DEATH NOTEデスノート

集英社コミック 原作:大場つぐみ 漫画:小畑 健

第1巻〜第2巻より

夜神 月(やがみ らいと)

全国共通模試で1位をとるほどの真面目な優等生。死神リュークが人間界に落とした、そこに名前を書かれたものは死んでしまうという「デスノート」を使って、退屈で腐ってる世の中を変えようと決心する・・・!!

死神リューク

死神。退屈で不毛な死神界に飽き、面白そうだからという単純な理由で人間界に興味を持ち、自らノートを落とす。ノートに触れた者にのみがその姿や声を認知することができる。

レイ=ペンバー

FBI捜査官。Lの指示でFBIが日本警察内部の身辺調査を行った際に月の尾行を担当。尾行中にバスジャックに遭い、月と接触する。

南空 ナオミ(みそら なおみ)

レイ=ペンバーの婚約者で元・FBI捜査官。レイが巻き込まれたバスジャック事件に不審な点を感じている。

DEATH NOTE プロローグ
001 死神界より人間界を見下ろす異形の姿をした死神がいる。死神は退屈だった。毎日毎日、同じ事の繰り返し。変わることのない時間の流れの中で、死神はある遊びを思いつく。それは、死神の落とした一冊のノートを巡って繰り広げられる死のゲームだった。

夜神 月(やがみらいと)は退屈だった。成績優秀な高校生である彼が死神の落としたデスノートを拾った所からこのゲームは開始された。

002 夜神 月 「デスノート・・・直訳で死のノート・・・」

「『これは死神のノートです』・・ぷっ・・。HOW TO URE・・全部英語か面倒だな・・。」

「『このノートに名前を書かれた人間は死ぬ』・・・ははは・・ったく病んでるな、なんで皆、こんなくだらないのが好きかな・・不幸の手紙から全然進歩しちゃいない」

003 家へ帰り、自室でデスノートの使い方を読むでもなく眺めている。
004 夜神 月 『書く人間の顔が頭に入っていないと効果はない。ゆえに同姓同名の人物に一遍に効果は得られない』

『名前の後に人間界単位で40秒以内に死因を書くとその通りになる』

『死因を書かなければ全てが心臓麻痺となる』

『死因を書くと更に6分40秒、詳しい死の状況を記載する時間が与えられる』

「・・・ふっ・・楽に死なせたり苦しませて死なせる事ができるってわけか・・・悪戯もここまで手が込んでるとまあまあかな・・・」

005 5日後、それは何の前触れも無くやってきた。
006 死神リューク 「・・気に入ってるようだな」
007 突然、背後から声がし、月(ライト)は驚いて後ろを振り向くと、不気味な形相の異形の者が頭上から見下ろしていた。
008 死神リューク 「何故そんなに驚く。デスノートの落とし主、死神リュークだ。さっきの様子だと、もうそれが普通(ただ)のノートじゃないってわかってるんだろ?」
009 夜神 月 「し・・・死神・・・・死神か・・・」
010 (ライト)は小刻みに震えながらも、気丈に立ち上がり死神リュークへ話し掛ける。
011 夜神 月 「驚いてないよリューク・・・・・いや・・・・・待っていたよリューク・・・」

「死神まで来てくれるとは・・・親切だ・・・」

「僕は既に『死神のノート』を現実だと疑ってなかったが、こうして、いろんな事を直視する事でますます確信を持って行動できる」

「それに聞きたい事もある」

012 (ライト)は死神リュークへデスノートのページを広げて見せた。見開かれたページにはびっしりと名前が書かれていた。
013 死神リューク 「くく・・・これは凄い。逆にこっちが驚かされた。過去にデスノートが人間界に出回った話は何度か聞いたが、たった5日でここまで殺ったのはおまえが初めてだ」

「並みじゃビビってここまでは書けない」

014 夜神 月 「覚悟はできてるよリューク・・僕は死神のノートをわかっていて使った・・・そして死神が来た・・・僕はどうなる・・・?魂を取られるのか?」
015 死神リューク 「ん?・・何だそれ?人間の作った勝手なイメージか?」

「俺はおまえに何もしない」

「人間界の地に着いた時点でノートは人間界の物になる・・・もうおまえの物だ」

016 夜神 月 「僕の物・・・・」
017 死神リューク 「いらなきゃ他の人間に回せ。その時はおまえのデスノートに関する記憶だけ消させてもらう・・」

「そして・・元俺のノートを使ったおまえにしか俺の姿は見えない。もちろん声もお前にしか聞えない」

「デスノートが人間、月(ライト)と死神リュークをつなぐ絆だ」

018 夜神 月 「絆・・・じゃあ本当にデスノートを使った代償って何もないんだな?」
019 死神リューク 「強いて言えば・・・そのノートを使った人間にしか訪れない苦悩や恐怖・・・そして、お前が死んだ時・・俺がおまえの名前を俺のノートに書く事になるが・・・」

「デスノートを使った人間が天国や地獄に行けると思うな」

「それだけだ・・・死んでからのお楽しみだ・・クックック・・・」

020 夜神 月 「じゃ・・じゃあ、もうひとつ・・何故、僕を選んだ?」
021 死神リューク 「はあ?くくっ・・うぬぼれるな。俺はただノートを落としただけだ。賢い自分が選ばれたとでも思ったか?たまたまその辺に落ち・・・たまたまおまえが拾った・・・だから人間界で一番ポピュラーな英語で説明つけたんだぜ」
022 夜神 月 「じゃあ、何故落とした!?」

「丁寧に使い方まで書いて『間違って落とした』なんて言うなよ」

023 死神リューク 「何故かって?・・・・・・退屈だったから」

「死神がこんな事言うのもおかしいが、生きてるって気がしなくてな・・・実際、今の死神ってのは暇でね。昼寝してるか博打うってるかだ。下手にデスノートに人間の名前なんて書いてると『何ガンバッちゃってるの?』って笑われる」

「自分は死神界に居るのに人間界の奴を殺しても面白くもなんともない。だからといって死神界の奴をノートに書いても死なないんだからな。こっちに居た方が面白いと俺は踏んだ」

「それにしてもずいぶん名前書いたな」

024 夜神 月 「・・・・・・・・・・・僕も・・・退屈だったから・・・」

「もちろん最初は信じなかった。でも、そのノートは人間なら誰でも一度は試してみたくなる魔力がある・・・・」

「試しにデスノートに名前を書いてみた。すると、そいつは40秒後に心臓麻痺で死んだ。だけど偶然かもしれないと思い次は事故死と書いて見た。すると交通事故でそいつは死んだんだ。・・・さすがに夜はうなされて眠れないし、この5日で4キロ痩せたよ」

「それでもまずは地球の掃除だと思い、凶悪犯の名前を書き続けた。そうなると今の世の中は便利だ。24時間、世界のニュースを流すテレビ、どんな情報もすぐ手に入るインターネット・・・」

025 死神リューク 「しかしなんでダンプにはねられた奴しか死因を書いてないんだ?面倒だからか?」
026 夜神 月 「死因を書かなければ皆、心臓麻痺で死ぬ。そこがデスノートの一番いい所だよ。リューク」

「すでに主だった凶悪犯罪者の名前は書き尽くし、徐々に悪人のレベルも下げてる。それが皆、心臓麻痺で死んでいくんだ!どんな馬鹿でも『悪人が誰かに消されている』って事に気付く」

「世の中に知らしめるんだ。僕の存在を。正義の裁きをくだす者がいるって事を!!」

「誰も悪い事ができなくなる。確実に世界は良い方向に進んでいく。そして、罪を受けて当然な悪人が心臓麻痺で死んでいく裏で、道徳のない人間、人に迷惑をかける人間を病死や事故死で少しづつ消していく」

「それすらもいつか愚民は気づくだろう。『こんなことしていれば消される』と・・・そして僕が認めた真面目で心の優しい人間だけの世界をつくる」

027 死神リューク 「そんな事したら性格悪いのおまえだけになるぞ・・・・」
028 夜神 月 「何を言ってるんだ?リューク。僕は日本一と言ってもいいくらいの真面目な優等生だよ」

「・・・・そして僕は、新世界の神となる」

029 死神リューク 『・・やっぱり、人間って・・・面白!!』
030 死神リュークの無限の洞窟のような深くて暗い瞳が不気味な光を湧き上がらせていた。
FBI捜査官レイ 南空ナオミ 編
031 『このノートに名前を書かれた人間は死ぬ』・・・・。死神リュークが人間界に落とした「デスノート」を拾ったのは。成績優秀な高校生、夜神 月(らいと)だった。半信半疑ながら恐る恐るそのノートを使った月(らいと)は、実際に人の死を目の当たりにしてしまい、恐怖を覚える。しかし、自分が理想とする社会を作る為、デスノートを使い、凶悪犯を粛清していく決心を固める。

一方、犯罪者が次々と死んでいく不可解な事件を解決する為、世界の迷宮入りの事件を解決してきた「L」(エル)という謎の人物が動き出す。テレビを通じ、『犯人を絶対捕まえる』と宣言したL(エル)。そして、その挑戦を受けた月(らいと)。ここから二人の壮絶な戦いが始まっていく・・。

(らいと)は、犯罪者を殺す事でテストしながら、死神さえも驚くノートの使い方を発見していく。L(エル)は日本警察に捜査を協力してもらうと同時に、独自のルートを使って、「FBI」に日本警察内部の身辺調査を依頼した。そして、その調査は刑事局長を父に持つ月(らいと)にも及んでいく。何とかしてFBI捜査官の名前を知ろうと、デスノートを巧みに使い、遂に名前を知る事に成功する。

ホテルの一室。FBI捜査官「レイ」が部屋へと戻ってくる。部屋には長い黒髪の女性が居りレイを出迎えた。

032 南空 ナオミ 「おかえり、レイ」

「・・・何かあったの?大きな溜息」

033 FBI調査官レイ 「偶然にバスジャックに巻き込まれた」
034 南空 ナオミ 「バスジャック?」
035 FBI調査官レイ 「ああ、二日前、銀行を襲った犯人が、今度はバスジャックさ。日本も怖い国になったものだ」
036 南空 ナオミ 「・・・・・・・・そのバスに、あなたも乗り合わせたって事?」
037 FBI調査官レイ 「そうさ、結局犯人はバスを飛び降りて車にはねられたけどね・・」
038 南空 ナオミ 「その犯人死んだの?」
039 FBI調査官レイ 「ああ、多分な・・・関わらない方がいいと判断して見届けなかったが」
040 南空 ナオミ 「ねえ、レイ」
041 FBI調査官レイ 「ん?」
042 南空 ナオミ 「それって本当に偶然だったのかしら?」

「だって、誰かを調べていてそのバスに乗ったんでしょう?・・そこで犯罪者がおそらく死んだ・・・」

043 FBI調査官レイ 「なあ・・・君は確かに優秀なFBI捜査官だった・・・・」

「しかし今は、僕のフィアンセでしかない。もう君は捜査官じゃないんだ」

「キラ事件には口を出さない、危険な行動は取らない。そういう約束で日本にいる君の両親に挨拶する為に一緒に連れて来たんだ」

044 南空 ナオミ 「わかったわレイ、つい癖で・・・ごめんなさい」
045 FBI調査官レイ 「ああ・・・ごめん、そんなに気にするなよ。家族ができれば自分が捜査官だった事を忘れるくらい忙しくなって癖なんて出る暇もなくなってしまうさ」

「それより、あのお父さんになんて挨拶したら好感度が上がるか考えてくれよ」

046 死神リューク 「さっそく昼間突き止めた捜査官の名前を書くってわけか」
047 夜神 月 「いや・・彼の名前を書くのは・・・そうだな、一週間後だ。会ってすぐ書くのはまずいし、もっと沢山の警察関係者を調べてからの方がいい。そして一週間後名前を書く時は、彼に日本に入ったFBI全員の顔の入ったファイルを見せてもらってからだ」

「まずは、また刑務所内の犯罪者を使ってL(エル)の相手さ」

048 新宿駅地下街。行き交う人の雑踏の中に月(らいと)の姿があった。その横には決して人には見ることの出来ない死神リュークが立っている。
049 死神リューク 「すごい人間の数だな・・ここで殺るのか?」
050 夜神 月 「この6日間調べた事といろんな実験をした成果を見せてやるよ」
051 死神リューク 「実験?」
052 夜神 月 「ああ、またデスノートを使い、この辺一帯の犯罪者でいろんな殺し方を検証してみた」

「デスノートは死因や死の状況を先に書き後から名前をその文字の前に書き込めば、その通りになるんだ」

053 死神リューク 「へぇ〜〜〜・・俺も知らない事を・・・・」
054 夜神 月 「来た・・・時間通りだ」
055 (らいと)はパーカーのフードを目深にかぶり、眼の前を歩いていく男の後ろにぴたりとついた。
056 夜神 月 「レイ=ペンバーさん。振り向いたら殺します」

「キラです。振り向いたりポケットに手を入れたりしたらその瞬間に殺します」

057 FBI調査官レイ 『ま・・・まさか・・・しかしこの声どこかで・・・・』
058 夜神 月 「まず、キラだという証拠を見せます」

「今、あなたから見える喫茶店。あそこで働いている眼鏡をかけた男を2分後に殺します」

059 FBI調査官レイ 「ば・・・・バカなやめろ・・・・」
060 突然、店先で男がのけぞって倒れた。
061 夜神 月 「最低一人はこうして見せないと信じて頂けないと思ったので仕方がありません」

「しかしあの男は婦女暴行を数件繰り返しながら証拠不十分で検察が起訴できなかった・・・裁きを受けて当然の社会悪です」

「もうL(エル)等から聞いて知っていると思いますが、私は殺そうと思う者の顔がわからなければ殺せません。逆に言えばここから見える全ての人間を殺せるという事です。リクエストがあれば殺します。言ってください」

062 FBI調査官レイ 「や・・・やめろ・・・キラだという事は信じる・・・・」
063 夜神 月 「もっとも、あなたにとってはここに居る人達よりも自分の大切な人の命を奪われる方が辛いでしょう。今、人質にされてるのはそちらだと思ってください」
064 FBI調査官レイ 「ま・・・まさか彼女を!?」
065 夜神 月 「そうです。あなたの事は調べました。少しでも私の指示と異なる行動を取ったら、あなたの家族も含め、皆、殺します。もちろんあなたも」
066 FBI調査官レイ 「わ・・・・わかった。私にどうしろと?」
067 夜神 月 「パソコンは持ってきましたね?そしてそのパソコンに日本に入った捜査官のファイルは入ってますか?」
068 FBI調査官レイ 「ノートパソコンは仕事柄いつも持ち歩いている。しかしそんなファイルは持っていない」
069 夜神 月 「では、この封筒をどうぞ」

「まず中に入っているトランシーバーを出してイヤホンをつけてください」

070 FBI調査官レイ 『トランシーバー・・・・しかもオモチャに近い・・・だが、これなら通信記録はどこにも残らないし地下であろうと近距離ならば会話できる。・・考えたな・・・・』
071 レイは封を開けた封筒の中にある、5つの封筒を訝しげに見つめた。
072 FBI調査官レイ 『この封筒は・・・・』
073 夜神 月 「では山手線に乗ってください。内廻り、外廻りどちらでも構いません」

「私は常に少し離れた所であなたを監視してます。電車に乗っても前だけ一点を見てください・・・いつでも殺せるという事を忘れないでください」

「ドアに近い角の席に座ってください。空いていなければ空くまで待ちましょう」

074 レイはトランシーバーのイヤホンから聞える月(らいと)の言葉通りに従い行動していく。
075 夜神 月 「まず、お聞きします。私の見解とまったく違う答えが返ってきたらあなたの彼女を殺します」

「日本に入ったFBIの編成と人数は?トランシーバーで小声で答えてください」

076 FBI調査官レイ 「よ・・・4チーム・・・合計12人と聞いている・・・」
077 夜神 月 「では、その捜査官・・・そうですね・・あなたより立場の弱い者に自分の携帯で電話してください。もちろんトランシーバーで会話がこちらに聞える様にしてです」

「『日本に入った全員の顔と名前を知っておきたいから早急に自分のパソコンにファイルを送って欲しい』と言ってください」

「余計な単語が出たら殺します・・・」

078 FBI調査官レイ 「・・・・・レイだ」
078 N(捜査官) 【せりふ】
「はい、どうしたんです?」
079 FBI調査官レイ 「日本に入った今回の仲間全員の顔と名前の入ったファイルをすぐに私のパソコンへ送ってくれ」
080 N(捜査官) 【せりふ】
「え?でしたら長官に直に言ってください。私は持ってませんよ」
081 夜神 月 「『自分と長官のパソコンの相性が悪くて、以前、直接もらったファイルが開けなかった。一度誰かのパソコンを通したほうが早い』と言ってください」

「封筒の中にボールペンと更に5つの封筒が入っています。それを出してください。その5つの封筒は封をしてありますが・・・穴が開いている。わかりますね?」

082 FBI調査官レイ 「なんだ・・・・・これは・・・・・・・・?」
083 夜神 月 「その穴の開いた部分にパソコンに送られてくるファイルの捜査官の名前を一人一人顔をよく見て記入してください」

「一字一字、丁寧にお願いします。後で名前が違う事がわかったら・・・わかりますね。その作業が終るまでは電車からは降りられません。それを確実にして頂ければ、少なくともあなたの彼女や家族の命は保証します」

084 FBI調査官レイ 『す・・・・少なくとも・・・!!やはり、ここに挙げさせた捜査官を後で殺すとしか思えない・・・・し・・しかし・・・今、相手にしているのは、あの恐るべき殺人鬼だ。逆らった行動を取れば・・・今はいわれた通りにするしかない。名前だけなら、まだ殺せないはずだ。もはや、このトランシーバーの電波を誰かが偶然に傍受してくれる事を祈るくらいか・・・・しかし無線機とは違うオモチャの様なトランシーバーのうえに走る電車の中となると・・・』
085 夜神 月 「作業は終った様ですね。元の封筒にトランシーバーと5つの封筒を入れて網棚に乗せ、10分以上、そのまま手をヒザの上に置き、身動きせずにこの電車に乗りつづけ、そして、その封筒を忘れている事に誰も気付かない様な車内の状況だと判断できた駅で電車から降りてください」
086 FBI調査官レイ 『何故だ・・・・・何故、あの声の主を思い出せない・・・・・・』
087 10数分後、山手線はとある駅に到着した。電車のドアが開き、レイは席を立つと駅へ降り立った。
088 FBI調査官レイ 『くそっ・・キラめ・・。おまえは一体・・・・』
089 その時、レイの胸が何者かの強い力で鷲掴みにされたような衝撃を受ける。レイは胸を押さえ苦しさに声も立てることも出来ないまま、ずるずると駅のホームへ崩れ落ちた。

レイの苦しさに歪んだ顔をじっと見下ろすように電車の中から見ている人影があった。レイの瞳が大きく見開かれ、その人の名前を口にした。

090 FBI調査官レイ 「や・・・・夜神 月(らいと)・・・!!」
091 夜神 月 「さよなら、レイ=ペンバー」
092 (らいと)の冴え冴えとした声が、今まさに命燃え尽きようとしているレイに投げかけられた。電車のドアが無常にも閉じ、電車は、その駅を後にした。後には死体と化したレイの姿だけがポツンと残っていた。

シャトル交通株式会社。レイの婚約者の女がバスの運転手に聞き込みをしている。

093 N(運転手) 【せりふ】
「そうそうこの人だ。一人で乗ってたし、『伏せろ』って言ってたから覚えてる。100%とは言い切れないが、多分この人・・・しかし、他の客までは・・・・」
094 南空 ナオミ 「もし、またこうして写真があれば思い出せるかしら?」
095 N(運転手) 【せりふ】
「うーーん・・・見てみないとわからないが、正直、私も震えていただけなんで・・・ただ、乗客は他に6人、これだけは確かです」

【せりふ】
「それだけしか・・・すみません」

096 南空 ナオミ 「いいえ、助かりました。また何か聞きに訊ねるかもしれませんが、その時はお願いします」

『私の考えている事が正しければ、その乗客の中にキラがいたかもしれない・・・だとすれば、このバスを利用できる沿線にキラが・・・・』

『レイは、あの日確かに『新宿に行く』と言っていた。その日に駅周辺で罪が無いといってもいい4人もの人が心臓麻痺。そして、バスジャック・・・・偶然なんかじゃない!!キラは心臓麻痺以外でも人を殺せる!!これはもう、ひとつの事実!!』

097 (らいと)は、母から頼まれた父へ渡す着替えを届けるため、警察庁へやって来た。
098 南空 ナオミ 「どうしても警察本部の方に直接お話ししたいんです」
099 N(受付の男) 【せりふ】
「だから何度もいってる様にキラ事件の捜査本部は今、誰も居ないんです」
100 南空 ナオミ 「昨日、約束したのに誰も居ないなんて変じゃないですか」
101 夜神 月 『・・・・・・・・本部にだれも居ない・・・・携帯は留守電・・・・・どうなってるんだ?』

『それよりあの女性・・・あんなにくいさがって一体・・何を・・・』

102 N(受付の男) 【せりふ】
「変て言われてもねー・・・」
103 夜神 月 「刑事局、夜神総一郎の息子の月(らいと)です。父の着替えなんですが、居ない様ですし預かってもらえますか」
104 N(受付の男) 【せりふ】
「あっ、ライト君久しぶり」
105 夜神 月 「えっと・・・・すみません。受付の人は皆、同じに見えてしまって」
106 N(受付の男) 【せりふ】
「あっ、そうか、まあ我々はその他大勢だからね・・。ほら、去年ライト君の助言で解決した保険金殺人事件、あの時もぼくはここでこうして・・・」
107 夜神 月 「そうでしたか、失礼しました。・・・ここに名前を書けばいいんですよね」
108 N(受付の男) 【せりふ】
「やっぱりキラ事件もライト君なりに推理してるわけ?」
109 夜神 月 「ええ、うまくいけばL(エル)を出し抜けるかも・・・」
110 南空 ナオミ 『L(エル)を出し抜く!?・・・・』
111 夜神 月 「あの・・僕の父はキラ事件の本部の長(おさ)ですから、もしよければ直接取り次ぎましょうか?」

「もっとも今は携帯を切ってるみたいなので今すぐとはいきませんが・・・FBIの死でここの本部でもキラを恐れ、辞める者が続出して、今はゴタゴタしてるんだと思います」

112 N(受付の男) 【せりふ】
「ライト君、そういう事は一般の人には・・・」
113 夜神 月 「もう世間では噂になってる事ですよ。それにこの女性(ひと)は信用できる。目を見ればわかります」

「そして賢明で慎重な人です。FBIの事件で日本の警察内部にも問題がある・・・だから、本部に直接話したい。そこまで考えているんだ」

「そのうち留守電を聞いて父は電話をくれるはずです。その時でよければ直接お話しください。もっとも父も僕も信用して頂けないと無理ですけどね」

114 南空 ナオミ 「・・・・・・・いいんですか?」
115 夜神 月 「はい。父の携帯番号を教えるわけにはいきませんが、僕の携帯を通して話す分には」
116 南空 ナオミ 「お願いします」
117 死神リューク 「くくっ・・うまく釣れたなライト。しかし、この女が握ってる事次第では大変な事になるぞ」
118 夜神 月 『どうせろくな情報じゃない・・・しかし、念の為に早く聞き出しておかなくては・・・・』
119 警察庁のロビーの椅子に腰掛ける月(らいと)と女。壁にとりつけられた監視カメラが、ロビーの様子をじっと写している。
120 夜神 月 『まずいな・・警察庁内は監視カメラだらけだ・・・・』

「・・・・・僕の考えでは・・・キラは世間で言われているよりはるかに恐ろしい力を持っています」

121 南空 ナオミ 「・・・・・・・・私もそれに気付いてここに来たんです・・・・・」
122 夜神 月 「本当に気付いたのなら、あなたは凄い人だ。しかし、ここで話すのはちょっと・・・・今となっては警察内の方が危ない」

「・・・・外に出ましょう」

「人に聞かれたくない話は外を歩きながらとういうのが僕の持論で・・・すみません」

123 南空 ナオミ 「いえ」
124 夜神 月 「僕の考えではキラは・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・あの、一応お名前を聞かせてもらえますか。僕は夜神 月(らいと)。『夜』に神様の『神』に『月』と書いて『ライト』と読ませてるんです。変わってるでしょう?はは・・・・」

125 南空 ナオミ 「間木照子、『間あいだ』『樹木』の『木』に『照らす』子供の『子』です」
126 死神リューク 「クックックッ・・・」
127 夜神 月 「キラはたぶん、人を殺すだけでなく死ぬ前の行動も操れます」
128 南空 ナオミ 「!!・・わ・・私と同じ考えを持ってる人がいたなんて・・・・」
129 夜神 月 「じゃあ、あなたも?」
130 南空 ナオミ 「死の前の行動を操れる・・・それだけじゃない、私の考えが正しければ・・・・・キラは行動を操ったうえ、心臓麻痺以外でも人を殺せる」
131 夜神 月 『・・・・・・なんなんだ?この女・・・・・』
132 南空 ナオミ 「たぶんまだ誰も気付いていない・・・でもこの事を前提に調査すればキラは捕まると思ってます」
133 夜神 月 「心臓麻痺以外で殺人ができる・・・僕も考えてなかった事だ・・・・しかし、もしそれが本当なら・・・キラが本当に隠したい殺人は心臓麻痺以外で行なう・・・・・」
134 南空 ナオミ 「はい。私の知り合いがたぶんキラに会ってます」
135 夜神 月 「キラに会ってる!?・・・ははは・・・・失礼・・『キラに会ってる』なんて確かに警察で言っても信じてもらえないですよね」
136 南空 ナオミ 「・・・・はい。だからこそ警察本部の方に筋道を立てて詳しく説明したいんです」
137 夜神 月 「しかし会ったと言うのなら、その会った本人が話しに行くべきじゃ?」
138 南空 ナオミ 「もう、その知り合いはこの世にいません。日本に入ったFBI捜査官の一人でしたから・・・」
139 夜神 月 『キラに会ったFBI捜査官・・・ま・・・まさか・・・・』
140 南空 ナオミ 「そして彼は私のフィアンセでもあったんです・・・」

「彼は偶然バスジャックに巻き込まれたと言ってましたが・・・私の考えが正しければそのバスの中でキラに・・・・」

141 夜神 月 『・・・・!!・・・・レイ=ペンバー・・・』
142 南空 ナオミ 「どうしました?」
143 夜神 月 「・・・・・・・・・・・・・いえ、フィアンセを亡くされたなんて・・・」
144 南空 ナオミ 「だから私はキラを絶対許せない。キラを捕まえて欲しい。その気持ちだけなんです」
145 夜神 月 「・・・で何故バスの中でキラに会ったと?」
146 南空 ナオミ 「バスジャック犯はその2日前に銀行を襲った殺人犯でした・・そして最後は事故死です。その8時間前にはやはり指名手配犯がコンビニ強盗に入りナイフが自分に刺さって死亡・・1日に2人の指名手配犯がふたたび犯罪を犯し、そこで事故の様な死に方をする・・・あまり例のない事です」

「バスジャックに遭遇した8日後、彼は他の11人のFBI捜査官と共に死にました。そしてその8日間だけ都内で罪の軽い人でも心臓麻痺で20人以上も亡くなっているんです。そして、彼が死んだ後、その現象はピタリと止まった・・・・・」

「彼も・・・コンビニ強盗も・・・・バズジャック犯も・・・皆・・・・・キラが日本に入ったFBIを殺す為に利用されたとしか私には考えられないんです」

「コンビニ強盗はバスジャックをさせる予行演習だったと考えられない事もない・・・そしてバスジャックはFBIの情報をキラが彼から盗む為です」
147 夜神 月 「コンビニ強盗はバスジャック犯の死に方が心臓麻痺でない。だからキラが心臓麻痺以外でも殺せると?」
148 南空 ナオミ 「はい」
149 夜神 月 「少し話が飛躍しすぎてる様に僕には思えますが・・・・」
150 南空 ナオミ 「いいえ、バスジャック犯だけはキラに操られていたとしか考えられないんです」

「バスジャックの話を聞いた時からずっと気になっていて、機嫌のいい時にそれとなく聞いたんです。彼は相手の名前は言いませんでしたが・・」

「はっきり言ったんです。やむをえずバスの中で人にFBIのIDを見せたと」

「日本警察には極秘な調査でしたから『IDは出すな』と上から言われてたそうです。私にもバスジャックとIDの事は誰にも言うなと口止めしたくらいです。だから・・・日本に入ったFBIの存在は彼から漏れたとしか思えない・・・・」

151 夜神 月 「・・・・・・つまり、あなたのフィアンセに素性を明かさせる為に犯罪者にバスジャックをさせたって事か・・・そして、バスジャック犯は事故死・・心臓麻痺以外でも殺せるという事になる・・・・あなたしか知らない事実とフィアンセを奪われた執念からあなたはひとつの推理をした・・しかし、私情が絡み強引で裏付けのない推理になってしまっている・・・」

「しかし・・・この考えで調査する価値は十分あります。いや、キラという得体の知れない者を追っている今の警察にとっては重大な証拠になりうる」

152 南空 ナオミ 「は・・・はい」
153 夜神 月 「そして、この考えが正しければあなたが言った様にキラはすぐに捕まります。何故ならこの考えが正しければ・・・」

「あなたのフィアンセがバスの中でIDを見せた相手がキラなんですから」

『この女が僕より先に警察にこの事を話していたら・・・・どうやら死神じゃない方の神は僕の味方らしい・・・推理の過程がどうあろうとこの女の握っている事は真実。この情報が警察に渡れば警察はあっという間にキラ=夜神 月(らいと)の見解に辿り着く・・・・始末するしかない』

『警察庁の中でこの女の気を引くための言葉を喋った時は監視カメラに僕の口は映らない様にしてある。あの映像から僕の口を読む事はできない。それに監視カメラというのは防犯用で、そこで騒動が起きない限りスルーされていくものだ。この女がここですぐ死んだり事件に巻き込まれたりしなければ警察が、あの映像に戻って観る事はまずあり得ない』

154 南空 ナオミ 「どうしました?」
155 夜神 月 「あ、いえ・・・」

「あなたの話をもう一度よく検証してみたんですが、早くその線で調べてみるべきだと思えてきて・・・」

156 南空 ナオミ 「ほ・・・本当ですか」
157 夜神 月 「はい。・・・この話はまだ誰にも?」
158 南空 ナオミ 「はい、あなたに初めて・・・・」
159 死神リューク 「くくっ・・よかったな、しかし、どうやって消すんだ?ここですぐはヤバイだろ」
160 夜神 月 『そんな事リュークに言われなくてももう考えてあるさ』
161 (らいと)は小さなメモ帳くらいの大きさに切りとったデスノートの切れ端を取り出した。
162 死神リューク 「おっ、堂々と」
163 夜神 月 「そのバスジャック事件のあった日時、教えてもらえますか」
164 南空 ナオミ 「12月20日・・・朝顔丘前(あさがおおかまえ)11時2分発スペースランド行きです」
165 (らいと)は女の言葉をメモするような振りをして、

『間木照子。自殺。2004年1月1日午後1時15分より人に迷惑がかからぬ様、自分が考えられる最大限の遺体の発見されない自殺の仕方だけを考え行動し48時間以内に実行し死亡』

と、デスノートに書き込んだ。

166 死神リューク 「クククク・・・」
167 夜神 月 『この女、馬鹿じゃなさそうだ。これですぐに遺体は見つかるまい。もし先々見つかってもフィアンセの死という理由もある』
168 死神リューク 「ククククククククク・・・」
169 夜神 月 『いつもより「ク」が多いぞリューク。何がそんなにおかしい?』

「わかりました。もしよければ僕が伝えておきますよ」

170 南空 ナオミ 「一日中本部に誰も戻らないとも思えませんので、できれば自分で話そうと思ってます。あなたの意見を聞いて早く伝えるべきだと思いましたし」
171 夜神 月 「そうですね」
172 南空 ナオミ 「お気遣いありがとうございます」
173 夜神 月 『あと10秒・・・』

『この女がどんな死に方するのか観てみたいものだが・・この女の出現で他にやっておくべき事ができてそれどころではないな・・・』

『さ・・・1時15分だ・・死に急げ!!』

174 南空 ナオミ 「きっとキラは捕まりますよね?」
175 夜神 月 「えっ・・・はい・・・・」

『もう17分だぞ・・・』

『おかしい・・・何故この女動かない・・・・・?』

『死因に自殺と書いただけで有効なのは犯罪者でテスト済みだ。そう書くだけで時間通りに首を吊って死んだ。その状況もこの範囲なら操れる事は何回も実証してきた・・じゃ、何故・・・?』

『何故だ?何故ノートに書いた通りにいかない・・・・』

176 死神リュークは顔色を変えず不気味な笑い声を発している。
177 夜神 月 『リューク・・・・そういえばさっきノートに名前を書いた時も異様に笑っていたな・・・・・名前を書いた時だけじゃない・・名前を聞き出した時もリュークの笑い方には違和感があった・・・。どちらも名前に関わっていた時・・・』

『ハッ!・・・・偽名!!』

『それしかない!!リュークの目には女の本当の名前が見えている。それであんな笑い方を・・・この女、最初から妙に用心深かった・・・』

『そうだ、レイが死んだのはIDを見せた為だとこの女は信じている!!だから素性を明かさない様に行動してるんだ!・・・・・まずい・・・・一度偽名を使った相手から本当の名前を聞き出すのはより難しい・・・しつこく名前を明かせようとしても僕が怪しまれる・・・何よりも一度聞いているんだ。また聞くのは・・・偽名を使ったとわかっているのもおかしい・・・・・』

178 南空 ナオミ 「そろそろ戻ってみます。もう誰か居るかもしれません」
179 夜神 月 「えっ・・」

『く・・くそっ・・引き止めるのも不自然だ・・・』

「そうですね、誰か戻ってるといいですね」

180 南空 ナオミ 「はい」
181 夜神 月 『あっ・・・父から電話がかかってきたらこの女に取り次ぐ約束にあっていたんだ・・・・電話がかかってくるだけでアウトだ・・・どうする?』

『・・な・・何を考えているんだ僕は混乱しているぞ・・・携帯なんて電源を切ればいいだけじゃないか・・・』

『・・・・どうする・・・このままじゃ・・・・・落ちつけ・・・・たかが名前を確認するだけじゃないか・・・・』

『ハンドバッグ・・・ポケット・・・どこかに免許証や身分証明になる物は絶対持っている。・・・・・・相手は女だ。いざとなったら力尽くで・・・・・』

『馬鹿な・・正月で少ないとはいえ周りに人は居る。騒ぎになる事はできない。つい10分前、監視カメラにこの女と2人で映ってしまっている事を忘れるな・・・人気のない所に・・・何処に?どういう理由で?この警戒心の強い女を?』

『・・・・・・違う・・・・考え方を変えるんだ。僕ならできるスムーズに名前を聞きだせるくらい・・・・』

182 (らいと)の背後に、暗闇をまとうように死神リュークの姿がある。リュークが不気味な声で月(らいと)に囁く。
183 死神リューク 「ライト、いつでも目の取引はできるからな。コンタクトを入れるのと替わらない。数秒で済む」
184 夜神 月 『こんな女ごときの為に残りの寿命を半分にしてたまるか。・・・いや取引自体一生してたまるか』

『邪魔するな、黙ってろ死神!!』

185 南空 ナオミ 「あの」
186 夜神 月 「はい?」
187 南空 ナオミ 「まだあなたも警察庁に用が?あとは一人で大丈夫ですから・・・・」
188 夜神 月 「・・・・・・・・・・・わかりました・・・・」
189 女は月(らいと)に背を向けると警察庁へ向かって歩き出していく。
190 夜神 月 『女が警察庁へ行き誰かが戻っていたら僕は最後(おわり)だ・・・なんとかして本名を出させ始末しなくては・・・警察庁までもう3分もかからない・・・・』

『時間がない・・・こうなったら・・・・・』

191 (らいと)は前を歩く女へ向かって早足で追いかける。
192 夜神 月 「あの・・」
193 南空 ナオミ 「はい?」
194 夜神 月 「実はあなたが本部の人に直接話をする事は不可能なんです」
195 南空 ナオミ 「えっ」
196 夜神 月 『今、不自然でなくこの女の食いつきそうな会話をし続け、その中から名前を聞き出す突破口を開くんだ。もう、それしかない・・・・僕ならできる・・』

「大体、本部に誰も居ないなんて変でしょう?」

197 南空 ナオミ 「え・・・ええ、変だとは思いましたが・・・・」
198 夜神 月 「キラ事件の捜査本部は今、担当する人間がわからないシステムを取っているんです」

「捜査している人間が一般人にもわかる様な体制ではあなたのフィアンセを襲った悲劇と同じ事が起こってしまう・・・」

199 南空 ナオミ 「・・・・・わかります」
200 夜神 月 「だから警察庁(あそこ)で『本部にだれも居ない』と言われたんです。あなたが本部の人間に直接話をする事は永遠にできません」
201 女は不審そうな目つきで月(らいと)の顔を見つめる。
202 死神リューク 「ククッ・・・さすがうまい事言うなライト」
203 夜神 月 『名前を出させる方法を考えながら話してる途中だ。頼むから黙っていてくれリューク』
204 南空 ナオミ 「何故そんなに詳しく知ってらっしゃるんですか?」
205 夜神 月 「!・・・それは・・・・仕方ない話しましょう・・・・僕も捜査本部の一員だからです」
206 南空 ナオミ 「えっ、あなたが捜査本部の一員?」
207 夜神 月 「はい」

「今、本部の指揮はL(エル)が執っています」

208 南空 ナオミ 「はい、私もそう思ってます」
209 夜神 月 「L(エル)は本部の人員不足に困っていた・・・・キラを恐れ皆、辞めていったからです。僕はまだ高校生ですが過去に2件の事件を警察に助言し解決に導いた事を買われ、自分の好きな時に捜査本部に出入りし自由に捜査する事を認められています。つまり、今の捜査本部に居る者は信用できその能力を認められた少数の・・・選ばれた人間だけの捜査集団なんです」
210 南空 ナオミ 「では、あなたに話した事で私は捜査本部の人に・・いえ、L(エル)に直接話した事になりますね・・・・」

「・・・・・・・・これで十分です。L(エル)に確実に私の話が伝わる・・・それだけでもう十分です」

211 夜神 月 『十分じゃない!!まだおまえの名前を聞いてない!!』
212 南空 ナオミ 「私も2年前にアメリカのある事件でL(エル)の下で働いた事があるんです。もちろんパソコン越しの声に従っていただけですが・・・この人は信頼できる。どんな事件でも必ず解決してくれると確信しました」
213 夜神 月 「!・・L(エル)の下で働いた!?」
214 南空 ナオミ 「つい3ヵ月前まで私もFBIの捜査官でしたから」
215 夜神 月 『・・・・・・・これだ・・・これを利用するんだ・・・』

「そ・・・そうだったんですか。どうりでキラを追う姿勢や行動が素人とは違うと思ってました。核心に迫りながらも常に慎重で賢明だ。僕も見習いたいです」

216 南空 ナオミ 「この事件は私なりに警察も捜査本部の人すら疑ってかかるべきだと判断しました。でも・・・L(エル)なら信じられる」

「捜査本部へ行き、自分の名前、姿を確認してもらえばL(エル)に直接話せると思っていたんです」

217 夜神 月 「なるほど・・・・・しかし何故L(エル)に話そうとしていた事を僕に?」
218 南空 ナオミ 「本部の人に会わせてもらえずいらだっていた時に捜査本部の長(おさ)の息子さんと名乗る人が現れた・・・・そして・・・・・・あなたにはL(エル)に似たもの・・・近いものを感じました」
219 夜神 月 「・・・・・・・・・・一緒に捜査しませんか?」
220 南空 ナオミ 「えっ・・」
221 夜神 月 「あなたも捜査本部の一員になりませんか?そうすればL(エル)に直接話す事もいや・・・あなたの手でキラを捕まえる事だってできる」

「僕は事件解決への助言をしたというだけで父の推薦で捜査本部に入れました。そこまで人間が不足しているんです。しかし、誰でもいい訳じゃない。そう、あなたの様な人が必要なんです。あなたは一情報提供者に留まる存在じゃない。元FBI捜査官というキャリアがあり、その資質は捜査官以上だ。かつてはL(エル)の信用も得ていた」

「本部に入る条件はしっかりした身分証明と今、捜査本部に居る者の推薦、L(エル)の許可だけです。ここであなたに会えたのも何かの運命だ!僕があなたを推薦します!!」

222 死神リューク 「ククク・・・・最高だぜライト。人間の女は『運命』って言葉に弱いしな・・・・これならキャッチセールスの世界でも神になれる」
223 夜神 月 「あ・・・・すいませんつい興奮してしまって・・・・」
224 南空 ナオミ 「い・・・いえ」
225 夜神 月 「いくら好きな時だけ捜査に協力すればいいとはいえ人には色々都合がありますからね。それにアメリカにお住いの様ですし・・・・」
226 南空 ナオミ 「この春・・彼と結婚した後ずっとアメリカに居る予定でしたが彼が死んでしまって・・・・・自分でもこれからどうしていいのか・・・」
227 夜神 月 『よし・・・ここまで来たらもう少し引いて・・・・・』

「しかし、まだ若く綺麗な女性(ひと)だ。こんな危険な捜査には・・・・」

228 南空 ナオミ 「いえ!私には捨てる物は何もありません。キラを捕まえたい!その気持ち以外何もないんです!!」
229 決死の覚悟を感じとるかのように女の顔を凝視する月(らいと)。キラキラと輝く女の目が真剣な光を放っている。
230 南空 ナオミ 「一緒に捜査させてください」
231 夜神 月 「よかった。では身分証明になる物だけ見せてもらえますか?」
232 南空 ナオミ 「あ・・・あの」
233 夜神 月 「はい?」
234 南空 ナオミ 「実はさっき名乗った名前・・・・本当の名前じゃなくて・・・・ごめんなさい」
235 夜神 月 「えっ」

「・・・・・・大丈夫ですよ」

「大丈夫どころかそこまでしていたとは。あなたはやっぱり凄い人です。僕よりも一枚上手だ。この事もあなたの評価を高めますよ」

236 南空 ナオミ 「日本の免許証でよろしいですか?」
237 夜神 月 「はい」
238 女は、月(らいと)に免許証を手渡した。そこにははっきりと顔写真と名前が明記されている。女の名前は、南空ナオミ(みそらなおみ)といった。
239 夜神 月 『やっぱりこの女馬鹿だ!!こんな話に引っ掛かるなんて。本部にこだわらず警察に情報を渡せばキラは捕まっていたものを・・逆にキラの命の恩人だ・・・・・間に合った・・・・』

「FBIにいたのはいつ頃?」

240 南空 ナオミ 「2001年9月から2003年10月・・・・」
241 (らいと)はデスノートの切れ端にさっきと全く同じ様に書き込んだ。

『自殺。2004年1月1日午後1時25分より人に迷惑がかからぬ様、自分が考えられる最大限の遺体の発見されない自殺の仕方だけを考え行動し48時間以内に実行し死亡』

ただ違っているのは名前が『間木照子』から『南空ナオミ』に変わっている事と、時刻が10分遅くなって午後1時25分となっている事だった。

242 夜神 月 『まったくこんな女に二度手間取らされるとは』
243 南空 ナオミ 「あの何故そんなに時計を気になさってるんですか?」
244 夜神 月 「ああ・・・これ?これはですね・・・・」
245 再び腕時計に目をやり、秒針が5秒前になったのを確認し、月(らいと)は事も無げに南空ナオミに言った
246 夜神 月 「キラだから」
247 南空 ナオミ 「えっ・・・・どういう意味?」
248 驚愕の表情がだんだんと曇り、恐怖と困惑の入り混じった表情へと変化していく。
249 夜神 月 『1時25分!!スタート!!』
250 突然、南空ナオミは月(らいと)に背を向けて歩き始める。その背中に月(らいと)の声が追いかける。
251 夜神 月 「どうしました?」
252 南空 ナオミ 「しなくてはいけない事が・・・」
253 夜神 月 「あっ、もう父と電話がつながりますよ・・話さなくていいんですか?」
254 南空 ナオミ 「何もお話する事はありません」
255 夜神 月 『さようなら。南空 ナオミさん』
256 南空ナオミは、そのまま何処へともなく姿を消していった。

劇 終

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