劇場版:鋼の錬金術師
『シャンバラを征く者』
ふたつの世界に引き裂かれたエルリック兄弟は、それぞれの再会を願ってその手段を探し求めていた。兄、エドワード・エルリックが飛ばされてしまった先は、西暦1923年・・・やがて世界大戦につながる動乱の予感をはらんだドイツ・ミュンヘンであった。 得意の錬金術を封じられてしまったエドは、弟の面影をもつ若者アルフォンス・ハイデリヒの力を借りて、科学技術の粋・ロケット工学の力で故郷へ帰ろうと試みていた。 だだ手がかりは得られず、エドは焦燥をつのらせる。 そんなエドの前に、意外なかたちで道が開かれた。 それは理想郷”シャンバラ”を求める者たちの暗躍であった。 第一次世界大戦に敗戦したため、ミュンヘンでは破滅的なインフレが進行し、不満を抱くものたちが不穏な動きを始めていたのだった、アルフォンスたちのロケット実験は、ヘスを通じてハウスホーファー率いるトゥーレ教会に捧げられていた。だが、彼らの真の目的として目指すものとはオカルトと科学をあわせて使い、シャンバラへの道を開くことで、排他的な単一民族国家を形成することだった。 エドはマブゼと名乗る謎の男と出会っていた。彼の求めるものとは、トゥーレ教会が密かに入手したと言われる伝説の”ドラゴン”だった。怪しき古城でドラゴンと対峙するエド。 だが、それこそはホムンクルス、エンヴィーの変わり果てた姿であった。エドを見つけたエンヴィーは、かつての宿敵に襲いかかる。 一方、錬金術世界アメストリスでも、2年の時間が等しく流れていた。 軍のロイ・マスタングは北方の国境地帯で一兵卒となっており、アームストロングは軍を退いて建設事業を始めていた。そして、兄エドの練成により生身の身体を取り戻したものの、それと引き替えに4年間の旅の記憶を失った弟のアルフォンス・エルリックは、13歳となっていた。師イズミのもとで錬金術の修行をやりなおしたアルは、兄の行方を追って旅を続けていた。 トゥーレ教会は、ドラゴンと化したエンヴィーとエドの描いた練成陣を使い、ついに2つの世界をつなぐ”門”を開くことに成功した。複葉機など、機械文明による兵器がシャンバラを手に入れようとする者たちによって、次々と出撃する。 意外なかたちでつながりを見せようとする二つの世界。だが、同時に錬金術世界には絶大なる危機が迫っていた。 ひたむきな兄弟の願いは、ふたたび世界を揺るがす未曾有の大事件と交わろうとしている。エルリック兄弟は、この新たな局面に対してどのように立ち向かうのか? 二人の掌が打ち鳴らされるとき、新たな真実が練成される。 【劇場版 鋼の錬金術師 シャンバラを征く者 公式HPより】 |
【現実世界】登場人物 | ||
エドワード・エルリック | 本作の主人公。18歳。弟アルフォンスの身体を錬成するが、その代償として門の向こうの世界(現実世界)に飛ばされてしまう。元の世界に戻る方法を模索するが、進展が無いまま2年が過ぎ、現在ではその情熱に取って代わって焦りと諦めが彼の中を占めつつある。 | |
アルフォンス・ハイデリヒ | ロケットの製作を夢見る17歳のドイツ人青年。容貌はエドの弟アルフォンス・エルリックと瓜二つ。肺ガンに侵されており、自分の命が残りわずかな事を自覚している。その為、自分の生きた証を残したいとばかりにロケット製作に全身全霊をかけて打ち込む。元の世界の事ばかりを考え、現実世界に馴染もうとしないエドを心配する。 | |
ノーア | 帰るべき祖国を持たず、各地を放浪する人々「ロマ」の少女。人々から異端視されるロマであることに加え、千里眼という能力を持っている故に更に輪を掛けて異端視されている。 | |
デートリンデ・エッカルト | トゥーレ協会の会長を務める女性。シャンバラの技術に興味を示し、その力を戦争に利用しようと考える。それ故魔術と科学によるアメストリス侵略を目論む。 | |
カール・ハウスホーファー | トゥーレ協会のメンバーでエッカルトの片腕的存在。当時のアドルフ・ヒトラーと接触していた。ミュンヘン大学の正教授で地政学の第一人者。元軍人で少将だったらしい。ホーエンハイムとも交流を持っていた。 | |
ルドルフ・ヘス | エッカルトの部下。ノーアを買い取ろうとしたり、ハイデリヒのパトロンを申し出たりする。 | |
フリッツ・ラング | ユダヤ人の映画監督。アメストリスの大総統「キング・ブラッドレイ」に似ていた事から勘違いをしたエドに襲われかける。 | |
エンヴィー | エドとアルの異母兄のホムンクルス。 | |
ホーエンハイム | エド、アル、エンヴィーの父親。彼自身はこの地に骨を埋める覚悟をしていたが、エドの為に門の向こうに帰る方法を見つけようとトゥーレ協会と関係を持っていた。 | |
【錬金世界】登場人物 | ||
アルフォンス・エルリック | もう一人の主人公。兄エドワードの錬成によって肉体を取り戻したが、それらは身体、精神、記憶共に母の錬成当時のままの物だった。その後、故郷のリゼンブールでのびのびと成長するが、兄を探す為、再び師匠イズミの下で錬金術の勉強を始める。 | |
ウィンリィ・ロックベル | エドとアルの幼馴染でかつてはエドの義手、義足(機械鎧)の整備士でもあった明朗快活な女性機械鎧技師。 | |
ロイ・マスタング | 母の人体錬成に失敗し、絶望していたエドとアルに「国家錬金術師」という道を提案した軍人。かつては自身も「焔の錬金術師」と呼ばれる国家錬金術師で准将の地位にまで登りつめたが、自らの意志で伍長に降格。自らの錬金術を封じ、北方の極寒の地で軍務に就いている。 | |
ハスキソン |
錬金術のせいで国から冷遇されていると思い込む物理学者。国家錬金術師であるエドワードに上層部への紹介を頼むが、アルフォンスにより無下に断られたことに激昂し、二人を攻撃する。兄弟の反撃に逆上し、人体錬成を行おうとするが、その結果、門の中へ持って行かれてしまう。この時、向こう側に送られてしまったウラニウム爆弾が今回の物語の発端となっている。 |
台詞数にかなりのばらつきがあります・・ご勘弁
台本化に当たり、かなりの量の登場キャラを削り、また、その台詞
を削ってます。(思い入れのある台詞が飛んでたらゴメンナサイ)
1 |
N |
洋上に浮かぶ古城。静かな海面を覆う霧の向こうに、うっすらとかすむようにその城はあった。 |
ハスキソン |
こちらがお話していたものです。 我が一族は蒸気機関による掘削で、様々な鉱物、燃料となる物質などを得ることを生業としてまいりました。 そしてついに究極の元素を発見したのです。その構成原子を破壊することで莫大な破壊力を発する。 私はこれを、ウラニュウムと名付けました。 このウラニュウム爆弾の素晴らしい力を是非、中央司令部にお取りなしを・・・。 |
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アル |
嫌です。 そんな強力な爆弾なんて必要無いし、そんな物があればかえって戦争したがる人が現れるかもしれない。 そんなもの紹介したくありません。 |
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ハスキソン | 怖いんだろう、国家錬金術師! お前たちは錬金術の力を持つが故に、国家に優遇され地位と権力を得た。 だから私の発明がセントラルで認められ、錬金術師が戦争で無用になるのが怖いのだ。 見せてもらおうか・・・お前の身体を。 |
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N |
鋭い三叉のドリルが、左右からアルの鎧の身体に穴を開けようと鈍いモーター音をきしませながら迫ってくる。 ドリルが鎧に突き刺さる。鎧の頭がカラカラと音を立てて転がり、巨体が地響きを立てて倒れた。 |
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ハスキソン | フ・・・フハハハ・・・ハハ・・なんと脆い。 こんな安っぽい造りの鎧で・・・ハッ・・・馬鹿な・・・そんな・・・無い・・・空っぽ・・・何故だ・・・何で動いていた。 ・・・有り得ない・・・この私に理解できない事なんか・・・。 |
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エド |
お前は二つ間違った・・・。 | |
ハスキソン | だ・・・誰だ貴様は・・・! | |
アル | 兄さん!遅いじゃないか・・・!・・・身体に穴が開いちゃったよ。 | |
10 | エド | ああ、スマンスマン。 |
ハスキソン | 何だ貴様達は! | |
エド | 間違いその1。俺達はお前の発明になんて最初から興味が無い。 お前がしつこく誘うから来てやっただけだ。 |
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ハスキソン | ぬううううう!!!命が惜しければ私をセントラルに・・・んぉ!! | |
エド | 間違いその2。 お前が探していた国家錬金術師はこの俺だ。 |
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ハスキソン | 機械の身体・・・オートメイル・・・そうか、お前が・・・鋼の錬金術師!! ・・・くそ!錬金術師め!お前達が居なければ私達物理学者が正しく国家を導いていた筈なのだ。 |
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エド | あんな風にか! | |
N | 指差す方に、累々と屍が無残に積まれていた。 | |
ハスキソン | ・・・うぅ・・・ウラニュウムの採掘には危険が伴う。 | |
アル | 人を幸せにしない科学なんて科学じゃない。 | |
20 | ハスキソン | ・・・うぅ・・・!!止れ!!動くとこいつを爆発させるぞ!! |
N | 男の手に、ウラニュウム爆弾が握られている。それを振りかざしながら、男はエドの側をすり抜けて行く。 | |
ハスキソン | この私も仕方なく錬金術を学んだことがある。 この天才をもってすれば、錬金術の会得など簡単なことだったよ。 |
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エド | 何するつもりだ・・・。 | |
ハスキソン | こいつらを機械と融合させ、もう一度命を与える。お前たちを倒すために!! | |
エド | やめろ!!それは人体練成だ!! 人間は、人間の身体や命を練成する事は出来ない。それは、錬金術最大の禁忌だ。 |
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ハスキソン | 君達のタブーなど関係ない!!私は天才だ!! | |
エド | やめろ!! | |
N | 青白い稲妻が視界を切り裂いた。眼前を眩い光のシャワーが覆い、その中に巨大な”門”が出現した。 | |
ハスキソン | ど・・・どこだここは・・・。 | |
30 | N |
巨大な”門”が軋みを上げて開き、中から無数の触手が伸びると男の身体を掴み、”門”の中へ引きづり込もうと引っ張る。男はあっという間にその身体を”門”の中へと吸い込まれていった。世紀の大発明ウラニュウム爆弾と共に・・・。 |
エド | あの日と同じだ。死んだ母さんを練成しようとした・・・。 | |
アル | 僕もあの時、肉体を失った。兄さんが自分の腕と引き替えに、魂を鎧に定着してくれたけど・・・。 | |
エド | 全ては等価交換だ。だが、お前の身体は必ず取り戻す。 | |
アル | 兄さんの手と足もね。 | |
エド | 行くぞ。もう直ぐこの城爆発するんだ。 | |
アル | ・・・!!・・・何で? | |
エド | 気に入らないんであちこちぶっ壊した。 | |
アル | 何でいつもそう考え無しなんだよう!! | |
エド | うるさいなぁ!!やっちまったもんはしょうがねぇだろぅ。 さ!行くぞ! |
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アル |
駄目だよ・・・血印消えちゃうよ!!僕の魂はこれで鎧に繋ぎとめられてるんだよ!! | |
40 | エド | 大丈夫!!な〜んとかするって!! |
現実世界 | ||
N |
車を運転するエドワード。後部座席に座っているのは、アルフォンス・ハイデリヒ。 ロケットの製作を夢見る17歳のドイツ人青年である。容貌はエドの弟アルフォンス・エルリックと瓜二つだった。 |
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アルフォンス | ハハハハ・・・ハハハハハ・・・ | |
エド | まっ、そんな風に正義の国家錬金術師の名前は大陸の隅々までとどろいていたってわけ。 | |
アルフォンス | ・・・コホ・・コホコホコホ・・・ったくエドワードさんの話は・・・ | |
エド | 作り話ってかぁ? | |
アルフォンス | 錬金術が発達して蒸気機関以上に役にたってる世界なんて・・・。 錬金術は近代に入ると衰退して消えていった。歴史の常識です。 |
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エド | ・・・この世界じゃあ・・・な! | |
N | 振り向くエドの腕がハンドル操作を誤らせた。車は道をそれると、土手を滑り落ち草むらに突っ込み停止した。 | |
エド | お〜〜〜い!! | |
50 | アルフォンス | コホ・・コホコホコホ・・・ |
エド |
大丈夫か?アルフォンス・・・。 | |
アルフォンス | さぶくなって来たからね・・・。 | |
N |
土手の向こうから、カーニバルへ参加するジプシーを乗せた車がやって来た。エドたちはその車の荷台に乗せてもらい、一緒にカーニバルへと向かった。 ジプシーの一団の中に、占いを生業とする女がいた。名をノーアと言った。知られたくない事まで言い当ててしまうと、仲間からも気味悪がられていた。 |
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アルフォンス | へぇ〜、見てもらいたいな。 | |
エド | やめろよ。そんな非科学的な・・・。 | |
N |
ノーアがおもむろに手をかざす。驚いたような顔で、あなたも同じ、故郷がない・・・と、ノーアはエドへ言った。 | |
タイトルコール | 鋼の錬金術師 シャンバラを征く者 |
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N |
カーニバルの一角でせわしげに小型ロケットの打ち上げの準備をするアルフォンス。そこへエドがロケットの部品をもってやってきた。 | |
エド | 凄い人気だな・・・。 | |
60 | アルフォンス | オーベルト先生の本が出て以来、宇宙ブームだからね・・・ありがと。 |
N | 準備ができたと仲間の声が届く。その場を立ち去ろうとするエドをアルフォンスが呼び止めた。 | |
アルフォンス | エドワードさん・・・。 | |
エド | あっちで昼寝してくる。首痛くてさ・・・。 | |
アルフォンス | 見て行ってくれないんですか? | |
N | エドは無言で後ろ手に手を振り去って行った。アルフォンスはエドの後姿をじっと見つめていた。 発射台から降りてきた仲間が言う「オーベルトさんの所で会った頃は一番熱心だったのになあ・・・」 |
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エド |
どこまで行っても俺はここから逃げられない。 | |
N | 一人荷台の上に横になり、ボソりとつぶやくエド。遠く離れた元の世界を諦めをこめて想っていた。 そこへ、仲間にカーニバルの元締めに売られ、必死に逃げ出してきたノーアが飛び込んでくる。 |
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エド | それ、いじらない方がいいぜ。燃料セットしてある。 | |
N |
ノーアを追ってきた軍人に見つかり、ノーアは連れ出されそうになる。必死に助けを乞うノーア。エドの怒りが爆発した。 | |
70 | カール |
逃げた?・・・困ったね。大いなる蛇を彼女なら見つけてくれると思ったのだが・・・。 別荘へ行こう。エッカルト様に報告せねば・・・。 |
N | アルフォンスの下宿、そこにエドとノーアがいる。追われるノーアを連れて、アルフォンスの下宿へ転がり込んでいたのだ。 | |
アルフォンス |
仕方ないさ・・・追われてるなら・・・それに、ちょっと嬉しいんだ。 エドワードさんが女の子に興味を持つなんて。 あの人は他人に無関心と言うか、なんだか人と深く関わろうとしないんだ。いつも別の世界の話をしている。 |
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N | アルフォンスは、やっと自分たちの工場が持てると嬉しそうに出て行った。 しばらくして、エドも出かける支度を始めていた。 階段を下りるエドとノーア。 ノーアがエドから感じ取ったイメージを伝える。ノーアはエドのいた世界はどんなところか訪ねた。 |
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エド | こことそっくりさ。 ちょっと名前が違ったり、場所が違ってるだけで同じ顔の奴もいる。 あっちの世界で弟が死んで、それを蘇らせるためには俺がここに来るしかなかった。 代償だ・・・。ここは俺に与えられた地獄なのかな・・・。 2年前、ルーマニアでアルフォンスと出会った。弟・・・アルが成長してたらきっとこんな顔だと思った。だから、ここは俺の夢なのかもしれない・・・。 |
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N |
エドは道路の向こうを走る車の中にアメストリスのキング・ブラッドレイ大総統を見つけ、驚いて、走って後を追った。 | |
エド | 何故・・・何故、ホムンクルスがここにいる・・・! | |
N | 夜道、ヘッドライトの光が前方から近づいてくる。その光は道の真ん中をふさぐ大きな岩を浮かび上がらせた。運転手は車を降り岩に近づいて行く。 草むらの影からエドが飛び出し、運転手を気絶させると、するりと車に乗り込んだ。 |
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エド | キング・ブラッドレイ・・・。 | |
フリッツ・ラング | キング? | |
80 | エド | お前がこっちに来られたって事は、大佐は・・・。 |
フリッツ・ラング | 大佐?・・・戦争中の事かね? | |
エド | 何をとぼけて!・・・ちょっと失礼・・・。 | |
フリッツ・ラング | ご随意に。 | |
N |
エドは男の顔をまじまじと眺めた。 男は左目のめがねをはずし、あっかんベーをした。 エドは、急に力が抜けたようにがっくりとうなだれた。 |
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エド |
そうか・・・そうだよな・・・ホムンクルスだって元になった人間がいらぁ。そいつそっくりの人間がいたっておかしくないか・・・。 | |
フリッツ・ラング | 人違いかね? | |
エド | お詫びする・・・。 | |
フリッツ・ラング | 私はユダヤ人でね。金持ちユダヤ人と見ると襲ってくる愛国者が多いから慣れておる。ところで、運転はできるかな? | |
エド | ・・・うっ・・・そこそこ・・・。 | |
90 | フリッツ・ラング | では代わりをお願いしよう。・・・彼が起きるまでね。 |
N | アルフォンスのロケット工場でロケットエンジンの噴射実験が行われていた。 | |
カール |
素晴らしい。これなら直ぐにでも飛び立つ事ができそうだ。金髪、碧眼、皆見事に古代アーリア人の血を引いている。ドイツ民族の誇りだ。 エッカルト会長もさぞお喜びになるだろう。 |
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N | 部下がそっと近づくと、大いなる蛇の行方がわかったとカールに耳打ちをした。 | |
カール | エッカルト会長。大いなる蛇の逃げた先が・・・? | |
エッカルト |
どうやら・・・。 目撃者がおりました。ヘス少尉指揮を。 シャンバラへ至る時は近いですよ、教授。 |
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N | エドの運転する車が、山道を走ってくる。 | |
フリッツ・ラング |
いやぁ、ちょうど良かった。君のような腕の立つ人間が欲しかった所だ。 | |
エド | 命でも狙われてるのか? | |
フリッツ・ラング | 逆だよ。・・・狙っているのだ、ドラゴンを。 | |
100 | エド | ドラゴン? |
フリッツ・ラング | わたしのことは、マブゼーとでも呼んでくれ。 | |
N | しばらくして、車はとある城へとついた。そこには多くの人がカンテラを手に集まっていた。 | |
フリッツ・ラング | この廃城に盗みに入った者が見たという噂でね。 | |
エド | 何を? | |
フリッツ・ラング | ドラゴンを。 ・・・いやぁ、巨大な蛇だったという話だが・・・。 |
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エド | そんな噂を確かめにわざわざ? | |
フリッツ・ラング | ある事情で、どうしても私は本物のドラゴンを見つけたいのだ。 | |
エド | 薬にでもするのか? | |
N |
カンテラを照らしながら暗い城内を歩くエドの耳にエンヴィーの声が響いた。 見上げるエドめがけ、巨大なドラゴンが襲ってきた。 逃げるエド。古城の石積みの塔を破壊しドラゴンの鋭い牙がエドを襲う。 |
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110 | エド | お前、エンヴィーなのか!?・・・親父が造ったホムンクルス・・・。 ・・・エンヴィー!ここまで来て何で戦わなきゃいけないんだ!! |
N |
上空から複葉戦闘機数機が襲来し機銃をドラゴンめがけて連射した。 ドラゴンは奇声を発しながら、のたうち、長い胴をくねらせ苦悶の形相を見せながら、やがて動かなくなった。 |
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エド | 何だ・・・こいつらは・・・。 | |
カール |
これぞ本物のロンギヌスの槍だというモノは世界各地にある。それを全て集めるのには苦労した。 | |
エド | 待て!そいつをどこに連れて行く!? | |
カール | 今日見たことは忘れる事だ。普通の人間が知る事ではない。 | |
フリッツ・ラング | ・・・あなたは!? | |
カール | ん? | |
フリッツ・ラング |
お忘れですか?・・・ぁ無理も無い・・・戦争前に日本でお会いしたきりですからな。ハウスフォーファー少将。 ミュンヘン大学で教鞭を執っておられると聞きましたが? |
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エド | ハウスフォーファーだと?親父からその名を聞いたことがある。 | |
120 | カール | お前は? |
エド | エドワード・エルリック。親父の名はホーエンハイム・・・。 | |
N |
その名を聞いたとたん、顔を布で覆い、逃げるように去って行った。みやるエドの顔に催眠ガスが噴射された。 ドラゴンを載せた飛行船が闇夜をゆっくりと飛行してゆく。 |
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カール | エドワード・エルリック・・・。ホーエンハイムの息子だ・・・。 無事に扉を抜けられた者がもう一人いるとは・・・ |
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N | 地下の秘密施設。ドラゴンがぐるりと輪を描くように横たわっている。それにエッカルトが手をかざし、呪文を詠唱する。すると紫色の光につつまれたドラゴンの身体に練成陣が浮かび上がった。 ドラゴンの輪の中に暗く深い暗黒の穴がぽっかりと口を開いた。 |
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エッカルト | 教授。実験を。 | |
カール | ・・・しかし、鎧をつけているとはいえ人間を送り出すのは・・・。 | |
N | 躊躇する教授を尻目に、エッカルトが振り返ると、鎧の軍隊が隊列をなして並んでいた。 エッカルトの号令を発する。 |
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エッカルト | シャンバラヘ!! | |
錬金術世界 | ||
130 | N | 北方の国境地帯で、軍のロイ・マスタングは伍長となって軍務に就いていた。 そんなマスタングの元へ昔の部下であるハボック少尉とブレダ少尉が訪ねてきた。 「お元気そうで何よりです」 |
マスタング | 敬語はやめてくれ。私は一兵卒だ。 私は私なりのやりかたで国に尽くしているつもりだ。 ・・・あの日から・・・錬金術は一度も使っていない。使おうとすると私が愚かだったために命を落とした多くの者が見えてくる・・・こちらの目に・・・。 |
|
N | ロイ・マスタングの顔の左半分を覆う眼帯をそっと指で押さえるその姿はとても痛々しく悲しそうだった。 |
第1部 劇終 続きは・・・・そのうちに・・・・((多分))