ガラスの仮面
コミック 第8章 華やかな迷路 16・17巻より

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  OP ガラスの仮面
001 北島マヤはどこにでもいる平凡な少女だった。しかし、テレビや映画に関しては異常なまでの興味と演技の素質を持ち、月影千草に見いだされ女優修行に励んでいる。

マヤは、数々の舞台、様々な役柄を演じながら頭角を現し、テレビ大河ドラマに抜擢された。また、大都芸能入りし、大々的にスターとして形づくられていく。そんな頃、月影先生は、マヤと亜弓を「紅天女」候補と発表した。

マヤは、テレビ出演によって人気が急上昇し多忙な日々を送っていた。しかし、突然の母の死により、大きなショックをうけ、その隙をつくように乙部(おとべ)のりえの陰謀が襲いかかり、舞台に穴を開けてしまった。

マヤはテレビ出演を降ろされ、乙部のりえ がその代役に決まり、その他の出演も取りやめになり女優生命を絶たれてしまった。

  N《せりふ》 《MBAテレビ 山脇部長》
「やあ!これは亜弓さんじゃないか!」
  姫川亜弓 「山脇のおじ様!・・あら、いけない。番宣の山脇部長!」
  N《せりふ》 《MBAテレビ 山脇部長》
「お母さんに会いに来たの?」
  姫川亜弓 「ええ、「天の輝き」のスタジオはどちらですか?」
  N《せりふ》 《MBAテレビ 山脇部長》
「おーい、きみ。亜弓さんを「天の輝き」のスタジオに案内してさしあげろ!」

「ところでお父さんの姫川監督はお元気かね?」

「カンヌ映画祭に出品中の大作映画が外国映画優秀賞にノミネートされているとか・・受賞が決まったら、ぜひお祝いにかけつけるよ。お父さんにそう言っておいてくれたまえ」」

  姫川亜弓 「ありがとうございます。賞の事はわかりませんけれど、ノミネートされただけでも名誉な事だと思っていますわ」

「賞が取れなくても父の事だからパーティーを開いて”残念で賞”くらいやるんじゃないかしら?」

  N《せりふ》 《MBAテレビ 山脇部長》
「ははは・・。その時には是非とも呼んでもらいたいものだ」
  山脇部長と別れ、亜弓は局員にスタジオに案内された。
010 姫川亜弓 「あ、いえ・・調整室に案内してくださる?そこからスタジオを見たいの」
  亜弓は調整室からスタジオを見下ろすと、衣装を着けた乙部のりえの姿をじっと見つめた。
  姫川亜弓 「あのひとが北島マヤの代役の人ね」
  N《せりふ》 《番組スタッフ》
「ああ、乙部のりえですか。彼女も北島マヤの代役になるまでは目立たない詰らなさそうな女の子だったんですがね・・。いやまったく、その変身振りはすずめが白鳥に化けたようでしたよ。あんな美少女だったとは」
  モニターから乙部のりえの演技する姿が流れる。亜弓は黙ってじっとそれを眺めていた。
  乙部のりえ 「博覧会を開こうと言っているんです!」

「なにもかも外国とそっくり同じにするのよ」

「建物も四輪馬車も街燈も外国の小さな街をつくるの!」

  N《せりふ》 《番組スタッフ》
「どうです、この乙部のりえって子」
  姫川亜弓 「そうね、うまいものだわ。北島マヤの演技そっくり」

「気の毒に・・・損してるわね、この子・・・・」

「演技の形がそっくりなだけで、沙都子という少女の個性がこの人にピッタリ重なってないのよ。浮いてしまっているわ」

「役を演じるにはマネだけでは駄目なのよ。そこに”自分”がはいっていないと自分という個性がもう一人別の人間の個性を演じる。そこにその役者の魅力がでるのよ。ただ演技が上手いだけではダメ」

「役者の魅力・・・それは、その役者の生命といってもいいくらい大事なものよ」

「”沙都子”という少女、北島マヤは自分でその少女の魅力を創りあげたのよ。北島マヤの創りあげた魅力、それは北島マヤのものでしかないわ。乙部のりえが北島マヤの魅力を演じている限り、けっして自分自身は光りはしないわ。自分の沙都子を演じないかぎりわね」

「今は注目を浴びているかもしれないけど、この子、回を追うごとに視聴者に飽きられてくるわよ」

「それにしても北島マヤの代役だというから、どの程度の役者かと思ったら・・・!”役者の魅力”という点からいえば北島マヤは抜群だったわ。何を演じてもまわりの人を釘づけにするほどの魅力をその役にあふれさせる・・!一見あんな平凡な少女がどうしてと思うくらいよ。あの子は天性の女優よ」

「MBAも惜しい事をしたわね。あんな子を降ろすなんて。番組が終る頃には大河ドラマの名物になっていたかもしれないのに」

  亜弓はそう言うと調整室を出て行った。廊下を歩いてると大道具倉庫の中から男の声が聞こえた。
  N《せりふ》 《男A》
「困るんだ、こんな所にきてもらっちゃ、北島マヤの件ではたっぷり金は渡したはずだろ」
020 N《せりふ》 《男B》
「だいぶ週刊誌で騒がれちまったからな。俺達だってヤバくなってるんだ。あんた達の頼みであの北島マヤって子に催眠薬飲ませて大都劇場の開演にわざと遅らせたってこと。かぎまわってる奴がいるんだぜ。ここらで、俺達どっか身を隠さねえと、あんたや乙部のりえさんも危ないんじゃねえの。せっかくスターになれたってのによ」
  姫川亜弓 『乙部のりえ・・・!』
  N《せりふ》 《男B》
「あんた達も苦労するよな。この間、また例のマヤが舞台に出たのを乙部のりえが潰しにかかったんだって?酷い野次を飛ばしてあの子の演技ダメにしたって言うじゃないか」

《男B》
「テレビ撮影の時も乙部のりえや、あんた達の仲間がいろいろ小細工してあの子、失敗させようと企んだんだってな。確かに並大抵の事じゃ陽の当たる場所には出てこれねえ。北島マヤを潰す事によって乙部のりえを浮上させようってわけだ」

《男B》
「大都芸能は憎っくきライバル社、あんたんとこの芸能プロにとっても、乙部のりえの作戦は都合良かったわけど。手助けする気にもなったろうよ。このネタ、週刊誌に売りゃいい金になるぜ」

  N《せりふ》 《男A》
「ふん!君達が何を騒ごうともう証拠は何も無いんだ。それに忘れてもらっちゃ困るな。君達も共犯だってことを。バイクに乗せているところを見たって目撃者は大勢いる。」

《男A》
「だがまあ、どこかへ身を隠していてくれた方が都合がいい事は確かだ。明日、金を渡そう。ただし、それは”旅費”だ。しばらくバイクと共に東京を離れてもらおう。じゃ明日、場所は連絡する。これっきりだぞ!」

  姫川亜弓 『なんてこと・・・!そういうわけだったの・・・!そういう卑怯な手段であの子が芸能界からひきずりおろされたというの・・・!』

『”紅天女”もう一人の候補・・・・!このわたしのライバル。あれほどの少女を・・・!それを乙部のりえとその芸能プロがぐるになってひきずりおろしたというの・・・!』

『小細工で演技を邪魔して、舞台に出られないよう企んで・・・卑怯な・・・!同じ演技者の風上にもおけない・・!』

『ゆるせない・・・!』

  北島マヤの代役から脱けてはじめての自分の役を張ることになった乙部のりえ。プラザ劇場で上演する怪奇ロマン「カーミラの肖像」の稽古が始まっていた。
  乙部(マリア) 「どうなさったのカーミラ。お顔の色が真っ青・・また、おかげんでも悪くなられたのじゃ」
  亜弓(カーミラ) 「いいえ・・・いいえマリア、疲れただけよ。そうまた貧血なの」

「それにしても、ええ、うるさい・・あの声・・!なんて耳障りな・・・!頭に響く」

  乙部(マリア) 「まあカーミラったら!あれはお弔いの賛美歌よ」
  N《せりふ》 《記者》
「なんだか変だな・・いや、姫川亜弓がさ・・なんだかこの稽古、実力だしきってないみたいなんだ」

《記者》
「演技を抑えている・・・なんだかそんな風にみえるんだ。妙だな・・・」

《記者》
「どうです。今度の役の感想と抱負を一言」

030 姫川亜弓 「そうね、一度、吸血鬼になりたかったとでもお答えすればいいかしら?」
  記者たちが亜弓を囲んで談笑している。乙部のりえはその様子を歯噛みして睨んでいた。
  乙部のりえ 『なによこれ!この劇での主役はわたしよ・・・!話題を姫川亜弓にさらわれるなんて・・・!演出家や監督までがちやほやして・・・!大監督と大女優との間に生まれた演劇界のサラブレッド姫川亜弓・・!子供の頃から演技の天才少女として名高いスター・・・!こやしいわ、このわたしが手も足も出せないなんて・!』
  N《せりふ》 《記者》
「亜弓さん、恐怖物ははじめてですね?どんな吸血鬼を演じる予定ですか?」
  姫川亜弓 「どんな?そうね・・・吸血鬼に対してどんなイメージをもってらっしゃるの?」
  N《せりふ》 《記者》
「え?やあ、困ったなあ・・反対にインタビューされちゃった。えーと、そうだな、やっぱ牙むき出して夜な夜な美女を襲いに来るってアレだな。やっぱ・・・」
  亜弓は普通はそうねと言う風に、にっこりと笑った。
  N《せりふ》 《記者》
「あ!違うんですか?今度の舞台の吸血鬼」
  姫川亜弓 「いいえ、おっしゃるとおりの吸血鬼よ。この台本の中ではね」
  N《せりふ》 《記者》
「というと?」
040 姫川亜弓 「シェイクスピアの『ベニスの商人』の中にユダヤ人の金貸しシャイロックという悪党が出てくるわ。借金のかたに人肉を切りとろうとしたほどの極悪非道な悪人よ。かつて役者はこの役をどれほどすごい悪人にみせるかで苦心したものだときくわ」

「ところが、これをある名演出家が悲劇の人につくりかえてしまったことがあるの。脚本は全く同じでも演出と役者の演技がまるっきり変わってしまったために、それまでとは全く違う悲運なシャイロック役がそこに誕生したわ」

「その舞台を見て観客は悪人シャイロックに同情の涙を流したのよ。人肉を切り取ろうとしたほどの悪人に・・・。見事だったわ」

「脚本は同じでも演じ方次第で悪人も悲劇の人になりうるということ・・・!わたしも自分なりに吸血鬼を創りあげたいと思うわ」

  亜弓は呼ばれて席を立った。
  N《せりふ》 《記者》
「どういうことなんだ?いったい・・・亜弓さんはいったいどんな吸血鬼を演じようとしているんだ?」
  乙部のりえ 『姫川亜弓・・・・まあいいわ、女王さまでいられるのも舞台が始まるまでの事よ。舞台の上ではわたしが主役なんですからね・・』

『姫川亜弓、わたしの脇役。この私のね・・・!そうよ!おそれる事など何も無いわ・・・!』

『それに上手く取り入っておけば損は無いわ・・!』

  乙部のりえ 「あの・・・あなたのような方と共演できて光栄ですわ。亜弓さん」
  姫川亜弓 「それはどうも。あなたも北島マヤの代役から抜けてはじめてのご自分の役。しっかりお演りになってね。わたくし、あなたの本当の実力と才能がどんなものか。楽しみにしていましてよ」

「失礼」

  亜弓は乙部のりえの側をすり抜けて練習所を出て行った。
  乙部のりえ 『な・・・!なんですって・・・!?本当の実力と才能ですって・・?今までのはそうじゃないっていうの・・・?いったいどういう意味なの?失礼な・・・!はじめっからわたしを見下したようなあの態度・・!くやしい・・!』

『それにしてもなぜかしら・・・?敵意を感じる・・・!なぜわたしが姫川亜弓に敵意をもたれなきゃならないの・・・?なぜ・・・?』

  大都芸能本社ビル。社長室。
北島マヤ 「あたしをお呼びですか?」
050 速水真澄 「呼ばれたから来たんだろう?」

「この間の舞台の一件は聞いた」

  北島マヤ 「なら・・・あたしを早くクビにしてください。あたし演技できなかったんです。大都芸能の役には立ちません。あたし、商品として失格ですから・・・!」
  速水真澄 「そうはいかないな。きみには元手がかかってるんだ」

「演技できなかったなどと甘ったれた事を言うな!役者なら何があっても役の仮面をはずすな。それでも『紅天女』候補か!このバカ者!」

「何のために今まで演技をやってきたんだ!苦労してここまで来たのはなんのためなんだ!一流の女優になるためじゃなかったのか!『紅天女』を演れるような女優になるためじゃなかったのか!」

「観客の野次がどうした!?そんなものに惑わされてるようじゃ女優失格だぞ!今度の舞台では耳に栓でもしておくんだな!」

  北島マヤ 「この・・・次の舞台・・・?」
  速水真澄 「そうだ、丸和アパート8階の劇場でやる民話劇だ。劇団菜の花と組んでやる。こんどは上手く演れ!」
  真澄がマヤに台本を渡した。それを手にとったマヤは大事そうに台本を見つめた。
  北島マヤ 「民話劇・・・」

「あたし・・あたしもう、どこの舞台でも立てないと思っていました。アテナ劇場であんなことやってしまって・・・それでなくても、もうどこからも相手にされないはずなのに・・・」

「あたし・・・ダメなんです。母さんのこと考えると、体が動かなくなってしまう・・演技ができないんです。あたし・・・母さんおいて家出してきました。女優になるために・・母さんが病気になった事も知らなかった・・・」

「母さんはそんなあたしを探して歩いて・・・会うために療養所を脱走までして・・それから死んで・・」

  マヤの瞳に涙が溢れてくる。
  北島マヤ 「あたしもう演技できません・・・役の人物の気持ちになろうたってなれないんです。体が声がどう動いていいかわからない・・・気持ちはずっと北島マヤのままなんです。演技できないんです・・・女優失格です・・」
速水真澄 「もう一度やりたまえ。今まで君はどんな困難も乗り越えて来たじゃないか」
060 北島マヤ 「嫌です!あたしもう演技できません・・・!できないんです!」
  速水真澄 「これは俺の命令だ!」
  北島マヤ 「嫌です!」
  速水真澄 「なんだと!?」
  北島マヤ 「放してください!あなたなんか大っ嫌い・・・!」

「あなたのせいで母さん死んだのよ!あなたの命令なんか聞くのいや・・!」

  速水真澄 「よく聞け!俺を憎むのは一向構わないが、そのために自分の才能をダメにする気か?」

「さっき君は言ったな!今、自分はどこからも相手にされないはずだと!ならばこんなチャンスは滅多に無い!そうじゃないか!?」

「もう一度、舞台に立つんだ!立ち直るんだ!これはそのチャンスなんだぞ!」

  北島マヤ 「立ち直る・・?なんのために・・・?誰のために・・?大都芸能のためにですか・・?」
  速水真澄 「君のためだと言っても信じはしまい」
  北島マヤ 「はい・・」
速水真澄 「よろしい!では大都芸能のためだ」

「舞台には出てもらう。忘れるな、契約者があるかぎり君は大都芸能のものだ・・・」

「俺のものだ・・」

070 北島マヤ 「な・・・!」
  速水真澄 「俺の命令は聞いてもらう・・・・!」
  北島マヤ 「・・もし嫌だと言ったら?」
  速水真澄 「君に契約違反料が支払えるか?」
  北島マヤ 「卑怯者!」
  速水真澄 「当然の事だ」
  北島マヤ 「あなたなんて殺してやりたい・・・!」
  速水真澄 「それだけの元気があれば結構だ。さぞかし舞台でいい演技ができるだろう」

「さあ、行きたまえ!台本を持って次の舞台へ・・・!」

  ブラザ劇場、『カミーラの肖像』初日。
N《せりふ》 《記者》
「どうしたんだろ!いやにマスコミ界のお偉方が大勢招待されているな。演劇評論家もずいぶん来ているじゃないか」

《記者》
「乙部のりえを売り出すためだろ。なにしろ北島マヤの代役を抜けて初めて自分の役。しかも主役だからな」

《記者》
「芸術祭演劇部門の新人賞を狙ってるっていうぜ。これに成功すりゃ正式に女優としての実力を認められたようなもんだ」

080 楽屋裏。乙部のりえが本番前の緊張から荒れていた。牛乳を何杯も飲み緊張を抑えようとしていた。

開演を知らせる館内放送がスピーカーから流れた。それを聞いた乙部のりえの緊張はますます高まるばかりだった。

一方、亜弓の楽屋では。吸血鬼カーミラに扮した亜弓が落ち着いた表情で静かに鏡に向かっている。

  姫川亜弓 『吸血鬼カーミラ・・・生き血と仲間を求め長い時を生きてきたカーミラ・・・』

『演ってみせるわ、私のカーミラ。今日の日のために稽古の間中、演技をおさえてきたのよ・・・!私の吸血鬼を演じてみせる』

  出演者たちが次々と舞台袖へと集まってきていた。亜弓が現れると周りからどっとどよめきが起こった。
  姫川亜弓 「おまたせしました」
  N《せりふ》 《演出家》
「おお、亜弓くん。こりゃ、美しい!」
  乙部のりえ 『なんて美しい・・・・!負けそうだわ・・・!舞台では光り輝くわ、この人きっと・・!』
  姫川亜弓 「どうかなさって?」
  乙部のりえ 「い・・いいえ!」
  乙部のりえ 『負けられないわ・・主役はわたしよ!そうよ心配する事ないわ。脚本どおりやればちゃんと成功するわ・・・!姫川亜弓にくわれてたまるものですか!』

『今日の舞台に全てがかかっているのよ!』

姫川亜弓 『乙部のりえ・・!卑怯な手段で北島マヤの演技のじゃまし、舞台に出られないよう仕組んでその座を奪った少女・・!あなたなど同じ役者の風上にもおけない!役者は演技で勝負するものよ・・・!』
090 姫川亜弓 「どうなさったの?ずいぶん震えてらっしゃるのね」
  乙部のりえ 「い・・いえ・・・!」
  姫川亜弓 『今日の舞台、役者は実力と才能だけがものをいうのだということをおもいしらせてあげる・・・・!あなたとわたしの実力の差をはっきりと思いしらせてあげる・・・!そして、北島マヤとの才能の差を・・・!』

『みてらっしゃい・・!わたしはあなたのような卑怯な役者は許せないの・・!北島マヤのためにも・・!思いしらせてあげる・・!』

  プラザ劇場「カーミラの肖像」の初日の舞台の幕が静かにあがった。

真っ黒な舞台の中央にポッとスポットライトが灯る。そこに乙部のりえ扮するマリアが椅子に座っている。

  乙部(マリア) 「初めてお目にかかります。わたくしがマリア・スタンロッシュ伯爵夫人でございます」

「みなさまがわたくしの体験したあの恐怖の出来事をお聞きになりたいとか・・」

「今日、ここへまいったしだいでございます」

「ええ、忘れようたって忘れる事のできない事件でございました。当時のわたくしはスチリアの草深い森の中の古城に、家庭教師や召使いをのぞきましては家族は父ひとりきりという孤独なさびしい毎日を送っておりました」

「そう・・・わたくしが生まれてはじめて心に恐ろしい印象を受けましたのは・・あれはまだ年端もいかない子供の頃の事でございました。あの奇妙な出来事が最初の事件・・・といえばいえるのでございます」

  舞台暗転。ベッドの上で泣いている子供のマリア。暗闇からぬらっと手が現れゆらりとカーミラが現れた。会場はシンと静まり返りだれもが息を飲んでカーミラの幽玄とした姿を見つめていた。
  乙部(マリア) 『なにこれ・・?この異様な雰囲気・・舞台に漂う緊張感・・・!ひきつけられる・・!あの子本気で怯えているわ・・なんてこと・・・!』
  N《せりふ》 《スタッフ》
「見ろよ、あの手つき、立ち方・・・さすが亜弓さんだ。まるで人間じゃないみたいだ。すごいぜ、しょっぱなから観客をひきつけている・・!」
  泣いて怯えるマリアにカーミラが優しく語り掛ける。
  亜弓(カーミラ) 「泣かないで・・側にいてあげる・・・」
100 舞台暗転。突然マリアの声が響き渡った。バタバタと足音がし、家族が駆けつけてくる。
  N《せりふ》 《父》
「どうしたマリア!いったい何があったんだマリア」
  マリア(少女) 「今、しらない女の人がいたの。喉の下を噛まれたの・・・!」
  N《せりふ》 《父》
「噛まれた?」
  マリア(少女) 「そうよ、ベッドの下にかくれたわ」
  N《せりふ》 《父》
「ベッドの下には誰もいないぞ」
  マリア(少女) 「うそよ!ほんとにベッドの下にかくれたのよ!」
  N《せりふ》 《父》
「夢でも見たんだろうマリア。どれ首を見せてごらん・・ほら、噛まれた痕なんか・・・やっ!なんだこの痣は!まるで血の気が失せたようにここだけ青くなっているぞ!」

「泣くんじゃないよマリア。こわい夢を見たんだよ。今日はわたしの部屋でおやすみ」

  乙部(マリア) 「姫川亜弓なんかに負けるものですか・・!主役はわたしなんだから・・・!」
  亜弓(カーミラ) 『これからが勝負・・・・!』
110 森を散策するマリアに乳母が城へ戻るように訴える。
  乙部(マリア) 「いいじゃないの、もう少し森を散歩していたって。お城に戻ったって退屈するばかり。それにこんなにきれいな夕暮れなんですもの」
  N《せりふ》 「いや、きれいな少女ですな乙部のりえも。姫川亜弓の吸血鬼に襲われるヒロインをどう演技するか楽しみですな」
  大きな音と共に馬車が転倒し、カーミラが助け出されて現れる。その姿を見たとたん、会場から大きな拍手が沸き起こった。

舞台は淀みなく進んでいく。

馬車の事故がもとでめぐり合った少女カーミラは、そのままマリアの古城に客人として迎えられることになった。大事な急ぎの旅の途中という母は2ヵ月後に迎えに来ると言い残して去っていった。

  乙部(マリア) 「ねえ、お父さま。お聞きになった?」

「わけがあるとおっしゃって姓氏もお国の名も教えてくださらないけど、召使いがあの方の事、姫さまって呼んでらしたわ。よほど身分の高い方なのかしら?」

「少し・・おじゃましてよくて?」

  ベッドに横たわるカーミラのもとへマリアがやってきた。
  乙部(マリア) 「あっ!」
  亜弓(カーミラ) 「まあ・・!」

「まあ驚いた・・・!なんて不思議なんでしょう!あなたわたくしが子供の頃、夢の中で見た女の人とそっくりだわ」

  乙部(マリア) 「あなたこそ・・・!わたしが子供のとき夢で見た人にそっくりだわ!そう!わたしそのベッドで寝ていたのよ」
  亜弓(カーミラ) 「まあ・・・!なんて不思議なのかしら・・・?」

「わたくしね5つか6つの子供のとき、夢の中でいつのまにか知らないお部屋に来ていたの。そう・・・このお部屋よ!造りを覚えているわ」

「ふと気がつくと、このベッドで金髪の美しいお姉さまが泣いてらっしゃるの。そう・・・今のあなたですわ」

「わたくしお慰めしてあげたくて泣かないでって、その方の頬に口付けして、それから一緒にベッドに横になったんですわ」

「そのまましばらく、うつらうつらしていたら突然側でキャッて大きな悲鳴が聞こえてびっくりしてベッドを飛び降りて泥棒でも来たのかとあわててベッドの下に身を隠しましたの。そしてそれっきり記憶がなくなって朝、目覚めたら自分のベッドの中にいたんですわ」

120 乙部(マリア) 「まあ、不思議だわカーミラ。わたしもまったく同じ夢を見たのよ。一人で泣いていた時、不意にあなたが現れて泣かないでってわたしの頬にキスしてくださったの」
  亜弓(カーミラ) 「ほんとに不思議ですわ。わたくし達、きっとお友達になる運命だったのですわ。マリア・・・」
  乙部(マリア) 「カーミラ・・」
  亜弓(カーミラ) 「体が弱くて寝ていることが多いもので、人付き合いもあまりできませんの。遠い昔、健康だったこともあるのですけれど・・あの頃は幸せでしたわ」
  乙部(マリア) 『なんなの・・・?姫川亜弓、この表情・・稽古のときと違う・・!なんだか哀しい!』
  亜弓(カーミラ) 「ああ、うれしいわ。あなたとお会いできて。ああ、やっとお友達ができたのねえ」

「あなたがこれほどおきれいな方でなければ、わたくし子供の頃の夢の事など忘れてしまっていたでしょう。あの夢のときからわたくしずっとあなたに心ひかれていましたの・・・」

  乙部(マリア) 「そんな・・・カーミラ、わたしの方こそ兄弟もいないし森の中のこの城にひとりっきり!」

「いままで遊び相手になるようなお友達もいなかったの」

  亜弓(カーミラ) 「まあ、そうなの。似ているのねわたくし達って・・・」

「仲良くなりましょうね。わたし達・・・」

  乙部(マリア) 『どういうことかしら・・・?なんて優しそうな表情をするの・・・?吸血鬼のくせに』
  N《せりふ》 《観客》
「カーミラって吸血鬼なんだろ?なんだか憎めない感じだな・・最初は出ただけであんなにこわかったのに・・・」
130 乙部(マリア) 『いったいなんなの・・・?何かが違う。カーミラのかもしだす雰囲気がまるっきり違う』

『姫川亜弓・・・!なにを考えているの・・・!』

  乙部(マリア) 「こうしてカーミラはわたくしの城に滞在することになったのでございます」

「カーミラについてはいろいろと変わった点がございました。まず起きてくるのが昼の一時も回ってからなのです」

「そして食事はチョコレートを一杯飲むだけ。ときおり夕食を一緒にしましたが、いつも食欲がないとかであまり食べません。悪性の貧血症で朝は起きられないし動かないから食欲もないのだといっていました。非常に疲れやすい体質だとかで昼間はいつも城から外へはでません。いつもだるそうに物憂げにしています」

「夕方、城の周りを散歩しただけで、もう動けなくなってしまうほど疲れてしまったり、昼間庭に出て陽射しを浴びただけでたおれてしまったこともございました。陽射しはお体にさわるようでした。それでも陽気で気さくでよくお喋りをいたしました。話題が豊富で、話し上手で、城のみんなを魅了してしまいました」

「わたくしもカーミラに魅せられておりました。生まれて初めて出来たこの美しいお友達に夢中になっていたのでございます」

「そして、バラの花にはなぜか触れようとはしませんでした。そんなある晩のことでございます」

  室内に1本のろうそくの灯かりがチロチロと燃え、部屋をぼうっと照らし出している。窓が音もなく開き、ろうそくの火がフッとかき消され室内は真っ暗になった。その中に爛々と光る二つの怪しい目があった。

マリアが悲鳴をあげた。

  乙部(マリア) 「いない・・・いまたしか黒い塊のような化物が・・・。窓の閉まるような音がしたけれど」

「・・・内側から鍵がかかってる・・・今のは夢だったのかしら・・」

  N《せりふ》 《父》
「どうしたねマリア。今日は顔色が悪いね」
  乙部(マリア) 「なんでもないわ、お父さま」
  乳母がカーミラに食事を勧める。カーミラの朝食は今日もチョコレートだけだった。
  乙部(マリア) 「またそれだけなの?身がもたなくてよカーミラ」
  亜弓(カーミラ) 「心配してくださってるのマリア。優しい方なのね。でも今日はあなたの方が顔色がよくなくてよ」
  乙部(マリア) 「昨日ちょっとこわい夢みたもので・・」
140 亜弓(カーミラ) 「まあ、どんな夢?」
  乙部(マリア) 「お化けのような黒い塊がのしかかっていたの・・・・」
  亜弓(カーミラ) 「オホホホホ、まあいやだ。マリアったらお化けだなんて子供みたいだこと・・!」
  乙部(マリア) 「笑わないで!カーミラったら!」
  N《せりふ》 《評論家 竹村》
「観客の視線が妙だな・・・」

《評論家 竹村》
「カーミラの動きに合わせている。・・・カーミラが立ち止まれば観客の視線もそこで止まる。カーミラが何かに気づけば観客もそれに気づく」

《評論家 竹村》
「主人公マリアに、吸血鬼カーミラ、普通、観客は主人公の気持ちと一緒になって舞台を観るものだが・・」

  乙部(マリア) 「大丈夫?歩けるカーミラ・・もうすぐよ」
  亜弓(カーミラ) 「ええ、マリア」
  城の表の階段の手すりに寄りかかり、ぜいぜいと苦しそうに息をつくカーミラ。
  亜弓(カーミラ) 「はァ・・・もう平気よ。ありがとうマリア」

「残念だわ美しい森なのに・・・!ああ、もっと歩きたかった。小鳥のさえずりを聞きながら小川で遊びたかった・・!ああ、呪わしいこの体・・・・」

  乙部(マリア) 「本当にどこがお悪いのカーミラ。森の中を少し歩いただけで死にそうなほど疲れるなんて・・・!」
150 亜弓(カーミラ) 「昼間はこうなの。陽射しと暖かな外気のせいよ。今日は曇っているから平気だと思ったのに・・・」
  乙部(マリア) 「バラがお嫌いなのね。触れるのを嫌がるなんて魔物みたい・・・。魔物が触れるとバラは枯れるっていうもの」
  亜弓(カーミラ) 『乙部のりえ・・・!役者の風上にもおけない卑怯なヒロイン』

『舞台の上では実力と才能だけがものをいうのだという事をわからせてあげる・・!北島マヤとの差がどんなものか教えてあげる・・・!いまこそ!』

  乙部(マリア) 『なにをしてるの姫川亜弓・・・何て長い”間”なの・・・?』
  亜弓(カーミラ) 「昔・・・・健康だった頃・・・わたくし森の中で遊ぶことが好きでしたのよ・・・陽射しの中で遊ぶことが好きでしたの・・・川での水遊びも野山での馬乗りも・・・みんな好きだったわ・・・・」

「その頃は大勢友達もいてとても幸せで・・ダンスも人からほめられるくらい上手でしたのよ」

「でも、そんな日はもう永遠に来はしない・・・」

  乙部(マリア) 『なんて淋しそうな表情・・・!これが吸血鬼・・・!?』
  N《せりふ》 《執事》
「お嬢様、ロスタン公さまから仮面舞踏会の招待状がまいりました」
  乙部(マリア) 「仮面舞踏会ですって!?」

「カーミラ、あなたも行かない?」

  亜弓(カーミラ) 「舞踏会でどなたかとお友達にでもなりたいの?」
  乙部(マリア) 『なに・・・?この冷たさは・・・・!さっきとはガラリと雰囲気が違う・・・!』
160 乙部(マリア) 「あらカーミラ、大勢の人と知り合いになれれば楽しくてよ」
  亜弓(カーミラ) 「わたくしはいや!他の方とお友達になりたいだなんて・・・!許さなくてよマリア!」
  N《せりふ》 《評論家》
「さっきから姫川亜弓のカーミラから目が離せませんな。表情の一つ一つ、動作の一つ一つに意外性が秘められている・・。目がどうしてもそっちへ行ってしまう・・・!」

《評論家》
「それにしても・・舞台が進むにつれ、姫川亜弓のカーミラに比べ主役のマリアがだんだん平凡に見えてくると思いませんか」

  乙部(マリア) 「なぜなの、あなた変よ、カーミラ。そんなことばかり言うのだったら、わたしあなたの事、嫌いになってよ」
  亜弓(カーミラ) 「マリア!」
  N マリアはカーミラを置いて部屋の中へ入ってしまう。
  亜弓(カーミラ) 「マリア!・・・まってマリア・・まっ・・・」

「はァ・・・はァ・・・・苦しい・・・何て呪わしいこの体・・・夜になれば動けるものを・・・・」

「ねえマリア・・・わたくしにはあなただけなのよ・・・忘れないで、わたくしにとってあなたは特別な人なのよ・・・」

「わたしも昔はバラが好きだったわ・・・本当にバラが好きだった・・・」

  乙部(マリア) 『姫川亜弓・・・!』
  N《せりふ》 《評論家》
「涙を流すなんて・・・こんな吸血鬼って・・・」

《評論家》
「吸血鬼になってしまった少女の悲しみ・・・そんなものが切ないばかりに伝わってくる・・・」

  N いまや・・・プラザ劇場、満場の観客は、だれも主人公マリアの事など気にとめてはいなかった。場内一杯に吸血鬼カーミラの胸をしめつけるような悲しさが広がっていたのである。
170 乙部(マリア) 「お城に昔からあった絵ね」
  N《せりふ》 《父》
「ああ、表具屋にきれいにしてもらうんだ。年月がたって、すすや埃でみんな真っ黒だ。どれが風景画やら肖像画やら区別もつかん」
  乙部(マリア) 「あら!これは肖像画らしいわ・・・1698年・・まあ、200年近くも昔のものよ・・!」

「名前らしいものが読めるわ・・・・ミ・・・ラ・・・ル・・・カ・・・」

  N カーミラの背中がビクっと振るえる。
  乙部(マリア) 「ミラルカ・・・あとはわからないわ」
  N《せりふ》 《父》
「さあさあ、マリア、表具屋が帰れなくなるじゃないか」
  乙部(マリア) 『はっ!・・・カーミラを見ている。観客の視線はカーミラを見ている・・・!後ろ姿のカーミラを・・・!』

『くやしい・・!主人公はわたしなのよ・・!くわれてしまうわ、このままでは・・・!』

『そうだわ!』

  乙部(マリア) 「どうなさったの?カーミラ」
  乙部(マリア) 『どう・・!姫川亜弓、あなたの顔や表情も観客には見えなくてよ・・・!正面向いているわたしの方がはるかに有利・・・!』
  N 亜弓は手を伸ばすとのりえにガバっと抱きついた。
180 亜弓(カーミラ) 「わたしこわいの・・・!あなたから引き離されるのがこわいの・・・!眠っていた過去がよびさまされる時、あなたからひきはなされるわ・・・!」

「ああ、どうしてあなた方は過去を追い求めようとなさるの・・昔のものを甦らせたりなさるの・・・・?どうしてそっと眠らせておいてはくれないの・・・?」

  乙部(マリア) 『みている・・・!観客がみんなみている・・!後ろ姿の姫川亜弓をみている・・・!こんな・・・こんなばかな・・・』
  乙部(マリア) 「な・・なにを言っているの・・・?カーミラ・昔の絵をきれいにする事がいけない事だって言うの・・・?」
  亜弓(カーミラ) 「マリア・・・!マリア・・・!こわいの・・!わたしこわいの・・!」
  乙部(マリア) 『姫川亜弓・・・』
  亜弓(カーミラ) 「う・・ううぅ・・・あなたが好きよ・・!あなたを失いたくないの・・・!」
  乙部(マリア) 『なんて存在感の大きい人なの・・この人天才だわ・・・!天才なんだわこの人・・・!ひきずられる、姫川亜弓の演技にひきずられる・・・!』

『負ける・・!姫川亜弓に負ける・・・!のまれてしまう・・!』

  N 姫川亜弓演じる吸血鬼カーミラは、それまでのこわいだけの吸血鬼とは大きく違っていた。かつて大勢の人々に愛され、明るく幸せだった少女カーミラ。吸血鬼になってしまったために人間としてのあらゆる幸せから背をそむけて生きなければならなくなった不幸な少女カーミラ。亜弓の演技の一つ一つにその悲しみがこもっていた。
  亜弓(カーミラ) 「そう・・・最近体がだるいの・・?めまいもするの・・・?マリア」

「大丈夫?マリア・・わたしがいけないのよわたしが・・・許してね・・・あなたを愛しているからなのよ・・」

「信じられないでしょうけどマリア・・・あなたはわたしにとって誰よりも大事な人・・・生命そのものなの・・」

「待っててね、あなたは今にわたしと一つになるの・・わたしの中であなたは永遠に生きるのよ・・愛しているわマリア・・・」

  N 日の光をおそれ、十字架をおそれ、賛美歌にふるえる・・・それまであたりまえであった吸血鬼としての弱点すらも亜弓が演じると、悲劇になりかわり観客の同情をさそった。

観客の多くは正体がばれそうになったカーミラにはらはらした。カーミラを問い詰める役者が”悪役”に思えたほどである。

いまや観客は主人公マリアではなく、完全に吸血鬼カーミラの味方になっていたのである。

今や観客は誰ひとりとして舞台の上の乙部のりえを見る者はなかった。観客通路の中でアンコールに答える亜弓に嵐のような拍手をいつまでもいつまでも送りつづけたのである。

190 N《せりふ》 《評論家》
「この舞台の成功はひとえに姫川亜弓の力といっても過言ではありませんな。なんといっても吸血鬼をあれほどまでに感動的に演じあげた姫川亜弓の演技力なくしては、これはあたりまえの吸血鬼物語になっていたでしょう。あらためて姫川亜弓の天才性を思いしった次第です」
  乙部のりえ 『実力の差・・・敗北だわ・・・姫川亜弓に・・・完全に・・・』

『姫川亜弓に敗北・・・?北島マヤ・・?姫川亜弓のライバル・・・!なんて身のほど知らずなことを・・・!なんてことを・・!なんてことをわたしったら・・・!』

『姫川亜弓すら一目おく子・・・!天才だったんだわ、あの子・・・!敗北だわ北島マヤに・・!北島マヤ!姫川亜弓・・!わたしより才能も実力もはるかに上だったんだわ、あの子・・!わたしの完全な敗北・・・』

192 姫川亜弓 『マヤ・・・かたきはとったわよ・・・「紅天女」もうひとりの候補・・・わたしのただひとりのライバル・今ごろどこでどうしているの・・・・?』
  ED パープル・ライト

ガラスの仮面

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