SPASE ADVENTURE
COBRA

刺青の女 編

001 コブラはピラミッドの中の薄暗く細い石積みの通路を駈けていた。
  コブラ 「こりゃ迷路だぜ。どこをどう走っているのやら・・・壁に埋め込んだ発光石でボヤッと明るいのは助かるが・・・まいったなあオレは方向オンチなんだよなあ」
  コブラは足元に張られたピアノ線に足をとられ転倒した。
  コブラ 「ピアノ線か・・・そこらじゅう網の目のように張り巡らしてある・・・だれだこんなイタズラしたヤツは」
  サンドラ 「フッフフフフ・・・」
  コブラを雷撃が襲う。
  コブラ 「やばいぜ、急に避けるとピアノ線で体を切っちまう・・・サンドラめ、オレの動きを封じたつもりか」
  サンドラ 「フッフフフ・・コブラよ。そのピアノ線の中でわたしのサンダーガンをいつまで避けていられるかしら・・」
  再びサンドラの左腕につけられたサンダーガンから青白い稲妻がコブラを襲った。
010 コブラ 「この〜〜〜っ、とっ捕まえたらオシリペンペンしてやるぞ!!」

「このままじゃワイヤーでずたずたになるかさもなくば感電死だぜ」

「ん・・・!?・・こいつだ・・・!!」

  サンドラ 「クックククク・・とどめだ!」
  サンドラか雷撃を撃つ。コブラは柵の鉄柱を避雷針のように立て、サンドラの雷撃をそらせた。通路に張り巡らされていたピアノ線が衝撃で弾け飛ぶ。

サンドラは雷撃を連射する。しかし、コブラの立てた鉄柱が避雷針となって雷撃をことごとく地中へ放電した。

  サンドラ 「しまった。パワーエネルギーが切れた!!」
  コブラ 「サンドラめ、どうやらエネルギーが底をついたらしいな!」
  突然、床の一部がグルリとどんでん返しのように回った。コブラはその穴へ落ちていった。

床の裏面ではコブラが天井に打ち込んだ矢じりにぶら下がっていた。

  コブラ 「貴重品ってのは王の棺室にあるものだが・・つまり、ピラミッドの中心部ってわけだな」
  サンドラ 「ここがピラミッドの中心・・・あっ!王棺(おうかん)だわ。とうとう見つけたわ。この中にあるのね!」
  サンドラは王棺に手をかける。ズルズルと蓋をずらしていく。棺の中にコブラが寝そべっていた。
  コブラ 「なんだ遅いじゃないか。ずいぶん待ったぜ!」
020 サンドラ 「コブラ!!・・最終兵器は!?」
  コブラ 「あ・・あれね。あんたも苦労したのに残念なことしたな」

「見ろよ、ここにあるのは古代のプラチナ金貨に宝石の山さ。こいつが宝石に見えるかい。つまりそんなもんは初めから無かったってわけ」

  サンドラ 「そ・・・そんなはずは!!」
  コブラ 「キャハッ・・よせよ、そんなとこ触るなよ。くすぐったいから」

「ネルソンがなぜ最終兵器などと言ったか知らないが・・ともかくそいつがなくなった以上、オレたちは戦う理由も無くなったってわけだな」

「どうだい、ここは一つこの財宝を山分けってことで・・こいつなんか見ろよ。握りについてるサファイヤの大きいこと。王国が一つ買えるぜ」

  サンドラ 「フフフ・・・そうね。では、わたしはこれを頂くとするわ」
  コブラ 「ほう!みかけによらず欲が無いねえ。ルビーやダイヤが転がってるって言うのに・・ゆでタマゴとは・・」
  サンドラ 「フフフ・・・・そう、確かにこれはまだタマゴだわ・・・しかし・・!」
  コブラ 「うっ!光が・・・」
  サンドラの持つ、黒光りのするタマゴに目が開いた。
  サンドラ 「みるがいい。これから生まれでるものを!ファッハハ・・知らぬのか。これこそ火星古代史に伝わる伝説の最終兵器!」
030 コブラ 「な・・・なんだって!」

「なんだなんだ・・タマゴから刀が・・・!?」

  サンドラ 「探している物がどのような形をしているかもしらなかったとはあきれた話だわ!」
  サンドラは刀になったタマゴを振るい出口に向かって走り出た。
  サンドラ 「ホホホ、火星古代史の第3章を読み返してみることね」
  コブラ 「このーっ、まてーっ」
  サンドラ 「そこには最終兵器のことも・・そしてこの王棺室のこともくわしくのっててよ」
  コブラ 「開けろ!ちくしょうめ、腕ずくでも開けてやる」
  サンドラ 「バカな人ね。わたしはこの部屋にも詳しいといったはずよ」
  サンドラが壁にあるスイッチを押した。コブラの頭に砂の塊がボソッと落ちた。続けて、砂が雪崩のように降り注いできた。コブラは砂の海に沈んでいった。

ピラミッド入口の前に停止しているタートル号。その外装にはシールドが光っている。ブラックシープは砂にその姿を隠している。

  ドミニク 「スノウ・ゴリラの戦車は攻撃をやめたようね。砂に潜ったきり姿を見せないわ」
040 レディ  「シールドバリヤーのエネルギーはもう限界に来ているわ。切れたときに攻撃をしてくるつもりなのよ・・」

「しかし、残念ながらこちらには手のくだしようが無いわ。鉄分の多い砂のせいで探知機でも戦車を発見できないし・・・」

  ドミニク 「いったいコブラはどうしたのかしら。やけに遅いわね・・・」

「待ってられないわ。ちょっと様子を見てくる」

  レディ 「ドミニク!」
  ドミニク 「レディ、あなたは戦車から入口を守っていて!」
  レディ 「たしかに遅すぎる・・何かあったのでは・・・」
  ピラミッドの通路の中を駈けるドミニク。前方から歩いてくる足音に耳をすました。
  ドミニク 「あれはコブラじゃない。ハイヒールの足音・・サンドラ!!」
  サンドラ 「ドミニクか・・・・・・・・・・・・」
  銃を手にドミニクがサンドラと対峙した。
  ドミニク 「そのようすじゃ最終兵器は手に入らなかったらしいわね」
050 サンドラ  「クックク・・見えないの。目の前にあるんじゃないの」
  ドミニク 「えっ・・・!?」
  サンドラ 「フッフフフ、最終兵器が成長するさまを見せてやろう」
  ドミニク 「なんですって!・・」
  サンドラは右手に持った刀を体の前にかざした。再び目が開き、光を発する。突然、ドミニクをレーザービームが襲った。レーザービームはドミニクの左腕をかすめて飛び、通路の壁をえぐった。

衝撃でドミニクが吹っ飛び、頭を壁に強打して倒れた。サンドラの右手には銃剣に変化した最終兵器が握られていた。

タートル号のシールドが弱まり再び攻撃が開始された。

  レディ 「攻撃を開始したわね!・・うっ!バリアーが切れた!いかに超硬度を誇るタートル号の装甲ボディーといえども一ヶ所を集中砲撃されては危ない!」
  ブラックシープの砲弾がタートル号の外装を貫いた。内部で激しい爆発が起こりタートル号は炎に包まれた。

サンドラが最終兵器を手にピラミッドの入口前に出てきた。

  サンドラ 「よくやったわメルロ少佐。フフフ・・・これで邪魔者は全て消えたというわけね」
  コブラもサンドラの後を遅れて入口の通路近くを走っていた。
  コブラ 「酷い目にあったぜ。耳ん中まで砂が入っちゃった」

「おっ!!・・ドミニク!しっかりしろ!ドミニク!」

「腕の傷はたいしたこと無さそうだ。気を失っているだけらしいな。オーーッ、最近の女の子は重いこと」

「うう!・・・あれは!?タートル号が燃えている!」

060   真っ赤な炎に包まれるタートル号。コブラは入口のタラップを駆け上がる。タートル号の中も火の海だった。
  コブラ 「ちっ!自動消火装置もいかれちまったか!くそっ、なんとか手動で・・・」
  コブラが消火レバーを引き下げる。壁につけられてある消火ノズルから一斉に消化剤が吹き出し、またたくまに火が鎮火していく。その、消化剤のたち込める向こうにレディの姿があった。
  コブラ 「レディ、大丈夫か!」
  レディ 「ええ、わたしはね。でも・・・タートル号はかなりの深手よ」
  コブラ 「そうでもないさ。計器類はどうやら動いてるよ」
  ドミニク 「コブラ・・・・これは・・・」
  コブラ 「よかったぜ。気がついたようだな。気をつけろ、その辺に座るとオシリに火傷するぜ」
  ドミニク 「スノウ・ゴリラの戦車の砲撃を・・・!!」
  コブラ 「そういうこと。ちくしょうめ、火災保険に入っとくんだった」
070 レディ  「ところでコブラ、最終兵器はみつかったの?」
  コブラ 「それが・・・タマゴから剣が生まれてね。そいでもって・・・」
  レディ 「えっ・・なんの話・・・」
  ドミニク 「気味の悪い目のついた剣ね。サンドラはあれが最終兵器だと言っていたわ・・」

「しかし驚いたわ。なんと、その剣がレーザー・ガンに変化したのよ」

  コブラ 「なに・・・!!」
  レディ 「見て!レーザースコープにスノウ・ゴリラの戦車を捕らえたわ」
  コブラ 「あの戦車も、砂から出ればこっちのもんだ。お返しにスーパー・ブースターをお見舞いしてやる」
  レディ 「待って・・あれは?」
  ドミニク 「サンドラだわ!!」
  サンドラがレーザー・ガンを構えて戦車に向かって立っている。手に持つレーザー・ガンにある不気味な目が再び光を発していた。
080 コブラ  「あの目は・・・・!!」
  ドミニク 「そうよ、コブラ。わたしの時と同じだわ」
  コブラ 「おおっ、レーザー・ガンが戦車に変化した・・・」
  戦車へ変化した最終兵器が撃った砲弾によって、スノウ・ゴリラのブラック・シープは粉々に吹き飛んでいった。
  サンドラ 「クックククク・・・ん・・・!!タートル号か!?フフフ・・しぶといヤツめ・・火を消し止めたか」
  レディ 「コブラ・・今のを見た!」
  コブラ 「そうか・・・これでなぞが解けたぜ。タマゴから刀に・・・そしてレーザー・ガンに変化したわけが」

「ヤツはその目で見た兵器の能力を自分のものにできるんだ。それが最終兵器の恐るべき秘密だ!ヤツは進化する兵器なんだ」

「飛行するものを見れば飛ぶ能力を・・潜水するものを見れば潜る能力を・・・そして反物質放射砲と・・あいつはどんどん巨大な兵器へと成長を続けるんだ」

  ドミニク 「つまり・・最後にはいかなる兵器に対しても完全に無敵の存在となる」
  レディ 「そう・・・まさに絶対兵器ってわけね・・・」
  サンドラの乗った最終兵器の戦車から砲撃が開始された。タートル号からもスーパー・ブースターで応戦する。
090 コブラ  「スーパー・ブースターが弾き返されている!」
  サンドラ 「バカめ!最終兵器はいかなる攻撃でもはね返せるのだ!」
  ドミニク 「コブラ、あれを破壊するのは不可能よ。逃げるしかないわ!相手は戦車・・飛び立てば追ってはこれないわよ!」
  コブラ 「いや・・・ヤツはそれを待ってる。タートル号を潰すつもりならもうやってる・・・わざとはずしてるのさ」
  ドミニク 「えっ!」
  コブラ 「オレたちを飛び立たせるのが目的さ。最終兵器に飛行能力を持たせるためにな」
  サンドラ 「ホホッ、どうしたのコブラ。飛べ!飛ぶのよ!!」
  コブラ 「かといってこのままじゃいずれバラバラにされちまう。・・・・待てよ・・ヤツが次の変化をとげるまでにはたしか10秒ほどの間が・・・!?」

「ようし、イチかバチかその10秒に賭けてやる。タートル号発進!!」

  コブラが推進レバーを押し上げる。タートル号はロケットブースターから炎を吐き出し、急加速発進し、飛びたった。

変化完了まであと10秒・9秒・・。

  サンドラ 「ほほほ、飛び立ったわね・・」
100   8秒・・7秒・・

タートル号は真っ直ぐ戦車めがけて突っ込んでくる。

  サンドラ 「バカな!何をするつもりなのよ!!」
  6秒・・5秒・・4秒・・

タートル号は船底から巨大な二つのかぎ爪を出すと、戦車をつかみ上げおもいっきりピラミッドへぶち当てた。

戦車は勢いよくピラミッドの傾斜の辺を転がり落ちる。回転する度に、周りの岩を削り取り、砕いていく。

3秒・・2秒・・1秒・・

地面に着地した戦車の中からサンドラが転がり出た。

  コブラ 「間に合ったようだな・・たしかに最終兵器自体を破壊することはできなかった。だが、中にいる人間は別さ・・」

「ヤツはまだ成長しきってないひよっこで、中の人間を守る力が弱かったというわけだ」

「元のタマゴに戻る・・・兵器として使おうとする人間がいなければこいつはただのタマゴというわけか」

「ドミニク、銀河パトロールにこいつが必要かね」

  ドミニクは首を左右にふった。

コブラはおもいっきり、砂漠の彼方へ、タマゴを放った。タマゴの姿は、砂塵の向こうへ消えていった。

105 コブラ 「ハンプティ、ダンプティ・・砂の中・・・か」

その4−2 劇 終

刺青の女 編  完結

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