲がはれて月が照ると、はっきりと見えたのだと。
口から血をしたたらせた牧師様を・・・。
警官と村人達はすぐさま牧師を問いただそうと教会におしかけて来た。
運の悪い事に、夕方、それも夜近くに・・・。
そして２日後・・・７月５日 チェダース村への街道上。
警官隊の張った予防線に近づく女がいた。 |
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ナレーション （警官） |
「お待ちしておりました『ヘルシング』局長、ヘルシング卿」 |
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インテグラ （ヘルシング卿） |
「報告は受けている。司令官は？」 |
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ナレーション （警官） |
「こちらですヘルシング卿・・・我々ではもはや手に負えません」 |
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ナレーション （警察官僚） |
「君が・・・ヘルシング卿・・・か！？・・・一体、何があの村で起きているんだ？」 |
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インテグラ （ヘルシング卿） |
「ご心配にはおよびませんよ。ここからは我々の仕事です」 |
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ナレーション （警察官僚） |
「３時間前突入した警察隊が連絡を絶った。所持カメラで映した映像見てもらったと思うが・・・あれは一体！？」 |
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インテグラ （ヘルシング卿） |
「グールです。村の中はグールでいっぱいですよ」 |
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ナレーション （警察官僚） |
「・・・一体、何の話だ？話が見えんのだが・・・」 |
| １０ |
インテグラ （ヘルシング卿） |
「あれは吸血鬼に襲われた非処女、非童貞の人間の末路です」
「吸血鬼に操られているゾンビ共・・・そんな所ですか。・・・ですから、あの村には吸血鬼がいると考えられます」 |
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ナレーション （警察官僚） |
「グール！？吸血鬼だと！？」 |
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インテグラ （ヘルシング卿） |
「はあ」 |
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ナレーション （警察官僚） |
「そんなバカな話があるか！？そんなオカルト話を信じろと！？」 |
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インテグラ （ヘルシング卿） |
「事実ですよ。でも信じなくても全然結構・・・あなた方の仕事は終わったのですから」
「あなた方の様な木っ端役人は知らなかっただろうし、知らなくてもいいんですが・・・」
「我々『王立国教騎士団』通称『ヘルシング機関』はずいぶんと昔から化物共と闘ってきたんですよ」
「大英帝国とプロテスタントを犯そうとする反キリストの化物共をほうむり去る為、我々は組織された特務機関ですから」
「村の中にグールを操っている吸血鬼がいます。相手はバケモノです」
「普通の軍隊や警官をいくら投入した所でやつらにエサを与えているにすぎません」
「男吸血鬼ドラクルは処女を・・・女吸血鬼ドラキュリーナは童貞の血液を吸った時のみ吸血鬼として繁殖しますが・・・」
「それ以外はただのエサにすぎず、食人鬼グールとなって吸血鬼の下僕となってしまう」
「母体である吸血鬼本体を殺れば全滅する・・・吸血鬼は我々ヘルシングが殺ります」
「すでに我々の中でも特に対吸血鬼のエキスパートをチェダース村に向かわせてあります。数時間でケリがつくでしょう」 |
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ナレーション （警察官僚） |
「・・・・・・一体どんな奴なのだ？・・・大丈夫なのかね・・・そいつは」 |
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インテグラ （ヘルシング卿） |
「彼の名前はアーカード。化物・・・特に吸血鬼に関してなら・・・そう・・・誰よりもエキスパートですよ」 |
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ナレーション |
暗黒の夜空に真っ赤な血の色をした満月が地上を赤く染めている。これから起こる惨劇をあたかも予兆しているような不気味さであった。 |
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セラス （婦警） |
「ハア・・ハア・・ハア・・」 |
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神父 （吸血鬼） |
「ははははは、走ってもムダだぞ」
「銃なんぞ撃ったってムダだ。吸血鬼は銃なんかじゃ死なん」
「お前の仲間はみんなオレのものになった・・・おまえも仲間に入れてやろう」
「オレは忠実なドレイが欲しいだけでな。自由意志の女吸血鬼ドラキュリーナなんぞ作りたくもない！」
「今時、その年で処女って事は無いだろうが・・・犯してやろう、その後ゆっくりと吸ってやる。グールの仲間入りをさせてやろう」 |
| ２０ |
ナレーション |
眼を異様にぎらつかせ、真っ赤な口元から不気味な牙をのぞかせて、吸血鬼神父はセラスにせまる。
恐怖の叫び声をあげるセラス。無常な吸血鬼神父の手がセラスの首を締め上げる。その時、どこからか音も無く忍び寄る黒い影に誰も気付かなかった。 |
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アーカード |
「待て」
「いいかげんにしておけよおまえ」
「最近の若造どもはまったく・・・下衆だ。モラルもへったくれもあったもんじゃない。町のチンピラと変わらんな」 |
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神父 （吸血鬼） |
「何だおまえは・・・まぎれ込んだおのぼりさんかい？」 |
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アーカード |
「俺の名前はアーカード」
「特務機関ヘルシングの手先のゴミ処理係だ。おまえらみたいなの専門の殺し屋だ」 |
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神父 （吸血鬼） |
「殺し屋？・・・殺し屋だ？」
「本気か？正気か？おまえ？・・・クククククク・・・」
「殺せ」 |
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ナレーション |
吸血鬼神父の合図とともに、彼に付き従うグールの持つ機関銃が火を噴いた。機関銃の弾は情け容赦なくアーカードの身体を撃ちぬき、はぎ取り、粉砕し、肉くずに変えてしまった。いままでそこに立っていたアーカードの原形はもはやとどめていなかった。 |
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神父 （吸血鬼） |
「もう終わりか殺し屋！！ははははははは！！」 |
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アーカード |
「クク・・・クククク・・・クハハハハ・・・銃なんぞ撃ったってムダだ。吸血鬼は銃なんかじゃ死なん！！」
「ムダだ・・・ただの銃ならな・・・」 |
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ナレーション |
肉くずとなったはずのアーカードの身体が黒い霧となって集合し、身体を再構築してゆく。そして見る間に元の姿へ再生すると、その手には大口径の銃が握られていた。
アーカードが引き金を引く。大音響とともに弾はグールたちを次々と撃ちぬき、吹き飛ばし、見る間に肉塊の山を築いていった。 |
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神父 （吸血鬼） |
「何だとおおぉぉ・・・・！！」
「なッ・・・なぜッ・・・何故、貴様・・・・・・ッ！！」
「何故、貴様、吸血鬼が人間に味方を・・・」 |
| ３０ |
アーカード |
「おまえ達みたいなクソガキがな好き勝手絶頂に暴れられると困るんだよ」
「倍々ゲームで人間なんぞすぐ絶滅して共倒れだぞ。先の見えんガキめ・・・」
「それに俺は人間共には逆らえんのだ。イロイロとこみいった事情でな」
「ランチェスター大聖堂の銀十字を溶かして作った１３ｍｍ爆裂鉄鋼弾だ。こいつ喰らって平気な化物なんかいないよ」
「・・・死ね・・・」 |
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神父 （吸血鬼） |
「動くな殺し屋！！そこまでだッ！！」
「たった一人の生存者だぜ。生かしておきたくないのか！！たいした事じゃない。俺の脱出に手を貸せ！！」
「目をつぶるだけでもいい！！」 |
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ナレーション |
吸血鬼神父はセラスを盾に、アーカードに迫る。 |
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アーカード |
「お嬢ちゃん・・・処女か？」 |
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神父 （吸血鬼） |
「何を・・・何を言ってやがる！？」 |
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アーカード |
「処女かと聞いている！！答えろ！！」 |
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神父 （吸血鬼） |
「なッ！えッ！あ・・・野郎！！ふざけるんじゃないッ」 |
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アーカード |
「答えろ！！」 |
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ナレーション |
セラスの言葉は、アーカードの撃った銃声によってかき消された。しかし、その弾は、盾になったセラスの肺と吸血鬼神父の心臓を撃ちぬいていた。
血しぶきを上げる吸血鬼神父にアーカードのとどめの手刀の一撃が炸裂する。吸血鬼神父は身体を貫かれ、血肉を撒き散らし吹き飛び四散した。
アーカードによって撃ちぬかれ、虫の息となって草むらに倒れこむセラスの元にアーカードが歩み寄る。 |
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アーカード |
「奴の心臓を撃つためにおまえの肺を撃った。悪いが大口径の銃だ。長くはもたん。どうする？」 |
第２話 MASTER OF MONSTER 男３ 女１ ナレション１ 合計５
登場人物
インテグラ（女） 先代ヘルシング卿（男） アーカード（男） リチャード（男） ナレーション（男） |
| 1 |
ナレーション |
１０年前、ロンドン ヘルシング家本拠
先代当主、インテグラの父が、居並ぶ家臣のを並べ、ベッドに横たわり苦しい息の下、幼いインテグラに最期の言葉を送っている。 |
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先代ヘルシング卿 |
「良いかインテグラ・・・私が死んだら次の当主はお前だ・・・」
「お前が我が『王立国教騎士団（ヘルシング）を統率し、英国、そしてプロテスタントを他の勢力から守っていかねばならん・・・」』 |
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インテグラ （子供） |
「はい、お父様・・・」 |
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先代ヘルシング卿 |
「インテグラ、お前にはもっと教えたい事、伝えたい事・・・たくさんあった」
「お前に脈々と流れているヘルシング家の血と誇り・・・もっと、ずっと見守っていてやりたかった・・・」
「・・・リチャード、頼む・・・どうか頼む。・・・インテグラをどうか支えてやってくれ・・・」 |
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リチャード |
「はい・・・兄上」 |
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ナレーション |
先代、インテグラ卿の亡くなったその３日後、事態は急変した。
インテグラ卿の死の直前、枕元で忠誠を誓った弟リチャードが、ずっと胸に秘めていた野望をむき出しにして、王立国教騎士団（ヘルシング)乗っ取りを企てたのである。 |
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リチャード |
「２０年！！兄が死ぬまで２０年間も待ったんだ！！」
「あんなガキに党首の座をかすめ取られてたまるか！！・・・殺せ！！見つけ次第殺してしまえ！！」
「口さえ塞いでしまえば、後はどうとでも出来る！！行け！！」 |
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ナレーション |
リチャードの檄の元、配下の男たちが屋敷じゅうに散らばっていく。幼いインテグラは、地下へ通じる隠し通路の中でその様子を見つめていた。 |
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インテグラ （子供） |
「父上が死んでまだ一週間と経っていないのに・・・・！！」
「叔父上、あなたはあまりにも人でなしすぎる・・・」 |
| １０ |
ナレーション |
今は亡き父の言葉が脳裏に蘇る。 |
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先代ヘルシング卿 |
『インテグラ、お前に私が残してやれる物はたった一つだけだ・・・もし、お前に本当に危機が迫った時、どうしようもない敵の勢力に追い詰められた時・・・」
「地下に行け！地下の忘れ去られた牢獄へ行け！そこに我々ヘルシング一族の一つの成果がある・・・」
「お前を守る術（すべ）がある・・・」 |
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ナレーション |
インテグラは光もささぬ暗い通路のその先を、期待と不安を込めた瞳で見据えた。
その頃リチャードは、未だ発見されないインテグラの行方に苛立っていた。 |
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リチャード |
「まだ発見出来んのか！？」
「たかが子供（がき）一匹に何を手間取ってる！！」
「言い訳はいらん！！早くしないと他の局員が不振に思い始める」
「あと・・捜査していない所は・・・地下のみか・・・もうずいぶん長い間使われていない・・・２０年近く閉鎖されているな・・・魔道研究室・・・図書館・・・標本室・・・拷問室・・・解剖室・・・あと牢獄か・・・」
「部下共に連絡しろ・・・地下だ！」 |
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ナレーション |
リチャードの号令の元、地下へ男たちが走っていく。
その頃、インテグラは父の言葉どおり、薄暗い地下の牢獄に居た。堅く重たい牢獄の入口の扉が軋みながら開かれ、そして閉じられた。 |
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インテグラ （少女） |
「・・・ここも多分、時間の問題かも・・・」 |
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ナレーション |
力なく座り込むインテグラの眼が暗闇に慣れてきた頃、闇の中から浮かび上がるように一個の人影が浮かび上がって見えた。それは、拘束具でがんじがらめに縛られ、そのまま何十年もうち捨てられたミイラだった。 |
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インテグラ （少女） |
「・・・これは・・・！！・・・死・・・死体？・・・死んで・・・いるの！？」
「お父様・・・これが私を守る術（すべ）・・・？・・・この干からびた死体が？」
「冗談だとしたら・・・質が悪すぎるわよ・・・お父様・・・」
「ふう・・・もう、どこにも逃げ場は無いし、ご一緒させてもらっても良いかしら？先客さん・・・」 |
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ナレーション |
ミイラは黙ったまま何も答えない、ぴくりとも動かないミイラの横に腰をおろし、インテグラは膝を抱えて恐怖に耐えていた。 |
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インテグラ （少女） |
「悪い奴から守ってくれる騎士・・・そんなのを・・そんな都合のいい事を想像・・・ちょっとだけど・・・しちゃってたの」
「２０年も死体をほっぽっておくなんて・・・父上も酷い人だなぁ・・・」
「・・・死にたくない・・・・死にたくないよ・・・」 |
| ２０ |
ナレーション |
どれくらいの時間が流れたのか、突然、牢獄の入口が乱暴に開かれリチャードと、配下の男たちがなだれ込んできた。 |
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リチャード |
「手こずらせたな、インテグラ！」 |
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インテグラ （少女） |
「叔父上ッ、あなたは、そこまでしてッ、そんなにまでしてヘルシング家が欲しいんですかッ！？」 |
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ナレーション |
リチャードは、情け容赦なくインテグラの顔を拳で殴りつけた。 |
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リチャード |
「やかましい！！お前のようなガキにヘルシングは渡さん！！」
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ナレーション |
リチャードはためらいも無く、銃の照準をインテグラに合わせると引き金を引いた。弾はインテグラの右腕をかすめ壁にめり込んだ。インテグラの腕から鮮血が飛び散り、動かぬミイラに降り注いだ。
乾いた大地が水を吸い込むように、インテグラの血がミイラの中へ吸収されていった。 |
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リチャード |
「次は耳だ。てこずらせたおしおきだ」
「簡単に死ねると思うなよ！インテグラ！」 |
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ナレーション |
リチャードが銃の引き金に指をあて、照準をインテグラに絞る。その時、ビチャビチャと何かをすする気味悪い音がし、皆一斉に振り返った。
その眼に飛び込んできたのは、さっきまで干からびてミイラのようだった物体が、今、生気をみなぎらせ、ぬめるような舌で、床に散ったインテグラの鮮血をすすっていたのである。
生き返った死体は、リチャードに顔を向けるとニタリと不気味に微笑み、次の瞬間、体中をがんじがらめに拘束していたその戒めを一気に引きちぎったのである。 |
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リチャード |
「しッ・・・死体が・・・死体がよみがえった！？」
「あ・・兄貴はこんなモノ、俺に一言も・・・・ッ！！」
「構わんから撃ち殺せ！インテグラもろともこいつを地獄に送り返せ！！」 |
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ナレーション |
その刹那、風が動いた。と見えたのは生き返った男の鋭い爪だった。
男は、リチャードの配下の男たちに動く暇を与えなった。瞬時に次々と切り刻み鮮血をむさぼるように飲んだ。あたりにあっという間に死体の山が出来上がった。
リチャードは恐怖に顔を歪ませ、男に銃口を向けた。その刹那、リチャードの持つ拳銃から弾が抜き取られ、銃を持つ全ての指が、ばらばらと切り落とされていた。 |
| ３０ |
アーカード |
「御怪我は御座いませんか、『ヘルシング卿』・・・御命令をマイマスター」 |
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ナレーション |
男はインテグラの前に跪（ひざまず）くと、うやうやしく言った。 |
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インテグラ （少女） |
『ヴァンパイア！？・・・魔族！？・・・我々ヘルシング家の宿敵！？』
『何故！？・・・お父様達は何の研究を・・・』 |
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ナレーション |
リチャードが最後の力をふりしぼり、インテグラへ銃を発射した。男の伸ばした腕がその弾を受ける。 |
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アーカード |
「あんたの血は臭い・・・とても臭いんだ」
「当主の器じゃないね」 |
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インテグラ （少女） |
「名前は？」 |
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アーカード |
「アーカード・・・先代はそう呼んでおられました」 |
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N |
インテグラの手には銃が握られていた。インテグラの指が引き金をゆっくりと引いた。
裏切り者には死を。・・リチャードはゆっくりとその場に崩れ落ちた。 |
