映画版機動戦士ガンダムT

メイン登場人物以外の「連邦軍」「ジオン軍」の登場人物は
便宜上、全て「連邦軍兵士」「ジオン軍兵士」として
台本上は記載しています。

001 ナレーション  人類が増えすぎた人口を宇宙に移民させるようになって、既に半世紀・・・。
 地球の周りには巨大なスペースコロニーが数百基浮かび、人々はその円筒の内壁を人口の大地とした・・・。
 その人類の第二の故郷で人々は子を産み、育て、そして死んでいった・・・。
 宇宙世紀0079、地球から最も遠い宇宙都市サイド3はジオン公国を名乗り、地球連邦政府に独立戦争を挑んできた。
 この一ヶ月あまりの戦いでジオン公国と連邦軍は総人口の半分を死に至らしめた。
 人々は自らの行為に恐怖した。
 ・・・・・・戦争は膠着状態に入り、8ヶ月あまりが過ぎた。

 眩いばかりに輝く星空の彼方から不気味に近づく3体のザクの姿があった。
ジオン軍兵士 「スレンダー、お前はここに残れ」
「ハッ!曹長」
「曹長、軍の施設は右上のブロックのようです。出勤時間のはずですが車が1台いっただけです。人影はありません・・・・・・ん!?いました。子供のようです」
ナレーション アムロの家。避難命令が出たことも知らず一人残るアムロを心配してフラウ・ボウが訪ねてきた。
フラウ・ボウ 「アムローッ!」
「アムロッ!」
「まあ、まだ食べてない。・・・アムロッ!」
「こんなことだと思ったわ!ちゃんと朝食とらないと体のためによくないのよ」
「何を着ていくつもり?アムロ・・・アムロ!!」
アムロ・レイ 「このコンピューター組んだら食べるよ」
フラウ・ボウ 「退避命令聞いてなかったの?」
アムロ・レイ 「避難命令?・・・あのサイレンそうなのかい?」
010 フラウ・ボウ 「あきれた!軍の放送聞かなかったの?軍艦が入港するから避難するんだって」
アムロ・レイ 「なんで・・・・・・」
フラウ・ボウ 「アムロ!時間が無いのよ!」
アムロ・レイ 「わかったよ・・・」
フラウ・ボウ 「外で待っているから!」
アムロ・レイ 「うるっさいなぁー!」
ナレーション 家の前で待つフラウ・ボウ。そこへアムロの運転する車が駐車場から出てきた。アムロの運転で車は避難所めざし発進した。
フラウ・ボウ 「入港する軍艦にアムロのお父さん乗ってるんでよ?」
アムロ・レイ 「だと思うよ・・・一週間前に地球に降りるっていってたし」
フラウ・ボウ 「ここも戦場になるのかしら?」
アムロ・レイ 「知らないよ!おやじは何も教えてくれないもん」
020 連邦軍兵士 「ホワイトベースにガンダムの部品を載せりゃあいいんだ。地上の作業を急がせろ!」
「ホワイトベースめ、よりによってジオンの船につけられるとはな・・・」
ナレーション 目の前に悠然と停泊するホワイトベースの偉容に、連邦軍仕官は息をのんだ。
連邦軍兵士 「おお!これか!」
「さすが我が軍の新鋭戦艦だな。この艦とガンダムが完成すれば、ジオン公国を打ち砕くなぞ造作もない」
ナレーション サイド7の中へ誘導ビームに載ったホワイドベースが着艦する。
ブライト・ノア 「伝令!!レイ大尉、サイド7へ入港いたしました。至急、ブリッジへおいでください」
テム・レイ 「うむ・・・了解した」
「ブライト君といったね」
ブライト・ノア 「はい!」
テム・レイ 「何ヶ月になるね?軍に入って」
ブライト・ノア 「6ヶ月であります」
テム・レイ 「ガンダムが量産されるようになれば、君のような若者が実戦にでなくとも戦争は終わろう」
030 ブライト・ノア 「お子様でらっしゃいますか?」
テム・レイ 「ああ。こんな歳の子がゲリラ戦に出ているとの噂も聞くが・・・本当かね?」
ブライト・ノア 「ハイ!事実だそうであります」
テム・レイ 「嫌だねえ」
ジオン軍兵士 「3台目もモビルスーツだ・・・まだあの中にもあるかもしれんぞ」
「たたくなら今しかないな・・・」
「我々は偵察が任務だ」
「しかし、敵のモビルスーツがあの戦艦に乗ったら・・・」
「手柄が無いのを焦ることはない・・・ジーン!!」
「シャア少佐だって・・・!戦場の戦いで勝って出世したんだ!!」
「手柄をたてちまえばこっちのものよ!・・・へへっ・・・敵を倒すにゃ早いほどいいってね!」
ナレーション ザクに乗り込むと、いきなり発砲を開始し、連邦軍モビルスーツを破壊、攻撃を始めた。
アムロは避難所を出て、父のいるホワイトベースへ向かって車を走らせる。
ザクの放ったミサイル弾が流れ弾となり、アムロの車近くへ着弾し火柱が上がった。アムロも爆風に吹き飛ばされる。
040 ジオン軍兵士 『デニム曹長は万一の場合を考えて私を後軸に残しました。自分は曹長の命令を守って写真を撮って退出・・・』
シャア少佐 「デニム曹長は!?」
ジオン軍兵士 「ハッ!ジーンを援護するため後方から出ました」
シャア少佐 「連邦軍のモビルスーツは存在するのだな?おまえはとれるだけの写真を撮って危険になったら引き上げろ」

「デニムに新兵が抑えられんとはな・・・私が出るしかないかもしれん。艦をサイド7に近づけろ」
ナレーション 続く攻撃の中、人々が悲鳴を上げながら逃げ惑う。
アムロは作業服に身をつつみモビルスーツの搬入作業をする父の姿を見つけて駆け寄った。
テム・レイ 「第3リフトがあるだろ。・・・避難民よりガンダムが先だ。ホワイトベースにあげて戦闘準備させるんだ」
アムロ・レイ 「父さん!」
テム・レイ 「アムロ・・・?避難しないのか?」
アムロ・レイ 「父さんは人間よりモビルスーツの方が大切なんですか!」
テム・レイ 「早く出せ!!」

「早くホワイトベースへ逃げ込むんだ」
050 アムロ・レイ 「ホワイトベース・・・?」
テム・レイ 「入港している戦艦だ。早くホワイトベースへ行け」

「何をしている!?・・・エンジンがかからん?・・・牽引車を探してくる」
ナレーション アムロの目の前に横たわる巨大なモビルスーツ。アムロはその偉容を眺めた。その時近くでミサイルが被弾、多くの避難民が巻き添えとなった。その中にはフラウ・ボウの両親も含まれていた。悲嘆に暮れるフラウ・ボウを勇気付けるアムロ。走って逃げるフラウ・ボウの後姿を確認すると、アムロはモビルスーツのコックピットへもぐりこんだ。
アムロ・レイ 「コイツ・・・動くぞ・・・」
「・・・こいつか?・・すごい!5倍以上のエネルギーゲインがある!」
「やってみるさ・・・!」
ナレーション モビルスーツを立ち上がらそうとしたアムロ。その眼前に、ザクの姿が飛び込んできた。恐怖にかられ手元の操縦桿のスイッチを押すアムロ。頭部の機銃がザクめがけて発射された。
ジオン軍兵士 「デ・・。デニム曹長!て・・・敵のモビルスーツが動きだしました!」
「なにっ!?みんな部品ばかりだと思っていたが・・・」
「いや・・・・・・まだ、よく動けんようです・・・やります!」
ナレーション ザクがライフルを撃ち込むが、その固い装甲はライフルの弾を受けてもビクリともしなかった。
その時、ゆっくりとモビルスーツがその体を起し立ち上がると頭の機銃を乱発した。
連邦軍兵士 「技師長、味方のモビルスーツが動き始めました」
060 テム・レイ 「動く?なんて攻撃の仕方だ。誰がコクピットにいる?」
アムロ・レイ 「・・・!?た、弾がきれた!?」
ナレーション アムロに動揺が走った。ザクが機関銃を構えじりじりとモビルスーツに接近する。
アムロのとっさの攻撃は驚くものだった。近寄るザクの装甲をその強力な腕で引きちぎったのである。
ジオン軍兵士 「あれが連邦軍のモビルスーツの威力なのか!」
アムロ・レイ 「す・・・すごい・・・・・・」
ジオン軍兵士 「ジーン・・・スレンダーが待っているところまでジャンプできるか!?」
「補助カメラが使えますから・・・見えます。ジャンプします」
ナレーション ザクが空中へ飛び上がった。その隙をついて、モビルスーツの肩から伸びるビームサーベルを引き抜くとザクの胴体を真っ二つに斬り裂いた。激しい爆発が起こりサイド7の外壁に穴が開き、サイド内の空気が渦を巻きながら宇宙空間へ噴き出していく。
アムロ・レイ 「モビルスーツのエンジンが爆発すればサイド7もやられるかも知れない・・・どうすりゃいいんだ!?」
ジオン軍兵士 「よくもジーンを!」
アムロ・レイ 「ど・・・どうする?コクピットだけを狙えるのか?」
「今度ザクを爆発させたら、サイド7の空気がなくなっちゃう」
ナレーション ビームサーベルを構え思案のアムロ。ザクが飛び込んでくる。その腹にあるコクピットにビームサーベルが一撃を加える。見事ザクのコクピットを打ちぬくとザクはその場に崩れ伏した。
070 ブライト・ノア 「民間人をホワイトベースへ急がせろ!」
連邦軍兵士 「ハッ!」
「空気の流出は止まったようです」
ブライト・ノア 「ガンダムの運搬は?」
連邦軍兵士 「正規の技師がほとんどやられてしまったようで、進んでいません」
ブライト・ノア 「あれにもやってもらおう」
連邦軍兵士 「は?」
ブライト・ノア 「正規のパイロットだろうとなんだろうと、手伝ってもらわなければなるまい」
ナレーション その時、サイド7の外壁に外からミサイル攻撃を仕掛けてくる一隻の艦があった。
シャア少佐 「スレンダーは?」
ジオン軍兵士 「サイド7を脱出して本艦に向かっております」
080 シャア少佐 「認めたくないものだな・・・。自分自身の・・・若さゆえの過ちというものを・・・」
ナレーション シャアの待つ艦へ帰還した一体のザク。パイロットのスレンダー軍曹がシャアへ報告を行っている。
シャア少佐 「キサマは私とデニムの命令は守ったのだ。気にすることはない、スレンダー軍曹」
ジオン軍兵士 「ハッ、あ、ありがとうございます」
シャア少佐 「連邦軍のモビルスーツがキサマの言う通りの性能とは、やや信じ難いが」
ジオン軍兵士 「お、お言葉ですが、自分は確かに・・・」
シャア少佐 「中尉」
ジオン軍兵士 「ハッ!」
シャア少佐 「レーザー通信回路を開け。ドズル中将を呼び出したい」
ジオン軍兵士 「ハッ」
090 ナレーション ホワイトベース内、先ほどの攻撃で重傷を負った館長の元へブライトがやってきた。
連邦軍兵士 「…ジオンの艦は間違いなく攻撃をやめたのだな・・・ようし・・・キミも戻って・・・ウォッ・・・!!」
ブライト・ノア 「艦長、ここでしたか・・・艦長・・・!」
連邦軍兵士 「ジオンの艦の防戦に回った連中はほとんど壊滅だ。君の方はどうだ?・・・う・・・」
ブライト・ノア 「サイド7に入った者は技師、軍人ともに全滅です。たった二機のザクのために・・・」
連邦軍兵士 「そうか・・・」
ブライト・ノア 「負傷兵の中で戦闘に耐えられる者は十名とはおりません」
連邦軍兵士 「ガンダムの関係部品の積み込みを急いで・・・」
ブライト・ノア 「ハッ!、艦長。幸いなことにパイロット一名がガンダムを操縦、ガンキャノン、ガンタンクの積み込みを急いでおります」
連邦軍兵士 「パイロットは誰か?」
100 ブライト・ノア 「確認してはおりませんが・・・」
連邦軍兵士 「その作業が終了後、ホワイトベースをサイド7から発進させろ!」
ブライト・ノア 「しかし、ホワイトベースのパイロットが・・・」
連邦軍兵士 「出港はコンピューターが・・・」
ブライト・ノア 「し、しかし・・・」
ナレーション 躊躇するブライト。その時、負傷兵の傷の手当てをしていた女性がパイロットを申し出た。名前をミライ・ヤシマといった。

続 劇

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