身体を機械にかえて、人間は死なないですむようになった。
そんな時代にも、やはり貧しい人々は存在する。彼らにとって、機械の身体は高価なものであり、買うことができなかった。そんな中、一つの噂が流れる。銀河鉄道999に乗れば、タダで機械の身体を貰える星に行けるというのだ。
少年・星野鉄郎は母と二人、噂をたよりに銀河鉄道の停車駅、メガロポリスに向かう。その途中、二人は機械伯爵による人間狩りに遭い、母は殺されてしまう。メガロポリスのスラムに居着いた鉄郎は、銀河鉄道のパスを手に入れる機会を伺い、実行に移すも失敗に終わる。しかし、そのとき知り合った謎の美女メーテルから、鉄郎は銀河超特急999号のパスをもらい受けて、メーテルとともに地球を旅立つのだった。
旅の途中、鉄郎は山賊アンタレスや女海賊エメラルダス、キャプテン・ハーロックとその親友大山トチローとの出会い、そして別れを通じて、次第にたくましく成長してゆく。
タイタンで老女から受け取った機械人間に有効な銃である『戦士の銃』で、ついに母の仇・機械伯爵を倒す鉄郎。目的を果たした鉄郎は、いつしか機械の体を憎むようになり機械の体をタダでくれるという惑星を破壊すると宣言する。 そして999号は終着駅に向かった・・・
星野鉄郎:   野沢雅子
メーテル:   池田昌子
クレア:   麻上洋子
車掌:   肝付兼太
キャプテン・ハーロック:   井上真樹夫
クイーン・エメラルダス:   田島令子
大山トチロー:   富山 敬
リューズ:   小原乃梨子
機械伯爵:   柴田秀勝
シャドー:   藤田淑子
酒場の主人:   槐 柳二
鉄郎の母:   坪井章子
ドクター・パン:   納谷悟朗

劇場版 銀河鉄道999
































THE GALAXY EXPRESS 999【劇場版】
人がこの世に生まれる前からこの星は輝き、人がこの世から去ったあともこの星は輝き続ける。
生きているとき人はこの星の海を見上げ、自らの行末
(ゆくすえ)を思う・・・。

人は皆、星の海を見ながら旅に出る。思い描いた希望を追い求めて。
果てしなく旅は長く、人はやがて夢を追い求める旅のうちに永遠の眠りにつく。
人は死に、人は産まれる。終わることの無い流れの中を列車は走る。
終わることの無いレールの上を、夢と希望と野心と若さを乗せて列車は今日も走る。
そして今、汽笛が新しい若者の旅立ちを告げる。

タイトルコール「銀河鉄道999」
挿入曲 GALAXY EXPRESS 999 メインテーマ【序曲】
高層ビルの林立するその狭間(はざま)、光もささない地の底に這いつくばるように人々が生きている。
その瓦礫にお尋ね者たちの手配書が張られている。キャプテンハーロック以下40人の海賊達の手配書である。

銀河鉄道旅行センター

【機械化人】
「そうだな、超特急999に乗れる無期限無制限のローカルまで有効な全線定期を」

旅券発行機から定期券が発券される。それを脇から少年が奪い取ると一目散に走り去った。
構内を逃げる少年。しかし、直ぐに機械化警官に捕らえられてしまう。暴れる少年の胸に吊るされたペンダントの鎖が切れ床に転がった。機械化警官に殴られた少年は朦朧
(もうろう)としながらペンダントの行方(ゆくえ)を追った。
そのペンダントを拾い上げた女を見た少年は母の面影をダブらせた。
星野鉄郎 「かあさん・・・」
駅の構外へ走り出た少年はジェットスケボーで逃げるが、機械化警官はどこまでも執拗(しつよう)に追いかけてくる。
廃ビルの一角に逃げ込んだ少年を、駅の構内で出会った女が待っていた。
星野鉄郎 「・・ぺ・・ンダントを返・・せ・・」

少年は崩れるように意識を失った。女に身を預けるように倒れこむ。その拍子に盗んだ定期券がビルの外へと落ちていった。少年を追う機械化警官の声がビル内にこだまする。女は少年を抱え、エレベータの中へ引っ張り込んだ。
エレベータは女と気絶した少年を乗せ、上昇してゆく。

ベッドに横たわる少年の額に、女がドリームセンサーのチップを貼り付ける。

雪の平原、空から純白の粉雪が降り続けている。山の稜線
(りょうせん)の向こうに消える、銀河鉄道の姿を眺めている母と子の姿があった。
鉄郎の母 「メガロポリスに宇宙超特急の最終列車が着いたのね」
星野鉄郎 「うん・・・あっ・・また降ってきた。お〜〜寒い」
10 鉄郎の母 「機械の身体だったら寒さなんて気にしなくても良いのにね」
星野鉄郎 「機械の身体だったらとっても長生きできるんだね」
鉄郎の母 「そう、部品さえ気をつけて交換を続ければ永遠に生きられるって」
星野鉄郎 「永遠に?」
鉄郎の母 「お父さんさえ生きてたら、お前にだって機械の身体を買ってあげられたのに」
星野鉄郎 「僕達もメガロポリスへ行って999に乗らなきゃ」
鉄郎の母 「でも、乗車券を買うのはお金がたくさんいるのよ」
星野鉄郎 「判ってるよ。僕が働くからさ、ジャンジャン稼いで999に乗って、そして機械の身体をただでくれるっていう星へ行くんだ(笑)」
鉄郎の母 「(笑)まァ、鉄郎ったら。ずいぶん張り切ってるのね」
星野鉄郎 「(笑)そうだよ、僕の夢はでっかいんだ。さァ、急ごうよ!」
20 雪が激しく降り始める。振り向く鉄郎の眼に、暗闇に光る赤い光の点が見えた。
鉄郎の母 「伏せて!鉄郎!!人間狩りよ!!」
蒼白い光の帯が幾条も伸び、暗闇を切り裂いた。光の帯が鉄郎の母の心臓を撃ち抜いた。赤い血がほとばり、そのまま雪原にばったりと倒れる。雪原に赤い血がドクドクと流れ出し、白い雪を真赤に染めていく。
星野鉄郎 「・・・お母さん・・・」
鉄郎の母 (か細く)「機械化人は時々、人間狩りを楽しむのよ・・・」
星野鉄郎 「人間狩り?」
鉄郎の母 (か細く)「ここは機械伯爵の領地、狩猟区よ・・・だから人間は殺されるための獲物なの・・」
星野鉄郎 「しっかり・・・しっかりするんだ。お母さん・・・」
鉄郎の母 (か細く)「お母さんは・・・もう・・だめ・・・さあ、早く逃げて・・・」
星野鉄郎 「いやだ!一緒に逃げるんだ・・・う・・くく・・」(母を引っ張る)
30 幼い鉄郎の力では倒れた母を引っ張っていくだけの力は無かった。
鉄郎の母 (か細く)「・・・これからは鉄郎独りよ・・・でもお母さんは信じてる・・・鉄郎は強い子だもの・・・きっと頑張って機械の身体を・・・!ックァ・・・!」

母の意識は薄れ、鉄郎に伸べられた手が力なく地面に落ちた。鉄郎の悲痛な叫び声が荒れ狂う雪原(せつげん)にこだました。
しばらくして機械伯爵が共を連れてやってきた。
機械伯爵 「確かこのあたりだったが・・・」
(機械化人)
「伯爵!あそこです!」
機械伯爵 「うむ」
機械伯爵が倒れた鉄郎の母の衣服を剥ぎ取った。
機械伯爵 「う〜む、素晴らしい。こんな綺麗な人間は見たことが無い。素晴らしい獲物だ。私の居間の壁に飾ろう。生涯、誇りに出来るコレクションだ」
「行くぞ!時間城へ戻って祝杯をあげよう」
星野鉄郎 「時間城・・・」
雪に埋もれながら鉄郎はじっと機械伯爵を睨みつけている。

機械伯爵は戦果を喜び馬を駆け走り去った。一人残された鉄郎は広大な雪原の真ん中で悲痛な叫び声をあげた。

鉄郎が眼を覚ます。柔らかなベッド。暖かく調整された空調。そして頭上からは、ランプが柔らかな光を放っている。
40 星野鉄郎 「ん?・・・っは・・・ここは一体どこなんだ・・・?」
鉄郎はベッドを降り、窓を遮っているカーテンを開けた。そこには超高層ビル群が眩いばかりの光を放っていた。
星野鉄郎 「うわァ〜〜メガロポリスだ・・はァ〜〜・・・」
どこからか女の声がする。それは誰かと話しをしているようだった。
メーテル 「ええ、そうです。眠っています」
ドクター・バン 「メーテル。わかった。どんなことがあってもお前はあの少年から離れてはならない。影のようにつきまとい最後まであの少年と行くのだ。誰にも決して悟られてはならない。それがお前の役目だ、メーテル」
メーテル 「はい、わかっています」
星野鉄郎 「あの少年って、俺のことかな・・・」

鉄郎はシャワールームの扉を開けた。振り向くメーテルの顔を見て再び鉄郎は驚いた。
星野鉄郎 「か・・・母さん・・・」
50 メーテル 「あら?どうかしたの?」
星野鉄郎 「い・・いや・・あの・・・変な話し声が聞こえたもんで・・・その・・・」
鉄郎は。しどろもどろになりながら、シャワールームの扉を閉めると部屋へ戻ってきた。
星野鉄郎 「確かに聞こえたんだけどなあ・・・」
「それにしてもあの人。何もんなんだ・・・人間の身体はしていたし・・・母さんに生き写し・・・」
メーテル 「何を独りごと言ってるの?」
星野鉄郎 「えっ?・・いや・・今、母さんの夢を見てたんだ」
メーテル 「夢?そのドリームセンサーのせいね」
「これは眠っている人の夢を見ることが出来る機械よ」
星野鉄郎 「じゃ、俺の夢を?」
メーテルは鉄郎に近づくとだまって頷いた。
星野鉄郎 「君はいったい・・・」
60 メーテル 「私の名前はメーテル」
星野鉄郎 「メーテル・・・」
メーテル 「あの時、放っておいたら警察に渡されるところだったわ」
星野鉄郎 「いっ・・・!」
「泥棒みたいな事をしたのは良いことじゃない。それぐらいは判ってるさ・・・でも・・・・」
メーテル 「どうしても999に乗りたかった・・・」
星野鉄郎 「ああ・・・俺は機械の身体を手に入れたいんだ」
メーテル 「機械の身体になってどうするの?」
星野鉄郎 「機械伯爵を殺すのさ!」(噛み締めるように)
メーテル 「・・・私がパスをあげましょうか?・・・その前にこれを返すわ」
星野鉄郎 「・・あ・・・」
70 ペンダントの中には哲郎の母の写真が張りつけてあった。
星野鉄郎 「・・・母さん・・・」
メーテル 「あなた、そんなにお母さんのこと・・・」
星野鉄郎 「当たり前じゃないか!メーテル、君にだって母さんがいるだろ!だったら人の気持ちくらい判っても・・・あ・・・まさか・・・君も母さんが?」
「・・・あ・・・そうか・・・メーテル、最初会った時、君が母さんにあんまりよく似てたんでびっくりしたんだ」

メーテルは窓際へ歩いていくと黙ってメガロポリスの夜景を眺めた。
星野鉄郎 「999のパスをくれるって言ったな・・・俺をからかってるんじゃないだろうね?」
メーテル 「機械の身体になって機械伯爵と戦うために999に乗りたいの?」
星野鉄郎 「君は、キャプテンハーロックやエメラルダスの事を知ってるだろ」
「ハーロックやエメラルダスのように自由な海に出たいのさ。機械の身体になって永遠に生きて永遠に星の海を旅したい。それが男ってもんだろ」
メーテル 「ハーロック、エメラルダス・・・あなたたち若者の憧れね」

メーテルは鉄郎に999の無期限パスを手渡した。
80 メーテル 「はい」
星野鉄郎 「え・・・」
メーテル 「本物よ」
星野鉄郎 「・・・本当にもらっても良いのかい?」
メーテル 「条件があるの」
星野鉄郎 「条件?」
メーテル 「あなたはアンドロメダの機械をただでくれるという星へ行く。私を一緒に連れて行ってくれるならパスをあげるわ。それが私の条件よ」
星野鉄郎 「・・・あ・・そうか、女の一人旅は物騒だもんね」
メーテル 「じゃ、連れて行ってくれるのね」
星野鉄郎 「うん」
90 メーテル 「良かった。じゃ、ここにあなたの名前を書き入れるのよ。そうすればパスはあなたの物になるわ」
「さぁ、名前を書いて」

「・・・星野鉄郎、男らしい名前ね」
星野鉄郎 「うん、父さんがつけたんだ」
メーテル 「そう、お父さん・・・」
星野鉄郎 「はぁ〜これで999に乗れんのかぁ・・・これで!」
『例えメーテルが魔女だって死神だって、何だっていいや。999に乗って機械の身体をくれる星にいけるなら、それでいい」
その時、ドアが激しく叩かれ、機械化警察の声がドアの向こうからした。

(機械化警察)
「開けろ!生身の人間の犯罪人をかくまっているだろう!判っているぞ!」

扉のノブの部分が赤く焼け、溶けていく。ドアに向こう側から機械化警察がドアを焼き切っていた。
メーテル 「鉄郎、良いわね。一度999へ乗ったら最後、地球へは戻れないのよ」
「アンドロメダまで行くか。途中で降りて永遠に未開の惑星を彷徨って一生を終わるか。鉄郎の運命はそのどちらかよ」
「後悔しないわね?」
星野鉄郎 「するもんか!今は999に乗れるだけで良い!」
ドアが焼け切られ機械化警官隊が突入してきた。と同時に、メーテルのイヤリング型閃光弾が眩い光を発した。

ここは銀河鉄道ステーション
(アナウンス)
「アテンションプリーズ、アテンションプリーズ。ご案内申し上げます。午前零時発アンドロメダ行き超特急999号にご乗車の方は99番ホームにお急ぎください。零時18分発、火星行き郊外線は25番ホーム、2時15分発大マゼラン行きは75番ホーム・・・」
星野鉄郎 「えぇ〜これが有名な999号?」
メーテル 「そうよ、驚いた?」
100 星野鉄郎 「だってさ、こんな旧式の列車だとは・・・」
メーテル 「大丈夫、対エネルギー無限電磁バリアに守られた超近代化宇宙列車なんだから。見かけは心休まる大昔の蒸気機関車に仕立ててあるだけなのよ」

999の機関車のコンピュータ室を案内するメーテル。
星野鉄郎 「へぇ・・」
メーテル 「どう?安心した?
星野鉄郎 「うん」
時刻は午前零時を迎えようとしており、構内に発車を知らせるベルが鳴り響く。
メーテル 「二度と帰らないお客のためには、こんな大昔の型の列車じゃないと駄目なの」
星野鉄郎 「俺は機械の身体をもらって必ず帰ってくるさ」
メーテル 『男の子が・・・若者が一生に一度は迎える旅立ちの日が来たのね。負けることなど考えてもみない。そして、生涯忘れることの出来ない旅立ちが・・・』
『鉄郎・・・あなたの旅が今始まったのね・・・』
110
午前零時、999は汽笛をあげる。、メインコンピュータに光が走る。動輪がゆっくりと回り、重い機関車の身体をゆっくりと進め始める。
999は徐々にスピードを速め、ホームから離れていく。
星野鉄郎 「とうとう・・・とうとう俺は行くんだ・・・とうとう・・・俺は・・・俺は・・・!」
999は汽笛を鳴らしつつ線路を力強く走り続ける。やがて線路は遥か上空へと伸びていく。999はもくもくと力強い煙をはきながら、その身体を空中へと躍らせる。999は汽笛を轟かせながら宇宙へと旅立っていった。
挿入歌 テイキング・オフ
メーテル 「今のうちによく見ておくと良いわ。今度見るときは機械の目でしか見ることが出来ないから」
星野鉄郎 「もういいよ見なくても・・・」
メーテル 「悲しい想い出も、辛かった事もいつか懐かしくなる時があるわ。見ておけばよかったと思う時が・・・」
星野鉄郎 「そんなの年取ってから後悔すれば良いさ」
『今の俺は機械の身体が欲しいだけさ・・・希望を叶えてくれる機械の身体が・・・』

999の汽笛が宇宙空間にこだまする。青い地球の姿は徐々に小さくなっていった。
車掌 「次の停車駅はタイタン・・・タイタンです」
「どれくらいの大きさかと申しますと直径5800km、自転周期は16日」
メーテル 「各駅での停車時間は、その星での1日と決められているの。だから1日が10時間の星もあれば50時間の星も・・・」
120 車掌 「あるわけです。ハイ」
「つまり自転の速度は違うものでありますから」
星野鉄郎 「はぁ〜・・」
メーテル 「停車中はその星を自由に見物できるから退屈しないわ。でもね、発車時間に間に合わず乗り遅れたら、その時は死ぬことになるわよ」
星野鉄郎 「死ぬ!?」
車掌 「置いてきぼりにされてしまうんです。ハイ」
星野鉄郎 「はぁ〜・・・ずいぶん厳しいんだなあ・・・」
車掌 「ハイ、銀河鉄道は規則を守るのが取り柄でして・・ムフ・・フハハハハフフフフフ・・・・・」(誇らしげに)
メーテル 「タイタンは太陽系で一番美しいところ、そして恐ろしいところ」
「昔は、アンモニアの海に液体メタンの島が浮いたような、他の星の常識が全く通用しない自然を持ったタイタン。それを人間は長い年月をかけて緑の星に変えたのよ。血の滲むような努力をして」
999はタイタンの停車駅に着陸する。
駅を出た鉄郎とメーテルを突然、エネルギービームが襲う。メーテルは直撃を受けその場に倒れた。そこへ男たちがばらばらと現れ、メーテルを連れ去ってしまった。
星野鉄郎 「メーテル!待てぇ!!」
130 メーテル 「鉄郎来ては駄目!来ないで!!」

追いかける鉄郎の至近距離で、エネルギー弾が炸裂する。鉄郎はその反動で吹っ飛ばされ意識を失った。

眼が覚めると鉄郎はベッドの上にいた。
ごそごそと起き上がり部屋を出ると年老いた女が食事の用意をしていた。
トチローの母 「気がついたかい?」
星野鉄郎 「えっ?・・・ここは・・・」
トチローの母 「あたしの家さ」
星野鉄郎 「メ・・・メーテルはどこです!」
トチローの母 「メーテル?ああ、あんたのお連れさんかい?」
「さらわれたよ。ブドウ谷の山賊に」
星野鉄郎 「山賊!?」
トチローの母 「冷めないうちに、さぁ、おあがり」
星野鉄郎 「さっき駅の前で人が殺された。メーテルがさらわれてもみんな知らん顔だ。なんて所なんだいここは」
140 トチローの母 「ここタイタンでは、何をしても良いんだよ。個人の望むままにしたいと思ったことを、したいように自由にやっても良いんだよ。それがこの星の法律。・・・楽園法」
星野鉄郎 「楽園法?」
「じゃあ、メーテルはどうなるんだ」
「ブドウ谷はどこにあるんです!」
トチローの母 「助けに行った所で自分の命をなくすのが落ちだよ」
星野鉄郎 「メーテルにもしもの事があった時は、助けるって約束で999に乗せてもらったんだ。だからメーテルを助けなきゃ!ブドウ谷はどこです?どこにあるんです!」
トチローの母 「ふぅ・・・ここから川を下ってブドウ谷へ行く。あれに乗っていくと良い」
老婆は家の前の川に浮かぶ小さな木の船を指さした。
星野鉄郎 「ありがとう」(駆け出そうとする)
トチローの母 「あっ、お待ち」
星野鉄郎 「えぇ・・!」
トチローの母 「土星からの光は強いんだ、土星射病になるといけないから。それにこれを持ってお行き」
150 星野鉄郎 「この銃は・・・?」
トチローの母 「お前を守ってくれるだろうさ」
星野鉄郎 「・・・こんな立派な銃を?」
トチローの母 「さ、急がないと助け出さないうちに陽が落ちてしまうよ」
鉄郎は老婆からもらったマントと帽子をかぶり、腰に銃を下げると舟をこぎ川を渡って行く。見送る老婆はじっとその旅立ちを眺めていた。
星野鉄郎 「いくら陽気が良い星だからって、好き勝手なことをして良いなんて、とんでもない世界を人間は作ったもんだ全く」

川を下っていくと、川の向こうから小さな女の子を掴んだ昆虫型の飛行艇が飛んできた。中釣りになっている女の子は泣きながら助けを求めている。鉄郎はとっさに老婆からもらった銃を腰のホルスターから引き抜くと狙いを定めて引き金を引いた。蒼白い閃光は一直線に飛行艇めがけて伸びると、飛行艇を粉々に粉砕した。鉄郎は銃の反動で川の中へ吹っ飛んでいた。
無骨な男が川の中から泣きじゃくる女の子を抱きながら上がってくる。
アンタレス 「良かった、無事で良かった・・・む!!」
男は銃を構える鉄郎の気配を感じ咄嗟に身をかがめる。鉄郎の銃が火をふいた。レーザーは巨大な木の幹に丸い穴を開けた。驚く男の目の前に、木陰から胸を打ちぬかれた機械化人が現れ、そのままうつ伏せにばったりと倒れた。銃声を聞きつけ山賊たちが駆けつけてくる。
アンタレス 「かすり傷だい、心配するなぃ」
160 星野鉄郎 「メーテルはどこだ!」
鉄郎が銃を構える。気色ばむ山賊たち。
アンタレス 「慌てるんじゃねえ!その坊主は命の恩人だ」
「おい坊主、貴様その戦士の銃をどこで手に入れた?」
星野鉄郎 「戦士の銃?」
アンタレス 「機械人間を倒せるたった一つのコスモガンさ」
星野鉄郎 「えっ・・・機械人間を倒せる唯一つの銃・・・これが!」
アンタレス 「一体どこで手に入れたんだ!」
星野鉄郎 「どこでだって良いだろう!それよりメーテルを返せ!」

(山賊A)
「おい坊主、口の利き方に気をつけろい!」
(山賊B)
「その名を聞けば泣く子も黙るブドウ谷の山賊アンタレス様よ!ようく覚えておくんだ坊主!」
星野鉄郎 「坊主、坊主って言うない!俺にも星野鉄郎って名前があらぁ!」
170 アンタレス 「メーテルとか言ったなぁ、あの女・・・おめぇ、惚れてんのか?」
星野鉄郎 「そ・・そんななんじゃないよ。俺はあの人を守る約束で999に乗せてもらったんだ」
アンタレス 「999だと!貴様もやっぱり機械の身体になりたいのか!」
星野鉄郎 「機械伯爵を倒すためだ!」
アンタレス 「・・・何ィ・・・」
星野鉄郎 「母さんの仇を討つんだ!」
アンタレス 「おい!こっちへこい!」
星野鉄郎 「いたた!!放せ!痛い!放せったらぁ!!放せよう!!」
鉄郎はアンタレス達、山賊の住むアジトへと連れて行かれた。そこは地上高く聳え立つ岩山をくりぬいた堅牢な要塞だった。
アンタレスは鉄郎に透視台に乗るように言った。
アンタレス 「コイツで透視すりゃあ人間の身体かどうか直ぐにわかる」
「人間のふりをして俺を殺しにもぐりこんで来てもな」
180 透視台の上に立つ鉄郎。足元から照らし出される光によって、前面パネルに鉄郎の骨格が映し出された。
アンタレス 「はぁ〜〜なるほど。こいつぁ、正真正銘まじりっけなしの人間様の身体だぁ・・アハハハハハハ!」
星野鉄郎 「メーテル・・・」
メーテル 「鉄郎!」
アンタレス 「お前が機械人間だったらこの場でバラバラにしてくれるぞ」

透視台の上に立つメーテル。前面パネルにメーテルの骨格が淡く映し出される。じっと見つめるアンタレス。そして鉄郎。
アンタレス 「あ・・い・・い・・やあ・・・わ・・悪かったなぁ。恥ィかかせちゃって・・・アハハ・・確かにあんたぁ、人間だ。いやぁ、これ以上立派な人間はいねえ。すまん、許してくれ」
「ア・・アハハ・・お詫びに俺の骨格も見せよう」
星野鉄郎 「・・・こ・・これは!」
アンタレス 「あっちこっちの戦場やら強盗やらの修羅場で、身体ん中にめり込んだエネルギー弾の不発弾よ」
星野鉄郎 「だったらいつか爆発するかも・・・」
190 アンタレス 「そんな時は俺は何にも残さず消し飛ぶだけよ・・・・ハハハハハ1!」
アジトの中では小さな子供たちの笑い声が渦巻いていた。
アンタレス 「ここは、こいつらの家さ。子供たちの天国だ」
星野鉄郎 「子供たちの天国・・・この子供たちは?」
アンタレス 「みなしごたちよ」、
星野鉄郎 「みなしご・・・」
アンタレス 「そう、お前のように親を機械伯爵に殺されたな・・・」
「機械伯爵の居所を知っているか?」
星野鉄郎 「時間城だってことは・・・」
アンタレス 「・・・時間城のある星は誰にもわからん・・・しかし、一人だけ知っている奴がいるって事だ」
星野鉄郎 「誰ですそれは?」
200 アンタレス 「女海賊エメラルダス」
星野鉄郎 「エメラルダス!?」
アンタレス 「あんな恐ろしい女はいねぇ・・・向こうの気分次第、こっちの口の聞き方次第でいつ首が飛ぶか判らないんだからな」
星野鉄郎 「エメラルダスにはどうすれば会えるんだ?」
アンタレス 「心配するねぇ、向こう様から現れるよ、必ずな」
「これだけは教えてやろう。機械伯爵に会ったらいいか、撃たれる前に撃て。相手が涙を流して許しを乞うても容赦なく撃て、たじろいだり怯んだりしたらお前の負けだ。それが宇宙で生き伸びる唯一の道だ」

アンタレスに別れを告げ、鉄郎はメーテルを連れて川の上流の老婆のいる家まで戻った。桟橋で老婆が待っていた。
トチローの母 「よくまぁ無事に帰って来れたねえ」
星野鉄郎 「ありがとう、この銃のおかげで助かりました」
トチローの母 「その銃は、これから先お前さんには必要だよ。持ってお行き」
星野鉄郎 「これは戦士の銃だと聞きました。お婆さんの大切なものなんでしょ」
210 トチローの母 「お前さんにあげるよ」
星野鉄郎 「ほんとに?」
トチローの母 「それはね、あたしのたった一人の息子の物なんだよ。その銃も、その帽子も何度も死線を超え、危険を潜り抜けて来たものなのさ・・・そしてね、息子はそれを置いたまま行っちまったよ」
「お前さんもいつか時がきたら一度はお父さんやお母さんの所へお帰り。死ぬまでに一度はね」
星野鉄郎 「あなたの息子さん、なんていう名前なんですか?」
トチローの母 「名前は・・・あたしの作ったそれと同じ帽子を被ってるよ・・・宇宙の何処かで会ったら・・・」
星野鉄郎 「会ったら・・・その時は、お母さんが待ってるって必ず伝えます」
トチローの母 「でも、あたしには判ってるんだよ。あの子はもう2度と生きて家へ帰ってくる事はないってね。それでも行くなとは言えないんだよ。判ってるのにね・・・。母親なのにね・・・。男の子だもんね。息子は・・・男の子を産んだんだから仕方がないよね」
鉄郎とメーテルを乗せ999がタイタンを旅立って行く。汽笛を青く輝く原始の森に轟かせながら・・・。
車掌 「次の停車駅は冥王星、冥王星」
「停車時間は6.39日・・・です」

白く凍りつく列車の窓に息を吹きかけ、鉄郎は窓の外を覗きこむ。
220 星野鉄郎 「ハ〜〜〜・・・あれが冥王星か・・・」
メーテル 「宇宙を旅する人達は、迷いの星と呼んでいるわ」
星野鉄郎 「迷いの星?」
メーテル 「寒くて永久に凍りついた最果ての惑星」
星野鉄郎 「ふうう・・・だからこんなに寒いのか・・・」
メーテル 「あの星で凍り付いている旅人の魂がそうさせているって、言う人もいるわ」
メーテルは着ているコートの前をはだけ、鉄郎を優しく包み込む。
メーテル 「じっとして、動かないで」
母の胸に抱かれるような安心感と温もりを感じ、鉄郎の心は逝ってしまった母の面影を思い出していた。
星野鉄郎 『母さんが吹雪の中でこうやって暖めてくれた。こうしていると・・・母さんといるみたいだ・・・」
230 冥王星、凍てつく氷の大地に降り立つ鉄郎とメーテル。ホテルの前でメーテルが鉄郎に話しかける。
メーテル 「鉄郎。私は少しすることがあるから先に行っていて」
星野鉄郎 「えっ?」
メーテル 「それから決して街の外へ出ないことよ。街の中なら安全だわ」
星野鉄郎 「はは・・・銃があるから平気だよ」
メーテル 「ふふ・・銃なんて、寒さで使えないわ」
鉄郎は歩いていくメーテルの後をそっとつけていく。荒涼とした凍てつく氷の大地にひざまつき、メーテルが泣いている。
鉄郎は氷の階段を下りる。足元の氷の中に眠る、沢山の人間の姿を見て驚いた。そこへ蒼白い顔の女が現れた。
星野鉄郎 「・・・き・・・君は?」
シャドー 「あたしの名はシャドー。氷の墓の管理人」
星野鉄郎 「氷の墓?」
240 シャドー 「病気で死んだ人や、ここで機械の身体に替えて、元の身体を置いていった人達の抜け殻の眠る所」
星野鉄郎 「人間の抜け殻・・・」

シャドーが鉄郎の身体に手を回す。その手は驚くほど冷たかった。
星野鉄郎 「う・・うわっ!冷たい!!」
シャドー 「いらっしゃい、あたしの元の身体を見せてあげる。あたしはここで機械の身体になった。他所の星へ行ってみたけれど元の身体が懐かしくて、元の身体の側に居たくて、ここに戻って管理人をしているの」
星野鉄郎 「・・放せ・・・体が・・・凍っちゃうよ・・・放せよぉ・・・あ!」
目の前に氷の棺に納められた人間の姿があった。
シャドー 「綺麗でしょう、あれが昔のあたし・・・機械の身体ではあれ以上には造れなかったわ。どんな顔にも満足できないから、とうとう顔は造らなかったわ・・・だから人はあたしをこう言うの。迷いの星のシャドーって」
髪をかきあげるシャドー、その顔は無く、のっぺらぼうだった。驚く鉄郎。戦士の銃を抜いたが、寒さで指がかじかんで銃を落としてしまった。
星野鉄郎 「うわ!放せ!俺をどうする気だ!放せ!!」
250 シャドー 「あ〜、あたしの体の側に居て欲しいだけ、永遠に!!」
星野鉄郎 「い・・嫌だ!放せ!!」
シャドー 「お休み坊や。お休み・・・」
鉄郎の身体がだんだんと凍え、ガタガタと小刻みに震えはじめる。鉄郎の意識が遠のき始めたその時だった。
メーテル 「やめなさいシャドー!」
「シャドー!あなたは自分からすすんで機械の身体に替えたのよ。寂しいからと言って人を道連れにするのはいけない事だわ。あなたは元の身体に戻る勇気もない。永遠の命か、限りある命か、そのどちらも選ぶ勇気も無い」
シャドー 「言わないで、メーテル・・・」
メーテル 「帰りましょう鉄郎」
メーテルに促され、その場を去る鉄郎。氷の棺の前でシャドーはいつまでも泣き続けていた。
メーテル 「いつか機械の身体に飽きた人達が帰ってきて、元の身体に戻るかもしれない。あそこに身体が眠っている人たちは機械になって身体を失ってしまった人達よりは、まだ幸せかもしれないわ・・・」
星野鉄郎 「まるでメーテルまでが機械人間みたいな言い方するんだねえ」
260 メーテル 「シャドーを見ているとそんな気がするのよ」

冥王星を後にして飛び立つ999をシャドーが、その顔の無い顔を空に向け、いつまでも見送っていた。

列車の中、目の前の座席で眠るメーテルをじっと見つめている鉄郎。
星野鉄郎 『メーテルは一体、氷の墓場で何を見ていたんだ・・・メーテルってどんな過去があるんだ・・・あ、そうだ・・・」
鉄郎はメーテルからもらったドリームセンサーを取り出し、メーテルの額にそのチップを当てようとする。
星野鉄郎 『メーテルの過去を知ってどうするうって言うんだ・・・知らなくったって・・・そんなもの知らなくたって良いじゃないか・・・』
鉄郎はドリームセンサーを投げ捨て足で踏みつける。センサーはもろく二つに割れた。その音にメーテルが僅かに反応する。
星野鉄郎 「や・・・やばい・・」

鉄郎は慌てて座席に座り、狸寝入りをする。足元に壊れたドリームセンサーがあるのを足で隠そうとする。その仕草をメーテルは微笑ましく眺めていた。
食堂車へとやってきた鉄郎とメーテル。座席に腰を降ろすが鉄郎は何だか落ち着かない。
メーテル 「どうしたの?」
星野鉄郎 えっ・・・俺・・・こんな綺麗な椅子に座って食事したことなんて一度も無いもんだから」
270 メーテル 「うふふふ・・・」
クレア 「いらっしゃいませ」
星野鉄郎 「・・・えっ・・・ガラスいや、アクリルかな・・・」
クレア 「私の身体はクリスタルガラスです」
メーテル 「お名前は?」
クレア 「クレアです。どうぞ」
メーテル 「ありがとう」
メニュー表を渡し、クレアが食堂車の後ろへ下がる。それを眼で追う鉄郎
メーテル 「うんと食べて体力付けなきゃ鉄郎」
鉄郎もメニュー表を見るが、何と書いてあるのかさっぱり読めなかった。クレアが再び注文を取りにやってくる。
280 クレア 「お決まりですか?」
星野鉄郎 「え・・いや・・・ええっと・・・」
メーテル 「鉄郎。ビフテキ食べましょうか?」
星野鉄郎 「う・・うん、それが良いよ、ビフテキ2つ」
クレア 「焼き方は?」
星野鉄郎 「や・・焼き方・・えと・・」
メーテル 「焼き方はミディアム、コーンスープもね。私はパン。鉄郎はご飯ね?」
星野鉄郎 「うん、そう」
クレア 「かしこまりました」
クレアが再び後とへ下がる。それを確認して鉄郎が喋りはじめる。
290 星野鉄郎 「冥王星のシャドーも透き通った身体だったけどクレアさんの方が暖かく感じるな。どうしてだろう」
メーテル 「鉄郎がクレアさんに好意を持ってるからよ」
星野鉄郎 「え・・あ・・いや・・そんな・・・」
クレア 「暖房が利き過ぎるでしょうか?鉄郎さんの頬が赤いわ」
星野鉄郎 「え・・いや・・・これは・・・」
メーテル 「鉄郎はね、あなたのクリスタルガラスの身体に興味があるみたい」
クレア 「この身体は、私の母がとても見栄っ張りでこんなガラスにしてしまいました。だから私はここで働いて、お金を貯めて、血の通った身体を冥王星で買い戻そうと思っています」
星野鉄郎 「じゃ、君の身体もあの氷の下に?」
クレア 「ええ、時々仕事の途中、冥王星で下車して昔の身体に会いに行くんです」
星野鉄郎 「こんなに綺麗なのに・・・」
300 クレア 「ありがとう、でも私の身体はガラス・・・光も影も私の身体を通り抜けてしまいます。それが私はとても寂しいのです」

鉄郎は自分の掌をじっと眺める。かざした手の下に影が出来た。
クレアの手がそっと鉄郎の手の上に置かれた。
星野鉄郎 「あ・・え・・・」
クレア 「あなたの手は暖かい・・・」
クレアが恥ずかしそうに走り去る。その時列車内の明かりが消え真っ暗になった。
星野鉄郎 「あれ!停電だ!」
メーテル 「トンネルに入ったのよ」
星野鉄郎 「え・・トンネル・・・これが?」
メーテル 「軌道を横切る次元小惑星帯の宇宙トンネルよ」
クレア 「トンネルの中では列車の電気系統は作動しません。安全弁が閉じるのです」
310
クレアの身体が金色に発光し、食堂内を明るく照らし出す。
星野鉄郎 「蛍みたいだ」
クレア 「こうすると身体が温まるんです」
クレアに見とれる鉄郎。フォークで突き刺した肉の欠片がつるんと抜けて飛んだ。
星野鉄郎 「あ・・」
クレア 「まぁ・・ふふふふ・・・」
メーテル 「美味しかった鉄郎?」
星野鉄郎 「う〜〜ん、満足」
メーテル 「お金を払っていくから鉄郎は先に戻ってて」
クレア 「私がご案内します」
320 クレアに手を引かれて暗闇の列車の中を歩いていく、途中、トンネルを抜け列車内の灯りが戻った。
星野鉄郎 「・・あ・・・後は一人で戻れるから・・・」
クレア 「え・・ええ・・それじゃ・・・」
その時、列車を衝撃が襲った。客車が大きく揺れる。
星野鉄郎 「またトンネル?」
クレア 「トンネルは抜けているはずです」
星野鉄郎 「え・・・」
その時、慌てた様子で車掌が走って来たのを鉄郎が呼び止める。
星野鉄郎 「車掌さん!」
車掌 「はい!?はい・・・」
330 星野鉄郎 「何ですかあれは?」
車掌 「申し訳ありません。正体不明の船が平行して飛んでいますんで」
星野鉄郎 「船?・・・あれが・・・?」
徐々に船の全貌が見え始める。その船の形を確認した鉄郎は驚いた。
星野鉄郎 「あ!あれは!!」
エメラルダス 「私はエメラルダス。進路を横切ります。999号は速度を落としなさい」
飛行船の形をした巨大なクイーンエメラルダス号が999の脇をかすめて飛行していく。その船に向かって鉄郎が999の中から叫んでいる。
星野鉄郎 「エメラルダス!聞きたいことがあるんだ!!教えてくれ!!」
車掌 「はっ!何をなさるんですか!」
鉄郎が戦士の銃を取り出すと、航行しているクイーンエメラルダス号に照準を合わせた。驚く車掌をメーテルが止めた。
戦士の銃が火をふき、閃光は窓ガラスを突き破り一条の光の筋となってクイーンエメラルダス号へ突き刺さる。
340 車掌 「あ・・・なんと言うことを・・・」

クイーンエメラルダス号の全砲門から999号をかすめる様に威嚇射撃が行われる。衝撃にゆれる999。やがてゆっくりとクイーンエメラルダス号は999にピタリと船体を寄せた。
999の客室に靴音が響いてくる。固唾を呑んで静まり返った客室からは物音一つ聞こえない。
だんだん靴音が大きく響いてくる。鉄郎のいる客車の前で靴音が止った。客車のドアにシルエットが浮かぶ。ドアが音も無く開いた。
エメラルダス 「私の船を撃ったのは誰?」
「誰も居ないとは言わせません、出てきなさい」
星野鉄郎 「俺が撃った」
エメラルダス 「お前が?・・・賞金稼ぎか」
「私に銃を向けた男で生き延びた者は居ない」
鉄郎がホルスターから銃を抜いて構えた刹那、エメラルダスのサーベル銃が火をふき、戦士の銃を弾き飛ばす。エメラルダスはサーベル銃を構えて鉄郎の元は歩み寄る。息を呑む鉄郎。
エメラルダス 「命を粗末にする愚か者・・・ふっ・・・まだ子供ですね、あなた・・・」
鉄郎の落とした戦士の銃を拾い上げるエメラルダス。
エメラルダス 「この銃をどこで手に入れました?」
星野鉄郎 「タイタンでお婆さんにもらった。帽子と一緒に」
350 エメラルダス 「帽子?」
メーテル 「この帽子よ」
エメラルダス 「メーテル・・・」
驚くエメラルダス。その雰囲気はふたりが知り合いであることが見てとれた。
エメラルダス 「この銃とその帽子を持った人はどこへ行ったか聞かなかったの?」
鉄郎は黙って首を振る。エメラルダスはメーテルを見た。メーテルもまた黙って首を振る。エメラルダスは愛しそうに戦士の銃を撫でた。
エメラルダス 「メーテルお元気。あなたが居たとはね」
メーテル 「私は大丈夫よ、エメラルダス」
星野鉄郎 「メーテル、君はエメラルダスと知り合いだなんて一度も話さなかったじゃないか」
メーテル 「話さなくても会えると思っていたわ。エメラルダス、鉄郎はあなたに聞きたいことがあるのよ」
360 エメラルダス 「私に?」
星野鉄郎 「あなたが知っていると教えられたんだ。機械伯爵の居る時間城の場所を」
エメラルダス 「機械伯爵?」
メーテル 「知っていたら鉄郎に教えてあげて」
エメラルダス 「聞いてどうするの?」
「あなたが殺そうと言うの?機械伯爵を」

「・・・本気ね?」
メーテル 「知っているなら教えてあげて、エメラルダス」
エメラルダス 「教えても良いの?・・・本当に教えてもいいのね・・・」

メーテルはじっとエメラルダスを見つめ黙って頷いた。
エメラルダス 「機械伯爵の時間城は、コレクションを仲間に披露するためにトレーダー分岐点にやってくるわ」
星野鉄郎 「トレーダー分岐点・・・」
370 車掌 「次の停車駅です、ハイ」
星野鉄郎 「えっ!」
エメラルダス 「鉄郎・・・でしたね・・・。たった一つの限りある命を大切にしなさい」
エメラルダスはくるりと向きを変え、客車の出口へ向かった。
星野鉄郎 「エメラルダス!」
「・・・ありがとう・・・」
クイーン・エメラルダス号が999から離れて、漆黒の宇宙空間へと消えていった。
星野鉄郎 「メーテルにお礼言わなきゃね」
メーテル 「え?」
星野鉄郎 「メーテルがエメラルダスの友達でなけりゃ今頃俺は、エメラルダスに・・・」
メーテル 「そうね・・・エメラルダスは鉄郎のその銃と帽子の持ち主を探しているのよ」
380 星野鉄郎 「じゃあ、婆さんの息子ってのは・・・」
メーテル 「エメラルダスが身も心も、命まで捧げた最愛の人・・・」

999の乗務員室、クレアと車掌がいる。
クレア 「車掌さん、私はこの列車がトレーダーに着かない方が良い」
車掌 「クレアさん、何を言ってるんです。時間通り運行しないと私は職務怠慢で首です」
クレア 「だって、トレーダーに着いたら哲郎さん、機械伯爵に殺されます。だから、トレーダーには停まらずに通過した方が・・・」
車掌 「クレアさんは・・・そうか、哲郎さんを・・・」
クレア 「そ・・・そんなんじゃありません・・・」
恥ずかしそうに駆け出すクレアを車掌さんが微笑ましそうに見つめている。

トレーダ分岐点、それはあらゆる空間軌道が一点に集まる宇宙の大分岐点。旅するものが一度は必ず通り過ぎるところ。自由と無法の渦巻く大フロンティア。多くの男たちが夢を描いてここへ来て、ある者はこの星の土となり、ある者はその夢を抱いたまま見知らぬ宇宙の果てへ旅立って行く所。そこは惑星ヘビーメルダーにある。
クレア 「哲郎さんに何事も無ければ・・・」
390 ヘビーメルダーの街を行く鉄郎とメーテル。宿泊先のホテルの前で鉄郎がメーテルに話しかける。
星野鉄郎 「メーテル。俺、その辺歩いてみるよ。時間条の事、詳しく知ってる人が居るかもしれないから」
メーテル 「そう・・・気をつけてね」
星野鉄郎 「うん、判った・・・」

迷路のようなヘビーメルダーの住居群の中を歩き回る鉄郎。一軒の酒場から聞こえるギターの音にすいよせられるように階段を下りていった。
店の中では、女が一人、ギターを抱え歌を歌っている。客達は皆、その眼に涙を一杯ためながらその歌を聞いている。
挿入歌 「やさしくしないで」〜かおりくみこ〜
酒場の老主人 「お若いの、初めて見る顔じゃな」
星野鉄郎 「どうしてみんな泣いてるんです?」
酒場の老主人 「歌のせいじゃよ、遠い昔、もう二度と返らない若い頃を思い出すんじゃ。旅路の果てに行き着いた者達にはやるせなく聞こえてくるんじゃよ」
「・・・ところで何にする?」
星野鉄郎 「あっ・・・ミルク」
(客達)
「はははは、ミルクだってよ!」
(客達)
「あれはまだ乳離れしてねえぜ!ママのおっぱい恋しい違いねえ」
400
客達のはやし立てる声をぐっとこらえる。店の老主人が優しく鉄郎の手を握る。
酒場の老主人 「わしにも一杯、ご馳走してくれんか?ミルク」
星野鉄郎 「うん・・・」

「親父さんはこの星の事は詳しそうだね」
酒場の老主人 「うむ、この星の生き字引といわれとる」
星野鉄郎 「じゃ、知ってますか。いつ頃機械伯爵がこの星へ来るか」
鉄郎の問いかけに老主人の手元が振るえ、ミルクを入れたグラスが床に落ちて割れた。客達の視線が鉄郎に集中している。

老主人は。店の奥の倉庫の中へ鉄郎を連れ込んだ。
酒場の老主人 「機械伯爵に何の用があるんじゃ!」
星野鉄郎 「・・・殺す!」
酒場の老主人 「馬鹿もん!お前なんか歯の立つ相手じゃない!」
星野鉄郎 「そんなのはやって見なけりゃわからないでしょ!」
「俺は母さんを機械伯爵に殺されたんだ!いや俺だけじゃない。奴の人間狩りで両親を殺された子供たちが大勢居る」
「その子供たちのためにも俺はどうしても!」
410 酒場の老主人 「判った。ガンフロンティア山(さん)まで行ってみな」
星野鉄郎 「ガンフロンティア山・・・」
酒場の老主人 「ここから南へ10キロほど行ったその麓に一風変わった男がいる。機械伯爵の動きはその男が詳しく知ってるはずじゃ」
倉庫の扉を激しく叩く音がする。老主人が目配せで奥の出口を教える。
星野鉄郎 「ありがとう」
鉄郎が走り去ったのと入れ替わりに、屈強な機械化人が倉庫の中へ押し入って来た。

(機械化人)
「今のガキはどこ行った!奴に何喋った!」
酒場の老主人 「な・・・何も喋らん・・・」

モーターバイクを駆ってガンフロンティア山を目指す鉄郎。猛然と砂塵を巻き上げながら突っ走っていく。
オーバードライブがたたり、エンジンが焼け切れたモーターバイクは砂漠の真ん中であえなく空中分解してしまった。
星野鉄郎 「ひ〜〜へ〜〜・・・酷いポンコツだなあ・・・」
鉄郎の眼の前に、砂に埋まった錆付いたオンボロ宇宙船があった。
船の近くで、たきぎの煙が見える。
420 星野鉄郎 「ん・・あ・・・」

男が肩に大きな鳥を乗せ、宇宙船の中から出てきた。鉄郎の帽子とマントと同じ物を着ている。老婆の言葉が頭をよぎる
トチローの母 「名前は・・・あたしが作ったそれと同じ帽子を被ってるよ・・・」
星野鉄郎 「あなたは・・・」
大山トチロー 「どうしたんだ・・・その帽子は?」
星野鉄郎 「あなたのお母さんからもらったんです」
大山トチロー 「お前はお袋に会ったのか?」
星野鉄郎 「危ないところを助けてもらったんです・・・そしてこれを・・・」
大山トチロー 「元気だったか?お袋は」
星野鉄郎 「あなたに会いたがっていました・・・」
430 大山トチロー 「家を出るとき別れは言ってあるさ、まあ、入れよ。俺に用があって来たんだろ?」

「なるほど、それで俺を訪ねてきた訳か」
星野鉄郎 「教えてください。機械伯爵はいつやって来るんですか?」
大山トチロー 「・・・お前も俺と同じ事を考えているんだな・・・」
星野鉄郎 「あなたと?」
大山トチロー 「そうだ、かつては血の通った暖かい心を持った人間だったはずなのに、機械の身体になったとたん人間に危害を加えるようになった」
「あいつ等の残酷さを俺は許せなくって・・・ゴホ・・ゴホゴホ・・・だが・・もう・・駄目だ・・・ゴホ・・・」。
星野鉄郎 「駄目?・・・どうしてですか!?」
「どうして駄目なんですか!」
大山トチロー 「永年の放浪生活で宇宙病にやられてしまったよ・・・」
星野鉄郎 「え・・・!」
大山トチロー 「気にするな・・・俺は死なんよ・・・まだ死んでたまるか・・・」
星野鉄郎 「そうですよ、エメラルダスさんもあなたを探してました」
440 大山トチロー 「エメラルダスに会ったのか?」
星野鉄郎 「ええ、時間城の事を教えてもらったんです」
大山トチロー 「ゴホゴホ・・・奴は今夜、真夜中に・・・ガンフロンティア山の峰の向こうにやってくる」
星野鉄郎 「ガンフロンティア山の峰に・・・」
大山トチロー 「くたばる前に機械伯爵は俺の手で倒したかった・・・ゴホ・・」
「鉄郎・・・頼みがある・・・」
星野鉄郎 「何でしょう」
大山トチロー 「いいか、俺が横になったら、そこのレバーを下げてくれ」
星野鉄郎 「下げるとどうなるんですか?」
大山トチロー 「俺はある所へ行く。・・・いいか鉄郎、機械伯爵の頭を打ち砕け。機械の身体の人間は頭を破壊されるともう二度と・・・ゴホ・・ゴホ・・」
星野鉄郎 「しっかりして!しっかりしてください!」
450 大山トチロー 「俺は一つの機械になる。そして俺の親友の乗っているアルカディアの心になって宇宙の海を彷徨うんだ」
「鉄郎、レバーを・・・」
星野鉄郎 「・・・俺には・・・俺には出来ない!」
大山トチロー 「俺がもう一度、起き上がるためだ・・・引くんだ・・・やってくれ哲郎!」
「俺はまだやりたい事が・・・山ほどあるんだ・・・」

鉄郎がレバーを押し下げる。船内の計器が明るく輝き始めトチローの身体を光の渦が取り巻くと宇宙船の天井を突き破り宇宙の彼方へ飛翔した。

ガンフロンティア山の麓にトチローの眠る墓がある。鉄郎が一人で埋葬したものだ。
星野鉄郎 「人間は寿命が来ると死ぬ。夢も果たせず途中で死ぬんだ・・・」
とぼとぼと砂漠を歩く鉄郎の前に、酒場の屈強な機械化人が立ちふさがった。
星野鉄郎 「お前達は機械伯爵の仲間か!」
鉄郎が戦士の銃を構える。それを機械化人の撃ったレーザービームがはじき落とす。
鉄路は素手で立ち向かって行くが、三人の機械化人によってボコボコに殴られてゆく。

(機械化人)
「早く帰ってお袋のおっぱいでも飲ましてもらいな」

再びヘビーメルダーの酒場、ボロボロになった鉄郎が入ってくる。鉄郎は他の客には目もくれず一点だけを見つめて店の奥へ入っていくと、あの機械化人の前で止まった。
星野鉄郎 「俺の銃を返せ・・・」
(機械化人)
「ここにあるぜ」

近づく鉄郎を太い腕の拳で殴り倒す。機械化人は鉄郎を足で踏みつけニヤニヤと笑っている。
460 星野鉄郎 「か・・・返せ・・・俺の・・・」

酒場の中へ黒マントの男が入ってくる。鉄郎を踏みつけている機械化人の腕を掴みあげると、その腕を握りつぶした。
星野鉄郎 「あ・・あなたは・・・キャプテンハーロック・・・」
キャプテンハーロック 「親父、ミルクをくれ」
酒場の老主人 「は・・はい」
キャプテンハーロック 「一杯やれよ・・・」

(機械化人)
「ミルクは身体が錆びる・・・か・・勘弁してくれえ・・・」

ハーロックは機械化人の口へミルクのビンを押し込んだ。ゴクゴクと白いミルクが男の咽喉へ流れ込んでいく。

酒場の外、ハーロックと鉄郎が歩いている。
キャプテンハーロック 「行くのか、どうしても・・・」
星野鉄郎 「ええ」
「どうして僕を助けてくれたんですか?」
キャプテンハーロック 「俺の親友の墓を立ててくれたお返しさ」
470 星野鉄郎 「え!あの人の親友って・・・あなただったんですか」

「あ・・・!」
ホテルの前でメーテルとエメラルダスが話している。
エメラルダス 「久しぶりですねハーロック」
キャプテンハーロック 「ああ・・・」
星野鉄郎 「エメラルダス・・・あなたの探している人は・・・」
ハーロックの手が鉄郎の言葉を遮る。
エメラルダス 「トチローがどうかしましたか?・・・はっ!」
「この星に居るのですねトチローは・・・どこに・・・ハーロック!」
キャプテンハーロック 「・・・・・・死んだ・・・」
エメラルダスの顔から血の気が引いた。美しい顔が硬直し野面のようになった。
エメラルダスは何も言わずにその場を去っていった。

鉄郎は一人、ガンフロンティア山の峰を登っている。そして登りついた先に、空中に浮遊する巨大な城を見つけた。
星野鉄郎 「あぁ・・・これが時間城か・・・」
480 時間城の貨物室の中へもぐりこんだ鉄郎は物陰に隠れながら城の中枢めがけて忍び込んでいく。両手で戦士の銃をしっかりと握り締め、暗く不気味な城の中をどんどん進んで行く。
大きな広間の中へ入った鉄郎は正面の壁に、剥製にされて無残に飾られた母の姿を見つけて愕然とした。
星野鉄郎 「か・・・・母さん・・・」

広間に現れた酒場の女を見つけ鉄郎は銃を構える。
星野鉄郎 「お前も機械伯爵の仲間だったんだな!」
機械伯爵 「それがどうした。何者だ貴様」
星野鉄郎 「俺は星野鉄郎!お前に殺された母さんの仇をうちに来た!」
機械伯爵 「仇だと。お前がこの私を倒そうというのか」
星野鉄郎 「そうだ!」
構えた鉄郎の銃が、何者かの撃ったビームによって弾かれる。その者は全身をローブで覆って誰なのかわからない。銃を構えたまま鉄郎に向かって近づいてくる。
ローブをまとった者は戦士の銃を拾い上げ、鉄郎の胸に狙いを定める。
アンタレス 「だから言ったろう。撃たれる前に撃てって」
490 星野鉄郎 「アンタレス・・・」(小声)
アンタレス 「加勢に来たぜ」(小声)
銃撃戦が始まった。
星野鉄郎 「ありがとうアンタレス」
アンタレス 「礼にはおよばねぇ!」
「俺だって。何千何万てぇ孤児達の恨みつらみを晴らしてやりてぇやな」
機械伯爵は女を連れて蒼い炎の燃え盛る暖炉の中へ走りこんだ。
星野鉄郎 「待て!」
アンタレス 「鉄郎!ここは俺に任せろい!」

鉄郎は、逃げた機械伯爵の後を追って暖炉の中に飛び込んだ。

城の中央の制御室へ機械伯爵は走りこんだ。追う鉄郎。機械伯爵が振り向きざま銃を撃とうとするより早く、鉄郎の銃が機械伯爵の左腕を吹き飛ばした。機械伯爵は膝を折り苦しげに言った。
機械伯爵 「く・・くく・・・待て・・・待ってくれ・・・俺はこんな身体になってしまった。戦う力も無い、惨めな俺をこれ以上苦しめないでくれ・・・」
500 機械伯爵の懇願に一瞬ひるんだ鉄郎めがけて機械伯爵の銃が火を吹いた。間一髪、飛び込んできたアンタレスが鉄郎を押し倒す。ビームはアンタレスの心臓を撃ちぬいた。
星野鉄郎 「アンタレス!」
「くそ!」
N 天井から降りてきた透明の防護壁に守られて、機械伯爵へ戦士の銃も届かなかった。
機械伯爵 「ハハハハハハ!」
アンタレス 「俺に任せときな・・・」
N 外からの攻撃を無力化する防護壁は、内側からの攻撃は素通りした。機械伯爵の撃ったビームがアンタレスを直撃する。
アンタレス 「ぐっ!」
星野鉄郎 「アンタレス!」
アンタレス 「離れていろ。俺の身体には不発弾がぎっしり詰まってるんだ」
機械伯爵 「リューズ!時間を進めろ」
510 N 機械伯爵の命令に、リューズは答えようとしない。
その間もアンタレスがよろめきながら機械伯爵の居る場所へ近づいていく。機械伯爵は慌てた。
機械伯爵 「リューズ、どうした!早く時間を進めろ!」
どうしたリューズ!リューズ!」
アンタレス 「どうやら最後の仲間に裏切られたようだな機械伯爵。罪もない人間達を殺してきた罰だ!」

「鉄郎・・・メーテルには・・・メーテルには気を許すな・・!」
N
アンタレスの身体は内部の不発弾が爆発したことにより、粉々になって吹っ飛んだ。爆煙のけむる向こうに機械伯爵が倒れている。この爆発でも死んではいなかった。

起き上がった機械伯爵の頭めがけて戦士の銃のレーザーが命中する。機械伯爵の頭が吹き飛んだ。
機械伯爵 「グアアア・・オオオオ!!」
N 頭を撃ちぬかれた機械伯爵は仰向けにのけぞる。倒れざま、腕が時間制御レバーを引いた。
リューズ 「鉄郎、早くお逃げなさい」
「まもなくこの時間城は滅びるわ」
星野鉄郎 「なぜ・・・俺を助けようとするんだ・・・」
リューズ 「あなたを見ていたら、もう取り返しのつかない昔、私の青春を思い出していたの。その頃の私はあなたのように温かい生身の身体だった。でも、機械伯爵の望むままに機械の身体に変身して、改造に改造を続けて・・・私は私でなくなった。時間を操れる魔女になってしまった。でも、操れないものが一つだけあった。それは温かい血の通った人の心」
「早く、早くお逃げなさい」
星野鉄郎 「君の・・・君の身体が錆びて行く・・・」
「さ・・・さよなら・・・リューズ」
520 N 時間城の中は時間がどんどん進み、建物内部を赤茶けた錆が侵食していく。
リューズ 「伯爵を撃たないで・・・私は心であなたにそう叫んでいたのよ・・・でも、これで良いの・・・これで良かったの・・・」
N
時間城が崩壊していく。赤茶けた錆となって何もかも全てが粉々の鉄屑になっていく。
ガンフロンティア山の峰に粉々になった時間城の粒がサラサラと舞い積もる。あたり一面を赤錆の雪が覆ってゆく。

しかし、空を眺めながら鉄郎の心はなぜか晴れなかった
キャプテンハーロック 「これでお前の復讐も終わったわけだな・・・鉄郎」
星野鉄郎 「キャプテンハーロック、それは違います」
キャプテンハーロック 「ん?」
星野鉄郎 「機械伯爵や機械化人を見ていると、永遠に生きることだけが幸せじゃない。限りある命だから人は精一杯頑張るし思いやりや優しさがそこに生まれるんだと、そう気がついたんです」
「機械の身体なんて宇宙から全部無くなってしまえと・・・僕達はこの身体を永遠に生きていけるからという理由だけで機械の身体になんかしてはいけないんだと気がついたんです」
「だから僕はアンドロメダの機械の身体をただでくれるという星へ行ってその星を破壊してしまいたいのです」

「最初はこんな気持ちではなかった・・・メーテル、俺を999へ乗せてくれてありがとう。感謝してるんだ君には」
N 999の発車のベルが鳴り響く。
駅のホームで、車掌とクレアが帰ってこない鉄郎とメーテルを待ちわびていた。
車掌 「あ!来た」
N 鉄郎とメーテルは発車ぎりぎりに列車へ飛び込んだ。
汽笛を鳴らし、999は大空へ旅立っていく、。それを追いかけるようにアルカディア号も宇宙へと飛び立っていった。
530 星野鉄郎 「メーテル、何か用?」
メーテル 「お座りなさい」
「おめでとう鉄郎、あなたは立派にお母さんの仇をうったわ」
星野鉄郎 「ありがとうメーテル」
N 乾杯してワインを一気に飲み干す鉄郎。
しかしメーテルの表情が暗い。
星野鉄郎 「何、考えてんだ?」
「もう直ぐ終点なんだろ?気のせいかな、だんだん沈んでいくように見えるんだ」
メーテル 「そうよ、気のせいよ」
N
メテールは鉄郎と眼をあわそうとしない。その手が小さく震えているように見えた。鉄郎の脳裏にアンタレスの最期の言葉が蘇る。
アンタレス 「メーテルには・・・メーテルには気を許すな・・・」
メーテル 「無事に旅が出来たんですものね。ほっとしたわ」
星野鉄郎 「ねぇ・・・メーテル。この旅が終わって地球に戻ったらどうするんだい?」
540 メーテル 「判らないわ・・・どうして?」
星野鉄郎 「・・・き・・・君さえ良かったら・・・一緒に・・・」
メーテル 『鉄郎はいつか気がつく。鉄郎が私を愛してくれても、それは時の流れの向こうの私が置いてきた儚い夢」
ドクター・バン 「メーテル、お前の鉄郎への気持ちを大事にすることだ。最後まで希望を捨ててはいけない」
星野鉄郎 「一人で何考えてんだい」
メーテル 「こうして一人で乗ってると貸切列車みたいで良い気持ち。ふふふ」
星野鉄郎 「ああ、良い気分だ」
車掌 「永らくのご乗車ありがとうございました。まもなく終着駅メーテル、惑星メーテル。機械化母星メーテルでございます」
N 車掌のアナウンスを鉄郎は聞けなかった、なぜなら深い寝息を立てて眠っていたからである。

機関車は力強く宇宙空間を突き進んでいく。そしてついに、機械化母性メーテルへ999は到着した。
アナウンスが流れる。

(アナウンス)
「終着駅メーテル、惑星メーテル。機械化母性メーテル」
星野鉄郎 「何故だ・・・なぜ、君と同じ名前なんだ・・・何故だ!」
550 N
99番ホームを上がっていくと、その先に機械親衛隊の一団がいた。その中の一人がうやうやしく近づいてくると、メーテルの前で敬礼をした。

(機械親衛隊)
「お帰りなさい、メーテル様。よくご無事で。しかもお連れになったこの男の勇猛果敢さ責任感の強さは全てコンピュータでコントロールセンターに送られて来ておりました」
「女王陛下には、ことのほかお喜びにございます」
星野鉄郎 「メーテル・・・これは・・・これはどういうことなんだ!」
N (機械親衛隊)
「この星はあらゆるモノ全てが人間で造られた部品で組み立てられている」
「お前はあらゆるテストに合格した。しかも我々の英雄、機械伯爵まで抹殺してくれた。赦すべからざる重罪人だ。その罪の償いのために、このメーテル星を構成する部品の一つになって惑星メーテルを永遠に支え続けるのだ」
星野鉄郎 「冗談だろ?メーテル・・・」
N メーテルは悲しげに首を横に振った。
星野鉄郎 「汚いぞ〜!!」
N

鉄郎は怒りと悲しみの入り混じった思いを込め、メーテルの頬を平手で叩いた。同時に、機械親衛隊によって殴られた鉄郎は、気を失いその場に倒れた。
機械親衛隊の手によってずるずると引きずられて行く鉄郎。

(機械親衛隊)
「お迎えのリムジンが参っております。では!」

鉄郎を連れた機械親衛隊が、惑星メーテルの中心核へとやってくる。部屋の上部から女王プロメシュームが降りてくる。

(機械親衛隊)
「女王プロメシューム様、部品ナンバー8・9・9・8・9・8・2、人間名、星野鉄郎参りました」
女王プロメシューム 「ご苦労であった」
星野鉄郎 「俺は絶対に機械の部品になんかならないぞ!」
女王プロメシューム 「この少年の適性は?」
560 N (ドクター)
「中央ブロックのネジが良いかと思われます」
女王プロメシューム 「理由は?」
N
(ドクター)
「意志が強く相当のショックを受けても折れたり抜けたりはしない男だと思われます」
星野鉄郎 「!・・・ネジにするのか!・・・俺を!!」
女王プロメシューム 「そう、心を持った生きたネジ。惑星を支える生きた部品」
N 手術台に寝かされる鉄郎。必死の抵抗も空しく、手術台に固定されてしまう。
星野鉄郎 「放せ!放せよぉ!放せッたら!この野郎!ネジなんかにされてたまるかよ!放せッたら!・・・痛てえな!放せよ!」
「この野郎!やめろよ!!やめろおぉ!」
「化物どもぉ!お前達のいいなりになってたまるかよぉ!放せぇ!」
N
メーテルが手術室へと続く通路を必死で走ってくる。手術台に固定されている鉄郎の元へ走って行く。
星野鉄郎 「・・・何しに来た!俺の間抜けざまを笑いにか!」
女王プロメシューム 「私の娘に無礼な口をきくと、部品にせずに殺しますよ」
570 星野鉄郎 「娘!?」
女王プロメシューム 「機械帝国を支配する女王プロメシュームの一人娘」
星野鉄郎 「・・・そうか、俺は何も知らずに機械の化け者と旅を続けて来たのか・・・」
「その化物を好きになるなんて・・・しまらねえなぁ・・・」
ドクター・バン 「鉄郎、メーテルも君を愛してしまったんだよ」
星野鉄郎 「・・・その声はあの時の!」
女王プロメシューム 「ドクター・バン!」
メーテル 「そうよ、お母様。・・・お父様よ」
N メーテルはペンダントを取り出し、母プロメシュームに見せる。
女王プロメシューム 「反機械化世界を目指した裏切り者!」
ドクター・バン 「そうだプロメシューム。哀れな機械の女よ。私の魂はこうしてカプセルに姿を変えているが、そのエネルギーは、この惑星の中心を破壊しばらばらに砕いてしまう力があるのだ」
580 女王プロメシューム 「愚かな事を。生きた部品で構成された惑星メーテルが破壊できるとおおもいか」
ドクター・バン 「メーテルが歯を食いしばり、部品となる同志を運んで来たのは何のためだと思う。部品となった同志達が、要所要所の重要部分に配置されているのは何のためだと思う」
女王プロメシューム 「同志?」
メーテル 「私が連れてきた人々は皆、志を同じくする人々。機械帝国を破壊するために身を犠牲にする事をいとわぬ勇敢な人々。私は泣きたいのを我慢してそういう人達を大勢ここへ送り込んだのです」
女王プロメシューム 「メーテル、母親の私をお前までが裏切ったのか?宇宙で一番美しい身体をお前に与えたこの私を・・・!」
「永遠の命を授けてやったこの私を・・・」
メーテル 「そして・・・永遠の苦しみも下さったわ」
女王プロメシューム 「お前は平気か?ここでカプセルを解き放てばこの星が破壊される。おまえも死ぬことになる」
N
プロメシュームが鉄郎に問いかける。その時、機械アームがメーテルめがけて伸びてきた。鉄郎は咄嗟にメーテルを押しやり、戦士の銃の『引き金を引いた。
星野鉄郎 「危ない!」
「機械帝国を滅ぼすことができんなら、俺は構わないさ!」
N
宇宙空間をアルカディア号が突き進む。一路、惑星メーテルを目指して・・・。
590 キャプテンハーロック 「男なら危険を顧みず、死ぬと判っていても行動しなければならない時がある。負けると判っていても・・・戦わなければならない時・・・鉄郎はそれを知っていた」
「いいか、鉄郎にかすり傷一つつけるな!無事に地球に帰すのだ」
N
アルカディア号の中央コンピューターが眩く輝く。
クイーンエメラルダス号のメインパネルにアルカディア号が映し出される。
エメラルダス 「・・・・トチロー・・・」
大山トチロー 「エメラルダス、俺の身体は滅んでも俺の魂は永遠に死なない。こうして親友の乗っているアルカディア号の心になって宇宙の海を彷徨うのだ」
「ふふふふ・・・これも鉄郎のおかげだよ」
エメラルダス 「判っているわトチロー。あなたの意志は立派に鉄郎が継いでいる。死なすわけには行かない」
女王プロメシューム 「やめなさい、メーテル」
ドクター・バン 「投げるのだメーテル。早く星の中心を破壊するのだ」
女王プロメシューム 「メーテル、こちらへよこしなさい。あなたは母親の夢を破壊するつもりですか」
N
メーテルは窓の側へ走り寄りカプセルペンダントを投げようとする。それを、惑星メーテルの心が引き止める。
メーテル(心) 「やめて!この星は私自身、この星は、もう一つの私の心。別れては暮らしているけれど、どちらも私・・・私なのです」
600 N 惑星メーテルへ猛攻撃をかけるアルカディア号。地表にある建造物、飛来する迎撃機を次々に撃つとしていく。
ドクター・バン 「機械人間が起こす悲劇がこれ以上通続いても良いのかメーテル・・・お前はもう私なしで歩ける。一人で立派に歩ける。早く、早く投げるんだメーテル!」」
女王プロメシューム 「さあ、よこしなさいメーテル」
メーテル 「・・・私は・・・私は・・・」
女王プロメシューム 「よこしなさい!」
N カプセルペンダントを奪おうと襲い掛かるプロメシューム。一瞬早く、鉄郎がメーテルの手から奪い取っていた。

惑星メーテルの表層では、激しい戦闘が繰り広げられている。アルカディア号に続き、クイーンエメラルダス号も参戦していた。
ドクター・バン 「鉄郎、君ならやれるな。君はその目的でここへやってきたのだろう。投げるんだ。限りある尊い命を守るために!」
女王プロメシューム 「やめなさ〜〜〜い!」
N
奪い来るプロメシュームの脇をすり抜け、鉄郎が窓からカプセルペンダントを放り投げる。ペンダントが赤い光を放ち惑星メーテルの中心部へ落ちていく。惑星メーテルの生きた部品達は、その時を待っていたかのように、次々と連結の手を切り離していく。
星野鉄郎 「メーテル!逃げるんだ!」
610 N 立ちすくむメーテルの手を引き鉄郎は走る。
惑星メーテルは中心部からボロボロと崩れていく。

逃げる鉄郎とメーテル。崩れ行く建物に足元をすくわれながらも必死に逃げる。
手を握る鉄郎とメーテル。互いに握るその手の温もりを感じていた。
星野鉄郎 「暖かいなぁ・・・メーテルが機械だなんて・・・」
メーテル 「私の身体は鉄郎のお母さんの身体」
「私は鉄郎のお母さんの若い時の姿の生き写し。私は人の姿をした影」
「こうやって貰った身体が歳をとれば、また一つ別の身体を写し替え、果てしない時間の中を旅してきたの」
星野鉄郎 「それで母さんに似てたのか」
N 崩れ、燃え落ちる惑星メーテル。粉々に砕け今、最期のときを迎えようとしている。

鉄郎とメーテルを迎え入れた999はステーションを離れるため、動輪を力強く回し、始める。崩壊する惑星メーテルの炎をかいくぐり、999は旅立っていった。

突然、蒼白い手が鉄郎の首に伸び、締め付ける。
メーテル 「!・・お母様!!」
星野鉄郎 「・・!苦しい・・・な・・・何すんだ・・・」
女王プロメシューム 「道連れだよ、メーテル。これはお前のせいだよ」
メーテル 「私の?!」
女王プロメシューム 「お前は母親の私を裏切って何もかも私から奪いさった。だから、私はお前から鉄郎を奪い取ってやる」
620 メーテル 「お母様!」
星野鉄郎 「く・・るしい・・」
メーテル 「やめて!」
女王プロメシューム 「お前が生涯、嘆き悲しんで暮らすのが私の願い・・・ふふ・・ふふふふふ」
N
後ろからクレアがプロメシュームに飛びついた。プロメシュームがひるみ、締め付けていた手が緩む。
女王プロメシューム 「な・・何をする!放しなさい!」
クレア 「哲郎さん、さようなら!」
N クレアは身体を銀白色に輝かせる。
クレア 「たった一人の・・・私のお友達・・・好きだった・・・」
N クレアの身体にピシピシと亀裂が走る。クレアの身を挺した攻撃に、プロメシュームはちりぢりに砕け散った。
惑星メーテルもまた、宇宙の塵となり四散した。

窓の外を眺める鉄郎の目の前を、小さな欠片となったクリスタルが宇宙空間を流れていく。
630 メーテル 「あなたを守って砕け散ったクレアさんの身体」
星野鉄郎 「こんな悲しそうな涙、見た事がない・・・」
メーテル 「それはクレアさんの心かもしれないわ」
星野鉄郎 「・・・クレア・・・」
N 999と併走するアルカディア号。
キャプテンハーロック 「鉄郎。・・・いつかまた、星の海のどこかで会おう」
N アルカディア号は徐々に速度を上げて999から離れて行った。続いてクイーンエメラルダス号も次第に遠ざかっていく。
星野鉄郎 「さよなら、キャプテンハーロック。さよならクイーンエメラルダス」
N 地球に帰った鉄郎。銀河鉄道ステーション。
銀河鉄郎 「どうしても行くのか?」
640 メーテル 「私は時の流れの中を旅してきた女。でも、昔の身体に戻るためには・・・」
星野鉄郎 「じゃ、冥王星へ・・・俺・・・待ってるよ・・・」
もう・・・会えないのか?」
N メーテルは黙ってうなづいた。
メーテル 「いつか私が帰ってきて、あなたの側に居ても、あなたは私に気がつかないでしょうね」
N
メーテルはうつむく鉄郎の顔にゆっくり顔を寄せると、優しく口付けをする。柔らかなメーテルの唇が鉄郎の唇を塞いだ。
その時、発車を知らせるベルが鳴り響き、鉄郎の身体が緊張と驚きで硬直する。
メーテル 「私はあなたの思い出の中にだけいる女」
「私はあなたの少年の日の心の中に居た青春の幻影・・・」
N
メーテルが999の中へ消え、客車の扉がゆっくりと閉じる。汽笛が鳴り響く。機関車の動輪がゆっくりと回り始め、力強く機関車は線路を進んで行く。
鉄郎は機関車の脇を沿うように歩き続ける。見詰め合う二人・・・。
やがて列車は駅のホームを離れていった。
星野鉄郎 「メーテルーーー!!」
648 N 今、万感の想いを込めて汽笛が鳴る。
今、万感の想いを込めて汽車が行く。
ひとつの旅は終わり、また新しい旅立ちが始まる。
さらばメーテル。
さらば銀河鉄道999
さらば少年の日よ。
ED THE GALAXY EXPRESS 999

劇 終

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